ハートビート1

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あっという間に2月も終わりもう3月ですね。 夜が明けるのも大分早くなってきました。

今回は皆さんの心拍について何回かに分けてお話してみたいと思います。 

皆さんの心拍のリズムってどうやって決まっているか知ってますか? 私は生物物理学(生理学と言いますね)の研究や学生を教える仕事をしていたので、物理的なメカニズムについてもお話する事も出来るのですが、今回はできるだけそういう堅苦しいお話は無しで行ってみようと思います。 あと医学の専門家ではない患者さんに理解していただけるように、わざと正確では無い表現で大筋を理解しやすいように書いてみたいです。

人間の心拍数は興奮したり集中したりすると早くなり、リラックスすると遅くなります。 これはみなさん実感されているのではないでしょうかね。 心臓の収縮一回で動く血液の量は心臓の大きさで決まっていますので、回数が増えると動く血液の早さが早くなり、それに合わせて脳や筋肉に回る酸素や栄養素の量も増えます。 そうやって心拍数を調整して必要な物資を必要な時だけに送る様にしています。 つまり心拍数はその時の活動量に比例して上がったり下がったりするので、どのぐらいの心拍数が正常なのかなかなか言い表すことができません。 ですので身体活動をしていないときの安静時の心拍数をお医者はざっくりと心拍数と呼ぶことが多いです。 

時々患者さんとお話していると心拍数は毎分60回でないといけないんじゃないかと信じておられる方もおられるようですが、正常の安静時の心拍数は別に60回である必要はないです。 一人一人それぞれに必要な心拍数というのがあって、安静時の心拍数が40台の人もいれば90ぐらいの方もいらっしゃいます。 特にそれで心臓や血管に負担がかかっていなければそのぐらいの心拍数でも特に大きな問題はありません。 しかし30台前半であったり、100を越えているような場合は何らかの理由がある事が多いです。

次回につづく

高血圧治療ガイドラインの変更

先日25日に発売になった、高血圧治療ガイドライン2019を早速購入してみました。 これからの治療に生かさないと行けませんが、患者さんが納得してくださるかどうかそこだけが心配です。 リスク評価や高血圧の格付けが細かくなっていて、今までのように簡単に説明できるものでは無くなりつつあります。 あまり細かな例外点を挙げていくと混乱するので、大きな変更点をだけを挙げてみます。

今回大きく変わったのは


1,血圧は自動血圧計が推奨され、自宅での血圧が重要

皆さん血圧計買ってください。 アマゾンとかで3000円ぐらいで売ってますので。 私は続けられるように手首に巻くやつを買うようにおすすめしてます。 二の腕に巻くタイプは正確ですが、大きすぎてタンスの奥にしまわれてしまい、測定しなくなることがおおいですので。 また混乱を避けるため以下は自宅血圧の値だけを記載します。

2,最高血圧115以上 最低血圧75以上は高血圧です

今までは135/85以下を正常血圧と称していましたが、やはりリスクが高いので、とても正常とは言えないと言う判断なのでしょう。

3,降圧目標は、最高血圧125以下、最低血圧75以下です

お薬大量に飲んでもここまできちんと下げられるかどうか解らない患者さんも私の外来には多いです。 それがとても心配です。 この降圧目標にはいくつかの例外がありますが、詳細は個別の患者さんにお伝えしますが、もっともポピュラーな物は、75歳以上の健康な高齢者です。 私の外来に通院しておられる75才以上の患者さんは、ほとんど何らかの病気を持っておられますので、該当されないでしょう。 

これからしばらくの間外来での説明などで混乱するかと思いますが、2年後3年後にはこの治療が普通の治療になっていると思います。 自分の短い臨床経験でも確かに、130-140ぎりぎりでやっている患者さんは、いろいろな病気を起こされたり、老け込んでいくスピードが早かったり、呆けが進んだり、何よりどんどん血圧が高くなっていってしまって、どんどん薬の量が増えていくことが多い気がします。 やはり125以下、75以下にするというのは長い年月患者さんの経過を見る上で、一生分の薬代を考えると逆に安上がりな気がします。 

感覚・知覚の仕組み

そろそろ梅雨ですね。 梅雨に入ると花粉症は一段落しますが、やはりじめじめ蒸し暑いひが続きますね。
でもこういう日が真夏の8月にあったりすると、「なんだか今日は涼しくて過ごしやすいね」と思う事になるでしょうね。 人間の感覚というのは常に前の状態との比較で周囲の状況を判断しているのです。
音楽などをやっている人たちは、絶対音感と、相対音感という言葉を知っているかと思います。 やっていなくても言葉だけは聞いたことあるんじゃ無いでしょうか? 絶対音感とは、どんな状況でもその音の高さを認識することができる能力で、ドとかレとか、たとえばガラスのコップをチーンとならしたときに、「これはド♩」と聞こえてしまう能力の事です。 10歳未満に相当鍛えないと得られない能力らしく、もちろん私にはありません。 私は相対音感、前の音と比較してその差から今の音がなんの音かを感じる事ができます。
人間の感覚の多くはこの相対的な知覚がほとんどです。 なので冬場の2月に今日は気温が15度暖かいねーって思っても、夏の8月に今日は気温が15度、イヤーひんやりして寒いぐらい・・。 って思う訳です。 痛みや症状も同じで、その状態になれてしまうと不自由無くなってしまう症状も、一度薬で押さえ込んでしまうと、今度やめたときに前と同じ状態のはずなのに以前より不整脈の症状が強く感じてしまったりする方もいらっしゃいます。 また一度気になってしまうと、それまで無視していた痛みや症状を感じる様になったりもしてしまいます。 耳鳴りや目眩などもそういった傾向があります。 特に興奮やストレス・不安などはそういった感覚を鋭敏にする効果があり、特に実態が無くとも、胸の前が痛い気がしたり、喉の所に何か常につっかえているような気がするという感覚が離れなくなったり・・。 そういう場合すこし気分転換するとすっきり良くなったりすることもあります。 皆さんの感覚は、病気の診断にとても重要な要素ではありますが、もしもそれがあまり問題無いものだと専門の医者が判断すれば、その症状にあまりこだわらない方が良い場合もあります。 またそういうこだわらないようにするためのお薬などもありますので、そういったご要望のさいにはご相談ください。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版

最近、テレビなどでnon HDLというお話聞きませんか? 恥ずかしながら私全くテレビ見ないので、よく知らなかったのですが、何名かの患者さんから伺って、気になって少し最近の現状を調べてみました。
こういった話題は、本来もう少しきちんと医者側へも、内科学会や循環器学会で話しが有っても良いものですが、私の勉強不足なのか、今年の循環器学会でもほとんどそういった話題が無く、患者さんの治療に適応して本当に大丈夫なのか、まだ私自身迷っていますが、今年中には患者さんへの治療に順次反映させるべきだろうなと思っています。 (学会とかで、自分自身で一度話を聞いてからにしようと思っていたのですが、なぜかあまりそういう機会が無いみたいで)

LDL
コレステロールは悪玉コレステロールと言われています。 血液中に流れるコレステロールは、そのほかに善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールと、中性脂肪をたくさん含んだ、脂肪の微粒子(カイロミクロン)に含まれるコレステロールがあり。 中性脂肪の質量のうち5分の1のコレステロールが存在すると考えられています。 non HDLとは、この悪玉コレステロールと、中性脂肪と関連したコレステロールの総量なのですね。 
ただこちらは名前としては目新しいですが、いままでも日常診療で医者は普通に計算しながらやっていた部分でした。 しかし2012年度のガイドラインと大きく異なる部分があります。 前半はnon HDLとはなにか、 後半には新しいガイドラインが今までとどう違うかを説明してみたいと思います。

なぜnon HDLなのか?



採血データーと直前の食事


患者さんの採血を食事を抜いて検査をするべきか、それとも食事を取った状態で普通に採血するべきか、医者が何を観察したいかによって異なります。循環器や腎臓を専門にする先生方はどちらかというと、普通に食事してもらった状態で採血した方が、腎機能の採血データや、心機能の採血データが安定して正確に評価できるようになります。 30年前は、糖尿病についても、空腹時血糖値で評価していたので、空腹で来てくださいとお願いしていたと思いますが、最近は一ヶ月の平均血糖値を示すHbA1cの値で判断することが多いです。 患者さんによっては診察の1-2日前だけ、プチダイエットをされてくるという患者さんもおられたので、どちらかというと、随時空腹時血糖値よりもHbA1cのほうがその患者さん本来の1ヶ月間の食生活の状況が評価できるわけです。 悪玉コレステロール(LDLコレステロール)値もあまり直前の食事に影響を受けにくい値です。 
その一方で糖尿病や脂質異常症(コレステロール)の治療をドクターは、採血時に空腹できてほしいと言うでしょう。 それは、血糖値と中性脂肪の値が直前の食事に大きく影響を受けてしまい、評価が難しくなるからなのです。 循環器内科のドクターの多くは、中性脂肪自体をそれほど重要視していないのですが、高すぎる場合、干渉してうまく測定できず、悪玉コレステロールの測定が見かけ上低く測定されてしまうという問題点があるために、当院でも中性脂肪は検査の妥当性を知るために採血することにしています。 
non HDL
コレステロールとはそういった中性脂肪が高すぎて、悪玉コレステロールの測定値が低く評価されてしまう患者さんのリスクもきちんと評価するためにあります。 動脈硬化を引き起こす新たな分子が見つかった訳ではありません。 

新しいガイドラインで何が違うのか?


ガイドライン変更への戸惑い


我々診療を実践している医師にとって、このガイドラインの変化というのは、正直苦痛でもあります。 なぜなら、今まで、「このぐらいだったら大丈夫ですよ」と患者さんにお伝えしていたのに、ある日突然、「実は新しいガイドラインだとちゃんと薬飲んだ方が良いみたいだったんですよ」と患者さんにお伝えしなくてはならなくなるわけで、それは医者側はじゃあ今まではなんだったんだということと、あと5年したらまた変わるかもしれないガイドラインを押しつけて良いのかという点を考慮する必要があります。 患者さんにしても、今まで良いって言われたのに、なぜ今になってという戸惑いがありますし、人によっては、もう先行き短いのだからあまり処方をいじられたくないという気分になることもあるでしょう。 
ただ、時代が変われば、薬が新しくなり、新しい測定方法ができ、それからの経験やデータをまた治療法に還元するというのは、医療が科学であることを考えると大事なことなのだとも思います。 我々臨床医は、患者さんに最新のベストの治療を届ける義務が有るわけで、そのためにも、きちんとガイドラインに沿った治療を説明し、説得し、同意が得られれば治療介入するという手順を取る必要があります。 
 

大きく変わった点1


では具体的に何が違うかというと、一つは今まで重点を置かれていた、悪玉コレステロールが善玉コレステロールの2倍以下あるいは1.5倍以下という善玉・悪玉比という考え方が陰を潜め、比率ではなく、悪玉コレステロールの値だけ、あるいは善玉コレステロール以外のコレステロールを評価しようという方向になっています。 つまり、今まで悪玉コレステロールがとても高いけれども、善玉コレステロールがとても高くて治療を行わなくても良いだろうと言われていた患者さんが、今回のガイドラインでは治療介入した方が良いだろうということに変わります。 私の外来の患者さんでも何名か該当すると思います。 

大きく変わった点2


大きな動脈硬化による病状の悪化のリスクを、きちんと定量的に評価して、悪くなりそうな人とそうで無い人に対する、コレステロール治療の目標値を変えています。 つまり危なそうな人にはきちんと厳格に治療し、そうで無い人へはそれなりに治療するということです。 その評価方法は年齢や性別、喫煙、血圧、糖尿病や耐糖能異常などを元に計算する必要があり、 慶應大学の外来診療ではちょっと計算する暇無かったと思います。 当院では、先日カルテの設定をいじって比較的簡単に計算できるようにしました。 ですので十分臨床の現場で患者さんへ反映できると思います。
この計算が煩雑なために、患者さんもわかりにくいし、医者の方も大変すぎて、なかなかこのガイドラインが定着しない原因の一つになっていると思います。 

大きく変わった点3


いままでコレステロールが高くても、「まだ若いし治療介入はもう少し待ってみよう」などと、実は私の外来でもいろいろさじ加減を加えていました。 今回のガイドラインに当てはめて、今までの治療を振り返ってみると、結構それなりに今のガイドラインに沿った治療をしていたことがわかりました。 ただ今までの私の指導だと、HDLがとても高い人への対応が少し緩かったり、血圧や糖尿病患者さんへの対応無かったり、やはり新しいガイドラインに変わっても今まで通りというわけでは無いようです。 ただ、今までさじ加減でやっていたことが、ある程度論理立てて判断できるようになった点はありがたいです。

これから外来で少しずつ、患者さんに説明申し上げますので、よろしくお願い致します。
これに合わせて、
ホームページの高コレステロール血症の項目も新しいガイドラインに沿って書き直してあります。

診察室で血圧を下げる方法

自宅で血圧を測るとそんなに高くないのに、病院で計ると高くて困っている方いらっしゃいませんか?  「血圧計が壊れているんじゃないか」と相談を受けることもあります。 血圧は秒単位で、ちょっとしたきっかけで上下します。 これは随時血圧とでも言った方がよいでしょうか? 生活の中で血圧は高くなったり低くなったりしているのですね。 一方で我々医者が見たいのは、安静時血圧です。 これは、安静時の最もリラックスしたときの血圧です。 診察室での血圧はあまり安静時とは言えないことが多いです、あくまでも補助でしかありません。 三好クリニックでは、診察室で血圧が高い状態が続く患者さんには、自宅で血圧を測ってその記録を見せてもらう事にしています。 その血圧は自己申告ですので、「血圧の薬を飲みたくないばっかりに、血圧を低めに記載しているのでは無いか」と疑ったりする先生もいらして、医者自身が計った血圧しか信用しないというドクターもいらっしゃるでしょうね。 そういった先生は、患者さんの命を守りたいという責任感の強い良い先生なんだろうと思います。 しかし結局の所薬を飲むか飲まないかは、最後は患者さんが判断されるところなので、どんなに薬をきちんと処方しても、最終的に薬飲んでいただけなかったりする事もあるので、私はきちんと申告していただいている物と言う前提で治療しています。 また、緊張等の要素が原因で血圧が上がる場合、ある特徴的な血圧のパターンになりますし、血圧があまりに高い状態を放置していると心電図や採血のデータに変化が出てきますので、隠しておられても大体医者の方は解っていることが多いです。

ただ医者がわかっていると言っても、自宅で血圧がそれなりに良い血圧なのに、診察室では高く測定されてしまう患者さんは、なんとなく、嘘ついてるみたいな感じになってしまって、不愉快になってしまったり、病院の血圧計がおかしいのではないかと疑う患者さんもいらっしゃるでしょうね。 そこで今回はそういった患者さんのために、診察室で、いつもの安静時の血圧に近い値になる方法を少しお話してみます。

自宅での血圧の測定方法が間違っている人


飲酒後や、サウナにはいった後、運動して汗掻いた後、入浴後など、汗掻いたり、血管拡張作用のあるアルコールなどの内服で、一時的に血圧が下がることがあります。 そういった状態の血圧は残念ながら安静時の血圧とはちょっと言えないです。 そのような状態では計らない方が良いです。 

人前に出ると緊張してしまう。あがり症の方


人前に出るとすぐに緊張してしまう方いらっしゃいますね。 血圧測定時にそういう方に「リラックスしてくださいね」と申し上げても、そんなに簡単にリラックスする事なんて出来ませんよね。 自分では緊張していないつもりでも、自分の周りに人が存在するだけで、無意識に精神的な緊張がでますので、周囲に人がいる状態は、周りで人が動き回っている状態で血圧を測定すると、大概少し高めに測定されてしまいます。 診察室の中の環境がそういう場合、医者の方もある程度解っているので、あきらめた方が良いでしょう。 自宅での血圧をきちんと測定していって、ドクターに見せた方が良いと思います。 これはお手上げという事ですね。 あきらめると、気分が楽になって案外血圧が下がることもありますね(笑)。 

血圧測定時に喋ってしまったり、喋ろうと準備したりすると血圧は上がります。


血圧測定して、血圧が高いと「今歩いてきたからねですかね〜」とか、「おかしーなー、朝は低かったんだけどなー」といった、事をいろいろおっしゃる患者さんいらっしゃいますね。 実は、喋ろうと心の中で準備するだけで、少し血圧は上がります。 そして実際に喋ってしまうと、結構簡単に40~50ぐらい血圧が上昇してしまいます。 これは安静時血圧とは言えなかったりします。 なので言い訳は逆効果なので、血圧測定が終わってからされた方が良いです。 血圧計巻いている間とかに喋るのも、その後に余韻が残りますので血圧高くなります。 

活動の余韻が血圧を上げてしまいます。


歩いたり、喋ったり、していると皆さんの血圧は 160とか200ぐらい簡単に上昇してゆきます。 活動するために筋肉に血液を十分量送り出す必要があるからで、正常の反応です。 一旦上がった血圧は、体を休めると、時間経過に従って低下してきます。 大学病院で患者さんに運動負荷をかけていたときの事を思い返してみると、若い健康的な患者さんで5分ぐらい、運動不足気味で高血圧で通っておられる様な患者さんだと30分ぐらいでしょうか? そしてその落ちつくまでの時間は患者さんによって異なります。 
運動後の血圧の推移
日頃から毎日の様に運動しているアスリートの様な人だと運動停止後3分ぐらいで安静時の血圧になっていた気がします。 こういう運動を日頃からしていて、体が運動になれている方をフィットネスが高いと言います。 そのことを考えると、待合室から呼ばれて、診察室に入るという行動や、挨拶したり、お話したりする行動、あと、血圧測定のために、服を脱いだり、袖をまくり上げたりする行動自体が診察室での血圧を上げる結果につながります。  なのでこの余韻の時間を短縮するためには、日頃から運動を心がけ、フィットネスを高くしておくと良いのです。 またそれ以外にも、待合室で待っている時間帯に十分安静を保ち、診察室へ呼ばれた後も、あまり慌てて入ったりしないというのが良いですし、 診察室の中に入ってから、袖をまくり上げたり、セーターを脱いだりとか、血圧測定直前にあまり行動をしない方が安静時の血圧に近い状態になります。 本当は診察室に入って、喋らず、だらんと弛緩した状態で、30分経過してから血圧計のスタートボタンを押のが理想的ですが、それは患者さんも医者もちょっと耐えられないでしょうね。 何せ無言ですから・・。 体重が重いと、診察室への移動にも多くのエネルギーが必要となり、血圧が上がってしまうので、体重を低く保っておくというのも良いでしょう(もちろん、体重が低くなるとそれだけで安静時の血圧も下がりますけどね)。 待合室で、待ちすぎて、頭に血が上っている状態もあまり良くないですかね・・。 こういった理由もあり、私自身はやはり自宅での安静時の血圧を重視してます。

腕が太すぎたり、筋肉質過ぎて、筋肉が盛り上がっているとうまくはかれなくなることがあります。


脂肪で二の腕が太すぎたりするとうまく測定出来ないことがあります。 その場合、手首で血圧測定をすることになりますね。 実は皆さん意外に思われるかもしれませんが、二の腕の血圧の方が手首の血圧より低いです。 でも太すぎてはかれなければどうしようも無いので、手首ではからせてください。 後で示しますが、血圧計によっては、腕に巻く部分が堅くて、巻きやすい血圧計がありますが、それらは、測定部分のでこぼこに弱いです。 
堅い血圧計と柔らかい血圧計

たとえば肘が曲がっていて、力こぶが出来ていたり、鍛えていて、二の腕の背面の筋肉が盛り上がってしまう人や、十分袖がまくり上げられなくて、服などで凸凹が出来ちゃう人だとうまくはかれないことが多いです。 腕との設置面積が小さいと具体的に言うと少し高く測定されてしまいます。 自宅で測定されるとき、良ければ手首で測定していただいたり、どうしても二の腕が良ければ腕を通す形の血圧計の方が良いでしょう。 
図解、密着していた方が血圧がきちんと測れる
時々、血圧計の説明に、マンシェットを心臓と同じ位置に合わせてはかるべきだと記載されていることがありますが、動物の体は、血管の太さを自在に変えることによって、心臓より低い位置の足や、心臓より高い位置の頭などでも、血圧の値はほぼ同じにコントロールされています(例外はあります)。 なので、無理に窮屈な姿勢で血圧を測ったり、肘を曲げて筋肉に力が入っていたりすると、その分血圧も上がりますので、とにかく脱力しておくことのほうが大事だと思います。

肘は伸ばしていた方が良いです


肘が曲がっていると、力こぶが出来たり、血管との距離が遠くなり、うまく血圧が測定出来なかったり、血圧が高めに測定されたりする場合があります。 肘が伸びた状態にするために、肘の下に枕の様な物を入れると良いでしょう。 

座っている姿勢は、背もたれに体重を預けて、足を前に投げ出す様な感じのほうが良いです


勉強や仕事で集中するとき、膝から下の足を椅子の下に畳んで入れて、座席に浅く腰掛けて、背筋をピントたてて座ると、集中できます。 我々の世代だと小学校で、この姿勢をするように、指導受けました。 今は無いんでしょうねそういう指導。 背筋が曲がっていると、背中に定規を入れられたりしましたね。 もう40年も前の事ですから・・・。 足を折りたたみ、ふくらはぎの筋肉に力が入っていると、足からの静脈血液の戻りが良く、血圧が上がります。 なので、その逆をすると、血圧は安静時の血圧に近くなります。 
血圧測定時の姿勢

深呼吸はあんまり血圧を下げません


良くリラックスするために、すごくりきんで深呼吸されておられるかたいらっしゃるのですが、深呼吸しながら血圧を測ると、呼吸筋に力が入っていて血圧が逆に上がってしまうと思います。 深呼吸は、意識をリフレッシュするという意味合いでは良いですが、深呼吸自体が体の筋肉の運動になるので、やり過ぎないことですね。  一回大きくため息を吐くぐらいで丁度良いと想います。

薄い服ならば腕まくりしない方が良いです


診察していると、血圧測定しましょうかと申し上げると、シャツやセーターを脱がなくて良いように、一生懸命着ぶくれした服を持ち上げてはかろうとする人がいます。 僕自身は編み込みのセータとか、ダウンジャケット、皮の固いジャケットで無い限り脱がないで測定してもらっています。 古い血圧計だと、確かにマンシェット(腕の輪っか)の部分にマイクがついていて、それで聴診をしながら血圧を測定している機械がありましたが、今は、ほとんどが、センサーが本体側に内蔵されていて、少し服が間に入っていても、腕とマンシェット全体が接触している方がきちんと測定出来ます。 上の図の様に、腕まくりしたために肝心のところが分厚くなったり、傾いてしまったりするとうまく計れませんし、ズリあげようとする動作自体が血圧を上げてしまうので、むしろやってもらいたくないと思ってます。 またせっかくズリあげても、露出したスペースが狭すぎて、マンシェットが肘の関節などに乗っかってしまうと、うまく測定出来ないです。 もちろん、これは医者によって意見が分かれるところだと思うので、その通院されているお医者さんの指示に従った方が良いと思います。 


