三好クリニック 青山・表参道

内科・循環器・高血圧・不整脈

合併症の予防


糖尿病の最も厄介な点は、血糖が高くても、それだけでは患者様に何ら不自由が無いことが挙げられます。特に食事療法は毎日の患者様の努力が必要になります。 何か不自由が有れば、患者さんの意識もそれを治療しようと言う意欲になって現れます。 ですが、無症状であっても、確実に合併症は進行してゆき、それが症状として現れた際には、既に手遅れになっている。 それが糖尿病の怖い所です。 症状が完全に現れる前に、定期的に検査を行い、合併症の進行具合を確認し、予想よりも早く進行しているようならば、厳格な血糖コントロールが必要となります。

1、心筋梗塞

 心臓の筋肉を栄養している血管、冠動脈の動脈硬化によって冠動脈が閉塞することで生じる。 死亡率3割、発症1時間以内に1割の方が病院にたどり着く前に死亡する、非常に危険な病気です。 糖尿病患者では痛みを感じる神経も麻痺してしまうため、本来ならば有るはずの痛みをという心臓の危険信号を感じること無く、心筋梗塞を発症してしまう場合もあります。 そのため糖尿病患者様では定期的な心電図検査が必須です。 心電図変化で疑わしい変化が有れば、冠動脈造影検査を行い、病変の程度によっては、血管内手術(経皮的冠動脈形成術)や開胸手術(バイパス手術)が必要になることも有ります。

2、脳梗塞

 高血圧・心房細動などの不整脈がある患者では特に脳梗塞の危険性があがります。 そのような患者様では積極的に血液をさらさらにする薬物(ワーファリン・ダビガトラン等)の処方が必要になります。 高血圧の治療も重要です。 体重減少や塩分制限だけで、血圧が改善しないようならば、内服薬による血圧調整が必要となります。 小さな脳梗塞は場所によっては全く症状が出ないことも有ります。 定期的に脳のCT検査はしておいた方が良いでしょう。

3、手足の動脈硬化による、壊疽

 糖尿病の患者では、動脈硬化によって血管が閉塞し、手足に十分な血液が回らないことが有ります。 また糖尿病患者では痛みの神経も障害を受けるために、何かに足をぶつけて小さな怪我が有っても、それに気づかないこともあり、それらの怪我が化膿して、炎症を生じて、足がパンパンに腫れる(蜂窩織炎)となりやすかったり、皮膚へ十分な血液が回らずに、潰瘍ができて、皮下組織が露出したり、それらがひどくなると、組織自体が形を維持できなくなり、生きたまま手先から腐り始めることが有ります(壊疽)。 放置すれば死に至ることも有ります。 特にこのような病態の際には喫煙(タバコ)は禁物です。 血管の閉塞を加速させ、手足を切断しなくてはならないことも有ります。 定期的に、手足のエコー、ドップラー検査、ABR検査(下肢と上肢の血圧測定検査)を受けることをお勧めします。

4、糖尿病性網膜症

 目が悪くなれば眼鏡やコンタクトレンズをすれば直るのではないかと簡単に考えておられる方も多いかもしれません。 糖尿病で生じる目の病気は一つは白内障、これはカメラで言うレンズの部分が濁ってしまっておこる現象です。 一旦濁ってしまったら、眼鏡などで補正しても、見えるようにはなりません。 人工レンズを入れる手術が必要となります。 もう一つ最も怖いのは、カメラのフイルムの部分にあたる、網膜に出血が生じたり、炎症が生じてはがれ落ちたりすることが有ります。 そうなってしまうと、もう二度と視力が戻ることは有りません(失明)。 レンズを交換してもですだめなのです。 特にコントロールの悪い糖尿病ではこの網膜の病変が生じやすく、失明してしまうことが多いです。 また急激な血糖コントロールで、血糖値があまりにも急激に低下すると、皮肉にも網膜症を進行させてしまうことが知られており、HB1Acで言えば減少スピードを一ヶ月に1程度におさえておく必要があると言われています。 糖尿病患者さんでは、軽症であれば私どもで定期的に眼底鏡にて検査させていただきます。網膜病変が重症になってくれば、大学病院の眼科をご紹介さし上げます。

5、神経障害

 糖尿病患者は神経に障害が生じることが多いです。 そのために神経の再生を促すようなビタミンB12(メチコバール)などを投与することも有ります。糖尿病の神経障害は、神経線維の細い自律神経や感覚神経、特に深部感覚といって、関節の曲がり具合などを感知する神経が障害を受けます。 血糖が高い状態が続くと、血圧の調整がうまく行かなくなり、起立性低血圧や、失神、インポテンツなどを生じることが有ります。 また内蔵の痛みを感じる神経が障害を受けることで、内蔵の危険信号を感じることができなくなり、内蔵の異常に気づくのが遅れるなどの不利益も有ります。

6、腎障害

 血糖が高い状態が続くと、腎臓の濾過機能が崩れ、血液中のタンパク質が尿の中に漏れだしてきます。 そうやって漏れだした蛋白は、腎臓の濾過装置自体を破壊し始め、最終的には腎硬化症となり、人工透析導入が必要となることが知られています。 特に微量な尿タンパクが出始めた時期から、血糖値のコントロールを行ったとしても、腎機能の荒廃を食い止めることは出来ないと言われています。 腎臓の濾過能力が低下し始めたら、血圧の厳格なコントロールが唯一、腎機能の悪化を食い止める方法になります。 中でもアンギオテンシン受容体阻害薬の内服が良いと言われています。 腎機能の荒廃を食い止めるためにも、厳格な血糖値のコントロールと、定期的な尿検査をお勧めします。