三好クリニック 青山・表参道

内科・循環器・高血圧・不整脈

重力に負ける人 2

怖くて立ち上がれない
人間は1歳になる前から2本の足で立ち上がり、その後ほとんど死ぬまで立った姿勢を基本にして生活しています。 これは皆当たり前と思っているかもしれませんが、生物のあり方としては重力の方向に逆らっていて明らかに不自然な姿勢です。 立ち上がって生活することの難しさは大きく分けて2つあります。 一つは上の方にある脳へ血液を送る難しさと、もう一つは重力の方向にまっすぐ立っていることの難しさです。 今回は脳へ血液を送ることの難しさ、「脳貧血で立つのが怖い」という状態の説明をしてみます。

脳貧血の症状
患者さんと会話していて、患者さんがおっしゃられる「貧血」という症状は脳貧血のことであることが多いです。 実は医学的な意味の「貧血」とはまた異なるのですが、その説明はまた別の機会にでも。 脳貧血は、おそらくみなさん一生のうちに必ず一度は経験されておられるでしょう。 寝ていたり、座っていたり、蹲踞の姿勢から、急に立ち上がって歩き始めたり、高いところにあるものを取ったりしようとして手を伸ばしたりした時とかに発生します。 頭の芯がじんじんして、目がかすみ、耳鳴りがして、心臓がドキドキして、冷や汗が出てきます。 そのまま我慢して立っていると意識を失って倒れてしまったりすることもあります。
脳貧血という現象は、空腹時とか水分量が少なく体液量が少ない時に起こりやすいです。 また病気の後とかで長期間寝ていたりした後に起こりやすいです。 「病み上がり」と言う言葉がそれにあたります。 また満員電車で、足の位置が変えられないような状態で、つり革等に手をやっている時とかに症状が出現してしまい、倒れてしまったり、脳貧血のために尿を漏らしてしまったりすることもあります。 こういった脳貧血は立っている時だけでなくても、ふかふかのソファーとかで行儀よく足を揃えて座っている時に横や前に緊張するような人が居たりして身動きが取れないような状態に長時間さらされると、同じようになることがあります。

脳貧血の対処
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脳貧血の時は速やかに脳を心臓と同じ高さにすることが重要です。 簡単に言うと「しゃがんて頭を下げてうずくまる」。そうすればほとんどの場合脳貧血は回復します。 一度それで血圧が回復してしまえば、直後に立ち上がって同じ体勢になっても2回めは脳貧血にならないことが多いです。 最もダメな対応はそのままの姿勢で頑張ってしまうというものです。 倒れてしまったり、意識を失ってしまったりしてしまいます(神経調節性失神といいます)。それは結構な恐怖体験となります。 そして原因や対処がわからないままそのままの状態を長期間繰り返していると、また起こるのではないかという不安感が頭をもたげ、トラウマになってしまい、怖くて電車に乗れない、外出できないという状態になります。 こうならないためにできるだけ早めに医者に相談して大丈夫だということを確認することが大事です。 対処法がわかってそれ以降脳貧血にならなければそれで良いですが、そういったことがわからず不明確なまま長時間放置しておくと、たいていの場合その不安感から脱するのにとても時間がかかるようになります。 また頭を心臓と同じ高さにすれば殆どの場合回復しますので、これをすれば安全だという方法が早めにわかってしまえば、その前兆があった時点でうずくまってしまえば大丈夫なことが多いです。 ほとんどの方は脳貧血を日常的に体験していて、教わらなくてもうずくまってやり過ごしていて、とくに気もとめていません。

脳貧血は医者に邪険にされることがあります
そしてこれは病気とは呼べないものですし、薬ですっきり良くなる病気ではありませんし、忙しい時間帯だと医者のほうも適切な対応を取る時間がなく、なんの論理的な説明もなく「大丈夫ですよ」とか「疲れすぎですかね」とか、「きちんとご飯食べてますか?」といったどうにも納得行かない対応を受け、適切な対処方法を教わることなく診察が終了してしまいがちです。私も慶應大学病院にいて診察している時には、時間的な制約からそういった対応にならざる終えませんでした。

