心房細動とその治療


心房細動とは?


心房細動は不整脈の一種です。心房筋の老化現象の一つと考えられています。心機能が正常な患者様にとっては決して命取りになる事の無い不整脈です。

心臓の正常のリズム


心臓には、左心室・右心室・左心房・右心房の4つの部屋があります。 それぞれの部屋は筋肉で出来ていて、電気の信号を使って規則正しく収縮しています。 

正常では、右心房の上側(上大静脈の付け根)に洞結節と呼ばれる器官が存在し、その部分で一分間に60-70回といった規則正しい心拍のリズムを作っています。 心室と心房は完全に電気的に遮断されていて、唯一、房室結節と呼ばれる一本の細い幹線道路のような部分でつながっています。 洞結節で作られたリズムは、一旦、心房を収縮させた後に、房室結節を介して心室に伝わり、心室が収縮するという仕組みが有ります。

心房細動のリズム


一方このような洞結節のリズムとは全く無関係に、一分間に400回から600回の頻度で、心房が痙攣する事が有ります。 これを心房細動といいます。 

心房細動の時には、あまりにも電気信号が早すぎて、心房筋はほとんど収縮しません。 また心房と心室の交通である房室結節で、適度に電気信号が間引かれ、一分間に70回から150回程の電気信号が心室に伝わる様になります。 この際、全く無秩序(ランダム)に電気信号が間引かれるため、心室の収縮のタイミングも無秩序となり、脈を取ると不整(バラバラ)となります。

心房細動で致命的になる事はありません


心臓の構造が正常な患者様では、心房細動によって心臓の機能が損なわれて致命的となる事はありません。 人は安静時には心臓のパワーの10分の1程度しか使っていません。 つまり10倍も余裕が有ります。 一方心房の心臓全体の機能に対する機能はほぼ20-30%であるといわれております。たとえ心房の収縮なくとも、安静時の7倍も心機能に余裕がある事になります。
 

症状が強い・薬剤が効かない


心房細動による脈の不整で、全く自覚症状の無い方も多いです。しかし、日常生活もままならなくなる程、症状の強い方がおられます。 そういった患者さんでは、まず薬剤で治療する事が一般的です。 しかし経過を追っているうちに薬剤の効果が薄れてきたり、いろいろな薬剤を試してみても症状が落ち着かなかったり、副作用のために薬剤を中止しなくてはならないような場合があります。 この様な場合、後でお話しする心房細動のカテーテルアブレーションの適応となります。


脳梗塞の危険性


心房細動の治療で最も重大な問題は、心房細動が脳梗塞を引き起こす原因となる事です。血液は動いている間は固まりませんが、心房細動で痙攣し、心房内の血液の流れが滞ると、血液の塊が出来やすくなります。 このような血液塊を血栓と呼びます。心房細動が48時間以上持続したり、高血圧・糖尿病・高齢者では血栓が出来やすくなる事が知られています。 左心房内で出来た血栓は、心房の壁から離れて、血液の流れにのって全身にばらまかれる事が有ります。特に脳へ行く血管に流れ込んでしまった場合は重篤で、脳の血管に詰まり、脳梗塞を引き起こします。 そのため血栓症のリスクの高い心房細動患者様では、血液をさらさらにするための治療薬(ワーファリン等・ダビガトラン等)の治療薬内服が必要となります。
ただし心房細動のカテーテルアブレーションが脳梗塞の予防になるかどうか、現時点ではあまり明確なデーターは有りません。




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