どうですか? 私自身は、足を前に投げ出す感じが下がるような気がします。 ふくらはぎの筋肉の緊張がとれるのが良いのかなと・・。

『体重が減らないんですが・・・』5

今回が最終回です。 ダイエットで最も難しく、最も自分自身が注意していることです。 それは減量した体重で維持すると言うことです。 
ダイエットに成功した。 10kgやせた。 その後、ダイエット成功記念に馬鹿食いして、体重が戻ってしまった経験ありませんか? 今までの体重との差を、「まだ貯金があるから食べて良い!」と考えて、食べ続けたりしませんか? なんとなく、外来で拝見していて、ダイエットに成功する患者さん結構いらっしゃるのですが、私も含めて結構多くの方が、また元の体重に戻ってしまう様です。 少しの理性と少しの忍耐さえあれば、実は体重を減らすのは誰にでも出来る簡単な事です。 たた食べなければ良いのですから。 でもその後目標体重を維持するのは本当に難しく、そしてそれが肥満の方に最も必要な事なのだと思います。 ここでは、その最終奥義(?)を伝授しておきます。 
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『体重が減らないんですが・・・』4

今回は第4弾です。  
ダイエットをするときに、たとえばこれをしたら後は何やっても大丈夫みたいな方法はありません。 体重がきちんと下がってくることがすべてです。 体重が下がらないダイエットはいくらやっても無駄だと思います(ただし体重の減少は10日で1kg程度しか下がりません)。 なので実践して、体重を毎日測定して今のダイエットが正しいかどうかを確認して、継続することが必要です。 ダイエットしているうちに、2-3週間するととてもひどい便秘になります。 これは皆さん避けることが出来ないと思います。 

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『体重が減らないんですが・・・』3

今回は第3弾、もう少し具体的な減量の極意を語ってみます。 
肥満気味の方に、一日1200kcalの食事をお話すると、たいていの場合、無理だと思われるようです(絶望されますね)。 まあ考えてみたら、一日菓子パン2個と牛乳瓶1本の生活、 一日ポテトチップ2袋と牛乳瓶1本の生活ですから、元気なくなったり強烈な空腹になるのではないかと思われるのが当然だと思います。 でもこれは空腹がなんなのかを理解してコントロールするとそんなに大変な事では無い事がわかります。そうすれば、ダイエットはほぼ成功したのと同じです。 
何度も申し上げますが、この方法は肥満気味の患者さんを対象としていますので、特に女性の痩身目的の方は絶対にこの後の記載はまねしないでください。

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『体重が減らないんですが・・・』2

今回は第2弾です。 ちなみに三好クリニックは肥満外来ではありませんので、肥満を治したいと言う方は糖尿病や内分泌外来にある肥満外来を受診してください。 このコメントはあくまで病気の治療として肥満の緩和が必要な患者さんに対する記載ですので、病気が無ければどれだけ肥満があっても「そのままで良いんじゃ無いですか?」と申し上げると思います。 
また、美容のためのダイエット目的ではありませんので(体に負担がでるほどに太っていることが前提の治療ですので)絶対にまねしないようにお願いします。 
今回は実際に体重を減らすのに、どのぐらいの食事のカロリー制限や体重の管理が必要となってくるかを説明してみます。


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『体重が減らないんですが・・・』1

BMI = 体重(kg)÷(身長(m)x身長) これが25を超えているようなら、皆さんの体重は標準体重を超えています。 平たく言うと太りすぎです。
肥満は、糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・腰痛や変形性膝関節痛などの病気を悪化させます。 なので、こういった病気をお持ちの方には、できるだけ減量をおすすめします。
私もコレステロールが高かったり、以前膝を痛めたことがあって、体重が増えると膝が痛かったり、コレステロール値が高くなるので、患者さんに指導する関係もあって、自分でもダイエットしています。 ここでは私のやっているダイエット方法をちょっと紹介して見ます。
またダイエットと称して、BMIが18.5未満で痩せすぎなのに体重を減らそうとする方がおられます。 申し訳ないですが、そういった方はこれ以降決してお読みにならないようにしてください。 できれば、医師に減量を勧められたけれども、どうしても体重が減らない患者さんのみが対象となります。

減量って大変ですよね。 20代の頃はいくら食べても太らなかった方も、中年になるにつれて、仕事の質も肉体労働から頭脳労働になり、どれだけ運動をしているといっても、日頃補充に必要なカロリーは年々少なくなります。 少し食べ過ぎるとすぐ太るくせに、痩せるのはとても大変です。 三好クリニックでも患者さんに良くこの体重を減らしましょうという指導をします。 毎日2人ぐらい?? 私が指導する患者さんの多くは、もうすでにかなり状況が切迫していて、10kg以上体重を落としてほしい患者さんがほとんどなので、ここでは1ヶ月で3kg落としてもらう方法で説明してみます。
患者さんへの復習もかねて、ちょっとここにまとめてみたいと思います。
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心拍のゆらめき

人の心拍数はいつも一定ではありません。 安静にしていると一分間に60回ぐらい心臓は動いていますが、運動したり怖い物を見たり体温が上がったりすると心拍数は上昇します。 特に緊張などしていなくても、喋っていたりするだけで心拍は早まります。 心臓が口から飛び出そうなんて表現がありますが、運動したり全速力で走ったり、重い物をもって歩いたり走ったりすると、負荷に相応の心拍数の上昇があります。 すごく激しい運動をすると一分間に 180回とか200回近い心臓の鼓動があることもあります。 もっと増やせばもっと運動能力が上がるんじゃないかと思われるかもしれませんが、心拍数が早すぎると、有効な収縮にならないため、あまり運動能力が上がることはありません。

こういった心臓の心拍数の変化は皆さん日常生活で良く自覚されていると思います。 実はそれ以外にも皆さんの心拍は周期的に変化しています。心拍の揺らぎ、揺らめきと表現するほうが文学的ですかね。 人の心拍の揺らめきで最も目立つのは呼吸のサイクルにより心拍の揺らぎです。 人は息を吸ったときに心拍数が遅くなり、吐いたときに心拍数が早くなります(正確にはやや異なるのですが)。 ですので心電図を見慣れてくると、あまりに一定の心拍リズムだと不自然に感じたりします。 ペースメーカーなどの機械による調律ではこういった揺らぎが無く、心電図の心拍の揺らぎからそういった人工的な心拍かどうかを診断する事もあります。

こういった心拍の揺らぎが強い方は、若い人、胸板の薄い人、肥満気味で内臓脂肪の多い人によく見られるように思います。 呼吸を止めてお腹に力を入れたり(いきむと言います)すると息を止めていると心拍数が早くなり、息を再開すると急激に心拍数が落ちたりします。 入浴で浴槽に入るときや、急に体を横に倒して寝たりしたときにも、この反応があります。 この心拍の変化を、ほとんどの方は自覚されないのですが、前述の様な患者さんの中にはとても敏感にこの脈拍の変化を自覚される方がおられます。 何か命に関わる様な不整脈なのではないか、あるいは心臓の大きな異常なのではないかと不安になる方が時々おられて、その不安のために気分が興奮し、心拍数が更にあがって、更に不安になり、更に心拍数があがって・・・。 と繰り返し、どうにも苦しくなって救急病院に駆け込まれたりされる患者さんもいらっしゃいます。 呼吸の周期で心拍が揺れることを自覚されて、心拍が揺れないように呼吸を止めてしまったりする人もいらっしゃいます。 そういった患者さんの中には、本当に不整脈がある患者さんもいらっしゃるでしょうけれど、ほとんどの場合こういった脈の乱れは、まず一度気持ちを落ち着けて、別の少し楽しい事を考えたりすると自然に良くなってきたりする事が多いです。 この心拍の揺らぎは元々心臓が持っている、自動的に循環する血液の量を調整する機能の一つなのです。 
 

10年後の皆様へ

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医者「だいぶ血圧高いですね。 減塩してもらったり、運動とかしてもらいまいしたが、あんまり効果無いみたいですので、やっぱりちゃんと薬飲んだほうが元気で長生きできますよ」
患者「いや〜、でもお薬飲むと一生飲み続けないといけないんでしょう?・・・。」
医者「・・・」

血圧やコレステロールのお薬を処方開始するときに、1割ぐらいの患者さんとこういうやりとりになります。 そういう時毎回説明するのですが、私の説明があまりうまく無いのか、結局おくすりを処方するのはそいう話題になっても1割ぐらいでしょうかね・・・・。  

患者さんの心理としては、お薬を一生飲み続けるということは、病院に縛られるということでもありますね。 ティーンエージャーの頃は、そういったお薬をのみ続けることが必要なかったはずで、そういう若い頃の健康な体の感覚が抜けないのでしょうね。

ただ医者の立場から客観的に申し上げると、こういったお話になる患者さんは、ご自身の体の重大な現実を無視しているように思います。
1,まずは患者様は、もう若くないということです。
2,そして、現在の患者さんは薬を飲まなくても困りませんが、10年後の患者さん本人が被害を被るということなのです。
3,生活習慣を改善すること(体重を標準体重にして、一日1時間弱の少し汗ばむぐらいの運動と、塩分摂取量を一日10g以下にすること)、ほとんどの患者さんは薬を飲まなくても良くなります。 でもそれを実行するにはとても強い精神力が必要です。 それができないので、お薬を飲んだほうが良わけです。 きちんと、生活習慣の改善が出来れば、一生飲み続ける必要は無いこともあります。
治療に抵抗される患者さんの多くは、こういう現実を無視する傾向にあります。 すべてを無視して現状を維持しようとされるのですね。 しかし、年齢は決して維持できないのです。もう少し現実を見たほうが良いと思います。

10年後のあなたは具体的にどんなふうな被害を被るのでしょうか?
一人の医師として、血圧の治療を拒絶される患者さんと、きちんと血圧のコントロールができている患者さんを10年ぐらい見比べてみると、治療されていない患者さんは、心筋梗塞や脳梗塞になって半身不随や痴呆になられたりするリスクが高くなります。 もちろん全員がそうなるわけでは有りませんが、ほとんどの患者さんは、70台の半ばにさしかかると、耳の聞こえが悪くなり、皮膚の肌ツヤが悪くなり早く老け込みますし、お話も迂遠になったり、物忘れがひどくなってきたりされていきます。 そして通院することができなくなり、おつきあいがそこで終わってしまいます。 これは歳だからしょうがないと思われるかもしれませんが、きちんと血圧やコレステロールのコントロールができている患者さんは、80歳の後半になっても、元気で若々しいです。 

10年後のあなたは現在のあなたと違う意見を持っているかもしれません。 ぜひ10年後の自分自身の意見に耳を傾けてあげてほしいです。 もっと元気で、もっとはつらつと生きていけるはずです。

福岡でアブレーション研究会に出席してきました。

福岡国際会議場
私は不整脈専門医という資格を持っているのですが、そういった学会の資格の維持のため、ある程度学会等に参加する必要があります。 単位制になっていて、ある一定の期間に指定された学会に参加したり発表したりしないと、専門医という資格は維持できなくなるのです。 私は今更手術をすることも無いので、アブレーション研究会というカテーテル手術を専門に扱う学会に参加しても、直接的にはあまり恩恵を得られるわけではありませんが、 大学に在籍していたときに疑問に思っていたことが、明らかになってくるのを見るのはなかなか刺激的なものですし、また患者さんをカテーテルアブレーションに送り出すときに、現状どのような考え方で治療が選択されているのかを知る上で、やはりこういった会議には定期的に参加していたほうが良いだろうなと思っています。 大学を離れて1-2年間は、退職したときとあまり大きな違いはなかったですが、今回はちょっとだいぶ様変わりしていて勉強になりました。 
学会は福岡でありました。 福岡まで早朝の飛行機で行き、電車とバスを乗り継いで、学会場に到着したのが10時頃でした。 そこで2時間程、心房細動のカテーテルアブレーションのセッションを聞いて、午後3時の飛行機で東京に戻ってきました。 移動が6時間、空港での待ち時間3時間で、たった2時間ぐらいしか、学会に参加できないのはちょっと残念なのですが、それ以上滞在すると体力的に厳しいので、仕方ないです。 今度は東京でやってほしいな・・。
今回のセッションで感じたのは、5年前には、心房細動の治療に何故か良く効くと言われたある一つのカテーテル治療の方法が全く否定されてしまったということでした。 実際アブレーションをやっていても、やっている我々も全く効いている気がしなかったので、まあ当然の結果だろうなと思って見ていましたが、それが大規模な症例数を集めてあまり効果がなかったと証明されたわけです。 初めてその方法を提唱した人は、ちょっとショックだったかもしれませんね・・、もしかしたらオリジナルの方法が間違って皆に伝わったために生じた悲劇なのかもしれませんが、その治療原理を考えるとちょっと狂ってるとしか思えない方法だったので、当然の結果だったのだと思います。
もう一つは、心房細動のカテーテル治療の際に、電気信号が弱い部分が見られるのですが、 通常の肺静脈の隔離手術のあと、その弱い部分の周囲を丹念に焼くと、より再発が少ないと言うもので、これはなるほどなと思う方法でした。  心房細動のアブレーションを何度も何度もやらなくては止まらないような患者さんにとっては、この方法は結構良い方法だなと思いましたが、これも本当の結果が出るのにもう少し時間がかかるかもしれませんね。 いずれにせよ、心房細動で悩んでいる患者さんには朗報でしょうね。

 

「動悸があるんですが・・・」「具体的にはどんな感じですか?」

「動悸」って言葉、みなさんも聞いたことがあるのでは無いでしょうかね。あまり日常で使われる言葉ではないですよね。もともとは、平常時には感じない心臓の脈打つ感じを感じるという意味なのですが、その動悸のパターンにもいろいろなものがあります。 このクリニックは一応、不整脈を専門にしているクリニックなので、この動悸という症状で来院される方が多いです。

日常に見られる正常な動悸


全力疾走した後に、ゴールの後ハーハーしている時に、心臓が「どんどんどんどん」と強く早く動いているのを感じたり、胸の壁を内側から打ち鳴らすみたいに感じることってありますよね。 後は急に驚いたり、びっくりした時の後にしばらく、心拍数が早くなり、心臓が動いているのをリアルに感じる。 こういう現象は人間の通常の反応でみなさん特に疑問を感じることは無いでしょうね。 この状態は動悸を感じる状態です。 こういったことがあるからと言って、医者にかかろうとは思わないですよね。  こういったことを調整しているのは、アドレナリンというホルモンです。 アドレナリンが分泌されると、心拍数が上がり、血圧が上がり、心臓が打ち出す血液の量は平常時の5倍ぐらいまで上がります。 アドレナリンの効果についてはまた別の機会に紹介するとして、こういった心臓の活動を動悸として自覚するわけです。

動悸のパターン1「脈がドクンと急に一拍大きく感じる」「時々心拍が止まることがある」


みなさんの心拍数は規則正しく一定のリズムで刻まれています。 しかし時々、そのリズムが途切れる場合があります。 一度途切れた後、また元のリズムに戻る。 こういう脈の不整を「結滞」「期外収縮」と呼びます。 平易な言葉で言うと「心臓のしゃっくり」のようなものだと考えてもらえると良いでしょう。 しゃっくりは横隔膜の痙攣です。 普通に呼吸をしていてい、呼吸のリズムと全く関係なく、突然横隔膜が収縮するので、違和感を感じるわけです。  一般的なしゃっくりは、一つの呼吸サイクルに対して1回以上起こることはあまりありませんね。 心臓についても同様で、一回の呼吸サイクルに関して1回だけ別のタイミングで収縮が起こる。 これを期外収縮と呼びます。 こういった不整脈の場合、基本的には患者さんがその不愉快な症状を我慢できるならばあまり危険な不整脈ではありません。 しかしその不整脈が心臓の他の病気の警鐘であったりすることがあります。 例えば、心臓の筋肉の病気、心筋梗塞などに付随する症状などです。 ですので、やはり一度は医者に判断してもらったほうが良いことは確かですが、大多数の方は全く問題がない場合が多いです。 患者さんによっては、脈が飛ぶという感じより、心臓の動きが急に変化するために心臓が横にある肺に強くぶち当り、胸膜という肺を取り囲んでいる膜を刺激するため、「咳は出ないんだけど、咳が出るような感じ」とおっしゃられる方もおられます。

動悸のパターン2「心拍が規則正しく早くなります」


心拍が、思い当たる理由がなく早くなります。 そしてそのリズムは規則正しい。 そういった動悸のパターンがあります。  そういった脈が数秒で収まることもあれば、1−2時間続いたり、長い人だと半年ぐらい続いたりすることもあります。 こういった動悸の中にも正常な心拍がただ早くなっているだけという方もいらっしゃいます。 むしろ外来で拝見しているとそちらの方のほうが多いでしょうかね・・。 その区別はやはり動悸の症状がある時に心電図をとってみないと最終的な診断ができません。 しかし、1) 毎分150回以上の心拍がある患者さん 2) 心拍が突然早くなり、 自分でもわかるぐらいに突然元に戻る患者さん 3) 動悸がした後に目の前がかすんだり、意識が遠のくような感じがある 場合は何らかの不整脈があることが多いでしょう。 しかし頻度が少ないとなかなか検査することが難しいです。 今最も多く用いられる心電図検査は、24時間連続で記録するホルター心電図といった検査か、あるいはご自身で購入いただく、携帯型心電計(例えばOMRON 携帯型心電計 HG-801などでしょうかね)、などになります。 いずれも週に一回しかおこらないとか、あるいは起こっても数秒で止まってしまうようなものだと、なかなか偶然にその時に心電図と当てていないと記録するのは難しいです。 あまりに症状が強かったり、あるいは、症状から不整脈を強く疑わせる点があったり、患者さんが完全に不整脈を根絶することを希望されている場合、体に埋め込むような形の心電計を入れてずっとモニターしたり(今だと車のドライブレコーダーのようなものでしょうか? 一世代まえのUSBメモリースティックのようなものを皮膚の下に埋め込みます)、あるいは入院してもらって心臓の中に電極を入れた状態で、電気刺激を行って不整脈を誘発したりすることで検査を行うことがあります(臨床電気生理学的検査)。

動悸のパターン3「心拍が全く一拍ごとがバラバラで」


心拍のリズムが一拍ずつ全く間隔が異なる状態です。 この場合、この不整脈のほとんどは心房細動という不整脈であることがわかります。 もちろん、このバラバラという表現がなかなか患者さんには理解してもらえないことがあって、難しいのですが・・・。 全部の心拍が全く規則性の無い、無秩序(ランダム)なタイミングで感じる。 というのが適切ですかね。 もちろん心電図での診断はその治療をどうやって組み立てるかという点でも重要になります。  まずは循環器内科に受診されて、心電図をとることをお勧めします。 多くの場合、心房細動は高齢者や高血圧の患者さんの病気です。 ですので、若いうちにこの不整脈が出られる方は、遺伝的な素因がある珍しいケースか、それとも心房細動を起こすような何らかの心臓の構造上の問題点があったり、ホルモンやミネラルバランスの異常が大本の原因だったりすることがあります。 心房細動自体は命に関わるような危険な不整脈では無い場合が多いですが、心房細動に関連した脳梗塞(血栓塞栓症)や、心臓の構造上の異常の発見につながったり、あるいはホルモン異常が見つかってその治療が必要だったりする場合があります。 なので幾つかの検査をさせていただくことになります。

動悸のパターン4「心拍がゆっくりで、一拍一拍が大きい」


基本的にこの動悸のパターンは不整脈でないことが多いです。
では何かというと、人は強い痛みや内臓の圧迫や引き攣れなどを起こすと、副交感神経(迷走神経)という神経が働いて、心拍数を落とすホルモン、アセチルコリンというホルモンが分泌されて心拍数が急激に低下することがあります。 例えば大きく息を吸った瞬間とか、思いっきりトイレで気張ったりした時とか、急にベットにバタンと横になった直後とか、特に体が地面に固定されている寝転がっている時が多いですが、そういった時に心拍が遅くなり、代わりに一回の心臓が送り出す血液の量が多くなるため、一拍一拍の心拍が大きく強く、そしてゆっくりになることがあります。 これは、内臓反射(迷走神経反射)によって起こる人体の正常の反応の一部ですのであまり心配されることはありません。
ただ、時々先程のパターン1、期外収縮が一つの正常な心拍に対して、規則正しく一回ずつ起こる方がおられたり(2段脈と言いますが)、心拍のリズムを作っている部分やそのリズムを心臓全体に伝える回路がうまく動作しなくなる病気があることがあります。 ただそのような場合、その異常はいつでも見られることが多いため、来院されて心電図をとってみるとわかることが多いのですが、とても珍しいですが一過性にそういった不整脈が見られ、通常は全く正常で、心電図ととってもわからない場合もあります。 そういった場合でも、実はその症状の直後に採血するとある程度のことが予想できる場合があります。

動悸といってもいろいろなパターンがあるのですね。 なので不整脈のドクターを受診すると、まずは根掘り葉堀り聞かれると思いますが、ご協力お願いいたします。 あと、その時動悸の症状がなくても、心電図をつけた瞬間に偶然その時に不整脈が出たりすることもありますので、ご面倒ですが毎回心電図とらせてください。 不整脈の無い時に心電図をとっても全く意味は無いのですが、患者さんに動悸がないことが不整脈が無いこととも限りませんので・・・。

日本不整脈心電学会に参加してきました。

日本不整脈心電学会に参加してきました。 今回は北海道・札幌でした。 ちなみに私ごとですが、北海道に行くのは初めてでした。 診療の関係もあって、今回は最終日の日曜日の半日だけの参加でした。
北海道日帰りなので、思いっきり早い時間帯の飛行機をとったのですが、気がついたら、自宅から始発に乗っても到着しないことに気づきました・・・(汗)。
札幌コンベンションセンター
新千歳空港から札幌まで、1時間近く電車でかかるのには少々びっくりしましたが、グーグル・マップ先生のおかげでなんとか無事にコンベンションセンターに到着、はじめの方少し聴き逃しましたが、シンポジウムに参加してきました。
一つ目のセッションは、私が大学をやめてから市場に出てきた「心房細動のバルーンカテーテルでのアブレーション」でした。 性能や安全性がどうなのか気になっていたのですが、どうやら今まで慶應で見てきた心房細動の従来通りの高周波カテーテルでのアブレーションと時間も安全性もほとんど変わらない様でした。 すべての心房細動のアブレーションがこのバルーンに置き換わるのかなと思っていましたが、それはちょっと違いそうですね。 ただ、現場で自分の目で見たわけではないのでちょっと判断は迷います。 
もう一つのシンポジウムは「無症状の発作性心房細動の患者さんに脳梗塞の治療をすべきかどうか、もう少し心拍数の遅い心房頻拍等の患者はどうするのか」といった話題でした。 無症状なのに発作性の心房細動を診断するのは、ちょっと矛盾しているのですが、(症状が無患者さんに心電図を取らないと、心房細動が見つかりませんので)、とある理由で、植込み型のペースメーカーや心電図記録装置を入れておられる患者さんの発作性心房細動と脳梗塞の発生の関係を研究された先生がいらして、その方のお話を聞いてきました。  本当はこの無症状の心房細動や心房頻拍を見つけるのが難しいのです。 例えば年に3回ほど心房頻拍が6分以上続くけれども、自覚症状が無い患者さんがいたとして、その方が偶然心電図をとって、心房細動が見つかるかというと、そういう確率は約0.001%程度です。 それでもその心房細動が原因で、脳梗塞になる可能性があるということだそうです。 特に心房細動患者さんの脳梗塞になりやすさを判定する、CHADSスコアーの点数が高い患者さんは、心房細動がなくても、そういったことがもしもあれば、脳梗塞を心配したほうが良いということらしいです。 こうなってくると、心房細動があろうがなかろうが、ある程度高齢の患者さんで、CHADSsスコアーが高ければ全員、抗凝固療法をしておいたほうが良いのでは無いかという考え方に到達してしまいそうですね・・。 抗凝固療法も100%安全な治療法ではありませんので、 それはやり過ぎだと思いますが・・。 でももう少し効率よくそういった患者さんを検出する方法が見つかれば、そういう時代になるかもしれませんね。 例えば、アップルウオッチ等の心拍モニター等をつかって、 毎日心拍のモニターをしているとそいういったことが簡単に検出できるようになるかもしれませんし。 脈の間隔は結構呼吸や活動等で変化しますので、どれを異常心拍として検出するのかは結構難しいアルゴリズムを作らないと行けないでしょうが・・。 おっと、患者さんの読むホームページにちょっと難しすぎること書いちゃいましたね・・。 学問の話題はこの辺で。 

学会場で、懐かしい顔に出会った後(皆さん頑張ってますねー。)、学会場を後にしてまた新千歳空港に戻りました。 札幌の街は、雪国のせいか道幅が広いですね・・。 東京に慣れてしまうと、少しさびしい感じがしますが、雪をうまくやり過ごすにはああする以外無いのでしょうね・・。 以前私は、北アメリカのカナダに近い北の州に留学していたのですが、その町並みを思い出しました。 一度冬に行ってみたい気もしますが、雪で飛行機が飛ばなかったりして診療に穴を開けるわけに行きませんので、引退してからですかね。  空港までの路線は電車は函館まで続いているようで、函館を地図で見ると、結構広いですね・・。 札幌と函館だけで広いと言っているぐらいですから、北海道全体で見ると本当に大きな島なんですね・・。 

ただ日帰りで行って帰ってくるのはちょっと疲れましたね。 もうちょっと近いとこがいいですね。 

重力に負ける人 4

歩いているだけで酔ってしまい、怖くて出歩けない

前回良性発作性頭位めまい症の話をしましたが、三半規管の異常一時的なもので長時間持続することはありません。 しかし時々何ヶ月もの間フラつきのため、出歩けなくなってしまう方がいらっしゃいます。 足腰の弱っておられる高齢者だけでなく若い方の中にも、そういった回転型のめまいの後、転倒の恐怖から歩けなくなってしまう方がいらっしゃったりします。 長期化する原因は何なのでしょうか?