なぜ脳貧血が起こるのか
人間の体の中の血液の70-80%は静脈の中に蓄えられています。 静脈は、みなさんも外から触ってみると、結構柔らかくぷっくっとして押すと凹みますね。 温かいとくっきり出ていても、寒い冬とかになると、細く見えなくなっていたりすることに気づく方も多いでしょう。 実は静脈の太さは外気温や神経等によって微妙に調整されているのです。 人間は立ったり座ったりするたびに、自律神経を介してこの静脈の太さを自律神経を介してめまぐるしく調整しています。 重力にたいして低い足に落ち込んでしまう血液を静脈を細く占めることで心臓に戻そうとしています。 この機能がなくなるとほとんどの血液が足の静脈に溜まったまま、心臓に戻ってこなくなります。
もしも静脈の血液が心臓に戻ってこないと5秒ほどで血圧は速やかに60台を切ります。 さらに5秒から10秒続くと脳に十分酸素が行き渡らなくなり、目がぼやけてかすみ、下がった血圧を上げようとして心拍が早くなったり、手に冷や汗をかいたり、胸がカーっと熱くなったりします。 この血管運動のための自律神経機能は毎日立って生活することで自然に鍛えられ維持されています。 ずっと寝ていて使わなかったり、長時間無重力の環境にいて使わないと、一週間ほどであっという間に消えてなくなります。 また静脈の周囲の筋肉の収縮と弛緩でポンプの機能を果たして、足の静脈の血液を心臓に戻すことができます。 ですので体(の筋肉)が動かせないという状態はあまり脳貧血になりやすくなるのです。
また血液が減少すると心臓に戻る血液量が減ります。 空腹や緊張状態が長時間続くのは良くありません、緊張状態は尿を増やしたり、下痢になったりして、体液量が減ります。 空腹状態で更に体液を失うと、心臓に戻ってくる静脈血液がさらに減少し脳貧血に拍車がかかります。

重篤な病気と関連した脳貧血
そういった機能的な脳貧血以外にも、重篤な糖尿病患者さんや、シャイドレーガー症候群といった脳の病気、後は徐脈性不整脈や、肺血栓塞栓症といった病気などで、似た症状が出ることがあります。 また脊椎の手術のあとや腰髄の痛み止めの麻酔(硬膜外麻酔など)の後等に同じような症状になることがあります。 あまりにもひどい脳貧血はそういった病気を除外する必要があります。 こういった病気の場合再現性がありますが、機能的な脳貧血では体調や日によって同じ動作でも出る時と出ない時があるという違いがあります。

最悪なストーリー
上の病気でない場合でも、立ち上がるとクラクラするので怖くて寝たままで生活を始めてしまう方が時々いらっしゃいます。 実はそういった対応は脳貧血には逆効果になります。 人間の体は使わない機能はいらないものだと勝手にそぎ落としてしまいます。 例えば静脈の収縮や筋肉の収縮も、使っていないとどんどん弱ってしまいます。 そしてさらに症状が悪化して、どんどん立ち上がるのが怖いという悪循環に陥ってしまいます。 これは生物としての重力に対する反応としては自然なことですが、社会生活を営む人間にとっては大きな制約になります。

脳貧血の治療は?
きちんと検査して安心を確保したうえで、適切な対処法を実践することと、不安が消えてゆくまでの時間が必要です。時には抗不安薬を内服することも大事です。 重要なことは医者の安心ではなく、患者さん自身が納得して安心してもらう必要があります。 その安心できる時間が長く続くことが肝要です。一旦悪循環に入ってしまえば、そこから脱出するにはかなりの時間が必要だということをわかっていただければと思います。 また2節前に例示した病気でなければ、脳貧血を起こすたびに次は起こしにくくなっていくということです。 我慢して立っていたりするのは良くありません、前兆があればそれで訓練は終了、一旦うずくまってやり過ごしてくださいね。 それを何度か繰り返しているうちに、ゆっくりですが次第に脳貧血は起こりにくくなってきます。 自分の静脈の筋肉が強くなって適切に心臓に血液を戻すことができるようになります。そして不安は脳貧血を起こしやすくします。 不安も安心できる時間が続くと必ず良くなります。 なので脳貧血をこわがらないでください、周囲の健康そうな人もみな無意識に起こしている生理現象なのですから。

