抗凝固療法


血栓塞栓症の治療法として、血糊の元となる蛋白質を阻害して、血をさらさらにする治療を行います。 従来ワーファリンによるビタミンK阻害が治療の主流でしたが、最近ではプラザキサに代表されるような、凝固蛋白阻止薬が使用できるようになりつつ有ります

ワーファリンとプラザキサの比較
ワーファリンプラザキサ
食事制限あります。(納豆・クロレラ・モロヘイヤなど)ありません
採血定期的な採血が必要です。
検査量(54円)診断料(375円)かかります
外来のたびの採血は不要ですが、
副作用確認のために3ヶ月に
一度程度の採血が必要です
薬剤の自己負担【3mgの服用の場合】
薬価約30円
30円x30日x3割=約270円
【300mgの服用の場合】
薬価約530円
530円x30日x3割=約4770円
適応外肝不全患者人工弁の入っている方
肺塞栓症
僧帽弁狭窄症
腎機能の悪い患者


ワーファリンの特徴


血糊を作る蛋白は肝臓で作られます。 その蛋白の製造にはVitamin-Kが必要です。 Vitamin-Kは、納豆に非常に多く含まれており、その他にクロレラ・モロヘイヤ・ブロッコリーなどにある程度含まれています。 
ワーファリンはこの食事に含まれるVitamin-Kを帳消しにする薬剤です。 その効果が強すぎれば出血しやすくなり、弱すぎると血栓を十分予防できません。 そのため定期的に採血しPT-INR値(Protorombin time international normalized ratio 健常人で値は1になります)をチェックして投薬量を調整します。 若年者では2.0~3.0、高齢者では1.5~2.5の間になるように調整します。 納豆等の食材は、薬剤量の調整が難しくなるため中止してもらいます。
Vitamin-Kはあらゆる食材に微量に含まれているため、食材の変化や量が変化すると、それにあわせてワーファリン量を調整する必要があります。 またほかの薬剤との相互作用によって急激にワーファリンを大量に飲んだのと同じ状態になることもあり注意が必要です。 しかし、上記のプラザキサ適応外に当たるケースではワーファリンを使用する必要があります。内服を一日忘れても翌日も少し効いているなどの利点もあり、また薬価が安価であることもこの薬剤の利点です。

プラザキサの特徴


肝臓で作られる血糊を作る蛋白を直接阻害する薬剤です。そのため食事に影響を受けません。 ワーファリンでは食事による変動が大きいため、出血による合併症を恐れ、ついつい弱めにコントロールすることが多いですが、プラザキサはそれが無いため、患者の年齢や全身状態にあわせて、一定の量を処方してゆきます。 ワーファリンと比べて、一日2回内服が必要な点が面倒だと思われる方もおられますが、脳梗塞の発症をワーファリンと同程度押さえ、その上で、脳出血などの重篤な合併症を減らすことができたと報告されています。 しかし、器質的心疾患の無い心房細動患者での検証しか行われておらず、人工弁や弁膜症等の複雑な心臓病変を持った患者さんや、腎機能の悪い患者様では、今まで通りワーファリンを用います。

抗血小板薬との併用


抗血小板薬と抗凝固療法の併用は頭蓋内出血のリスクを極端にあげます。そのため軽症と思われる症例では一般的に併用することはまれです。しかし、冠動脈疾患でステントによる治療を行った症例やバイパス手術を受けた症例などで、心房細動による脳梗塞のリスクが高いと判断された症例では、両者を意識的に併用することが有ります。 

手術などで一時中止する場合


内視鏡検査で組織を一部取ってくる生検検査を行う場合や、抜歯、あるいは、白内障の手術や、その他の大手術を行う場合、抗凝固療法を一時的に中止する必要があることが有ります。 詳細は
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三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