転倒の恐怖が平衡感覚を惑わせる
立ち上がれなくなる最も大きな原因は、転倒に対する恐怖感だと思われます。 赤ちゃんの頃は、立ち上がって転んでも、体重が小さいですし、皮下脂肪も多いので、あまり大きな怪我をすることはありませんが、大人になってから転ぶと当たりどころが悪ければ死にますし、骨をおったり、出血したり、服をダメにしてしまうかもしれません。 そういった恐怖感は前回の章のように平衡感覚を混乱させ、より歩行を困難にします。 回復するためには、転んでも良さそうな格好で実際に歩いたりして、慣れていく以外にありません。

意外に早く起こる足腰の筋力低下がふらつきを増強する
次に問題となるのは、足腰の筋力低下です。 人は寝ている時間が長く続くと立つために必要な筋肉が減ってきます。 特に太ももとおしりの筋肉が減ると歩行が不安定になりふらつきます。 人は4−5日寝たきりの生活をすると筋力の低下から歩行に違和感を感じ始め、1週間も寝たきりが続くと、立ち上がるのも一苦労となります。 筋力低下は意外なほど早く起こります。回復するためには、片足立ちでもも上げなどの筋力トレーニングを机とか椅子等に捕まるようにして、一日20回〜40回ほど行うことで歩行のための筋力はゆっくりですが回復してきます。 一度安定して歩けるようになると、その後は自身がついてフラつきから回復できるようになることが多いです。

怖がって下を見て歩くことで酔が起こる
転倒に対する恐怖があまりに強いと、歩行時に倒れないように下を向いてしまう方がいらっしゃいます。 前章で車酔い等で下を向いていると、頭がシェークされてより酔の状態に近づくというお話をいたしました。 下を向いて歩くことは酔や違和感を増強し、それが更に恐怖感を増強するという悪循環に入ります。 また頭を下げてしまうと、体の重心が大きく狂ってしまいますし、背骨も変な形になってしまって、バランスが取りにくい状態になります。 回復するにはやはり、倒れても良い服を着て(あるいは杖など持って)、できるだけ足の底の感覚がわかる底の平らな靴を履いて(足元を見ないでも足もとの歪みや硬さを深部感覚を使って感じることができます)、比較的広いところで、遠く(水平方向)を見ながら歩いて慣れる以外ありません。

実はみなさん、時々ふらついたりすることはありますが、ほとんどの方はその後すぐに元の生活に戻ってそういったことを忘れてしまっています。 ただ一度不安に取り憑かれると、その後「めまい感」に敏感になり、めまいが起こるたびに記憶し、その行動をとらなくなります。 しかしこの回避行動は一部の例外を除いて逆効果となることが多いです。 
その例外に当たる病気はやはり医師の診断が必要となりますが、もしも医者に大丈夫ですと言われたのでしたら、やはりその言葉を信じて後は自分の力で克服してゆく必要があります。 それが危険な兆候出ないと医師の診断があるようなら、「めまい感」は立って生活するために必要なセンサーの誤差修正なのだと思って慣れることも大事なのです。

重力に負ける人 3

目が回って、立ち上がれない
バットまわりといって、頭を垂直に立てたバットの柄に頭を付けて、バットの周りをぐるぐる一定時間回転して、頭を外して走りだすと、まっすぐ走っているつもりでもあらぬ方向に走っていってしまうという遊びを知っておられるでしょうか? 回転椅子に乗ってぐるぐる回って、ピタット止まると、周囲の景色が止まった後もぐるぐる回って見える現象で遊んだことみなさんあるんじゃないでしょうか? この原因は三半規管といって頭の中で耳の近くに付いている器官の誤作動が原因です。 この三半規管が一時的に妙な信号を脳に送り始めることがあります。 三半規管のリンパ液の中に存在する耳石という石が原因とも言われていますが、中年以降の患者さんに多い病気です。 「良性発作性頭位めまい症」と言いますが、頭がある方向を向くと地面がせり上がってくるように感じたり天井が回るように感じたりして気分が悪く、吐いたりしてしまうことがあります。 こういう頭の方向がきっかけとなって出現するめまいは、基本的に良性で放置していても2週間ぐらいで自然に回復してくるようです。 一方で、頭の方向に関係なく、常に世界が回っているみたいに動いてしまう場合は、脳の病気であることがありますのでやはりすぐに病院を受診されたほうが良いでしょう。

こういった良性の回転性めまいは通常1-2日ほどで自然に軽快しますが、その後もめまいがするような感じや、まっすぐ立っていても、後ろに引っ張られるような感じがして立つのが怖くなってしまって、それが何ヶ月も続く患者さんが時々いらっしゃいます。あまりこういった症状が長期間続く場合には、脳内の病気の可能性もありますので、一度頭部のMRI検査等を受けてもらうことになりますが、MRI検査で異常がなければ、酔(よい)という現象と診断できます。 船酔い、乗り物酔い、宇宙酔い、ゲーム酔い、酔にもいろいろありますが、今回はこの酔という現象についてちょっと説明してみます。

体の体勢を感知している3つのセンサー
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人間は自分の体勢を、主に3つのセンサーで感知しています。 視覚と三半規管と関節や骨格に付属している深部感覚というシステムです。
その3つのセンサーがうまく組み合わさって自分の体勢を確認しているのですが、それらにズレが生じると「酔」という状態になり、気分が悪くなり嘔吐します。 この現象は不愉快な場所から逃げるための自己防衛機能の一つとも考えられているようです。

連動している三半規管と眼球の運動
特に視覚と三半規管は密接につながっています。 歩行等などの複雑な振動や回転等をした時に、眼球を一つの方向に固定して網膜の上に映る像を安定させることができます。 カメラの手ブレ補正みたいなものと考えて貰えると良いでしょう。 みなさんビデオカメラを歩きながら(きちんととったつもりで)撮影した影像を、テレビで見ると絵がぶれて全く見るに耐えない絵が取れてしまう経験があると思います。 眼球もこういった三半規管がなければ、このビデオカメラと同じ像が脳に送られ、歩いているだけで酔ってしまいます。 眼球の周囲の筋肉と頭蓋骨の後ろの小さな筋肉を巧妙に操り、動いている時も眼球を一定方向に保ち、ブレの無い画像を脳が見ているのです。 たとえば、鏡で自分の目を見ながら首を左右に振ってみるとよくわかると思います。 皆さんの眼球は気持ちが悪いぐらい固定されて、顔だけ動いているように見えるでしょう。 眼球の動きにズレが生じないように、三半規管からの情報は眼球の筋肉とほとんど直結されているのです。

酔いが起こるメカニズム
「ゲーム酔」
  • 例えばゲーム酔いといって、First Person Shooter (FPS)ゲームプレイヤーの初心者が、ゲームをやっているだけで気持ちが悪くなることがあります。 FPSゲームではリアリティを出すために、歩行時に像が上下に揺れます。 またコントローラーやマウスを急激に動かすと、絵が急激に変化します。 視覚情報が大きく動くのに三半規管からの信号が無く、2つのセンサーに誤差が生じるため気分が悪くなり「酔い」が発生するのです。
「良性発作性頭位めまい症」
  • 良性発作性頭位めまい症等では、三半規管が誤作動を起こして「頭が回転している」という誤情報を発信するとそれに合わせて眼球が自動で動きます。 患者さんは眼球が動いているとは認識せず、世界の方が回転し始めたと感じます。 その時に起こる恐怖感は、交感神経を刺激して興奮状態となります。 この興奮が全身のセンサーを敏感にし、よりズレを認識しやすくし、さらに酔いを加速させます。
「車酔い」
  • 車酔いや乗り物酔いはどうでしょうか? 三半規管は3方向の回転を認識します。 垂直方向の回転、これは頷く動作ですね。 もう一つは横方向の回転、これは左右に頭を水平方向に回転させる動きですね、いわゆる「いやいや」と首を横に振る動作です。 もう一つの回転ってみなさん解りますか? これは少々説明が難しいです。 これも横方向の回転です。 これは頭を左右に傾ける動作、「はてな?」という動きですね。 この向きを冠状面方向といいます。 冠状面方向に左回転や右回転をする動作になります。 はじめの2つはみなさんよくやりますが、左回転や右回転は実はあまり日常に行っている動作では無いです。 体育などで側転等を行うときに使っていますかね・・。 でも大人になって毎日側転をしている人は少ないですよね。 眼球の筋肉で前者2つの動きを補正できますが、冠状面の回転に相当する眼球の筋肉はありません。 その補正は(頭蓋骨の後ろについている筋肉を使って)首を傾けることで行っているわけです。 頭蓋骨を動かすので眼球を動かすのと比べて時間がかかりますし、補正には限界があります。 車酔い、乗り物酔いはこういった、冠状面での回転、ローリング振動で、視覚の情報が大きく揺らぐことがきっかけで始まります。 一つには吐いてみんなに迷惑かけてしまうかもという緊張から更に感覚が鋭敏になりますし、吐く準備として本能的にうつむき加減になります。 うつむき加減になると車の加速や減速の時の動きや左右に曲がる際の強い動きが、悪いことに眼球が苦手な冠状面の動きになってしまいます。 また首が動く方向が限定され、ローリングによる画像のブレを処理できなくなり、「酔い」が加速してしまうのです。 そして人の眼球は垂直方向の運動が苦手です。 眼球とともにマブタを一緒に動かす必要がある分横方向の動きよりも少し時間がかかります。 うつむいてしまうと、車の減速や加速は、縦方向の振動となるため、更に視覚情報とのズレを増強してしまいます。 ですのでよく言われることですが、景色の見える前の方の座席に座って、顔を上げて前の景色を見たり、吐いても大丈夫なように時々外に出て緊張をほぐしたり、歌を歌ったり友人とおしゃべりして緊張をほぐすことで感覚を鈍感にすることで乗り物酔いをある程度予防できるようになります。
「船酔い」
  • 船酔いはどうでしょうか? 私は船酔いしたことが無いので本当はよくわからないのですが、船酔いは船室にいても甲板など外の景色が見える場所にいても起こると聞いたことがあります。 なので、バスや車などの乗り物酔いとは少々異なるのかなと思います。 皆さん回転椅子等でぐるぐる回った後に、突然停止するとしばらく景色が回転するのを体験したことがあると思います。 これは液体特有の慣性によると言われています。 環状の三半規管の中のリンパ液の流から回転の方向とスピードを感知していますが、突然停止してもしばらくはリンパの慣性のため流れが止まらず、だらだらと回転しているかのような信号を発信しつづけてしまいます。 この慣性は頭の方向を変えるぐらいの短い動作でも生じているはずですが、通常は慣性による余韻だと自動的に無視しています。 ただ恐怖や不安、興奮や寝不足等でセンサー感度が敏感になるとこの余韻を無視できなくなり、急な動作のあとにグラっときたりするのだと考えられます。 海の波の振動はあまり始点や終点がなく連続的です。 なので三半規管に入る回転の信号が、本当に移動に伴う信号なのか慣性による偽の信号なのか判断することが難しくなります。 その場合人体はおおまかに2つの対応をします。 一つはすべての信号を本物の信号だと考えてセンサー感度を上げるか、逆にすべてを偽の信号だと考えてセンサー感度を下げてしまうかです。 三半規管のセンサー感度を下げてしまっても、視覚の情報や深部感覚の情報だけで、ある程度船上でも行動が可能ですし、船酔いになりません。 逆にセンサー感度を上げてしまうと、船上で動くたびに、行動に伴う信号と慣性による誤信号を感知するために視覚情報と三半規管との情報に誤差が生じて船酔いしてしまうのだと考えられます。 陸地に戻ったあとも暫くの間、三半規管が慣性による誤信号も本当の情報だと誤認してしまうため、酔の状態が続くのだと考えら得ます。
「地震酔い」
  • 地震によって余震が続くと、同じように地震酔いという状態が生じることがあります。 これはやはり地震による恐怖と、生存本能から地震に対して敏感になり、頭の移動時の慣性に伴う三半規管の余韻に伴う誤信号を感知してしまったり、それまで感じていなかった微妙な体の動き(まっすぐ立っているつもりでも人は微妙に揺れていますので)を感知して地震による揺れがあるように錯覚してしまう現象なのでしょう。

酔が起こるメカニズムのまとめ
いろいろ「酔い」について解説してみましたが、要するに(1)人はうつむいていると振動や揺れに弱くなる。 (2)興奮や緊張、不安はセンサー感度を上げてしまい、通常無視している不必要な三半規管の信号を感知してしまい、めまいを感じやすくなる。 (3)ひとは左右回転(冠状面)の揺れに弱く、ついで縦方向の揺れに弱い、といったところでしょうか。 一言で言うと酔わないためには慣れが大事です。 慣れることで不安が取り除かれ、視野のブレやセンサー同士の誤差に強くなり、異常が起こっているセンサーを無視できるようになります。 そのためには、めまいがあってもそれが危険な病気では無いということがわかったら、平常通りの生活を心がけることが大事になります。 そうしているうちに必ず普通通りの生活に戻ることができるようになります。 

次回は
「歩いているだけで酔ってしまい、怖くて出歩けない」です。

重力に負ける人 2

怖くて立ち上がれない
人間は1歳になる前から2本の足で立ち上がり、その後ほとんど死ぬまで立った姿勢を基本にして生活しています。 これは皆当たり前と思っているかもしれませんが、生物のあり方としては重力の方向に逆らっていて明らかに不自然な姿勢です。 立ち上がって生活することの難しさは大きく分けて2つあります。 一つは上の方にある脳へ血液を送る難しさと、もう一つは重力の方向にまっすぐ立っていることの難しさです。 今回は脳へ血液を送ることの難しさ、「脳貧血で立つのが怖い」という状態の説明をしてみます。

脳貧血の症状
患者さんと会話していて、患者さんがおっしゃられる「貧血」という症状は脳貧血のことであることが多いです。 実は医学的な意味の「貧血」とはまた異なるのですが、その説明はまた別の機会にでも。 脳貧血は、おそらくみなさん一生のうちに必ず一度は経験されておられるでしょう。 寝ていたり、座っていたり、蹲踞の姿勢から、急に立ち上がって歩き始めたり、高いところにあるものを取ったりしようとして手を伸ばしたりした時とかに発生します。 頭の芯がじんじんして、目がかすみ、耳鳴りがして、心臓がドキドキして、冷や汗が出てきます。 そのまま我慢して立っていると意識を失って倒れてしまったりすることもあります。
脳貧血という現象は、空腹時とか水分量が少なく体液量が少ない時に起こりやすいです。 また病気の後とかで長期間寝ていたりした後に起こりやすいです。 「病み上がり」と言う言葉がそれにあたります。 また満員電車で、足の位置が変えられないような状態で、つり革等に手をやっている時とかに症状が出現してしまい、倒れてしまったり、脳貧血のために尿を漏らしてしまったりすることもあります。 こういった脳貧血は立っている時だけでなくても、ふかふかのソファーとかで行儀よく足を揃えて座っている時に横や前に緊張するような人が居たりして身動きが取れないような状態に長時間さらされると、同じようになることがあります。

脳貧血の対処
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脳貧血の時は速やかに脳を心臓と同じ高さにすることが重要です。 簡単に言うと「しゃがんて頭を下げてうずくまる」。そうすればほとんどの場合脳貧血は回復します。 一度それで血圧が回復してしまえば、直後に立ち上がって同じ体勢になっても2回めは脳貧血にならないことが多いです。 最もダメな対応はそのままの姿勢で頑張ってしまうというものです。 倒れてしまったり、意識を失ってしまったりしてしまいます(神経調節性失神といいます)。それは結構な恐怖体験となります。 そして原因や対処がわからないままそのままの状態を長期間繰り返していると、また起こるのではないかという不安感が頭をもたげ、トラウマになってしまい、怖くて電車に乗れない、外出できないという状態になります。 こうならないためにできるだけ早めに医者に相談して大丈夫だということを確認することが大事です。 対処法がわかってそれ以降脳貧血にならなければそれで良いですが、そういったことがわからず不明確なまま長時間放置しておくと、たいていの場合その不安感から脱するのにとても時間がかかるようになります。 また頭を心臓と同じ高さにすれば殆どの場合回復しますので、これをすれば安全だという方法が早めにわかってしまえば、その前兆があった時点でうずくまってしまえば大丈夫なことが多いです。 ほとんどの方は脳貧血を日常的に体験していて、教わらなくてもうずくまってやり過ごしていて、とくに気もとめていません。

脳貧血は医者に邪険にされることがあります
そしてこれは病気とは呼べないものですし、薬ですっきり良くなる病気ではありませんし、忙しい時間帯だと医者のほうも適切な対応を取る時間がなく、なんの論理的な説明もなく「大丈夫ですよ」とか「疲れすぎですかね」とか、「きちんとご飯食べてますか?」といったどうにも納得行かない対応を受け、適切な対処方法を教わることなく診察が終了してしまいがちです。私も慶應大学病院にいて診察している時には、時間的な制約からそういった対応にならざる終えませんでした。

なぜ脳貧血が起こるのか
人間の体の中の血液の70-80%は静脈の中に蓄えられています。 静脈は、みなさんも外から触ってみると、結構柔らかくぷっくっとして押すと凹みますね。 温かいとくっきり出ていても、寒い冬とかになると、細く見えなくなっていたりすることに気づく方も多いでしょう。 実は静脈の太さは外気温や神経等によって微妙に調整されているのです。 人間は立ったり座ったりするたびに、自律神経を介してこの静脈の太さを自律神経を介してめまぐるしく調整しています。 重力にたいして低い足に落ち込んでしまう血液を静脈を細く占めることで心臓に戻そうとしています。 この機能がなくなるとほとんどの血液が足の静脈に溜まったまま、心臓に戻ってこなくなります。
もしも静脈の血液が心臓に戻ってこないと5秒ほどで血圧は速やかに60台を切ります。 さらに5秒から10秒続くと脳に十分酸素が行き渡らなくなり、目がぼやけてかすみ、下がった血圧を上げようとして心拍が早くなったり、手に冷や汗をかいたり、胸がカーっと熱くなったりします。 この血管運動のための自律神経機能は毎日立って生活することで自然に鍛えられ維持されています。 ずっと寝ていて使わなかったり、長時間無重力の環境にいて使わないと、一週間ほどであっという間に消えてなくなります。 また静脈の周囲の筋肉の収縮と弛緩でポンプの機能を果たして、足の静脈の血液を心臓に戻すことができます。 ですので体(の筋肉)が動かせないという状態はあまり脳貧血になりやすくなるのです。
また血液が減少すると心臓に戻る血液量が減ります。 空腹や緊張状態が長時間続くのは良くありません、緊張状態は尿を増やしたり、下痢になったりして、体液量が減ります。 空腹状態で更に体液を失うと、心臓に戻ってくる静脈血液がさらに減少し脳貧血に拍車がかかります。

重篤な病気と関連した脳貧血
そういった機能的な脳貧血以外にも、重篤な糖尿病患者さんや、シャイドレーガー症候群といった脳の病気、後は徐脈性不整脈や、肺血栓塞栓症といった病気などで、似た症状が出ることがあります。 また脊椎の手術のあとや腰髄の痛み止めの麻酔(硬膜外麻酔など)の後等に同じような症状になることがあります。 あまりにもひどい脳貧血はそういった病気を除外する必要があります。 こういった病気の場合再現性がありますが、機能的な脳貧血では体調や日によって同じ動作でも出る時と出ない時があるという違いがあります。

最悪なストーリー
上の病気でない場合でも、立ち上がるとクラクラするので怖くて寝たままで生活を始めてしまう方が時々いらっしゃいます。 実はそういった対応は脳貧血には逆効果になります。 人間の体は使わない機能はいらないものだと勝手にそぎ落としてしまいます。 例えば静脈の収縮や筋肉の収縮も、使っていないとどんどん弱ってしまいます。 そしてさらに症状が悪化して、どんどん立ち上がるのが怖いという悪循環に陥ってしまいます。 これは生物としての重力に対する反応としては自然なことですが、社会生活を営む人間にとっては大きな制約になります。

脳貧血の治療は?
きちんと検査して安心を確保したうえで、適切な対処法を実践することと、不安が消えてゆくまでの時間が必要です。時には抗不安薬を内服することも大事です。 重要なことは医者の安心ではなく、患者さん自身が納得して安心してもらう必要があります。 その安心できる時間が長く続くことが肝要です。一旦悪循環に入ってしまえば、そこから脱出するにはかなりの時間が必要だということをわかっていただければと思います。 また2節前に例示した病気でなければ、脳貧血を起こすたびに次は起こしにくくなっていくということです。 我慢して立っていたりするのは良くありません、前兆があればそれで訓練は終了、一旦うずくまってやり過ごしてくださいね。 それを何度か繰り返しているうちに、ゆっくりですが次第に脳貧血は起こりにくくなってきます。 自分の静脈の筋肉が強くなって適切に心臓に血液を戻すことができるようになります。そして不安は脳貧血を起こしやすくします。 不安も安心できる時間が続くと必ず良くなります。 なので脳貧血をこわがらないでください、周囲の健康そうな人もみな無意識に起こしている生理現象なのですから。

次は「目が回って、立ち上がれない」です。

重力に負ける人 1

患者さんを診察していて、時々病気ではないのだけれど、重力に負けてしまうという表現が的確な患者さんを拝見することがあります。一度重力に負けてしまうと、再び自力で立ち上がることができなくなり、その後ほとんど寝たきりになってしまうということでもあります。

体が大きくなりすぎて重力に負けてしまう
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皆さんの体重はどのぐらいが適正だと思われますか? おそらく、太っていることがその人のアイデンティティーになっている方もいらっしゃいますよね。 そうやって何十年も暮らしておられると、一念発起してダイエットして痩せてしまうと、「大丈夫ですか? どこかお体悪いのですか?」みたいに言われてしまう。 あとは仕事の上でのキャラクター作りとして太っておられる方もいらっしゃるでしょう。 体が大きい方はインパクトがありますし、すぐに覚えていただけます。 また宴席などで、大食家の人々はとても人気があって、飲食関係の仕事をしているとそういう体型になられる方も多いのではないかなと思います。そういう方々にとっては、肥満と言う要素は、何か自分の一つの大切な要素になっておられたりするのかもしれません。

肥満によって生じる可能性のある内臓への負担は、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、下肢静脈血栓症から生じる肺梗塞、睡眠時無呼吸症候群、内臓脂肪の増大による肺の圧迫などでしょうか・・・。 それと膝や腰などの骨格への負担もあります。 ある程度内臓のデータに影響が出ないうちは、私はあまり体重について強く申し上げることはしません。 その理由は外来という限られた時間の間に体重を減らすようにお話ししても、ほとんど効果がないからです。 何十年もやってきた生活のパターンを変えるのはとても大変です。 その大変なことを患者さんにやっていただくためには、患者さん自身が納得のいく理由や目標があること、そしてそれを貫き通す強い意志と目的を持つこと、そして周囲の人たちの協力が不可欠だと思います。 ただ骨格に問題が出始めるとそう悠長なことを言っていられなくなります。

大きな体重を支えるためには、強い骨格が必要になります。 骨は固く少しぐらい体重が増えたぐらいでは折れたりすることはありませんが、関節や軟骨などの動く部分はそうはいきません。体重が大きくなりすぎると、膝や、腰骨(脊椎骨)の軟骨が擦り切れ・変形して神経を圧迫したりして、強い痛みを生じます。 文明が生まれる以前なら、痛みで動けなくなった時点で、食料を確保できなくなり体重が減って結果的に関節への負担も減ったかもしれません。 しかし現代では、家からほとんど出なくても食料の確保は比較的容易です。 いったん痛みに負けて動かなくなってしまうと、その時間が暇になってしまい、手っ取り早い時間つぶしとして間食をしてしまうことも多くなります。 そうするとまた体重が増えてしまい、運動もできなくなるので、さらに体重が増えて、そういった悪循環の結局ほとんど寝たきりになってしまう場合があります。

ダイエットの方法はここでは記載しませんが、やはり骨格に痛みが出始めたら強い意思をもって食事制限をされたほうが良いでしょう。 そうしないといずれ重力に負けて寝たきりになってしましますから。

次は重力に負ける人、「怖くて立ち上がれない」です。

血圧は左手で測るほうがよいの? それとも右手?

