「動悸があるんですが・・・」「具体的にはどんな感じですか?」

「動悸」って言葉、みなさんも聞いたことがあるのでは無いでしょうかね。あまり日常で使われる言葉ではないですよね。もともとは、平常時には感じない心臓の脈打つ感じを感じるという意味なのですが、その動悸のパターンにもいろいろなものがあります。 このクリニックは一応、不整脈を専門にしているクリニックなので、この動悸という症状で来院される方が多いです。

日常に見られる正常な動悸


全力疾走した後に、ゴールの後ハーハーしている時に、心臓が「どんどんどんどん」と強く早く動いているのを感じたり、胸の壁を内側から打ち鳴らすみたいに感じることってありますよね。 後は急に驚いたり、びっくりした時の後にしばらく、心拍数が早くなり、心臓が動いているのをリアルに感じる。 こういう現象は人間の通常の反応でみなさん特に疑問を感じることは無いでしょうね。 この状態は動悸を感じる状態です。 こういったことがあるからと言って、医者にかかろうとは思わないですよね。  こういったことを調整しているのは、アドレナリンというホルモンです。 アドレナリンが分泌されると、心拍数が上がり、血圧が上がり、心臓が打ち出す血液の量は平常時の5倍ぐらいまで上がります。 アドレナリンの効果についてはまた別の機会に紹介するとして、こういった心臓の活動を動悸として自覚するわけです。

動悸のパターン1「脈がドクンと急に一拍大きく感じる」「時々心拍が止まることがある」


みなさんの心拍数は規則正しく一定のリズムで刻まれています。 しかし時々、そのリズムが途切れる場合があります。 一度途切れた後、また元のリズムに戻る。 こういう脈の不整を「結滞」「期外収縮」と呼びます。 平易な言葉で言うと「心臓のしゃっくり」のようなものだと考えてもらえると良いでしょう。 しゃっくりは横隔膜の痙攣です。 普通に呼吸をしていてい、呼吸のリズムと全く関係なく、突然横隔膜が収縮するので、違和感を感じるわけです。  一般的なしゃっくりは、一つの呼吸サイクルに対して1回以上起こることはあまりありませんね。 心臓についても同様で、一回の呼吸サイクルに関して1回だけ別のタイミングで収縮が起こる。 これを期外収縮と呼びます。 こういった不整脈の場合、基本的には患者さんがその不愉快な症状を我慢できるならばあまり危険な不整脈ではありません。 しかしその不整脈が心臓の他の病気の警鐘であったりすることがあります。 例えば、心臓の筋肉の病気、心筋梗塞などに付随する症状などです。 ですので、やはり一度は医者に判断してもらったほうが良いことは確かですが、大多数の方は全く問題がない場合が多いです。 患者さんによっては、脈が飛ぶという感じより、心臓の動きが急に変化するために心臓が横にある肺に強くぶち当り、胸膜という肺を取り囲んでいる膜を刺激するため、「咳は出ないんだけど、咳が出るような感じ」とおっしゃられる方もおられます。

動悸のパターン2「心拍が規則正しく早くなります」


心拍が、思い当たる理由がなく早くなります。 そしてそのリズムは規則正しい。 そういった動悸のパターンがあります。  そういった脈が数秒で収まることもあれば、1−2時間続いたり、長い人だと半年ぐらい続いたりすることもあります。 こういった動悸の中にも正常な心拍がただ早くなっているだけという方もいらっしゃいます。 むしろ外来で拝見しているとそちらの方のほうが多いでしょうかね・・。 その区別はやはり動悸の症状がある時に心電図をとってみないと最終的な診断ができません。 しかし、1) 毎分150回以上の心拍がある患者さん 2) 心拍が突然早くなり、 自分でもわかるぐらいに突然元に戻る患者さん 3) 動悸がした後に目の前がかすんだり、意識が遠のくような感じがある 場合は何らかの不整脈があることが多いでしょう。 しかし頻度が少ないとなかなか検査することが難しいです。 今最も多く用いられる心電図検査は、24時間連続で記録するホルター心電図といった検査か、あるいはご自身で購入いただく、携帯型心電計(例えばOMRON 携帯型心電計 HG-801などでしょうかね)、などになります。 いずれも週に一回しかおこらないとか、あるいは起こっても数秒で止まってしまうようなものだと、なかなか偶然にその時に心電図と当てていないと記録するのは難しいです。 あまりに症状が強かったり、あるいは、症状から不整脈を強く疑わせる点があったり、患者さんが完全に不整脈を根絶することを希望されている場合、体に埋め込むような形の心電計を入れてずっとモニターしたり(今だと車のドライブレコーダーのようなものでしょうか? 一世代まえのUSBメモリースティックのようなものを皮膚の下に埋め込みます)、あるいは入院してもらって心臓の中に電極を入れた状態で、電気刺激を行って不整脈を誘発したりすることで検査を行うことがあります(臨床電気生理学的検査)。