次は「目が回って、立ち上がれない」です。

小川聡先生のクリニックに遊びに行きました

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私が慶應大学でお世話になった恩師、小川聡先生が溜池山王の赤坂アークヒルズの向で開業されたので内覧会に行ってきました。 小川先生は日本の循環器に不整脈という分野を作られた方の一人です。 私も、小川先生の人柄に惹かれて、慶應の循環器内科にだいぶ長居をさせていただきました。小川先生は慶應の教授と、最近では国際医療福祉大学三田病院の院長をされておられましたが、そろそろご自身の患者さんをきちんと見たいとおっしゃられて開業されたようでした。 

場所は溜池山王から歩いて5分ぐらい、慶應で見ておられた患者さんもついていかれるようですが、不整脈の診療は私が申し上げるのはおこがましいですが、今の不整脈治療のとても公平な判断をされる先生ですし、畑違いの分野に関してはとにかく人脈がある方なので適切な医師をご紹介いただけるのではないかなと思います。不整脈のクリニックとしては、私とかち合うのですが、まあ私など比較にならないぐらい偉い先生ですので、私のところにいらっしゃる患者さんの層とは少し異なるかもしれませんね。 なので大丈夫かな、三好クリニック・・・。

中はとても広く、やはりいらっしゃる方のことを考えてとてもゴージャスな診察室でした。 小川先生のやる気を感じましたし、これなら今まで小川先生を頼って通院していらした患者さんも納得して通ってこられるのでは無いかなと思っています。
こちらが小川聡クリニックのURLです。 
http://ogawasatoshi-clinic.com

2016-04-23 10.23.58

重力に負ける人 1

2016-04-23 10.51.37
私が慶應大学でお世話になった恩師、小川聡先生が溜池山王の赤坂アークヒルズの向で開業されたので内覧会に行ってきました。 小川先生は日本の循環器に不整脈という分野を作られた方の一人です。 私も、小川先生の人柄に惹かれて、慶應の循環器内科にだいぶ長居をさせていただきました。小川先生は慶應の教授と、最近では国際医療福祉大学三田病院の院長をされておられましたが、そろそろご自身の患者さんをきちんと見たいとおっしゃられて開業されたようでした。 

場所は溜池山王から歩いて5分ぐらい、慶應で見ておられた患者さんもついていかれるようですが、不整脈の診療は私が申し上げるのはおこがましいですが、今の不整脈治療のとても公平な判断をされる先生ですし、畑違いの分野に関してはとにかく人脈がある方なので適切な医師をご紹介いただけるのではないかなと思います。不整脈のクリニックとしては、私とかち合うのですが、まあ私など比較にならないぐらい偉い先生ですので、私のところにいらっしゃる患者さんの層とは少し異なるかもしれませんね。 なので大丈夫かな、三好クリニック・・・。

中はとても広く、やはりいらっしゃる方のことを考えてとてもゴージャスな診察室でした。 小川先生のやる気を感じましたし、これなら今まで小川先生を頼って通院していらした患者さんも納得して通ってこられるのでは無いかなと思っています。
こちらが小川聡クリニックのURLです。 
http://ogawasatoshi-clinic.com

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内科学会に参加してきました

患者さんを診察していて、時々病気ではないのだけれど、重力に負けてしまうという表現が的確な患者さんを拝見することがあります。一度重力に負けてしまうと、再び自力で立ち上がることができなくなり、その後ほとんど寝たきりになってしまうということでもあります。

体が大きくなりすぎて重力に負けてしまう
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皆さんの体重はどのぐらいが適正だと思われますか? おそらく、太っていることがその人のアイデンティティーになっている方もいらっしゃいますよね。 そうやって何十年も暮らしておられると、一念発起してダイエットして痩せてしまうと、「大丈夫ですか? どこかお体悪いのですか?」みたいに言われてしまう。 あとは仕事の上でのキャラクター作りとして太っておられる方もいらっしゃるでしょう。 体が大きい方はインパクトがありますし、すぐに覚えていただけます。 また宴席などで、大食家の人々はとても人気があって、飲食関係の仕事をしているとそういう体型になられる方も多いのではないかなと思います。そういう方々にとっては、肥満と言う要素は、何か自分の一つの大切な要素になっておられたりするのかもしれません。