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きっちりした先生に言わせると、血圧は右手で測定したほうが良いはずだとおっしゃられる先生がいらっしゃいます。 私も医学生の頃そのように教わった記憶があります。 患者さんの中にも「血圧測定するなら右手だ」と考えておられて、右手を出される方が時々いらっしゃいます。 私のクリニックでは患者さん側の左側に血圧計があるので、右手を出すためには上半身を90度ねじる不自然な姿勢になるのが少々困るところです。
私自身の考えは、血圧は、時々左や、時々右で測ってもらうのが良いと思っています。 そしてできればリラックスできる体勢で測ってもらうのが良いので、あまり体をねじらないで測るのが良いだろうなと内心思います。 前傾姿勢になるのは、腹筋や背筋に力がはいるのであまり好ましくないでしょう。 筋肉に力がはいるということは筋肉に血液を送り出すために血圧が少し上がり気味になります。 背もたれにきちんと背中を預けて、足は折りたたまずに、少し前に伸ばすような感じ、お行儀が悪いですが、電車の中であまり褒められない姿勢(足を通路に投げ出すのはエチケット違反ですね)、車の運転の時のような姿勢といったほうが良いでしょうか? で測定するのが良いでしょう。
右で測るべきたとおっしゃる先生の根拠は、右の腕につながっている動脈血管(右腕頭動脈)のほうが、心臓に近い大動脈から出ているからという理由や、左の腕に繋がる動脈(左腕動脈)と右の腕に繋がる動脈の間に、先天的にくびれがある(大動脈縮窄症)方がまれにおられて、くびれより心臓側で測定しないと正確な血圧が測定できないという理由を挙げられます。 しかし圧力が変化してしまうほどのくびれがある方は稀で、そういった方は小児期にすでに診断と治療されている方がほとんどです、私のクリニックにいらっしゃるほどの年齢になって初めてわかる方はかなり例外的です。 むしろ動脈硬化や動脈炎などで、右腕頭動脈や左腕動脈に狭窄ができることによって起こる血圧の左右差のほうが無視できない頻度であることが予測できます。なので左右どちらが正しい血圧かを重要視するよりも、まず左右差があるのかどうか、そしてその次にもしも左右に差があまりないのならば、一番リラックスできる体勢で測定できる血圧を測るほうが良いということになります。
左右差があるかどうかを確認するには、同時に2台の血圧計を左右の腕に巻き付けて測定するのがよいですが、それは少々やり過ぎでしょう。 簡単に測るのは、まず左で測定し、次に右で測定する。 血圧が20mmHg以上変化あるようならもう一度、左を測定し、次に右を測定してみて、同じような傾向があるか確認してみてください。 測定回数にしたがって常に下がってくるようなら、それは測定前の動作の余韻が解消されているだけで、前のほうの高い血圧はあまり意味がありませんが、何度繰り返しても常に、右が左よりも20mmHg以上高いようなら、やはり主治医の先生にご相談頂いたほうが良いでしょう。 ご家庭での皆さんの血圧測定がきっかけで、狭窄が見つかったりすることのほうが多いのです。
なので私の意見は、「血圧は時々腕を変えて測定してみてください。 いつもきまってどちらかの腕の血圧が20以上高いようなら、主治医に相談ください。」ですね。

心室細動

心拍数は、通常毎分50回から160回程度の収縮を行っています。 猛烈な運動をやったりすると180回近い収縮を伴うことがありますが、そういった運動を長時間続けることはできません。 心拍数が多くなるにつれて血液の流れも多くなり、運動で酸素がたくさん必要な体には有利です。 一心拍で打ち出すことができる血液の量はだいたい決まっているので、血液の流れは心拍数との掛け算になるからです。 しかし、毎分180回を超えると心臓に戻ってくる血液の量が追いつかず(大人の場合)、心臓が空打ちのような状態になり、さらに増えると心臓自身に酸素が行き渡らなくなり、筋肉が窒息し(虚血)心臓の動きは悪くなります。 その結果心拍数が増えても、血液の流れが増えずに頭打ちになります。 餅つきを想像してもらうと良いかもしれません。 餅つきのスピードが早くなると、餅がつき上がるのが早くなりますが、あまりにももちつきのスピードを上げてしまうと、間の手を入れることが難しくなり餅がうまくつけなくなりますね。 そういった限界の心拍のスピードがあるのです。 ただ正常のリズムを作っているペースメーカー細胞は通常毎分200回以上の心拍を打ち出すことはありませんので安心してください。
しかし心室細動あるいは多形性心室頻拍と呼ばれる不整脈は一分間に250回以上の心臓の収縮を起こします。あまりにも早過ぎる心臓の収縮のため、血圧が下がり、脳貧血を起こして意識を失うことがあります。 血圧が下がると酸素が十分行き渡らない心臓の筋肉の中で不整脈が安定化してもっともっと心拍数が増えたり、幾つもの収縮が同時に起こるようになり、不整脈から回復しにくくなります。 その状態が1〜2分以内に回復できなければ、そのまま死んでしまうことが多いです。

心室細動のきっかけは、心臓のしゃっくり(心室性期外収縮)のような収縮から始まることが多いです。 なのでそういった期外収縮が多い方は、細動を引き起こす可能性が多いと想像されています。 ならばそういった心室性期外収縮を止める薬が心室細動による突然死を予防するのではないかと期待された時期があったのですが、現実には薬はあまり良い効果が期待できませんでした。 なので、心室細動が起こりやすく、長時間それが持続しそうな患者さんには、植込み型除細動器という機械を植えこむことで、心臓突然死を予防することになります。
心室細動は長く続けば致命的な不整脈ですが、心臓の構造に異常がなければ、30秒以内に自然に回復してくることが多いです。 この場合の構造の異常とは、心臓の収縮力が低下するような心筋梗塞や心臓弁膜症であったり、心臓の筋肉の病気である肥大型心筋症や拡張型心筋症、不整脈源性右室異型性症候群・心臓サルコイドーシス・心臓アミロイドーシスなどが有名です。 こういった病気は心電図・心臓の超音波検査や採血などである程度判別することができますし、さらに心臓MRI検査や心筋シンチグラムやPET検査が必要な場合もあります。
もう少し具体的に言うと、安静時の心電図に異常がない患者さんですと、心臓の収縮力に異常があったり構造に異常があったりしなければ、基本的には命に関わるような危険な不整脈ではないと言われています。 ただし血縁者に若くして心臓で突然亡くなられた患者さんがおられたり、不整脈で失神(意識がなくなった)した経験があったりするようならば、無症状でももう少し念入りに経過を見たり、入院して検査をしたりしたほうが良い場合があります。 おわかりかもしれませんが、今まで失神したことがなくても、最初の心室細動で亡くなられる患者さんもいるはずで、そういった患者さんは事前に察知することはできないというジレンマを我々不整脈医は常に抱えていることを告白します。 ただその頻度はとてもとても少ないということと、あとは不整脈医の嗅覚に頼る部分で、なかなかそれを体系的に説明するのは難しいところでもあります。 申し訳ないです、そこは経験と勘というとても科学的ではない部分なのです。 不安があるようでしたら、不整脈の専門医にご相談ください。

血圧を120mmHg以下にするべき?

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11月中旬ごろに、2−3名の患者さんから、「高血圧の治療基準がまた下がるのですか?」とお話しを聞かれたことがありました。 どうやら今年の11月に米国心臓病学会での講演の内容の速報をテレビでやっていたようで、その内容を受けてのことのようです。 
この報告はSPRINT試験という名前で、すでに著名な学会誌に論文が同時に掲載されています。 原文を読んで思ったのは、すぐに日本の高血圧治療のガイドラインが変わるというわけではないなということでした。 おそらくこれを導入するためには、コレステロールの治療ガイドラインが変わらないと導入できません。 このホームページは患者さん向けのページなので、詳しいことはお話ししませんが、この治療に当てはまる方は、心臓病になる可能性がかなり高い患者さんだけに当てはまるものです。 大部分の患者さんは今まで通り、血圧上が140以下、下が90以下に、あるいは糖尿病や心臓病を持っている患者さんですと上が130以下で下が80以下にするというのが重要のようです。
ただこの試験結果を元に、次のガイドライン改訂では、高い心臓病のリスクを持った患者さんはにかぎっては、血圧を120以下にしたほうがよいというように変わってくるだろうと思います。
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不整脈 止めるべきか、止めないべきか?

登山家が山を登る理由を聞かれて「そこに山があるから登る」と答える。 登山家のジョージ・マロリー氏の言葉で、どうも誤訳だそうですが、たとえ誤訳であってもなんとなく山を登る人の普遍的な気持ちを代弁しているような気もします。
登山家は自分の命を危険にさらして登山による爽快感を得るのでしょう。 おそらく登ってみなければ解らない景色があって、それを体験することの素晴らしさを、体験していない人に言葉で説明することは不可能なのでしょう。 そこに山があるから、何の答えにもなっていないようだけれど、きっとそれ以外の表現方法がないのかもしれません。

しかし不整脈をなぜ治療するのかと聞かれて、「そこに不整脈があるから」と医者が答えるとすれば、これはちょっと誠意がない気がします。 登山家と何が違うかといえば、命を賭けているのが患者さんであって、医者ではないからなのだと思います。 病気の治療には医者と患者が同じ目的を持っている必要があります。 「そこに不整脈があるから」という理由は、患者さんにとってそう簡単に共有できる目標ないのではないかと思います。 一番共有しやすい目標は「命を長らえることができる。寿命を延長することができる」ということですね。 そしてもう一つは、「症状がつらければそれを止めましょう」というものです。 最近は「元気に長生きしましょう」というものも付け加わった気がします。

元気に長生き
これは、心房細動の際の血栓塞栓症予防の話ですが、少し焦点がずれますのでまた別の機会にお話します。

寿命延長
命に関わるような不整脈は珍しいです。 そういった危険な不整脈の多くは遺伝してゆくような不整脈であったり、心臓に構造的な異常があって収縮機能が低下している患者さんに限られます。 本当に珍しくそういったものに当てはまらない不整脈もありますが、それはまた例外中の例外です。 そのため寿命延長という目的で不整脈の治療をすることはほとんどありません。 特に後者、収縮機能が低下している患者さんにとっては、皮肉なことに不整脈の治療薬の副作用で寿命を短縮する場合があります。 なのでそういった患者さんに対しては、血管内手術(カテーテルアブレーション)や、自動植え込み型除細動器といった、どちらかというと外科的な治療に近い治療を行う傾向があります。

辛い症状を止める
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不整脈の治療は、必ず何らかの代償が必要となります。 薬を飲む手間や、手術のための入院の時間も当然ですが、それ以外に強く効果のはっきりとした抗不整脈薬の多くは、心機能の良い患者さんにとっては無視できる程度ですが、心機能の悪い患者さんにとっては寿命を短縮してしまう副作用があります。 なので「症状の程度」と「副作用の危険度」の大きさが釣り合いが取れているかどうかが重要になるのです。  つまり患者さんの症状がどの程度なのかを推し量ることが、治療するかしないかの分岐点になります。
同じ病名の不整脈でも、その症状は人によって全く異なります。 ある患者は、心電図で指摘されるまで全く気づかなかったりします。 ある患者さんは、一発でも不整脈があると、その日一日全く仕事が手につかなかったりします。 症状の強さがどうして個人差があるのかは解ってはいません。 そして症状の強さは、患者さんにしかわからないところが難しいところです。 医者はそのため、患者さんに症状について根掘り葉堀り聞きます。 患者さんはもしかしたら自分の不整脈が命に関わるものではないかと心配で、自分の不整脈の症状について、詳細に報告される方もいらっしゃいますし、我慢して全く黙っておられる患者さんもいます。 医者としてうっかりすると、この患者さんの症状についての報告時間の長さで、患者さんの困っている程度を誤認することがあります。 外来で長時間症状について説明される患者さんが、症状に困っているものだと誤解してしまうわけです。 実は医者に聞かれるから克明に話されているだけで、よくお話を聞くと実は全く困ってはいなかったことが、カテーテル手術直前に解ったりすることもあります。 これはもしかしたら、医者側が長時間患者さんの自覚症状を聞く辛さを、患者さんの辛さとすりかえているだけなのかもしれませんね。 
では副作用の危険度がどのぐらいあるのかと考えてみるとこれも実はあまりよくわかっていないのです。 心機能の保たれた患者さんで、抗不整脈薬でどのくらい心事故を増やすかという明確なデータは実はありません。 ただ自分の大学での不整脈治療の経験から言えば、きちんと、採血や心電図を定期的にとっていれば、年間1千人に1人以上ということはないのではないかなと思います(もっと少ないのではないかなと信じてますが)。 ご自身の自覚症状の強さが、その危険度を超えていると思われるなら、お薬を飲んでいただくことになります。 なので、私の外来ではいつも初めに、この不整脈を止めたいと思うかどうかを直接お聞きするようにしています。
命の危険度を比較することはあまり良いこととは思いませんが、治療の際にそれを患者さんに判断していただかなくてはならなくなるので、不謹慎だと言われることを覚悟で、極端でそして身近な例を挙げてみます。 みなさんそれほど意識しないかもしれませんが、1年間に交通事故で死亡する確率は1〜2万人に一人と言われています。 つまり外出すれば確実に死亡率が上がるわけです。 では、みなさんそれを怖がって外出しないで家でじっとしているかというと大部分の方はそうではないはずです。 それは外出しないことによって生じる不利益と、事故死する可能性の程度を無意識に天秤にかけて生活していると言えます。しかし、年間千人に一人が死亡するなら外出するでしょうか?、あるいは100人に一人ならどうでしょう。 年間100人に一人が死ぬという交通事情なら、きっと子供達の外出には大人が送り迎えすることになるでしょうね。 あるいは家庭によっては、子供を外にださないてご家庭で勉強させるというご家庭も出てくるでしょう。 つまり、どのぐらいリスクがあるのか、その数字を見て自分たちの行動を決定して行くことになります。 それと同じことが、不整脈薬を飲むことのリスクについても言えるはずです。しかし交通事故死の確率とは異なり、不整脈薬を飲むことによるリスクがどのぐらいあるのかという具体的な数値はわかっていません。 
反対に患者さんに得られる利益について突き詰めてみると、治療に踏み切るかどうかは、本当は患者さんの不整脈の症状の強さが重要なのではなく、止まることによって得られる患者さんの満足度がどのぐらいかということが大事なのだとわかります。 実はこれも計り知れないものがあります。 序文でお話ししたように、不整脈のない世界を体験しなければそれを想像することは難しく、患者さんの治療によって得られるメリットを、治療の前には小さく見積もってしまうこともあります。 また患者さんの気持ちは一つの言葉で説明できるような単純なものではないことも確かです。 『不整脈止めたいですか?』とお聞きして、YesかNoかで答えるだけでは不十分で、患者さんと結構長い時間お話しして、本当はどのぐらい不整脈を止めたいと思っているのかを想像してゆく必要があります。 
つまり治療すべきか、治療すべきでないか、これは患者さんとお会いしてみないとわからないというのが結論なのでしょう。 でも「そこに不整脈があるから」という理由だけでは決して治療すべきではないと思います。

心臓の形ー4

脳は糖を使い、心臓は油を使う


人間の3大栄養素って知っておられますか? 糖分と脂肪とタンパク質ですね。 ざっくりというと、タンパク質は体の構造を作るのに重要です。 脂肪はエネルギーの貯蔵 糖分は即座に使われる利用効率の高いエネルギー源です。 じゃあ、タンパク質と糖分だけ食べていればいいんじゃないかと思われる方も多いかもしれませんが、油には油の役割があります。 動物はこの3大栄養素をすべて活動のためのエネルギーにする事が出来ます。 体を構成するあらゆる細胞はこの3つの要素を取り込んで、活動を繰り返しています。 しかし、脳と心臓だけは例外です。
脳がその活動のほとんどを糖に頼っているのは意外によく知られているかもしれませんね。 逆に心臓は脂肪酸だけを原料として活動しています。 脳と心臓というとても重要な臓器がなぜ、一種類の栄養素でしか活動出来ないという生命活動に不利な条件で生存しているのか、あまりよくわかってはいませんが、そうなのだから仕方ないということの様です。

ちょっとここで脱線して、脳が必要とする糖について説明してみます。


糖分は主に肝臓に蓄えられていて、食事から得られる糖分が少なくなると、肝臓に蓄えられた糖分が血液の中に分泌され始め、糖分を常に 90mg/dlから 110mg/dlの濃度に厳密に保とうとします。もちろん食事などの後には一時的に140mg/dl程度の濃度まで上昇することはありますが、それ以上にはならないように厳密に調整されています。 肝臓は体の中で一番重い臓器だと言われていますが、それでも蓄えられる糖分には限りがあります。 なので肝臓の中に蓄えられている糖質がなくなってしまうと、脂肪やタンパク質が分解されて、糖を作ろうとします。 こういった糖を他の栄養素から合成することを糖新生と言います。 「でんぷんや糖分をとらなければ脳細胞が死んでしまう!!」というのは大きな間違いですので、糖質の摂りすぎにはご注意ください。 何が言いたいかというと、3大栄養素は時間をかけさえすれば、お互いやり取り出来る栄養素だと言う事です。 不必要に取り込んだ糖質は脂肪として蓄積され、逆に糖がなくなれば脂肪が分解されて糖ができます。 もっと脱線してダイエットの話になりますが、脂肪で10キロを減らそうとすると、だいたい7万カロリーになりますので、35日間絶食してようやくなくなるぐらいです(極端なダイエットは危険なのでやめてくださいね)。 もっとも脂肪が分解される前に、筋肉などのタンパク質が分解されますので、現実にはもっと大変なわけなのですが、いずれにせよ大事なのは、肥満気味の人はちょっとお腹が空いたぐらいでは人は死なないということです。

心臓は油を使って動いている


一方で心臓は脂肪酸だけをエネルギー源として収縮しています。 その理由は大学にいるときに研究に携わった際にいろいろ勉強したのですが、よくわかりませんでした。 確かに糖分に比べて、安定して供給されるという利点はあるでしょうが・・。 なぜ他の栄養素を受け付けないのかはよくわかりませんね。 ただ例外として極端に元気が無くなった心臓の筋肉は糖分を使い始めるのですが、その際にその心臓の筋肉は収縮しなくなります。 心臓の役割を考えると、とても正常とは言えない状態です。
脂肪の話になりますが、脂肪を食べると皮下脂肪が増えると思っておられる方の中で、脂肪を全く食べない方がおられますが、それはあまり意味がありません。 まず根本的な間違いは、脂肪を食べなくても、糖やタンパク質からも脂肪は作られます(さっき述べましたね、3大栄養素は時間をかけさえすれば、お互いやり取り出来る栄養素という事です)。 そして脂肪を含む食材の中にはいろいろな栄養素が含まれていることが多いです。 例えばビタミンAやビタミンEなどの脂溶性ビタミン、こう言ったビタミンは皮膚の状態を落ち着かせたりする作用があったりします。 また体の中では作ることができない、必須脂肪酸と言われるリノール酸やリノレイン酸という脂肪酸が欠乏することがあります。 また脳は糖で活動していますが、8割は脂肪でできています。 すでに痩せている人が、極端に脂肪を避け、摂取カロリーを減らすことは、こう言った生物の機能の根本を揺るがします(例えば拒食症の方の大脳の前頭葉が小さくなってしまうという例が有名ですね)。 そういった現象は、とてもストイックに薬を飲むのを嫌うあまり、コレステロールを下げるために極端な食事療法に依存してしまう方にも見られます。 そういった方は、しばしば、必要な油の成分やビタミン等も取らない傾向があり、肌がかさかさになったり、とてもやせ細ってやつれたりする事もあります。 時々それをコレステロールを下げたためだと勘違されているような気がしますが・・。 悪玉コレステロール値の高いやせ形の患者さんは、あまり無理に食事療法にだけ固執しないで、きちんと内服された方が良いのになと思いながら、三好クリニックでは一応患者さんが納得するまで、1年でも2年でもつきあっておりますが・・・。 脂肪の中にはやっぱりある程度、体に必要な他の要素も含まれているのですから・・。 あ!、でも太っている人はちゃんと脂の摂取は控えてくださいね・・・。 もう十分栄養素とってますから。

これでしばらく心臓の形編を終わろうと思います。 まだまだ心臓の形や、リズムの出来方等、いろいろ興味あることはあるのですが、それはまた別の機会に。

心臓の形ー3

絶え間なく働いている心臓


心臓はとても単純な構造をした臓器ですが絶え間なく動いている臓器です。 心臓は収縮している時だけでなく、弛緩している時もとても重要なことを行っています。
心臓は血液を全身へ送り出すとともに、収縮するために必要なエネルギーを自分自身に送り出す必要があります。 栄養のある血液が心臓の内側にたっぷりあるのだから特に何もせずとも、酸素や栄養は行き渡るのでは無いかと考える人もいるかもしれませんが、そういった方法(自然拡散)で効果がある範囲は0.2mm程度でそれ以上遠くへは届きません。 心臓の壁の厚みは左心室で10mm程度ありますから、全くもって足りない訳です。 ですので心臓は自分自身に血液を送る必要があります。 心臓には心臓の周りだけをまわっている血管で名前を冠動脈という動脈を使って血液を送り出しています。 冠動脈は心臓から出たすぐの所、大動脈弁のちょっと上当たりから枝分かれしてそのまま心臓全体に血液を送っています。 心臓以外の臓器では、血液が最も多く流れる時間帯は心臓が収縮している時間帯ですが、心臓を栄養している冠動脈に流れている血液は、弛緩しているとき(医学的には拡張期と言います)に流れます。 心臓は収縮して血液を全身の臓器に送り出しているのに、心臓自身は弛緩しているときだけしか血液を受け取れないというのはちょっと変な話ですね。 つまり心臓は収縮している時間も弛緩している時間も両方とも重要なのです。

