心臓の形ー3

絶え間なく働いている心臓


心臓はとても単純な構造をした臓器ですが絶え間なく動いている臓器です。 心臓は収縮している時だけでなく、弛緩している時もとても重要なことを行っています。
心臓は血液を全身へ送り出すとともに、収縮するために必要なエネルギーを自分自身に送り出す必要があります。 栄養のある血液が心臓の内側にたっぷりあるのだから特に何もせずとも、酸素や栄養は行き渡るのでは無いかと考える人もいるかもしれませんが、そういった方法(自然拡散)で効果がある範囲は0.2mm程度でそれ以上遠くへは届きません。 心臓の壁の厚みは左心室で10mm程度ありますから、全くもって足りない訳です。 ですので心臓は自分自身に血液を送る必要があります。 心臓には心臓の周りだけをまわっている血管で名前を冠動脈という動脈を使って血液を送り出しています。 冠動脈は心臓から出たすぐの所、大動脈弁のちょっと上当たりから枝分かれしてそのまま心臓全体に血液を送っています。 心臓以外の臓器では、血液が最も多く流れる時間帯は心臓が収縮している時間帯ですが、心臓を栄養している冠動脈に流れている血液は、弛緩しているとき(医学的には拡張期と言います)に流れます。 心臓は収縮して血液を全身の臓器に送り出しているのに、心臓自身は弛緩しているときだけしか血液を受け取れないというのはちょっと変な話ですね。 つまり心臓は収縮している時間も弛緩している時間も両方とも重要なのです。

心臓は無限に早くは打てない


そして心臓が一回に収縮している時間の間隔は、ほぼ一定だと言われています。 運動して心拍が早くなると、少しだけ短くなりますが、それでも 0.35から0.4秒位の間での変化で、ほとんど変化しないと考えても良い位の変化しかありません。 運動したり興奮したりすると、心臓は全身の酸素の要求に応えるため、いっぱい収縮の回数を増やして血液を送り出そうとします。 しかし一回の収縮時間が決まっていると、一秒間に収縮できる回数には限りがあることがわかるでしょうか? つまり一秒間に3回以上の収縮をさせると、心臓は弛緩する時間がなくなり、自分自身に血液を送り出す時間がなくなります。 収縮回数が多くなってたくさんエネルギーが必要なのに、自分自身に必要な血液を送れない。 血液が十分回らないこの状態を「虚血:きょけつ」と言います。 心臓の筋肉はとても単純でタフにできていますが、酸素が行き渡らないと、30秒以内に収縮をやめてしまいます。 つまり人間が全身に血液を送り出すのに最も適した心拍数は、1分間に50回から180回ぐらいの間であるわけです。 それ以上心拍数が増えても、実際には収縮が間に合わなかったり不十分であって、それ以上は循環する血液のスピードは上がらないのです。 

心臓は収縮して全身をいたわり、弛緩して自分をいたわる


つまり、心臓にとって、収縮している時だけでなく、弛緩している時も重要だということです。 心臓の筋肉を守り酸素や栄養を十分行き渡らせるために、この弛緩している時間をできるだけ長くすることが重要で、それは具体的に言うと心拍数を落とすことが必要になります。 そのため、ざっくりとお話しして心拍数が遅くなるタイプの薬は、通常生命予後を良くする。 つまり寿命が長くすることが知られている薬が多いのだろうと言われています。 狭心症などの治療に、心拍を落とす薬を使うのはそういった理由からなのです。

次回に続く
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