肥満によって生じる可能性のある内臓への負担は、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、下肢静脈血栓症から生じる肺梗塞、睡眠時無呼吸症候群、内臓脂肪の増大による肺の圧迫などでしょうか・・・。 それと膝や腰などの骨格への負担もあります。 ある程度内臓のデータに影響が出ないうちは、私はあまり体重について強く申し上げることはしません。 その理由は外来という限られた時間の間に体重を減らすようにお話ししても、ほとんど効果がないからです。 何十年もやってきた生活のパターンを変えるのはとても大変です。 その大変なことを患者さんにやっていただくためには、患者さん自身が納得のいく理由や目標があること、そしてそれを貫き通す強い意志と目的を持つこと、そして周囲の人たちの協力が不可欠だと思います。 ただ骨格に問題が出始めるとそう悠長なことを言っていられなくなります。

大きな体重を支えるためには、強い骨格が必要になります。 骨は固く少しぐらい体重が増えたぐらいでは折れたりすることはありませんが、関節や軟骨などの動く部分はそうはいきません。体重が大きくなりすぎると、膝や、腰骨(脊椎骨)の軟骨が擦り切れ・変形して神経を圧迫したりして、強い痛みを生じます。 文明が生まれる以前なら、痛みで動けなくなった時点で、食料を確保できなくなり体重が減って結果的に関節への負担も減ったかもしれません。 しかし現代では、家からほとんど出なくても食料の確保は比較的容易です。 いったん痛みに負けて動かなくなってしまうと、その時間が暇になってしまい、手っ取り早い時間つぶしとして間食をしてしまうことも多くなります。 そうするとまた体重が増えてしまい、運動もできなくなるので、さらに体重が増えて、そういった悪循環の結局ほとんど寝たきりになってしまう場合があります。

ダイエットの方法はここでは記載しませんが、やはり骨格に痛みが出始めたら強い意思をもって食事制限をされたほうが良いでしょう。 そうしないといずれ重力に負けて寝たきりになってしましますから。

次は重力に負ける人、「怖くて立ち上がれない」です。

カルテと腱鞘炎

今年の内科学会は有楽町東京フォーラムでした。 日曜日半日ほど参加してきました。 東京フォーラムA棟の最も大きなホールで、結構いっぱいはいってましたね。 皆さん内科のお医者さんなんだなと思うとなんだか不思議な気分です。 私の前に座った方は・・、競馬の新聞読んでましたね・・。 参加される大部分の先生方が、内科専門医、あるいは内科認定医の単位習得のために参加され、勉強と言うよりは認定更新のための単位を取るためなのでしょうね。 私もモチベーションも似たようなもので、参加するならちょっと話だけでも聞いておこうかなと思う程度です。 学会に来て競馬新聞読んでいる先生とあまり変わりは無いでしょうね・・。 今回はエピジェネティクスという題のシンポジウムだったのですが、ちょっと基礎研究的な話が多く、どちらかと言うと、医科学の進歩のお話だったです。 内容は結構面白かったです。 血糖値をコントロールするために、内臓がお互い自律神経を介して綿密な働きをしているといったお話や、アディポネクチンといって、コレステロール代謝に重要な働きをする因子の話等を拝聴してきました。 私はアディポネクチン少ないので、はやくそういった薬が出てくると良いなと思いながら、話を聞いていました。
アディポネクチンと言うのは、脂肪細胞から分泌される分子で、慶應の職員健康診断で研究目的で測定されていたので、自分のアディポネクチンが低いのは知っていたのですが、これが低いと悪玉コレステロールが高く、善玉コレステロールが低くなるのです。 残念ながら、保険でできる採血項目ではないので、来院されても当院では測定できませんのであしからず。 
じゃあ太っている人は脂肪細胞も大きく、アディポネクチンが分泌されて有利なのではないかと思われがちですが、脂肪細胞が脂肪を蓄えすぎて大きく膨れ上がってしまうと分泌されなくなってしまうようです。 つまり太っているとアディポネクチンは低下して、悪玉コレステロールは上がってしまいます。 要するに少し痩せなさいということらしいですね。 

血圧は左手で測るほうがよいの? それとも右手?