心臓は無限に早くは打てない


そして心臓が一回に収縮している時間の間隔は、ほぼ一定だと言われています。 運動して心拍が早くなると、少しだけ短くなりますが、それでも 0.35から0.4秒位の間での変化で、ほとんど変化しないと考えても良い位の変化しかありません。 運動したり興奮したりすると、心臓は全身の酸素の要求に応えるため、いっぱい収縮の回数を増やして血液を送り出そうとします。 しかし一回の収縮時間が決まっていると、一秒間に収縮できる回数には限りがあることがわかるでしょうか? つまり一秒間に3回以上の収縮をさせると、心臓は弛緩する時間がなくなり、自分自身に血液を送り出す時間がなくなります。 収縮回数が多くなってたくさんエネルギーが必要なのに、自分自身に必要な血液を送れない。 血液が十分回らないこの状態を「虚血:きょけつ」と言います。 心臓の筋肉はとても単純でタフにできていますが、酸素が行き渡らないと、30秒以内に収縮をやめてしまいます。 つまり人間が全身に血液を送り出すのに最も適した心拍数は、1分間に50回から180回ぐらいの間であるわけです。 それ以上心拍数が増えても、実際には収縮が間に合わなかったり不十分であって、それ以上は循環する血液のスピードは上がらないのです。 

心臓は収縮して全身をいたわり、弛緩して自分をいたわる


つまり、心臓にとって、収縮している時だけでなく、弛緩している時も重要だということです。 心臓の筋肉を守り酸素や栄養を十分行き渡らせるために、この弛緩している時間をできるだけ長くすることが重要で、それは具体的に言うと心拍数を落とすことが必要になります。 そのため、ざっくりとお話しして心拍数が遅くなるタイプの薬は、通常生命予後を良くする。 つまり寿命が長くすることが知られている薬が多いのだろうと言われています。 狭心症などの治療に、心拍を落とす薬を使うのはそういった理由からなのです。

次回に続く

心臓の形ー2

人が立ち上がるという事


人が人以外の動物とが決定的に違う部分はなんだと思いますか? 画期的だった点は、脳の大きさもありますが、常に2本足で生活する事でしょう。 2本足で生活する事は多くのメリットがあるのですが、それはまた機会があれば説明してみましょう。 人間は2本足で生活するようになっても心臓の構造は他のほ乳類の心臓と大きさ以外は変わりありません。 

心臓はぶらぶらしてます


心臓は周囲の肺などに比べて液体が充満した比較的重い臓器なので、重力に強く影響を受けます。 心臓は収縮の邪魔にならないように、それでいてあちこち移動しないように、主に左心房の裏側だけで背中から吊り下がっています。 左右に大きくぶれないように、心(外)膜という薄い皮で囲まれています。 そういった束縛されない構造のため加わる重力の方向によって心臓の位置は大きく変わります。 体の方向によっては、接続部位や、周囲の臓器や骨に当たった部分に強い力が加わり、それが刺激になって心臓が余分に収縮したりする事があります。 これを期外収縮と言います。 こういった期外収縮の発生に、心臓と周囲の臓器の位置関係は結構重要で、体の方向や位置によっては、不整脈が出やすくなったり症状が強く感じられたりする方向があります。ちょっと雑な言い方をすると、どちらかというと四つ足動物と同じうつ伏せの方が、期外収縮の患者さんには良い様です。

位置の変化で不整脈も出ます


人間は立ち上がる事によって、心臓にかかる重力の方向が変わりました。 4足歩行の動物では、重力は背中からお腹方向にかかるのに対して、2足歩行になると、頭から尻方向に重力の方向が変わります。 それによって人間の心臓は、重力によって垂れ下がり、より横隔膜に接するようになっています(横隔膜の上に乗せて重力を軽減している)。 また、もともと4足歩行の動物の胸の骨全体の構造は、重力を効率よく背骨へ逃がすように、前後(背腹方向)に長くなっています。 人間は、重力のかかる方向が変わった事で前後の幅が薄くなり、それにしたがって背骨と胸の前側の骨(前胸部)との間が小さくなる傾向にあります。 特に、都会で生活していて、上半身の筋力があまり必要の無い人々は、背中の筋肉の発達が少なく、背骨も後ろ側への湾曲が少なく、まっすぐのまま成長する傾向が強いです。 そうすると、さらに背中と前胸部の距離が短くなり、周りの臓器に当たらずに動いたりするスペースが無くなります。 そういった方々の多くは、不整脈で心臓がいびつな運動をするときに、症状が出やすい傾向があります。 簡単に言うと痩せていて胸板の薄い方のほうが不整脈の症状は強く出る傾向があります。 私の患者さんで時々、上半身の運動(ラジオ体操第一)とか、マッケンジー体操といって、背筋を鍛える運動をされるようになった後に、不整脈の症状がとても良くなったりする方がいらっしゃいます。 お薬飲むのはいやだなとおっしゃる方、ちょっと試してみてはいかがでしょうか?

とりあえず横隔膜で下から支えられている心臓


人間は立つ事で、心臓の重みを今度は横隔膜でささせるようになりました。 ちょうど横隔膜の上に心臓が乗っている様なイメージでしょうか? そのため心臓の位置は呼吸で変動します。呼吸の息を吸う時だけ不整脈が出られる方や、きついベルトをすると楽になったりする人や、体重を増やすと(他の病気が悪くなる事がありますが)横隔膜の位置が内臓脂肪で持ち上げられて心臓の重量を腹で支えるようになります、そのようになると自覚症状が楽になったりする人がいる様です。 
人間は立ち上がる事によって脳が発達したと言いますが、心臓はあまり最適化されていないのかもしれませんね。 

次回に続く

心臓の形ー1

今日は病気の話では無く、心臓のお話です。

Heart Icon
心臓と言う言葉から解るように、昔の人は心臓に心があると考えていたのでしょう。 
まだ内蔵の機能がよくわからなかった時代に、死んでしまった人と生きている人の違いを観察して、死んだ人の心臓が止まっている事から、心が心臓にあるのだと考えたり。 あるいは興奮して昂ると心拍が上昇し、落ち込んで静かにしていると心拍数は落ちる、こういった感情の変化で起こる鼓動の変化から、心はきっと心臓にあるに違いないと思ったのかもしれません。 英語でも日本語でも心臓(Heart)は心(Heart)と同じ言葉で表されます。 それは漢語の文化圏もラテン語の文化圏も直感的にほぼ同じような事を考えたのだとわかります。
我々の心が、脳の中の単なる電気信号の集合なのか?、それとも本当は心臓にあるのか?、それとも我々が感知出来るこの世界の外にあるのかとても興味はありますが、実際に心の活動を外から客観的に観測する事が出来ないために、現状では答えの出ない問題です。 答えのでない問題はここではちょっと横に置いておきましょう。 ただ現代の日本で見られる多くのジェスチャーやシンボルの中では、心は心臓と同じ物として表されます。 つまりハート形ですね。 トランプ等で見られるハート形は、上の2つの半円状の突出は心房を、下の緩やかにとんがった部分は心室の形をとても良くとらえています。 冷静に考えると、女子高生達が、通学鞄や携帯についているハートマークや、バレンタインのチョコレートのハートマークは、それが心臓だとおもうとちょっとグロテスクな感じがしますね。 つまり現代社会でのハート形は、元の心臓と言う意味から離れて、すでに心そのものをさしているのだと思います。  それぐらいハート型はよくできたシンボルです。 誰が考えたのでしょうかね・・・・。

こういったいわゆるハート形の心臓は魚類には見られず、両生類以降にようやく見られる形です。 心臓の形も進化の過程で人間に近い動物ほど人と似ていて、遠いほど人とは異なっています。 人と同じ様な形、2つの心房と2つの心室が分かれた構造を取るのは、鳥類とほ乳類になります。 ではもっと古代の動物ではどのような形をしていたかというと、弁の付いた血管の様な形だったと考えられています。 静脈には弁が所々にありますので、静脈の形が心臓の原型のような物なのでしょうね。 人間はその胎内での成長の過程で、進化して来た過程を忠実にそして短期間でたどって生まれてきます。 なので、胎児の成長を観察していると、そういった血管の一部が大きくふくれて、強い筋肉が付いて、最終的に心臓が完成してゆきます。

胎児循環

母体の中で活動性している胎児は、生命活動に必要な酸素や栄養素を胎盤から得ています。 人は生まれた瞬間、オギャーと叫んだ瞬間に、急にそれがなくなって、いきなり肺で呼吸を始めるために、ものすごい勢いで心臓の環境を変化させます。 胎児の間の心臓は(胎児循環と言います)、左心室をほとんど使っていません。 胎盤・へその緒から送られてきた血液は、一旦右心房に到達します。 そこで、(1)右心房と左心房の間にある弁(卵円孔と言います)、を通って左心房へ流れ、左心室から全身へ送られる血液と、(2)そのまま右心室・肺動脈から、動脈管といって肺動脈と大動脈を直接繋いでいる血管を通して、全身に母体の栄養の入った血液を送っています。   この血液循環のやり方は、生まれた瞬間に肺が広がることで、右心室から肺への血液が爆発的に増加、先ほどの卵円孔と動脈管が閉じ、右心室中心から急に左心室中心の循環システムに切り替わります。  この変化に心臓が完全に適応するに30年近い年月を要すると言われています。 18ー19歳ごろでほぼ外面的な体は出来上がるのに比べて、心臓の形が完成するのはもっと後なのですね。

次回に続く

患者さんはなぜコレステロールを下げたくないと思うのか−2

前回の続きです。

8、老化する


どういう理由か解らないのですが、時々「コレステロールの治療をするとしわしわになる」とおっしゃる方がおられます。 なぜそう思われるのかよくわからないので私の見当はずれなのかもしれませんが、コレステロールが細胞膜を作っているからという理由なのかも知れません。 ただ肌のつやを作っているのは皮膚の下の細胞とは関係のないタンパクの組織で、コラーゲンの線維とそこを埋めるリンパ液が皮膚のハリやみずみずしさを作っています。 なのでコレステロールが多くても少なくても皮膚のツヤは変わりません。 ただコレステロールと一緒に油を摂取していると、その余剰の脂分が皮膚に汗と一緒に分泌されて皮膚がツヤツヤになるかもしれませんが・・。 コレステロールを沢山とって動脈硬化が進んでくると、むしろ皮膚の血管の閉塞も進んで、老けてゆくスピードが速くなるのではないかなと思われます。 あと食事制限だけで頑張ろうとする方も、栄養が偏っていたりするのかもしれません。

9、ガンになる


コレステロール値が低いと、ガンになりやすいのではないかという考え方があります。 医者が下げろというコレステロールを下げるとガンになるのではたまらないわけで、こういう話は読者の興味をひき話題になります。  そのため一般の方がそういう内容の話を目にする機会も少なくないでしょう。 しかし、コレステロール値が高い患者さんにコレステロールの治療をしたらガンが増えたということを示した研究結果は実は一つもありません。  ほとんどの研究結果が治療によって総合的に見て死亡率が減少することをしめしていて、この点について疑問をはさむ方は、おそらく後で示す「陰謀説」を信じている方だけでしょう。 
その一方で、コレステロールが低い患者さんの経過を見ていたら、ガンで死ぬ人が多かったという研究結果は結構たくさんあり、低コレステロールと癌が関係があることはわかっています。  しかしそれを示している研究は原因と結果を特定することができないものばかりです。 具体的にいうと、「癌だからコレステロールが低い」のか、 「コレステロールが低いから癌になる」のかを決めることが出来ないのです。  少し話が難しくなりますが、それが統計学で、その詳細をここで説明はいたしません。 ではどうするかというと、どちらが原因であったのか読者の判断に任せられるのです。  ですのでこれは私の私見ですが、臨床で多くの患者さんの治療を経験してきた医師で、きちんと統計学を学び、原典をきちんと読んだ医者であれば、癌が栄養状態を悪くして、その結果コレステロールが低くなっていると考えるでしょう。 もちろん逆である可能性はゼロではありませんが、それが間違っているであろうという間接的な証拠はきちんと記載されています。 なのでもしも私が自分の命をかけるとするならば、癌に恐怖してコレステロールの治療を諦めるより、コレステロールをきちんと下げるほうに命をかけます。

10、コレステロールが高いほど長生きできると聞いたから


100歳以上の超高齢者の研究をして行くと、そういった方々のコレステロール値が比較的高かったという報告があります。 なので長生きしたければ、コレステロールを高くて良いのだということを時々メディアで拝見したことがあります。 もしかしたら本当にそうかもしれません。 ただ、私は100歳まで生きたいとはちょっと思えませんが・・。 
論理的に考えて「100歳以上の高齢者のコレステロール値が高い」という観察結果から、 「コレステロールが高いほど長生きできる」という結果は導き出せません。 その理由は、その方々が50歳-60歳ぐらいの年齢の時に、本当に悪玉コレステロール値が高かったか記載されていないからです。 50-60歳の時の悪玉コレステロール値が高い方が長生きされていたら、表題の結論で間違っていないでしょう。 しかし、100歳になれば、若い頃に比べてほとんど動かなくなり、体重も増えて、悪玉コレステロール値は自然と高くなってくることが予想されます。  そしてもう一つ、100歳以上の方を皆さんご覧になられたことありますか? 私は医者をしていて、拝見したことがあるのは1人だけです。 普通は一生のうちにお会いできない方の方が多いのではないでしょうか? これは申し上げにくいことですが、それぐらい珍しく、医学的には異常な方々です。 その異常な方々の例を、普通の我々にあてはめるのは間違っています。  そして最後に、100歳を超えておられる方々はどんなに長生きされたとしても10年で寿命を迎えます。 つまり10年しか生きていけない方々のデータを、40歳や50歳の方々のデータに当てはめてはいけないとおもいます。 

11、薬屋の陰謀だから


ネットサーフィンをしていると、時々「薬屋が儲かるようにデータを操作しているのではないか」という論調のもの拝見することがあります。 陰謀に立ち向かうヒーロイズムは物語としては面白く、多くの読者の注目を集めるでしょう。 事実データのねつ造等が問題になって科学論文が取り下げられる事もあります。  人を疑い始めると際限なく疑うことができます。 しかし全ての科学論文の結果を疑ってしまうと、迷信や信仰に頼るしかなく、それは医療ではなくなってしまいます。 私も研究を行い論文を書く仕事をしていましたが、科学論文を自分に都合のよい結論にするのは困難です。 論文として出版されるまでに半年から1年以上の期間をかけて、審判をしてくれる複数の中立の科学者と議論をする必要があります。 その際、きちんとデータを提示する必要があり、この段階で不自然なデータ操作やあいまいな個人的な憶測や推測は全て排除されます。 また研究は多くの研究者が集まって研究を行う事が多く、お互いが不正を監視し合うようになります。 また研究は再現性が重視され、複数のグループが追試験をしても同じ結果が出る事が重要で、再現性の少ないデータを発表する研究者は学会では無視される傾向にあります。 また明らかにおかしな結果を出してくるグループがあっても、見る人が見るときちんとおかしい事が解ります。 陰謀もあるのかもしれませんが、それを実行するのは困難で、特に数多くの独立した研究グループの研究がほとんど同じ結果を出しているコレステロール治療の分野では、薬屋の陰謀論は考えにくいと私は考えます。 
むしろ陰謀を考えるなら、一般雑誌や本等で、特にレフリー(審判)がいない状況で出版された文章のほうが怪しいはずです。 より本が売れるように、雑誌が売れるように、読者が求めている結論や、読者に印象に残りやすい結果を憶測や推測で記載してもよいわけで、そこにはなんの歯止めもないからです。 患者さんの中には、そういった本やインターネットでの情報を信じ、論文等に記載されたデータを陰謀だと言って信じられない方もおられて、少々外来診療で険悪な雰囲気になる事もあります。  
自分の身に当てはめてみると、同じぐらい疑わしい結論が2つあると、自分にとって都合の良い結論に飛びつきやすい心理傾向があります。 そういった判断の多くは「そんなことはありえないから」という形で心の中で処理されることが多い気がします。  自分が死ぬなんてありえない、今まで大丈夫だったのだからこれから悪くなるなんてありえない、 薬屋の陰謀なんてありえないというのも一つなのでしょうね。  そして人間は、自分の経験や知識をもとにして、どちらがよりありえないのかを判断して、どちらかを選び行動することになります。  私は、患者さんと接してきた色々な経験や、科学論文や先人の知恵などを総合的に判断して、やはりコレステロールの治療は必要だと判断します。  医者は科学者です。 科学論文の中に何か間違った情報があったり、専門家の判断に誤りがあっても、ある程度それを信じて行動しなければ、迷信や信仰だけが行動原理であった古の時代に逆戻りしてしまうでしょう。  なので、私はやはり現在の高脂血症学会のガイドラインをきちんと守って治療を行うようにしています。 逆に極端な話をすれば、陰謀説を信じるのも悪くはないでしょう。 ただ患者様にはそれに「自分の命」や「人生」を賭けているという覚悟があるかどうかが問題なのだとおもいます。 

患者さんはなぜコレステロールを下げたくないと思うのか−1

コレステロールの高い患者さんとお話ししていて感じるのは、一部の患者さんの中に強く治療に抵抗される患者さんがおられることです。  そういう方々のなぜ治療をされたくないかという理由を分類してみましょう。

1、 今、特に不自由していないから


おそらく、コレステロールが高いといけないことがわかっていても、今なにも体調が悪くないので、治療をされたくないという方が圧倒的に多いのではないでしょうか?  これは医者の独断で要約すると、「将来のいつ頃に、どのような病気になって、どのぐらい不自由されるのか」ということを患者さんがきちんと想像できないのかなと思われます。  
例えば、「将来心筋梗塞や脳梗塞で死ぬかもしれない」というような、漠然としたイメージではなく、「50歳で脳梗塞になり半身が動かなくなる。 左足が全く動かなくなりツッパリ、左手も動かなくなる。  杖をついてゆっくりと動ける程度で、階段の昇降は一人ではできなくなる。 言葉も、片言で、「ウー」とか「アー」としか言えなくなり、トイレにも一人で行けず、紙おむつが必要になる。 今まで勤めていた会社をやめなくてはならなくなり収入が激減、住宅ローンも10年残っていて、住み慣れた家を処分して、出ていかなくてはならなくなり・・・。 その状態が20年30年続くとしたらどうでしょうか?」 といった現実的なイメージを持てるかどうかも、治療をきちんと受ける動機になります。  実際にそういった患者さんが周囲におられたり、身内にいらっしゃると、よりリアルに想像出来るのでしょうね。 今はなにも不自由されておられないかもしれませんが、周りの方々より明らかに早く、脳梗塞や心筋梗塞で不自由な生活を強いられることになります。 10年20年後の自分のために、ぜひコレステロールは適正な値にコントロールしたほうがよろしいでしょう。

2、自然のままでいいじゃないか


薬のような人工物を取るのは自然じゃないし、自然じゃないことは体に良くないだろうと思っておられる方多いのではないでしょうか? ただそういう方々の多くは根本的な事を見落としています。 それは食事です。 先進国での人間の生活は、人間以外の野生の動物と比べると大きく逸脱しています。 特に食事は異常で不自然です。 カロリーの高いもの、砂糖や卵、肉などを、何不自由なく食べて暮らせて、そして、下手をしたらほとんど外出することもなく生活することができるような環境。 これは野生ではあり得ない環境です。 自然な環境で生存している野生動物の悪玉コレステロールの値は 35-70 mg/dlと言います。 これは人間の赤ん坊の悪玉コレステロール値と同じぐらいです。 そしてこれは我々人間の悪玉コレステロールの目標値 140mg/dl以下よりかなり極端に低い値です。 もし本気で自然を追求するのでしたら、まずは食生活を見直べきでしょう。  だた本当に、35-70 mg/dlぐらいの値の患者さんがいらしたら、ほとんどの医者は「ちゃんと食事してますか? 何か病気なんじゃないですか?」と心配になってしまうぐらいの低い値です。 それぐらい野生の動物は過酷な生活をしているわけで、そこまでする必要はないのではないかなと思います。
「自然なほうが良い」と考えておられる方の多くは、自分なりの現状が「自然」で、その自然を変えたくないということなのではないかなと思われます。  薬のように今まで飲んだことがないものを飲みたくないという気持ちはわかりますが、皆さんが日常食べられている食事もそう大した変わりはないのではないかなと、私は個人的におもいます。 普通にみなさんが口にされている食品には、合成着色料・合成甘味料、いろいろなものが入っています。にわとりの卵ですら、黄身を鮮やかにするために親鳥の飼料に色素を加えている時代ですから・・・。 それなら安全性をしっかり検査された薬を内服するのもあまり変わらないのでは無いかなと思ったりします。

3、もうあまり生きることに執着していない


ご高齢の患者さんや、親しい人と死別してしまっているような患者さんの中には、もうあまり生きることに執着しておられない方もいらっしゃいます。 そういう患者さんのなかには、お薬を飲んでまで長く生きたくないと思っておられる患者さんもおられます。 

4、飲むと負けたような気になる。 病院につながれているようで嫌


この気持ちは解りますね。 そういう患者さんには、生活習慣の改善をしていただく事で対応する事があります。 しかし、無理をしても長続きしませんので、長く続ける事が出来る習慣をおすすめしています。 遺伝的に、体質的に高くなっておられる方もおられて、生活習慣だけではコントロール出来ない患者さんもいらっしゃいます。 その場合やはりお薬の内服をお勧めします。 しかしそういった患者さんの中でも、なかなか説明しても薬を飲む事を嫌がられる患者さんもいらっしゃいます。 そういう方々にはやはり薬を飲まないと若死する病気だとご自身の病気を理解していただく必要があります。 薬を飲まないと周囲の方より早く死ぬのだということを考えると、薬を飲んだほうが勝ちのような気がします。

5、実際に飲むと、調子が悪くなるので飲まない


コレステロールの薬の副作用として、肝機能障害と横紋筋融解症といって、筋肉がダメージを受ける事があります。 ただし、こういった副作用は最近の薬では珍しくなりつつあります。 特に治療薬の使用可能な上限ギリギリの量を使っている場合に見られやすく、そのような量の治療薬は、一般的な生活習慣病の患者さんではほとんど使いません。 時々患者さんの中には、「内服中に筋肉が痛くなったから飲むのをやめました。」 とおっしゃる方もいらっしゃいますが、よくお話を聞くと、前日にゴルフをしたとか、子供の運動会にでたとか、慣れない畑仕事をしたとか、「それは普通の筋肉痛なんじゃないかな・・・。」と思うようなことでやめてしまわれて、その後どんなに説得しても飲まないとおっしゃられる方もいらっしゃいます。 筋肉の副作用、横紋筋融解症はとても有名ではありますが、最近のお薬では少ない薬の量で良いコントロールを得られるので、ほとんど見られません。 やはりきちんと、主治医に相談して、薬の副作用かどうか採血を行ってからやめられた方が良いでしょう。 副作用かどうかあやふやな状態でやめてしまうと、もう一度お薬を始めるときもきっと恐ろしくなるでしょうし、やはり冷静にきちんと対応していた方が患者さんにとってよろしいかと思います。
そういった派手な副作用以外にも、怠くなる、やる気がなくなる、鬱の症状が強くなる、下痢になる、といった理由でお薬が飲めない患者さんもおられます。 その場合、コレステロールが高い事によるリスクを承知の上でお薬を中止する事もあります。 また薬の系統を変えるとそういった副作用が見られないこともありますので、きちんと主治医に相談されるのが良いでしょう。 時々患者さんの中で、主治医に気をつかって、薬をもらうけど、飲まずに捨てていたりする患者さんもいらっしゃるようです。 それはお金の無駄でもありますので、きちんと相談されることをお勧めします。 しかし、医者の中には、「だるいぐらいなんだ! 命のほうが大事だろう!」って怒り出したり医者もいますね・・。 そんな時はちょっとお医者さん変えてみたりする方が良いかもしれません。 お薬を飲んでもらうのは命令ではないです。 時には寿命が短くなることよりも副作用のほうが辛いという場合もありますので、そこのところをきちんと医者から説明をうけて、理解した上でお薬をやめるという選択肢もあります。