動悸のパターン3「心拍が全く一拍ごとがバラバラで」


心拍のリズムが一拍ずつ全く間隔が異なる状態です。 この場合、この不整脈のほとんどは心房細動という不整脈であることがわかります。 もちろん、このバラバラという表現がなかなか患者さんには理解してもらえないことがあって、難しいのですが・・・。 全部の心拍が全く規則性の無い、無秩序(ランダム)なタイミングで感じる。 というのが適切ですかね。 もちろん心電図での診断はその治療をどうやって組み立てるかという点でも重要になります。  まずは循環器内科に受診されて、心電図をとることをお勧めします。 多くの場合、心房細動は高齢者や高血圧の患者さんの病気です。 ですので、若いうちにこの不整脈が出られる方は、遺伝的な素因がある珍しいケースか、それとも心房細動を起こすような何らかの心臓の構造上の問題点があったり、ホルモンやミネラルバランスの異常が大本の原因だったりすることがあります。 心房細動自体は命に関わるような危険な不整脈では無い場合が多いですが、心房細動に関連した脳梗塞(血栓塞栓症)や、心臓の構造上の異常の発見につながったり、あるいはホルモン異常が見つかってその治療が必要だったりする場合があります。 なので幾つかの検査をさせていただくことになります。

動悸のパターン4「心拍がゆっくりで、一拍一拍が大きい」


基本的にこの動悸のパターンは不整脈でないことが多いです。
では何かというと、人は強い痛みや内臓の圧迫や引き攣れなどを起こすと、副交感神経(迷走神経)という神経が働いて、心拍数を落とすホルモン、アセチルコリンというホルモンが分泌されて心拍数が急激に低下することがあります。 例えば大きく息を吸った瞬間とか、思いっきりトイレで気張ったりした時とか、急にベットにバタンと横になった直後とか、特に体が地面に固定されている寝転がっている時が多いですが、そういった時に心拍が遅くなり、代わりに一回の心臓が送り出す血液の量が多くなるため、一拍一拍の心拍が大きく強く、そしてゆっくりになることがあります。 これは、内臓反射(迷走神経反射)によって起こる人体の正常の反応の一部ですのであまり心配されることはありません。
ただ、時々先程のパターン1、期外収縮が一つの正常な心拍に対して、規則正しく一回ずつ起こる方がおられたり(2段脈と言いますが)、心拍のリズムを作っている部分やそのリズムを心臓全体に伝える回路がうまく動作しなくなる病気があることがあります。 ただそのような場合、その異常はいつでも見られることが多いため、来院されて心電図をとってみるとわかることが多いのですが、とても珍しいですが一過性にそういった不整脈が見られ、通常は全く正常で、心電図ととってもわからない場合もあります。 そういった場合でも、実はその症状の直後に採血するとある程度のことが予想できる場合があります。

動悸といってもいろいろなパターンがあるのですね。 なので不整脈のドクターを受診すると、まずは根掘り葉堀り聞かれると思いますが、ご協力お願いいたします。 あと、その時動悸の症状がなくても、心電図をつけた瞬間に偶然その時に不整脈が出たりすることもありますので、ご面倒ですが毎回心電図とらせてください。 不整脈の無い時に心電図をとっても全く意味は無いのですが、患者さんに動悸がないことが不整脈が無いこととも限りませんので・・・。
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