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三好クリニックは2016年3月29日火曜日、公用出張のため業務時間を短縮して営業いたします。
誠に勝手ながら2016年3月29日火曜日の営業時間は18:00までとさせてください。 申し訳ありません。


インフルエンザワクチン接種終了のお知らせ

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きっちりした先生に言わせると、血圧は右手で測定したほうが良いはずだとおっしゃられる先生がいらっしゃいます。 私も医学生の頃そのように教わった記憶があります。 患者さんの中にも「血圧測定するなら右手だ」と考えておられて、右手を出される方が時々いらっしゃいます。 私のクリニックでは患者さん側の左側に血圧計があるので、右手を出すためには上半身を90度ねじる不自然な姿勢になるのが少々困るところです。
私自身の考えは、血圧は、時々左や、時々右で測ってもらうのが良いと思っています。 そしてできればリラックスできる体勢で測ってもらうのが良いので、あまり体をねじらないで測るのが良いだろうなと内心思います。 前傾姿勢になるのは、腹筋や背筋に力がはいるのであまり好ましくないでしょう。 筋肉に力がはいるということは筋肉に血液を送り出すために血圧が少し上がり気味になります。 背もたれにきちんと背中を預けて、足は折りたたまずに、少し前に伸ばすような感じ、お行儀が悪いですが、電車の中であまり褒められない姿勢(足を通路に投げ出すのはエチケット違反ですね)、車の運転の時のような姿勢といったほうが良いでしょうか? で測定するのが良いでしょう。
右で測るべきたとおっしゃる先生の根拠は、右の腕につながっている動脈血管(右腕頭動脈)のほうが、心臓に近い大動脈から出ているからという理由や、左の腕に繋がる動脈(左腕動脈)と右の腕に繋がる動脈の間に、先天的にくびれがある(大動脈縮窄症)方がまれにおられて、くびれより心臓側で測定しないと正確な血圧が測定できないという理由を挙げられます。 しかし圧力が変化してしまうほどのくびれがある方は稀で、そういった方は小児期にすでに診断と治療されている方がほとんどです、私のクリニックにいらっしゃるほどの年齢になって初めてわかる方はかなり例外的です。 むしろ動脈硬化や動脈炎などで、右腕頭動脈や左腕動脈に狭窄ができることによって起こる血圧の左右差のほうが無視できない頻度であることが予測できます。なので左右どちらが正しい血圧かを重要視するよりも、まず左右差があるのかどうか、そしてその次にもしも左右に差があまりないのならば、一番リラックスできる体勢で測定できる血圧を測るほうが良いということになります。
左右差があるかどうかを確認するには、同時に2台の血圧計を左右の腕に巻き付けて測定するのがよいですが、それは少々やり過ぎでしょう。 簡単に測るのは、まず左で測定し、次に右で測定する。 血圧が20mmHg以上変化あるようならもう一度、左を測定し、次に右を測定してみて、同じような傾向があるか確認してみてください。 測定回数にしたがって常に下がってくるようなら、それは測定前の動作の余韻が解消されているだけで、前のほうの高い血圧はあまり意味がありませんが、何度繰り返しても常に、右が左よりも20mmHg以上高いようなら、やはり主治医の先生にご相談頂いたほうが良いでしょう。 ご家庭での皆さんの血圧測定がきっかけで、狭窄が見つかったりすることのほうが多いのです。
なので私の意見は、「血圧は時々腕を変えて測定してみてください。 いつもきまってどちらかの腕の血圧が20以上高いようなら、主治医に相談ください。」ですね。

心室細動

寒い日が増えておりますね。 インフルエンザの患者さんもだいぶ増えておられるようです。 しかし、今年度のインフルエンザのワクチンですが、供給の問題もあり本日(2016/2/16)を持ちまして終了となります。 申し訳ありません。 