6、なんとか食事療法だけでやりたい


コレステロールの多い食生活や、食事全体の量を見直す事はとても重要です。 しかし、一時コレステロールを下げるために「それじゃあ続けられないんじゃないかな・・・」と思う様な極端な食事制限をされる方が時々おられます。 確かに一回は目標を達成出来ても、 それが続かないようならあまり意味が無いです。 また、採血の直前だけ、データーが少しでもよくなるようにと油分を取らないでいらっしゃったりする方もおられます。  コレステロール値は学校の試験の採点ではないので、今の患者さんの現状を知ることが重要です。 無理ない範囲での生活習慣の変化でコレステロール値が下がってくれるようなら、お薬は飲まなくても良いでしょうが、そのままの生活を一生続ける事が我慢できないのであれば、薬を飲んだほうがより健全なのではないかなと思います。

7、コレステロールは体に必要なものなんでしょう


前回のコレステロールの役割でも話した様に、コレステロールは体に必要です。 なので「どんどん摂取して良いんですよね」という風に考えておられる方もおられます。 しかし、ほとんどの日本人にとって、コレステロールは不要なほど十分すぎるほどあるというのが現状です。 野生動物の悪玉コレステロールが35-70 mg/dlであっても、十分健康に生活している訳で、それだけあれば本当は十分、140mg/dl以上あるのは多すぎです。 どんな良薬も量が多すぎれば毒になります。 適切なコレステロール量を維持する事が大事なのです。

続きはまた次回

コレステロールは下げた方がよいのか? 下げない方がよいのか?2

コレステロールの役割


コレステロールは体を構成する重要な要素です。しかし多すぎるのが良くないのは確かです。

コレステロールは細胞の膜を構成する要素の一つです。


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動物の細胞は細胞膜という膜に囲まれています。 コレステロールはその膜に一定量含まれています。 最も多く含まれる臓器は脳や神経です。 細胞膜とはちょうどシャボン玉を想像してもらうと良いでしょう。 ちょうどシャボン玉の表面の模様が少しずつ動いているように、細胞膜も少しずつ動いています。 コレステロールが細胞膜に含まれるとこの動き(流動性)が変化するようですが、あまり一定の見解はないようです。 コレステロール以外の分子も似た様な作用を持つ事から、コレステロールが絶対になくてはならないと言う訳では無いようです。 

コレステロールはホルモンの原型になります。


コレステロールは性ホルモンやステロイドホルモン、ビタミンDの原料になります。 生殖器や副腎などで、コレステロールはホルモンの原料になります。 しかしこれらホルモンに必要なコレステロールの量はかなり少なく、コレステロールが増えたからといって、こう言ったホルモンの量が増えるわけではありません。 

コレステロールは消化に必要です


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脂肪の消化に重要な働きをしています。 コレステロールは胆汁酸といって胆嚢から分泌される消化液の原料にもなっています。 胆汁には胆汁酸とその原料になっているコレステロールが含まれています。 そして十二指腸に分泌されたコレステロールの90%は、もう一度小腸で再吸収されます。 こうして腸に出しては再吸収を繰り返しているコレステロールの量は、ほぼ血液中に含まれているコレステロールと同じ位だと言われています。 ですので下痢が続いたり、植物繊維を多く含む食事をすると、腸の中での循環の環が途切れて体外に排泄される量が多くなります。




 

コレステロールはどこから来るのか


コレステロールは肝臓で作られます。 全体のほぼ5割から7割が肝臓で作られると言いますので、食生活の注意だけでは血液中の悪玉コレステロールを下げる事は難しいですが、鶏卵、牛肉・豚肉等の動物性脂肪(レバーにも)に圧倒的に多く含まれているので、それらを取らない様にするだけである程度下がります。  これは私の経験ですが、毎日鶏卵1個を食べていた際に150-160位あった悪玉コレステロールが、鶏卵取るのをやめるだけで120近くまで下がったりしました。 ですので、食事制限はとても大事です。 しかし肝臓で作られるコレステロールも多く生活習慣の改善だけではコントロールが付かない患者さんも多いです。 
コレステロール.001

悪玉と善玉の違い


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血液中には悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が流れています。 誤解を恐れず簡単に申し上げると、悪玉は肝臓から体の各部分(血管の壁など)へコレステロールを送り出すためのもので、善玉は体の各部分で不要になったコレステロールを肝臓に呼び戻すためのコレステロールだと思ってください。 コレステロールが高くて、最も問題になるのは、血管の壁等に過剰なコレステロールが蓄積してしまうことがきっかけになっておこる、動脈硬化、そして動脈が詰まってしまう現象です。 ですので体の各部分に余分なコレステロールを送らない、そして余分なコレステロールを肝臓に戻す、つまりそれを防ぐには悪玉を下げて、善玉を上げると良い訳です。 




コレステロールの低い方の特徴


ここからは医者としての個人的な経験のお話です。 血液中のコレステロール濃度は、その方の肝臓の機能や栄養状態を示している事が多いです。 慢性の感染症でやせ細ってしまっている人や、癌や大手術等で体力を奪われている患者さんや、食事をきちんととれなくなってしまっている様な患者さんの採血のコレステロール値はかなり低いです。 また慢性的に下痢が続いている様な患者さんも低い方が多いです。 また菜食主義者や動物性脂肪をおもに魚類から取られるかたもコレステロールは低いです。 これは魚類や野菜に含まれるコレステロールと似た構造をした物質が含まれていて、これがコレステロールのふりをしてコレステロールの再吸収をブロックします。 そのため、魚や野菜を取る事でコレステロールの濃度が下がります。 

コレステロールの高い方の特徴


コレステロールの高い方の特徴は、食事に豚肉や牛肉、そして、鶏卵等のコレステロールが多い食品を好んで食べる方や、脂ぎっている人(すいません俗っぽい表現で)が多い気がします。 若い方は珍しく年齢が40台以降の患者さんが多い気がします。 体重は肥満気味の方に多い気がしますが、痩せている方でも、悪玉コレステロールが異常に高い方がおられます。 特に家族にコレステロールが高い方にコレステロールが高いことが多く、こういった患者さんの中には、悪玉コレステロール(LDL)を壊す機構が極端に低下している方がおられる様です。 またどちらかというと、運動不足で便秘気味の患者さんにコレステロールが高いように思います。 特に90歳近い高齢者で、足腰が不自由になっておられてほとんど動かれたりする事が無い様な患者さんで、病院に来院できるぐらい栄養状態の良い方はコレステロールが高いように感じます。 運動量の低下とともに、恐らく、腸の蠕動運動が低下して便秘気味となり、コレステロールの小腸での再吸収の効率が良くなりすぎているのかもしれません。

コレステロールは下げた方がよいのか? 下げない方がよいのか?1

結論から言うと、私は、コレステロール治療の専門家ではないので、高脂血症学会の定めるガイドラインに従って治療する事にしています。 つまり適正な値にコントロールした方が良いと思います。下げないで放置するより、きちんと下げた方が良いだろうと考えています。

下げない方が良いだろうという意見は、日本の論文でいくつか見られる様です。 ただその根拠となるデータの解釈が間違っているようです。 マスコミの方々は読者が望むことを書く傾向にあります。 なので辛い食生活の制限を行っている患者さんにとってみて、「それをしなくてよい、好きなように暮らしてよい」と言われるのはとても魅力的で、それに飛びつきたくなる気持ちもわからなくはないです。 ただ、医者としてそれを申し上げるには、あまりにも無責任かなと思われます。 きちんとデーターの解釈が行われた研究論文は、いずれも悪玉コレステロールがきちんと下がっていた方が寿命が長くなることをしめしていて、これは大部分の医者の意見ではないかなと思います。 

ではどうしてこんな混乱が起こったのでしょうか? 一番大きな原因は、10年ぐらい前まで、コレステロールの値は総コレステロールと呼ばれる値で判断していました。 この総コレステロールの中には、善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が含まれています。 一部中性脂肪にも含まれています。 善玉コレステロールが高い方も、総コレステロールが高く表示されてしまうため、少し古い臨床研究のデーターだと、コレステロールが高い患者さんの中にも、例えば善玉コレステロールがとても高い方も含まれていて、そういった例が、データーを薄めてしまい。 きちんとした結果が出にくくなっていました。 
もう一つは、コレステロールが高くてそれが問題になるのが10年とか20年先になって初めてその結果が出てくるため、なかなか治療行為とその結果が直感的に把握しにくいところにあります。 医者になるための教育で、我々医者は「自分の経験を信じすぎるな」ということを教わります。 一人の医師が診察している患者さんの数は限られています。 その少ない患者さんのなかでも、医者に親切心から良くなっていないのに良くなったとおっしゃられたり、まったく治療がうまく行かないと通院すらされなくなり医者が悪くなった事を知らなかったり、さらに薬を飲んだという安心感から症状が良くなった気がしてしまったり(偽薬効果と言います)・・・。 それらの間違った情報が経験として体験されるため、医者はあまり自分の経験を信じないように教育されるのです。  では何をよりどころに治療をするかというと、臨床の患者さんの治療体験を大量に集めた論文をよりどころにするのです。 そしてその莫大なデーターを読み解くには、実は専門的な統計学という考え方を学んでおく必要があるのです。 実際の論文は、データは正しいですが、そのデータから得られる教訓は、よい医学雑誌でなければ間違った解釈がされていたりすることもあります。 なので、きちんとした教訓を得るには、それぞれのドクターがきちんと統計学を学んでいる必要があるのですが、残念ながら、私の身の回りを見渡してみて統計学をしっかり理解している先生は4人に1人ぐらいではないかと思います。 なので医者によっても、間違った解釈をそのままうのみにしてしまう場合があり、そういった医者の言動がしばしば混乱を引き起こすことがあるのです。 しかしそういった間違いも、何人かの医者や科学者が集まって彼らが合意できる水準を満たしたものは、間違いも少なく、ある程度の水準を確保していると言えます。 それがガイドラインなのです。

次回はコレステロールがどういった物質なのかを書いてみましょう。

高血圧治療のページを変更しました

高血圧のページを新しい、日本高血圧学会のガイドライン2014年度版にそって変更いたしました。 こちらからどうぞ

日本循環器学会に参加してきました。

今年は東京国際フォーラムで開催されました。  年一回開催されるこういった学会に参加する事で、5年や10年ごとに訪れる専門医更新に必要な点数を得る事が出来る様な仕組みになっています。 日進月歩の医学の専門知識を得る事が出来る貴重な機会でもあるので、出来るだけ参加する様にしています。
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JCS-2014s
日間にわたって24の会場で同時に別々のセッションが行われるので、全部の講演を聞くのは難しく、参加出来るのはほんの一部でしかありません。 大学にいる頃は、主に自分が携わっている分野や、自身の研究グループの発表等にサポートメンバーとして参加する事がほとんどで、自分の専門外のセッションに参加出来る様な雰囲気ではなかなか無かったです。  今年、血圧の指摘目標値がだいぶ変更になるという事もあり、 血圧のシンポジウムに参加してきました。  血圧をどのぐらいまで下げれば良いのかという事を考えるためのセッションです。  こんなセッションなかなか大学にいる時は参加出来ませんでした。
2009年に高血圧学会のガイドラインが変更になり、それまでの高血圧治療のガイドライン血圧の目標値を少しだけ下方修正した事と、 糖尿病・心臓疾患・腎機能障害などの合併症を持った患者さんの目標血圧値をさらに下げた事を、高齢者で放置されていた高い血圧に関しても血圧のコントロールを厳密にしたほうがやはり成績が良かった事から、下方修正したことが大きな特徴でした。 今回の2014年の改訂では、どうやらほんの少しだけ上方修正する様です。 また4月になったら公表されるようなので、その際に解説してみます。
最近いろいろな降圧薬の会社の臨床試験で問題が生じて、薬に対する不信感をお持ちの方も多いかもしれません。  人によっては、薬屋さんの利益のために薬を飲まされているのではと考えておられる方もおられる様ですが・・・。  やはり患者さんを見ていた経験と、論文で発表される、高血圧治療の臨床研究のデーターを見ると、もしも自分の血圧が高ければやっぱり飲みますね、薬・・。  医者の目からみて血圧が高くてよい事なんて一つもないですから・・・・。

『心拍数ってどのぐらいが良いのでしょう?』

あけましておめでとうございます。 11月頃から年末にかけて忙しく、更新が途切れがちになっていました。

三好クリニックは不整脈を専門にする外来という事もあって、患者さんと心拍についてお話する機会が多いです。 その中で安静時の心拍数はどのぐらいが良いのかという話で盛り上がる事があります。
 
根拠に乏しい迷信なのですが、「動物が一生のうちに動かせる心拍数は決まっていて、心拍数が早ければ早死にし、心拍数が遅いほど長生きする」という事を信じている方もおられる様です。 成人の安静時の心拍は毎分60回ぐらいです。 その考えからすると、心拍が90ぐらいの人はがっかりし、40ぐらいの方は胸を撫で下ろしているかもしれません。 理屈にかなっているようにも見えるため信じてしまう方が多い様です。 どちらかというと「ラッキー保存の法則」と同じような感覚でしょうか? 根拠の無い迷信です。

比較動物学の分野では、大きな動物から小さな動物までの心拍数・寿命・体重を比べた研究があります。 それによると、大きな動物ほど心拍数が低く、寿命も長い傾向があるらしいです(クライバーの法則)。 これも、心拍数が低い方が寿命が長いのでは無いかと思われる根拠の一つの様です。 しかし人間に当てはめて考えるとおかしな事になります。 肥満体の方は一般的に心拍数は早めで、動脈硬化にもなりやすく、寿命は短命になりがちです。 現実は逆ですね。 実はこの法則が比較できるのが、種類の違う動物同士だけであって、人間同士の比較はできないのです。 もっというと自然界の動物には肥満は見られません。肥満が無い野生動物種間での観察結果は、肥満という自然から逸脱した現象がある人間には当てはまらないのです。

例えば血圧を下げる薬剤の中でも、心拍数を下げる薬剤の多くに寿命を延長させる効果ある事が臨床試験で証明されています。 心臓の筋肉への血液供給という点から考えてみると、心臓の筋肉に血液が巡っているのが、心臓が緩んでいる時であるという事と、一回の心臓の収縮している時間が、心拍数にあまり影響されずある程度の時間かけて収縮するため、心拍数が早くなると、緩んでいる時間が短くなり、心臓へ送られる血液の量が減ります。 なので、心臓の事だけを考えるならば、心拍数は遅い程良いはずですが、もっともっと心拍数が減ってしまうと、心臓から送り出される血液の量が減ってしまい、生命活動を維持できません。 ですので、ちょうど良い安静時の心拍数は、一分間に50回から80回ぐらいでしょうか? 安静にしていると思っても、しゃべったり、周辺に人がいると無意識に緊張して心拍数が上がりますので、90回ぐらいある人もいますが、寝ているときに心拍数がきちんと下がっていれば問題ありません。 覚醒時と睡眠時、つまり一日の平均の心拍数が毎分80回を越える人は、少し生活パターンや、内蔵に問題がある事が有りますので検査が必要になります。

また運動選手の安静時の心拍数が低い事は良く知られています。 40台は良く見られますが、時々30台の方もおられる様です。 これは、スポーツによって末梢の筋肉などでの酸素の取り込み能力が高くなり、少しの血液の流れ出も十分酸素を行き渡らせる事が出来る様になるためだといわれています
(こちらも見てみてください)。 心拍数が低めの方の中には、リズムを作るペースメーカー細胞の異常である場合もありますが、多くは、毎日よく体を動かしておられる方が多く、逆に心拍が早い方は、殆ど体を動かす事無く生活されている方が多い様です。 毎日行う適度な運動は、健康を維持するのにとても重要です。 日々の運動の結果としてそのような方は心拍数が落ち着いているでしょうね。  つまり寿命は心拍数そのものが問題なのではなく、心拍数を速くしたり遅くしたりしている原因が寿命に関係しているという事なのでしょう。 心拍が早いからといって、特に思い悩む必要はありませんが、心電図・採血等で特に内蔵に異常が無いことが解れば、毎日1時間程度の運動を続けられる事をお勧めします。 

内蔵の痛み

医学生の頃は、人間はどうやって内蔵の痛みを感じているのだろうという事を不思議に思いました。 むしろ医学を勉強していない方にとって、あまりに身近すぎて不思議にも思わないかもしれませんね。 

皆さん、例えば尖った物を例えば右足で踏んづけると、右足の裏が痛いと見なくても感じますね。 運動神経の良い人だと、強く踏んづける前によけたりする人もいるかもしれません。 この様に痛みが発生した部分を理解し意識する事、これは動物が生きていく上でとても大切な本能です。  なぜなら痛みを意識しても、痛みの発生場所が分からなければ、結局衝突を避ける事が出来ず、いろいろなものに体をぶつけて、骨が折れたり化膿して死に至る場合もあるでしょう。 
神経には運動神経と感覚神経があります。 それらは最終的には大脳につながるのですが、ただバラバラに大脳とつながっているわけでは無く、 順序だてて、脊髄という脳からお尻に向かって伸びる比較的太い神経の束にまとめられてから脳に到達します。 脊髄は脊椎(背骨)の真後の空間にあるため、運動神経と感覚神経はこの脊椎の隙間を通って、ある程度まとまって脊髄に接続されています。 この一つ一つのまとまりを体節と言いますが、 一つの体節につながる運動神経と感覚神経はほぼ同一の体の部分に対応します。 恐らく、どの場所の感覚神経の刺激が体のどの部位に相当するのかという対比は、漠然とこの体節の場所で判断されているとも想像されますが、医学的には運動神経と感覚神経は、脊髄でも大脳でも全くはなれた場所に分布しているために、痛みの場所を感じているメカニズムはそれほど簡単な仕組みでは無い様です。 ただ難しい話しはおいておいて、動物は皮膚の痛みの場所をきちんと「意識」する事が出来ます。
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じゃあ内蔵の痛みはどうなのでしょうか? 
内蔵の痛みや感覚は、やはりこの体節と関係があるのではないかと言われています。 内蔵の感覚神経は、皮膚の表面についている感覚神経に比べて原始的な構造をしています。 そして同様に体節の分布に従って脊髄に接続されているため、体節の同じ部分の皮膚の感覚と混じりあい、混同するのではないかと言われています。 なので、ほぼ内蔵のある部位の真上の表面近くに感じるというわけです。 ただしこの場所の感覚は、大人の臓器の位置ではなく、神経系が出来上がる頃の胎児期になります。  
受精卵が赤ちゃんに成長する間に、人間はその進化の過程をなぞって成長していきます。 神経系が出来上がるのは、受精卵が丁度メダカの赤ちゃんの様な形をしている頃に原型が出来上がります。 ほとんどの臓器は成人になっても場所が大きく移動する事は有りませんが、心臓はとても大きく移動します。 心臓は元々「えら」の近くに作られる臓器です。 「えら」は動物が陸上で生活するようになるにしたがって消失して行きましたが、下顎骨から首あたりの存在するはずの臓器です。 陸上の生活では、肋骨で守られる方が衝撃から守られるという点で都合が良いという事で、胸の真ん中肋骨の内側あたりに進化の過程で移動するのですが、感覚神経だけは元々の心臓が出来た場所の体節を通って脊髄に入ります。  そのため心臓の痛みは左の頚部、胸部の上の方、左手の内側、左の奥歯にかけてその痛みが出現するのが典型的です。 しかし、多くの患者さんを拝見していると、頻度は少ないですがお腹や背中等に痛みが出る方もいらっしゃいます。  また、ご高齢の方や、糖尿病の患者さんは、内蔵の感覚神経が弱っているため、ほとんど痛みを感じない方もおられます。 
内蔵は外から触れられる臓器ではないのに、痛みがあったりその感覚の場所を理解し意識する事が出来る。 何のためにそのような機能が備わっているのか不思議ですが、医者にとっては、体の負担になる様な大きな検査をせずとも、病気に早く気付き、手遅れになる前に治療が出来る、とても役に立つ機能です。 

細胞に酸素を届けるという事

循環器は、心臓と体中に張り巡らされた血管をつかって、効率よく酸素を全身の臓器に送り出すネットワークです。 実際には酸素以外も運搬しますが、ここでは酸素を全身へ送るという点に焦点を当ててみます。

酸素は大事


どの生命体の生命活動もアデノーシン3リン酸(ATP)という共通の分子に頼っています。 糖や脂肪などの栄養素も結局はATPを作り出す原料に過ぎません。 ATPは細胞膜を通過する事ができず、さらにあまり長期間保存出来ないため、一カ所でまとめてATPを作って全身の細胞に供給すると行った事は出来ません。 そのためそれぞれの細胞でATPを作り出す必要があります。
植物が光合成を行う前の地球環境では大気中に酸素が少なく、植物が生まれる前の微生物は酸素が無い状態でも生命活動のためのエネルギー単位ATPを作り出していました。 しかし大量の酸素が作られてからは酸素を使った方が圧倒的に効率が良いため、人は酸素を使ってエネルギー単位であるATPを作り出しています。 そして緊急事態に対応するために、骨格筋肉等には酸素を使わないでATPを作り出すシステムも残していて、低酸素の状態でもある程度の活動を行う事が出来ます。 ただそれはあまり長続きせず、大量の乳酸が発生して活動を停止したり、疲労が残ったりします。 たくさんエネルギーが必要になる時には大量の酸素が必要になるのです。 では酸素はどうやって細胞まで運ばれるのでしょうか?

