心拍のゆらめき

人の心拍数はいつも一定ではありません。 安静にしていると一分間に60回ぐらい心臓は動いていますが、運動したり怖い物を見たり体温が上がったりすると心拍数は上昇します。 特に緊張などしていなくても、喋っていたりするだけで心拍は早まります。 心臓が口から飛び出そうなんて表現がありますが、運動したり全速力で走ったり、重い物をもって歩いたり走ったりすると、負荷に相応の心拍数の上昇があります。 すごく激しい運動をすると一分間に 180回とか200回近い心臓の鼓動があることもあります。 もっと増やせばもっと運動能力が上がるんじゃないかと思われるかもしれませんが、心拍数が早すぎると、有効な収縮にならないため、あまり運動能力が上がることはありません。

こういった心臓の心拍数の変化は皆さん日常生活で良く自覚されていると思います。 実はそれ以外にも皆さんの心拍は周期的に変化しています。心拍の揺らぎ、揺らめきと表現するほうが文学的ですかね。 人の心拍の揺らめきで最も目立つのは呼吸のサイクルにより心拍の揺らぎです。 人は息を吸ったときに心拍数が遅くなり、吐いたときに心拍数が早くなります(正確にはやや異なるのですが)。 ですので心電図を見慣れてくると、あまりに一定の心拍リズムだと不自然に感じたりします。 ペースメーカーなどの機械による調律ではこういった揺らぎが無く、心電図の心拍の揺らぎからそういった人工的な心拍かどうかを診断する事もあります。

こういった心拍の揺らぎが強い方は、若い人、胸板の薄い人、肥満気味で内臓脂肪の多い人によく見られるように思います。 呼吸を止めてお腹に力を入れたり(いきむと言います)すると息を止めていると心拍数が早くなり、息を再開すると急激に心拍数が落ちたりします。 入浴で浴槽に入るときや、急に体を横に倒して寝たりしたときにも、この反応があります。 この心拍の変化を、ほとんどの方は自覚されないのですが、前述の様な患者さんの中にはとても敏感にこの脈拍の変化を自覚される方がおられます。 何か命に関わる様な不整脈なのではないか、あるいは心臓の大きな異常なのではないかと不安になる方が時々おられて、その不安のために気分が興奮し、心拍数が更にあがって、更に不安になり、更に心拍数があがって・・・。 と繰り返し、どうにも苦しくなって救急病院に駆け込まれたりされる患者さんもいらっしゃいます。 呼吸の周期で心拍が揺れることを自覚されて、心拍が揺れないように呼吸を止めてしまったりする人もいらっしゃいます。 そういった患者さんの中には、本当に不整脈がある患者さんもいらっしゃるでしょうけれど、ほとんどの場合こういった脈の乱れは、まず一度気持ちを落ち着けて、別の少し楽しい事を考えたりすると自然に良くなってきたりする事が多いです。 この心拍の揺らぎは元々心臓が持っている、自動的に循環する血液の量を調整する機能の一つなのです。 
 
三好クリニック(内科)
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