自律神経と不整脈-3

交感神経と不整脈


自律神経の中で、運動したり興奮したりするときに活発となる交感神経は、心臓や血管の表面、気管支等に分布していて、その神経の先端から、ノルアドレナリンというホルモンを分泌します。 ノルアドレナリンとアドレナリンという二つのホルモンは、カテコラミンという種類のホルモンに分類されます。カテコラミンは、大まかに言えば心拍数を増加させて、心臓の収縮力を増加させ血圧を上げます。 一般的にはアドレナリンという名前の方が知られているので、ここではアドレナリンと呼びます。 神経から分泌されるアドレナリンは一種類ですが、臓器によってレセプターのタイプが異なります。 例えば心臓に分布しているβ1というレセプターと、血管や気管支に分布しているβ2というレセプターはちょっと形が違います。 (ちょっと余談になりますが、血小板にもα2アドレナリン受容体があり、興奮してアドレナリンが血液中に増えると、血小板の機能を介して血液は固まりやすくなります。 そのため血管の病気や血栓の病気をお持ちの方は、交感神経が過剰に活動する精神的なストレスや興奮はあまり好ましくありません。) その形の違いを利用して、いろいろな薬剤が作られています。 また
カフェインはこういった交感神経の興奮が細胞に伝わる際に、細胞内でその効果を増強するために、同じ交感神経の興奮の程度でもより強い反応を細胞が示す事になります。 
アドレナリンの心筋細胞への作用は、心臓の筋肉の中で電気信号が伝わる速度が早くしたり、興奮性を高めたり事で不整脈を起こしやすくします。 例えば、心室性期外収縮の数を増やしたり、心房性期外収縮の数や連発を増やしたり、発作性心房細動を引き起こしたり、房室結節回帰性頻脈や房室回帰性頻脈を誘発したり、心房粗動を引き起こしやすくしたり、心筋梗塞急性期の心室細動等の致命的な不整脈を起こしやすくしたり、QT延長症候群の患者さんのQT時間を延長して心室細動を助長したりします。 また不整脈ではありませんが、前述した洞性頻脈を起こし、患者さんがそれを動悸として自覚する事もあります。 
ならばアドレナリンは全ての元凶、完全に止めてしまえば不整脈も無くなってよいのではないかと考えがちですが、適度なアドレナリンは日常生活で体を動かしたり、集中したりするときに、心拍を上昇させたり血圧を上げたりするのに利用されていて、それを完全に薬剤で止めてしまうと、体が本当に血圧を必要なときに十分な血液を供給出来ないため、ふわっとするとか、体が重く感じたり、人によっては悪夢を見るという方もおられます。 なのである程度の交感神経の興奮は必要なわけです。 

続く
三好クリニック(内科)
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