酸素は必要な時に必要なだけ送られます


全身の筋肉は運動するときに非常に多くの酸素を必要とし、循環器はその必要な酸素を供給しようとします。 十分な酸素が届かなければ、疲労し息が上がり、筋肉が痛くなり最終的には動けなくなります。  運動したり興奮したりすると、人間は心臓がどきどきして顔が赤らみます。 そのきっかけになるのは、アドレナリンというホルモンです。 アドレナリンが分泌されると心拍数が上昇して、一回ごとの心臓の収縮が力強くなり血圧があがり、筋肉等を流れる血液のスピードが早くなり、時間あたりの血液の通過量が多くなります。 簡単に言うとアドレナリンを使って心臓のパワーを調整して、酸素の運搬速度を早めていると言う事になります。 ただ、心臓のパワーが上がっても、筋肉や細胞に届く酸素が増えるわけではないのです。 筋肉の近くで血液の中の酸素を、細胞に送り届ける事が必要になります。

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赤血球が酸素を細胞へ効率よく運ぶ


赤血球等が含まれた赤い血液は毛細血管の中を流れています。 血管の壁に仕切られた外側には赤血球無く、リンパ液という無色透明の液体で満たされています。  細胞が直接触れているのはこのリンパ液で、いくら近くに大量の血液が流れていても、細胞に直接触れるリンパ液にきちんと酸素をわたして行かなければ、酸素はそのまま再び心臓へ戻って行ってしまいます。
酸素はほとんど液体に溶けません。酸素を運ぶため、赤血球特にその中に含まれるヘモグロビンという蛋白があります。 脱線しますが、血液が赤い色はヘモグロビンの色でもあります。 酸素がたくさん結合したヘモグロビンは明るい赤色、結合していないヘモグロビンは暗い赤色となります。 それぞれ動脈血液と静脈血液の色ですね。酸素はヘモグロビンにとても強く結合しているので、そのままではなかなか血管の外に酸素が出て行きません。筋肉の近くで酸素をヘモグロビンから切り離す必要があります。 
ヘモグロビンは、酸素の溶解度が低い場所や、酸性の環境で酸素を放出しやすくなります。 酸素がたくさん消費される場所や、乳酸や二酸化炭素がたくさん発生している場所で、ヘモグロビンから酸素が切り離されて、酸素が放出されます。 液体に溶け出した酸素は血管の壁を通過する事が出来ますのでそのままリンパ液に到達し、細胞まで拡散してゆきます。
ヘモグロビンのこの機能が無ければ、酸素は十分組織に行き渡る事が出来ず、人体の活動は制限されます。

毎日の有酸素運動が酸素の取り込み能力を高める


習慣の様に毎日、有酸素運動を長時間行う運動選手は、しばしば、安静時の心拍数が減少したりする事はよく知られています。 また軽度な心不全の患者さんに、適度な有酸素運動を続けてもらう事で、呼吸困難等の心不全の症状が改善する事が有る事は以前からよく知られてしました。 心臓の仕事量がほとんど変わらなくても、筋肉等の末梢組織での酸素取り込み能力が上がる、筋肉等の毛細血管の密度が増えると言った説明がされている事が多いですが、実のところあまりよくメカニズムは解っていない様です。 こういった酸素のやり取りの効率も良くなっているのかもしれませんね。
さらに静脈に眼を向けると、筋肉はのびたり縮んだりする事で、その中にある細静脈やリンパ管の中の体液を、弁付きポンプの力を使って、心臓へと戻そうとするでしょう。 筋肉は第2の心臓とも言われるのはこういった理由です。 こういった機能が運動を続けてゆく事で改善してゆき、心臓にむやみに負担をかけなくても、無理なく酸素を全身に送り出す事が出来るようになるのだろうと想像されています。 
運動不足は動悸・浮腫等の原因になります。 少し動くだけでドキドキしてつらい、すぐに息切れする、浮腫がちという方は、毎日(毎日が重要みたいですよ)定期的に有酸素運動を行う事で、心拍数が落ち着き、動悸の症状が改善が期待で来ます。 運動って大切なんですね。 

『血圧が低くて困っています・・』

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低血圧で朝がつらいという方、多いのではないでしょうか? でも低血圧って一体なんなのでしょうか?
 
医学的に言う低血圧とはショック状態の事を言います。

病気で血管が開いたり、出血して血液の量が足りなくなったり・・。 様々な要因で血圧が下がり、収縮期の血圧で80mmHgを切る様な場合をショック状態と言います。 普通は顔面蒼白で、心拍が激しく、冷汗が手ににじみ、患者さんの多くは、気温が暖かくても「寒い」とおっしゃるったりします。 それは一般の方が日常で使う「低血圧」とはちょっと意味合いが違う気がしますね。 

では一般的な意味合いでの「いわゆる低血圧」とは何なのでしょうか?
 
安静時の収縮期血圧は90mmHg前後でも、「いわゆる低血圧」の症状が出ない人もいます。 塩分を人間ほど取らない動物の安静時の血圧を測定すると80台後半である事が多いです。 人間意外の脊椎動物の血圧はほぼ同じですので、たとえ血圧が安静時に80台であってもそれだけで死ぬ事はありません。そして、活動時に素早くきちんと血圧が上がり、体にきちんと酸素を送り込む事が出来れば、「体が重い」「動けない」といった「いわゆる低血圧」の症状は出ません。 健康な患者さんに診られる「いわゆる低血圧」の場合、薬では良くなりません。適切な薬剤が無いと言った方が良いかもしれません。 もともと人体には活動時に血圧を上げる機能が十二分に備わっているため、本来ある血圧を上げる機能を取り戻す事の方が重要なのでしょう。
こういった「いわゆる低血圧」を引き起こす人にはいくつかのパターンがあり、そういった日常生活を改善する事で、低血圧の症状を改善する事ができるかも知れません。

低血圧を起こす要因には

  1. 不規則な生活をされておられる方: 人間の体は一日24時間のリズムがほぼ決まっています。 寝る時間、起きて活動する時間が、一定のリズムで行われる事で、眠りから覚めて起き上がる時間がある程度決まります。 そのリズムから逆算して起床の直前に血圧を上げるホルモンの準備や自律神経の準備をすると言われています。 なので、不規則な生活をしていたりしてリズムが十分出来ていなかったり、夜更かしなどでリズムが狂ってしまった場合、血圧を上げるホルモンの準備が無い状態で起き上がる必要があり、活動に必要な血圧が上がらず、起床時に「だるい」「つらい」と感じるようになると考えられます。
  2. 女性ホルモン: 女性ホルモンはいろいろ異論があるようですが、投与すると血圧が下がる傾向にあります。 女性に低血圧が多いというのはうなずけます。 しかしそれ以外にも、女性は体重を気にしがち、あと足の浮腫等も美容の面から特に気にしがちで、水分の摂取や塩分の摂取を過剰に控える傾向があります。 しかし塩分量や水分量を制限しすぎると、循環血液量が低下して血液を血管の中に十分満たして圧力を上げる事が出来なくなり、低血圧となります。
  3. 低体温の方: 良く無理な絶食ダイエットなどをされるかたおられますよね。 繰り返すと、基礎代謝が下がりいわゆる体が冬眠のような状態になるために、やせにくくなるとも言われています。 そういった方の特徴として、安静時の心拍数が遅い(毎分60を切る)、体温が低い(35度とか)といった事があったりします。 体温が低かったり、心拍数が低すぎると、それにあわせて血圧も低くなる事が多く、いざ体を動かそうとしても、心拍数が上がらず、血圧が上がらないという事になる事があります。 やはりダイエットには適度な運動が必要なのです。

病気と関連した低血圧

  1. 血圧の薬: 血圧の薬は強制的に血圧を下げます。 普通の生活をしていたらある程度ご自身の高い血圧と見合う分だけの降圧薬を飲んでおられる方が、例えば食事がとれなくなったり、旅行等されて、食生活ががらっと変わったりして、体本来の血圧が急激に下がり、それ以前に飲んでいた血圧の薬では血圧が下がりすぎてしまうという事があります。 特にたくさんのお薬を飲んでおられる方が予期しない低血圧になる可能性があると思います。 やはり血圧の薬を3種類以上飲んでおられる患者さんは、旅行中に手首ではかるタイプでも結構なので携帯型の血圧計をお持ちになられた方がよろしいかと思います。 
  2. 全身の病気と関連した低血圧: こういった「いわゆる低血圧」の症状に近い全身の病気がいくつかあります。 甲状腺ホルモン・副腎ホルモンの異常や、血圧調整に関連する脳神経・自律神経の病気、脱水や塩分喪失に伴う低血圧や、徐脈性の不整脈疾患、周期的に脱力してしまうミネラルの異常等。 こういった病気は、詳しい症状や採血、心電図等でわかったりする場合があります。 頑固な「いわゆる低血圧」に悩まれておられる方の中にはそういった病気が隠れている事があります。 あまり頑固な症状があるようなら、やはり一度医者に相談してみるのも良いように思います。

医者に、「私低血圧で朝が辛くて」と言っても、スルーされる事が有りますね。私も時々スルーしてしまいます。 医者の言う低血圧と、患者さんの思っている低血圧が違うためにおこる誤解なのですが、もう一つ、あまり良い治療法が無く、生活上の注意でなんとかやって行くしか無いという点が、医者の治療意欲を失わせている原因でもあります。 ただ、全身の病気と関連した低血圧の場合、少し問診して、診察をすればだいたい解って来ますので、そうでなければ、「大丈夫」の一言ですまされたり、「朝食に少し塩分を取ると良いですよ」なんて言う話で終わってしまう事が有ります。 しかしやはり基本は、規則正しい生活をして、適度な運動を心がける、日の明るい時に行動し、むやみに夜更かししない。 そして無理なダイエットをせず、医学的に適正な体重を心がける様にする事が大事だと言えます。  ただほとんどの患者さんがその今の生活スタイルを普通と思っておられますからね、念を押しますが主観的な感覚ではなく、あくまで客観的な見解が重要です。 

採血は空腹で取るのが良いのか、食事をしてきてよいのか?

一般的に、採血をされる際、空腹で来てくださいと言われる場合が多いですが、 三好クリニックでの採血項目は直前の食事で影響の無い物が多く、 「30分前に腹一杯焼き肉を食べて来た」と行った事さえなければ、食事は普通にして来てくださって結構です。


空腹にして採血していただく場合は、いくつか拝見したい採血項目がある場合に限ります。


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空腹時の血液の中の糖の濃度(血糖値)を測定する必要がある場合に空腹で採血を御願いしています。 正常な患者さんですと食事の後2時間空けて採血すれば、空腹時の血糖値が見られます。 前日や前々日だけ断食のようにされて血糖値を下げてこられる患者さんがおられるので、三好クリニックではヘモグロビンA1cといって、採血前一ヶ月の平均血糖値を見る物や、グリコアルブミンといって2週間程度の血糖値の平均値を見る指標を使って拝見する事が多く、血糖値を直接測定する事はありません。 患者さんの希望があった際や、特殊な状況でお願いする場合があります。 同様に血糖を下げるホルモン・インスリンの量も食事の後で大きく変動するために、測定するために空腹で来院していただく事があります。 その場合、きちんと指示しますのでご安心ください。
中性脂肪は、直前に取った食事に大きく影響を受けます。 血糖値と異なり、食事の後4-6時間ぐらいで最も吸収が強く高くなります。 昔読んだ、臨床検査の教科書では正確な測定をするためには17時間絶食後と書いてあったように思います。 朝9時に採血するとして、前日の夕方4時には食事を終えておかなくてはならないわけです。 なので基準値より少し高い方が多いようです。 都会で生活される方の夕食は結構遅いですからね。 また中性脂肪がとても高い患者さんでは、前日の夕食を出来るだけあっさりした物にしてくださいと指示する事になります。  

逆に普通に食事してきてくださった方が良いなと思う場合は。


糖尿病の境界領域の方やステロイド等を内服されておられる患者さんで、食後にのみ過血糖になる方がおられます。 そのような方の場合、わざと、食後に来てもらう場合があります。
一般的に食事をしないでくださいと申し上げると、飲水もされない方がおられます。 採血前に水分等の摂取が少ない場合、血液の実質成分が濃縮され次の様な項目が上昇してきます。
1、尿酸値 2、尿素窒素・クレアチニン 3、ヘモグロビン(赤血球の量) 
逆に、心臓のポンプ機能を示すBNPと言った値は低下します。 こういった状況を脱水と言いますが、慣れてくると、この値をみて、今日は水分量が少ないとか多いとかがわかったりします。 でも値が大きく揺れて、患者様自身が心配される事が時々あります。 そういった場合、普通に食事をしてきていただくか、水分は普通に飲んでいてもらった方が良いでしょうね。

食後に上がりそうで、実はあまり影響がない項目


私も意外なのですが、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)は、あまり直前の食事の影響を受けません。 なので『健康診断で悪玉コレステロールが高いけど、昨日脂っこいもの食べたからなー。 本当は大丈夫のはず』と思っておられる患者さんは比較的多いようです。 以前総コレステロール値で測定していた際にはそういった事もおこりましたが、最近は悪玉コレステロールを直接測定するようになってきています。 そうするとあまり直前の食事の影響は受けないので、高い方はやはり高いと思っていた方がよろしいようです。

採血で気分が悪くなる方や、倒れた経験のある方


採血の後に気分が悪くなって、倒れてしまった経験がある方多いのではないでしょうか? 実は私も子供の頃にあります。 採血時に極度に緊張したり、痛みが強かったりすると起こる現象で、迷走神経反射とも言いますが、そういった刺激で心拍数が下がって血圧が下がる事が原因の一つです。 一般的にですが、空腹や水分を取っていなかったりしておこる場合が多いようです。 そのような方は、やはり採血の日にはきちんと、食事をされたり、水分を取って来院される事をお勧めします。

『めまいがするのですが・・』3

立ち上がったとき、ドキドキして、くらっとする。


座っていたり寝ている状態から立ち上がった直後に、くらっとしたり・手に冷汗をかいたようになったり・目の前がかすむみたいに暗くなって倒れてしまったりする。 このような症状は、疲れていたり、朝食事を十分取っていなかったり、風邪などをひいていて、長期的に伏せがちになっていたりするとおこりやすいです。 通常は、座ったりしゃがんだりすると回復します。 このような症状は、起立性低血圧と言います。 一般的には脳貧血と言われているかもしれません。 一時的に脳の血圧が低下して、意識がなくなる事による症状です。 
脳は常に酸素を必要とする臓器です。 なので7秒から10秒ほど血圧が低下すると、脳は活動を停止して、意識が消失します。 立ったり座ったり、時には逆立ちしたりする人間は、脳の血圧を一定に保つために重力と戦う必要があります。 心臓と脳の位置は約50cmほどはなれています。頭の位置が心臓と同じ高さにある寝ているときは特に問題有りませんが、座ったり立ったりすると、頭は心臓より50cm程の落差が生じるため、単純に計算すると脳の血圧は40mmHg程度低くなるはずです。 しかし人体は脳以外の血管を収縮させたりする事で、脳へ行く血圧を維持しようとします。 
足は心臓よりかなり低い位置になりますので、立ち上がると足から心臓へ戻ってくる静脈血液が減少して、心臓は送り出す血液がなくなります。 この状態が続けば、数秒から10秒程で脳貧血がおこります。 人体はそうならないように、足の静脈を収縮させたり、筋肉を収縮させて足の静脈のポンプ機能をフル稼働して、心臓へ戻ってゆく血液の量を維持して、脳貧血を起こさせないようにしています。 また脳貧血がおこった場合、本能的に心拍数を上げて血圧を上げようとするため、動悸を感じる場合もあります。
血管を収縮させて、脳への血液の量をコントロールする体の仕組みは、使わないと数日でなくなります。 病気等で長期間寝ていて、極端に運動量が不足していたり、ほとんど外に出ない暮らしをしている人で、こういった機能が弱くなって、立ち上がった際に、めまいが生じる事が有ります。 逆にこういった血管の運動能力は、訓練する事で簡単に回復するため、体を動かして運動する事で、徐々に回復して行く場合が多いです。 患者さんの多くは、立ち上がると、動悸がしてふらふらするのが怖くて、伏せがちになられる場合が多く、そういった心理は逆に症状を長引かせる場合があります。
 動脈や静脈の収縮をコントロールする自律神経に作用する薬を内服していたり、自律神経の機能が低下するような、糖尿病や神経の変性疾患等が有ると、訓練では回復しない場合もあります。 まずはそういった要因が無いことを確認してゆく必要があります。

『めまいがするのですが・・』2

「立っているとき、歩いているときだけめまいがする」


立っている時だけめまいがしたり、歩いている時だけめまいがする方は、お尻から下の筋肉等の運動に関係する筋肉や骨格の異常である場合が多いでしょう。
前にジャイロ(三半規管)の話をしましたが、人間は体の位置や自分の体の状態を把握するためにそれ以外にもいろいろな器官が付いています。  日常生活であまり意識する事はありませんが、目を閉じていても、関節がどの程度曲がっているかとか、足首がどちらを向いているという事を人は感じています。 この感覚は深部知覚といって、主に腱や筋肉の中に埋め込まれたセンサーを使っています。 歩いているときに路面が左や右に傾いていても、足首の角度がどのようになっているかを瞬時に判断して、自分の体の方向を立て直そうとします。 つまり、人間は大きく分けて、目から入る情報と、三半規管から入る情報と、深部知覚から入ってくる情報をあつめて、自分自身の体の位置を、周囲の状況を判断しているわけです。

「筋力の衰えや病気によって弱る深部知覚」


この深部知覚は、高齢になったり、糖尿病で少しづつ減弱します。逆に運動などの練習によってある程度鍛える事もできます。また筋肉が衰えてくると、体の位置がきちんと保てていない事があります。 主観的には頭では正確に筋肉を動かしているつもりなので、周囲の景色が動いたように感じる事もあります。 そういった理由から運動不足気味で足腰の筋肉が弱い方は、歩行時のめまいを感じやすいでしょう。  こういった症状を自覚するのは、階段を上ったりする様な足腰の筋肉を必要とする動作ではないでしょうか?  平地での歩行では足をある程度の高さまであげる腿上げという動作はほとんど行いません。 腿を上げると、反対側の一本の足とお尻の筋肉を使って体をまっすぐ立たせようとしますが、筋力が低下すると、それが出来ず、左右にぶれ、長い直線の階段などでは、景色が左右に揺れる様な、めまいの症状がでる場合があります。 日頃から、歩いたり、階段を上がったりする運動が必要でしょう。 こういった足腰に問題がある場合のめまいは、じっとしているときや、座っていて足やお尻の筋肉が使われていないときにはおこりません。  座っていればめまいが起こらないなら、足腰の運動器に問題があると思った方がよろしいでしょうね。

こういってしまうと、ただの運動不足なのでは無いかと思われがちですが、珍しいですが小脳の病気や、筋肉や神経の病気、糖尿病等でも似た様な症状になる事があります。 きちんと医者に相談して、適切な検査を受けられた上で、運動などをされる事をお勧めします。

続く

『めまいがするのですが・・』1

ふらっとする。ふわふわする。ぐらぐらして気持ち悪い。 いろいろ表現はあります。 こういう状態を「めまい」あるいは「立ちくらみ」と表現します。

日常生活で一番遭遇する機会の多いのは、「病み上がり」といって、2−3日病気で寝たきりだった患者さんが、少し良くなって起き上がってトイレへ歩いたりする際に、ふわふわする。 地に足がつかない感じがする・・。 ひどい場合、冷汗がでて目の前が暗くなってうずくまってしまうという様な症状がでる場合もあります。 これは長い間に寝ている事で、足腰の筋力が衰えたり、立ち上がったときに血圧を調整する機能が失われて、脳貧血を起こしたりする現象です。 

めまいとは、自分の体の位置がうまく認識出来ない、固定出来ない、立ったり座ったりする事が出来ずに寝込んでしまう。 もう少し踏み入って言えば、自分の目から入ってくる体(主に頭)の位置の情報と、自分の体のほかのセンサーが感じている位置の情報が食い違う、それが原因で不安になり、その場から逃れたいという動物的な本能が働いて「吐き気」が出現する事もあります。 これがめまいとめまいに付随する症状のもとになる病態です。

患者様にとってはどの科に行ったら良いか迷うところかもしれません。 めまい科という科は普通ありませんし、いくつかの科にまたがった症候群ですので。 めまいを専門とする科は、大きく分けると耳鼻科(三半規管、前庭神経)・神経内科(小脳・脳幹・運動神経)・整形外科(筋力)・循環器内科(心臓・血管)と言ったところでしょうか。 私は循環器内科なので本来循環器のお話からするべきなのでしょうが、患者さんの立場になって症状の特徴から見てお話ししてみます。 

まず区別する事は、その症状のでかたです。 立っているときだけでるのか? 座っているときや、寝ているときにもでるのか。 という事で分ける事が出来ます。

「めまいが寝ているときにもおこる」


目から入ってくる情報は、頭の位置が固定されていれば通常大きくぶれる事はありません。 もしも寝ていて頭が固定されている状況でもめまいがあるならば、その病気の本体は耳鼻科領域、三半規管・前庭神経の異常でおこっている病気が考えられます。 同時に、前庭神経と脳神経の中で近い場所にある、聴覚神経、つまり聴力が落ちたり、強い耳鳴りが一方の耳から出現すると言った症状が加わってくるなら、それは三半規管だけでなく、神経内科の領域、脳幹の血液の流れの異常に関連した症状である場合があります。 頭をある角度にすると急にめまいが発生して、目をつぶっていても気持ちが悪い。 こういった症状は一時的なめまいですので、血管の病気では無く、主に三半規管内の耳石の異常によっておこっているめまいである事が多いです。 

少し三半規管について掘り下げてみましょう


三半規管は、自分の頭がどちらの方向を向いているかという事を認識するのにとても重要な働きをしています。 しかしそれだけでなくて、目の動きととても密接に関連しています。 皆さん歩いているときに、どうして自分の視野がぶれないか考えた事はありますでしょうか? 歩きながらビデオカメラを撮影すると、撮影の時はきちんととれているつもりでも、後で見ると画面が大きく動いていて見るに耐えない映像になっていると行った経験は無いでしょうか。 目は、ビデオカメラより高度なテクニックで、網膜に写る映像を揺れないように眼球と頭の位置を調節しているのです。
人間の目がビデオカメラ程度の能力であれば、歩いたり走ったりしながら景色を見る事は出来ません。 網膜に写る像を安定化するためには、三半規管がとても重要な働きをしています。 理工系の知識のある方ですと、ジャイロ機能と言うと納得されるかもしれません。 三半規管は頭がどのように動いたかを、素早く感知して、視線の方向を一定に保とうと、眼球の筋肉を動かします。 この機能はほとんど自動的に行われるため、三半規管に異常がおこって変な信号を出し始めると、眼球が勝手に動き、網膜に映る像が動くため、周囲の世界が勝手に動いたと感じるようになります。 これが三半規管とその系統の脳神経の異常で生じる回転性のめまいという症状となります。
ちなみに三半規管の病気の場合専門は、耳鼻科となります。

続く

お酒と不整脈

最近、不整脈の患者さんからお酒を飲んでよいかと尋ねられました。おめでたい席が多いですからね。
 私自身お酒は嫌いではないので、お酒をのみたい気持ちは解ります。 元々、命に関わらない不整脈の場合、それはお酒をのんでもドキドキするだけで、それがご本人が嫌かどうかという問題になります。 つまり、お酒を取るか動悸を避けるかと言った問題になりますね。 お酒をのむ事でどんな事が起こりうるかという事を書いてみましょう。

1、『お酒は絶対だめ!』という心臓病があります。 これは、異型狭心症といって、心臓の筋肉を栄養している血管が痙攣して血が心臓の筋肉に行き渡らなくなる病気です。 この病気は年齢とは関係なく起こります。 喫煙やストレスでも起こりますが、アルコールを飲むと必ず起こるという患者さんがいます。 『アルコール誘発性冠攣縮狭心症』と病名は付くでしょうね。  たいていの場合、アルコール飲酒後よりアルコールが抜けてくる朝方に多い様に思います。 その原因は私はあまり良く理解出来ていませんが、アルコールに関連した病態の多くは、アルコールが代謝されて血液中からアルコールが無くなるときに多い気がします。 たとえは悪いですが、二日酔いとかそうですよね。 また後で述べる心房細動等も抜け際に悪くなる様なケースが多いです。 この異型狭心症のケースの場合、特にアルコールで誘発される場合、いくら薬で押さえていても、アルコールを飲む事は危険です。  異型狭心症時に、房室ブロックという様な脈が遅くなる不整脈が起こったり、心室細動という心臓の痙攣が起こって心臓が止まってしまう事が希にあります。そのような患者さんにはアルコールは禁止になります。