あけましておめでとうございます

心拍数は、通常毎分50回から160回程度の収縮を行っています。 猛烈な運動をやったりすると180回近い収縮を伴うことがありますが、そういった運動を長時間続けることはできません。 心拍数が多くなるにつれて血液の流れも多くなり、運動で酸素がたくさん必要な体には有利です。 一心拍で打ち出すことができる血液の量はだいたい決まっているので、血液の流れは心拍数との掛け算になるからです。 しかし、毎分180回を超えると心臓に戻ってくる血液の量が追いつかず(大人の場合)、心臓が空打ちのような状態になり、さらに増えると心臓自身に酸素が行き渡らなくなり、筋肉が窒息し(虚血)心臓の動きは悪くなります。 その結果心拍数が増えても、血液の流れが増えずに頭打ちになります。 餅つきを想像してもらうと良いかもしれません。 餅つきのスピードが早くなると、餅がつき上がるのが早くなりますが、あまりにももちつきのスピードを上げてしまうと、間の手を入れることが難しくなり餅がうまくつけなくなりますね。 そういった限界の心拍のスピードがあるのです。 ただ正常のリズムを作っているペースメーカー細胞は通常毎分200回以上の心拍を打ち出すことはありませんので安心してください。
しかし心室細動あるいは多形性心室頻拍と呼ばれる不整脈は一分間に250回以上の心臓の収縮を起こします。あまりにも早過ぎる心臓の収縮のため、血圧が下がり、脳貧血を起こして意識を失うことがあります。 血圧が下がると酸素が十分行き渡らない心臓の筋肉の中で不整脈が安定化してもっともっと心拍数が増えたり、幾つもの収縮が同時に起こるようになり、不整脈から回復しにくくなります。 その状態が1〜2分以内に回復できなければ、そのまま死んでしまうことが多いです。

心室細動のきっかけは、心臓のしゃっくり(心室性期外収縮)のような収縮から始まることが多いです。 なのでそういった期外収縮が多い方は、細動を引き起こす可能性が多いと想像されています。 ならばそういった心室性期外収縮を止める薬が心室細動による突然死を予防するのではないかと期待された時期があったのですが、現実には薬はあまり良い効果が期待できませんでした。 なので、心室細動が起こりやすく、長時間それが持続しそうな患者さんには、植込み型除細動器という機械を植えこむことで、心臓突然死を予防することになります。
心室細動は長く続けば致命的な不整脈ですが、心臓の構造に異常がなければ、30秒以内に自然に回復してくることが多いです。 この場合の構造の異常とは、心臓の収縮力が低下するような心筋梗塞や心臓弁膜症であったり、心臓の筋肉の病気である肥大型心筋症や拡張型心筋症、不整脈源性右室異型性症候群・心臓サルコイドーシス・心臓アミロイドーシスなどが有名です。 こういった病気は心電図・心臓の超音波検査や採血などである程度判別することができますし、さらに心臓MRI検査や心筋シンチグラムやPET検査が必要な場合もあります。
もう少し具体的に言うと、安静時の心電図に異常がない患者さんですと、心臓の収縮力に異常があったり構造に異常があったりしなければ、基本的には命に関わるような危険な不整脈ではないと言われています。 ただし血縁者に若くして心臓で突然亡くなられた患者さんがおられたり、不整脈で失神(意識がなくなった)した経験があったりするようならば、無症状でももう少し念入りに経過を見たり、入院して検査をしたりしたほうが良い場合があります。 おわかりかもしれませんが、今まで失神したことがなくても、最初の心室細動で亡くなられる患者さんもいるはずで、そういった患者さんは事前に察知することはできないというジレンマを我々不整脈医は常に抱えていることを告白します。 ただその頻度はとてもとても少ないということと、あとは不整脈医の嗅覚に頼る部分で、なかなかそれを体系的に説明するのは難しいところでもあります。 申し訳ないです、そこは経験と勘というとても科学的ではない部分なのです。 不安があるようでしたら、不整脈の専門医にご相談ください。