2、心房細動という不整脈が起こりやすくなる事があります。 お酒をのんでいるうちは大丈夫でも、お酒が抜けるときに、心房細動という不整脈が起こりやすくなる方が結構いらっしゃいます。 アルコールが分解されて、アルデヒドという分子に変換されてゆくのですが、このアルデヒドはいわゆる二日酔いの原因とも言われていますね。 アルデヒド分子は、心臓のイオンチャネルにも作用があると言われていて、そのために心房細動が起こりやすくなる場合があると言います。 患者さんの中にも、お酒を飲んだ翌日に必ず発作があるのですという方をしばしばお見かけします。 心房細動自体は命に関わる不整脈ではありませんが、心房細動によって生じる脳梗塞や、心房細動が直ってご自身の脈が始まるまでの間が5秒から10秒近く心拍が停止する様な方もおられます。 そのようなリスクのある方は、やはりお飲みにならない方が良いでしょうね。

3、私の患者さんで、薬がよく効いて全く不整脈が出ない患者さんが、不整脈が出ていて、気がついたらビール瓶が5L近く一人で飲んでいたという方がおられました。 ビールやアルコールには利尿作用がありますので、飲んだ余分な水分は尿に出て行ってしまったり、アルコール腸粘膜を刺激して下痢傾向になりますので、どんどん便として排泄されていきます。 そういう場合、お酒の中の水分で体液を交換しているのと同じ様な現象が起こるわけです。 薬剤が体外へ尿と一緒に出てしまった。 そのため薬剤の血液中の濃度が一時的に下がって発作が起こったのだと思います。  その不整脈が命に関わる不整脈であった場合、大変問題だったと思います。 ですので、不整脈で内服をされておられる方で、我を忘れる様な酒癖の悪い方では、お酒は厳禁と思います。 そういう方に限ってなかなかやめてくださらないのですが・・・。

4、お酒の飲み過ぎで肝機能が低下してくる場合があります。 不整脈の薬や血液をさらさらにするワーファリン等の薬剤は肝臓で代謝されるため、肝機能に大きな影響を及ぼすお酒はあまり好ましくありません。 特に長期間の飲酒の摂取歴のため肝機能が荒廃している様な方は禁酒していただく必要があります。 あるいは、そういった不整脈の治療自体を断念する必要がある場合があります。

5、お酒は血管を開きます。 そのため一時的に血圧が低下し、その血圧を維持しようとして心拍数が上がります。 顔が赤くなっているのは血管が開いているためと思うと理解しやすいでしょうか。 そのため、洞性頻脈で元々心悸亢進気味(ドキドキしやすいかた)の方は飲むと症状が強くなりやすいと思います。 また心臓のポンプ機能が悪くて、利尿剤等を飲んで心臓への負担を減らしている様な方ですと、アルコール摂取で血圧の変動が大きくなったりしがちです。 あまりお飲みにならない方が宜しいかと思います。

お酒は、人と人との付き合いを円滑にしますし、お酒を楽しみに日頃仕事をされておられる方もおられます。 決して悪い物ではありませんが、特にある特定のご病気をお持ちの方や、過剰な飲酒は不整脈以外でも大きな傷跡を残します。 飲酒は適量が大事です。 

心臓のリズム

怖い話が嫌いな方はあまり読まない方が良いでしょう。
皆さんは、長い階段を降りるときに途中で、「え!? 次どっちの足出すんだっけ」って不安になる事ありませんか? 交互に足を出すという単純な連続作業は、小脳という脳を使っています。 小脳はある程度決まったパターンの複雑な一塊の運動シリーズをコントロールする脳で、大脳で意識せずに、全身の筋肉を動かしてゆきます。 なので、「転倒するのではないか」といった、恐怖心が出現して大脳で意識して足を動かそうとすると、逆に足がもつれてうまく歩けなくなるという様な事がおこります。 私は運動音痴なので、特に意識してしまって、もつれてしまう方です。 なのでスポーツをやっている方の運動を見ていると、人間が自動で行っている多くの動作は本当に良く出来ているなーと感心してしまいます。

人間の心臓の心拍は、やはりある一握りの細胞の単調なリズム作製によって動いています。 場所は、右心房の上の方、上大静脈とくっついている部分周囲に、洞結節という特殊な心臓の筋肉の細胞の集まりがあります。 このリズムを作っている細胞の事をペースメーカーと言います。 このペースメーカーはほんの一握りであるために、例えば病気や、年齢とともに変成して少なくなってしまう事もあります。 リズムは基本的に細胞膜の電位の揺らぎが増幅して出来た物なので、そうですねちょうど、波の様な物でしょうか? 海にいけば普通に波はありますが、その本質は液面の振動です。 心拍もそういった振動の一種なのです。 その振動がやんでしまえば、心臓は止まってしまいます。 突き詰めて考えてみればそんな不確かな物で人間は生きているわけです。 ちょっと怖くありませんか? でも安心してくださいそう簡単に心拍は止まりません。 ペースメーカーは何百というこういった特殊な細胞が寄り集まってできているため、一つの細胞が振動を止めても、別の細胞が振動しているとそれでリズムが維持されます。 また、洞結節以外にも、何カ所か弱いながらもペースメーカーとなりうる細胞があり、それらが常にバックアップをしてくれているのです。
ただ、ペースメーカーが衰えてくると、心拍数が徐々に低下して行き、患者さんとしては、足が浮腫んだり、息切れしたり、疲れやすくなってきたりと言った症状が出始めます。 心電図を取ると、診断が出来ます。こういった場合、薬の内服で効果がある場合もありますが、ほとんどの場合、機械型のペースメーカーを植え込む事になります。
最近では携帯電話の小型化で切磋琢磨したおかげか、レアアースのおかげか知りませんが、電池の性能が良くなり、だいぶ小型化され、一度植え込めば電池も長期間持続します。 以前よりは目立たなくなっていますが、小柄のやせた方ですと、やはり少し目立つと思います。 入れる場所は通常、左肩の部分、鎖骨の下当たりに入れます。 小型化だけでなく、不整脈を監視したり、心臓の機能を監視したり、運動したりすると自動的に感知して心拍数を上げてくれたりする様な機能が付いている物もあります。
三好クリニックではペースメーカーの挿入は行いませんが、ペースメーカー挿入後の経過観察や、薬物治療等を行います。 ペースメーカー挿入が必要な患者様は、ご希望があれば慶應大学や提携している大学病院にご紹介致します。

『血圧計って何をはかっているのですか?』

腕に布を巻いて、圧力を加える。 健康診断や、ヘルスセンター見られる血圧計。 たしかにそれっぽい値が出るのだが、いったいどうやってはかっているのだろうか? 疑問に思われた事は無いでしょうか? 

本来血圧とは、血管の中の圧力を圧力計で測定する物で、当初は水銀を使って測定していました。 測定のたびに針を血管の中に刺して圧力をはかる必要があったのですが、痛いし大変なので、コロトコフという医師がその痛くない測定法を考案したのが始まりでした。 血液が普通に流れている血管の上に聴診器を置いても音は聞こえませんが、腕の周りに布(マンシェットと言います)を巻いて外からある一定の圧力以上にすると、血液が流れなくなります。 血液が流れないので、全く音はしません。 少し圧力を下げてゆくと、血液が収縮期だけに流れるようになり、”とん・とん”と心拍に同期して音が聞こえるようになってきます。 この時の圧力が最高血圧となります。 そして、さらに圧力を下げて行くと、収縮期・拡張期両方で血液が止まる事無く流れるようになり、音も消失します。 このときの圧力が最低血圧と一致するわけです。
今の自動血圧計はこの音をマイクを使って電子的に計算しています。 なので、マイクの位置が、肘の動脈の上に無いとなかなか集音出来ず正確な圧が測定出来ません。 
薄い衣服なら良いですが、セーターなどの空気をたくさん含んだ厚手の衣服の上からですと、音がうまく拾えず測定出来なかったり、肘が曲がっていると、血管が筋肉に埋もれてしまってうまく音が拾えない事があります。 厚手のセーター等を着ておられる場合は、やはり片袖を脱いで、測定された方が良いでしょう。 横着して、腕の露出する部分が短かったり、マンシェットがセーターに引っかかったり、シャツがしわしわになって、一カ所だけ厚くなっていたりすると正確な値が出なかったりします。
マンシェットを巻く際に指一本入るぐらいの隙間がある事が大事で、きつすぎても、ゆるすぎてもうまく測定出来ないです。 緩みの程度でマンシェットが腕を圧迫する幅が変わるからです。 血圧計のマンシェットの幅は腕の測定部位の腕の直径の1.2倍の長さである事が必要です。 長過ぎれば、低い圧力で血流が止まり、短すぎれば高い圧力をかけなければ血流が止まらなくなり、前者では低めで、後者では高めで測定されます。 なので緩いと、腕との接触面積が小さくなり高めに測定されます。 逆に、きつすぎると低めに測定されてしまいます。 本当は腕の太さは患者様でそれぞれ違いますので、マンシェットの幅もそれにあわせてかえなくてはならないのですが・・。 それはなかなか煩雑で難しいという事もあって、一般的には11cmほどの幅のマンシェットで測定する事になります。 腕の直径の1.2倍の長さの幅のマンシェットだと、マンシェットで圧迫している圧力で測定した音の出現するタイミングと、血管の中の圧力が同じぐらいになるという、経験をもとに長さが決まっている訳です。 
また最近の血圧計は不整脈があると、周りの雑音を拾っていると勘違いするのか、うまく測定出来ない場合もあります。 そのような場合は、医者に測定してもらうしか無い場合があります。

『上の血圧と下の血圧・どちらが大切?』

血圧
血圧を計ると、数字が二つ見えます。 高い方と低い方です。 正確には最高血圧と最低血圧と言います。 言いにくいので上の血圧、下の血圧と呼ぶ事が多いでしょうか。 動脈硬化を防ぐのにどちらの血圧に注目すれば良いかと言えば、答えは両方とも大事です。 ただ、二つの血圧を覚えているのは大変なので、普通は最高血圧の方を覚えておられる場合が多いでしょうね。 現在の血圧治療の基本は、自宅等での安静時に上の血圧が130、下の血圧が80を切る事です。 糖尿病や心臓病や大血管の病気をお持ちの方はこれより、上が120、下が70を目標にする事が多いです。 少し体を動かしたりしゃべったりした後、リラックスすると、上の血圧は比較的大きく変動する事が多いですが、下の血圧は余変動しない事が多いです。 なので診察室で下の血圧が高い場合、少し注意を払う必要があります。

最高血圧

上の血圧は、心臓が収縮して、心臓の中にあった血液が、大血管に送り込まれる事によって出来る圧力です。 運動や興奮していて心臓の収縮力が増えたり、心拍数が上がれば上がって来ます。 また高齢者などで血管が動脈硬化で硬くなっているような場合、血管が伸びて心臓からの圧力を吸収する事が出来ず、予想以上に上がる場合があります。 

最低血圧

下の血圧は、心臓が一旦大動脈に血液を送り込んだ後、大動脈弁が閉じて、そのかわり肺や左心房から血液を左心室へ取り込んでいる間の大動脈内の圧力です。 (ちなみに、心臓の筋肉を栄養している血液はこの時期に流れますので、心臓の筋肉を栄養している冠動脈と言う動脈への血流はこの下の血圧で決まっています。) この圧力は大動脈の閉鎖が不十分だったりするとすぐに低下してしまいますし、逆に、組織の毛細血管の手前の血管が動脈硬化や、緊張状態で収縮していたりすると、大動脈に血液がたまった状態が続くためなかなか血圧が下がらず、下の血圧は高くなります。 結構良く見られるのは、おなかに脂肪の多い方ですね。 大きく育った脂肪細胞への血管はかなり抵抗が大きいですので、下の血圧は十分下がり切らない傾向にあるようです。 体重を減らす事はとても重要です。 また下の血圧は緊張していて心拍数が早い場合に高くなる傾向があります。 心臓は心拍数が変わっても収縮している時間は0.3秒程度であまり大きな変化がありません。なので心拍数が早くなると、拡張している時間が短くなります。つまり、大動脈が閉じて下の血圧が十分に下がるための時間が少なくなり、下の血圧もそれにつれて上がってしまいます。 緊張して、心拍数の早い状態の血圧は、治療の目標ではないので、医者は心拍数を見ながら、患者さんが緊張していないか探っています。

自宅で血圧を計られる場合、上の血圧と下の血圧の他に心拍数、そして出来れば体重等も測定していて頂けると助かるのです(こちらはまた後日解説します)。

『血圧が高いとなぜ動脈硬化がおこるのですか?』

血液は、栄養素や酸素を臓器に運び、そして臓器から排出される二酸化炭素や老廃物を回収します。 この血液の流れを作っているのが血圧です。 血圧が高くなればその分効率よく血液を循環させる事ができます。
日常生活で最も血液を必要とする臓器はやはり筋肉です。 なので筋肉をほとんど使わない安静時には血液をそれほど必要としません。 ですので、動いている時に血圧は上がり、安静時に血圧は必要最小限の値になります。医者がみているのはこの必要最小限の血圧の値です。

血圧が高いと、動脈硬化が速く起こり、血管が詰まってしまって脳梗塞や心筋梗塞を起こします。 そして薬を飲んででも、きちんと血圧を下げるとある程度予防できる事も解っています。 しかし、実は血圧が高くなる事で動脈硬化がおこる原因はあまり明らかではないのです。 ですが、最近血液の中に血管の表面を修復するための幹細胞が少量流れている事が解り話題となっていましたが、こういった細胞が動脈硬化を予防するのに重要なのではないかと想像されています。
ここからはあくまでも推測ですが、血圧が高いと、血管は風船の様に押し広げられたり、血液の流れが速いと、血管壁が削られ細かな傷が付きます。 ちょうど河川の浸食を思い浮かべて頂くと解りやすいでしょうか?  血液中の幹細胞は、これをいつも修復しているようなのです。 糖尿病や喫煙者等では、こういった幹細胞の数や機能が低い事が知られています。 通常血圧が下がっている時点で、このような細かな傷は修復されやすいのかもしれません。 なので血圧が高い状態が続けば修復が追いつかず、血管は破壊されたものとして、貪食細胞の様な炎症性細胞が血管壁に集まり、不適切に修復してしまうのだと推測されます。 このような修復だと、血管の内側へ盛り上がって修復され、弾力性も失われてしまうものと想像されます。 また一旦弾力性が失われた血管は心臓から送られてくる脈波を十分に受け流す事が出来ず、さらに血管壁をいためてしまうのかもしれません。
いずれにせよ、安静時の血圧をきちんと下げておく事、そして糖尿病の予防と禁煙は、将来の動脈硬化を予防し、脳梗塞や心筋梗塞、腎不全等を起こさないためにとても重要な事なのです。

『肘の所ではかる血圧計と手首や指ではかる血圧計がありますが、どれが正しい血圧計なのですか?』

一般的に医者が治療の方向を決めている血圧は肘につける血圧計のデーターを見ています。 血圧を出しているのは心臓ですから、心臓から離れた方が測定出来る圧は低くなるように思われがちですが、実は逆で血圧は心臓から離れた方が高くなる傾向があります。 これは、心臓から送られてきた脈が毛細血管の少し手前側で反射して、その反射した脈と心臓から送られてくる脈が重なって、圧力がさらに高くなるという現象がおこります。 血管が柔らかいと反射する波が小さいため、重なる波が小さくてすみますが、動脈硬化が進み血管が固くなると、この反射する波が大きくなり、肘から手首、指先へ行くにつれてどんどん血圧が高くなってきます。 なので出来れば肘の上で計る血圧計を使ってもらえるとありがたいです。
ただ、手首や指先ではかる血圧計は小型で持ち運びが良いという利点があります。 手首の血圧計は医者が測定している血圧と少し異なるという不都合はありますが、自宅での血圧の傾向はわかりますので、手首ではかっているという事をおっしゃっていただいて、測定を続けていただくのは問題ないと思います。
また圧迫するために巻いている布の部分(マンシェットと言いますが)が心臓と同じ高さにある事が重要です。 肘の血圧計だと、どのような姿勢になってもほとんど心臓と同じ高さになりますが、手首の血圧計だとなかなかそのあたりが難しいかもしれません。 水銀の比重を13.6とすると、心臓より20cm低い位置で血圧を測定すると、15mmHg程度肘で計る血圧計より血圧が高めに測定されてしまいます。

心電学会に参加して来ました

週末に心電学会に参加して来ました。 今年は、幕張メッセでした。 JRの京葉線に乗って幕張まで行ったのですが、今回は電光掲示板の無い古い電車に乗ったので、到着するまでドキドキでした。 何か総武線へ接続する列車もあるみたいですね。 最近、電車内のアナウンスが小さいので、どこへ行く電車なのか全く解らなくて不安でした。
心電学会というのは、日本で行われる不整脈関連の2つの大きな学会の内の一つで、日本不整脈学会が治療に重点を置いた学会であるのと対照的に、
診断や不整脈のメカニズムについて掘り下げて議論が行われる場所です。 最新の治療法や、病気に対する不整脈を専門としている先生方の総意が聞ける場所でもあるので、やはり勉強になります。 毎年1回、会期2日間の日程で行われるのですが、平日はどうしてもクリニックを閉じるのが難しく、今年は一日だけの参加になりました。 古い友人にもあえてとても懐かしかったです。

『測定するごとに血圧が170とか120とか大きく変わってしまうんですが、どれが本当の血圧なのですか?』

それはどれも正しい血圧です、でも治療の基準にする血圧は安静時のリラックスしたときの血圧を使います。

皆さん運動すると、心拍数が増加してドキドキしますね。 運動したり食事の後などに胃や腸に血液を送ろうとしようとするさいに、たいていの方は心拍数が上がり、それにと同時に血圧もあがります。 血圧があがれば臓器への血液の流れが多くなり、栄養や酸素を効率よく送る事ができると言う訳です。 ですので体が活動しているときには血圧は高くなり、安静にしていいてエネルギーが必要ないときには血圧は自然と低くなります。 治療の目標はこの安静時のリラックスした時の血圧を治療の指標にします。
活動というと、走ったり泳いだりするときの事を考えたりされるかもしれませんが、ゆっくり歩いたり、話をしたり、食事をしたりするのも、ちょっとした活動になります。 患者さんの中には、血圧測定中に「今階段を上ってきたところなので血圧が高いかもしれない」とお話されたりする方がおられるのですが・・。 しゃべるだけで血圧は10~20ぐらいは上がりますので逆効果です。 ゆっくり落ち着いて、状況をお話されなくてよろしいですので、高ければ測定後に教えていただければよろしいかと思います。 三好クリニックでは、上がり症で血圧が上がってしまう様な方の場合、ベットに寝てもらって測定する事もしています。
安静時の血圧とは、3分ぐらい横になって、その後しゃべったり動いたりせずにゆったりと血圧測定ボタンを押してもらったときに測定される血圧と思っていただけると良いと思います。 横になって測定できなければ、テーブルに座って、血圧計をまく腕輪(マンシェットと言います)を心臓と同じ高さにして測定していただくのがよろしいかと思います。 くれぐれも、おしゃべりしながらとか、怖いテレビを見ながら測定してしまうと、安静時の血圧を正確に評価する事ができませんのでご注意ください。

胸の痛み-5

11、胸部の骨格の痛み
胸の前側は、実は肋骨と、胸の真ん中にある。幅3~4cm程度の長細い胸骨と言う骨が、軟骨(肋軟骨)でつながった関節があります。 関節と言えば、膝とか肘とかを想像しますが、胸骨と肋骨の境目も関節があって、この関節が動く事で、胸が広がって息が出来るのです。 関節は負担がかかりやすい部分です。 なので重いものを胸の前で抱えたり、肩に乗せて運んだりすると、その後胸が痛くなる事があります。 強い咳や、打撲等でもおこります。この痛みは、場所が明確で、押すと痛みが強くなる部分があるので解ります。 呼吸等胸の骨が動く様な動作で痛みが強くなる事もあります。 また皆様インフルエンザ等高熱が出る病気にかかられると、体の節々が痛くなる事あると思います。 その際に、胸の関節も痛む場合があります。 普通の解熱鎮痛剤で少し症状が出にくくなる場合があります。

12、心因性の胸部症状
最後に、これはどうしてそうなるのか解りませんが、例えば、感情がたかぶる際に、胸のあたりが、熱くなったり、キューッとしたり、痛くなったりする事があります。 恐らくこのため昔の人は心が心臓の位置にあると思ったのでしょう。 こういった症状は通常痛みの部位が漠然としていて、何かほかのことに意識を集中しているとき(例えば旅行等に行って、気分が変わったりすると)に症状が無くなったりします。 これは他のいろいろな考えられる病気を除外した後の診断になります。 

最後に
いろいろかきましたが、胸が痛いという症状を見た場合、大体このような病気を疑います。 症状からほぼ9割診断が付くと言いますが、病気の診断ですから本来10割診断が付かなくてはなりません。 そのため、よく患者さんのお話を聞いた上で、診察し、適切な検査を行って診断を行う事になります。 症状があまり典型的でなかったり、病気は重症だけれど症状が軽かったり、全くなかったりする場合もありますので、やはり気になる症状があるようならば、自分だけで判断せず循環器内科の先生に一度御相談いただいた方が良いでしょうね。

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8、胃炎・逆流性食道炎
胃は大量の塩酸を作り出しています。 胃は酸に強く出来ていますが、食道は酸に弱いため、胃で出来た酸が食道に逆流すると(逆流性食道炎)、胸が熱くなったり、不愉快な感じがあったり、重い痛みとして感じる事があります。  胃潰瘍等も、腹部の上の方の痛みのため、胸部の痛みと紛らわしい場合があります。 痙攣等も伴うと、差し込む様な感じとして感じられる事もあるかもしれません。 痛みの強さは食事のタイミングとの関連があったり、逆流性食道炎の場合、横になったときに症状が出やすいという事もあり、朝方や、横になった際に症状が悪くなる特徴が見られる場合があります。 胃腸の蠕動運動という食物を押し流そうとする周期的な運動に同期するため、数分の単位で周期的に痛みが強くなったり弱くなったりする傾向がある場合もあります。 診断には胃カメラを行ったりする場合もありますが、胃酸を押さえる薬剤を処方して、症状が改善するかどうかを見る事で、患者さんの症状が逆流性食道炎でないかを判別する事もあります。

9、心筋炎・心膜炎
ウイルスや結核等で心臓の筋肉や心臓の周りを包んでいる膜に炎症が起こる事があります。 心筋炎の胸部の痛みはあまり典型的な症状ではありませんが、心臓の周りを囲んでいる膜に炎症が波及すると痛みが出る事があります。 この痛みは個人差が多く、漠然とした胸全体の重い感じであったり、刺されるような鋭い痛みであったりします。 体の向きによって痛みが強くなったり弱くなったりすることが特徴的です。 例えば前屈みになると痛みが強くなったり、呼吸で胸を大きく広げると痛みが出たり等です。 通常風邪の様な症状も伴う事が多いです。 聴診で診断が付く場合もありますが、きちんとした診断をするためには、心電図やエコー検査、レントゲンや採血を行う必要があります。 

10、肋間神経痛
胸の表面の感覚を感じている神経は、肋間神経と言います。 丁度手を胸に当ててみて肋骨が触れると思いますが、その肋骨の間を神経が走っていて、胸の部分の感覚を脳に伝えるのです。 その神経が傷ついたりすると、その部分の胸の感覚神経が勝手に痛みを脳に伝えます。 これを肋間神経痛と言います。 神経痛の痛みの代表的なものは、肘を机の角でぶつけたりした時のあの手先まで広がるしびれを伴った痛み、あるいは、正座したりした際に、足先に感じるぴりぴりした痛みでしょうか。 しかしそれ以外にも、灼熱感を感じたり、チリチリする様な痛みを感じたり、障害程度の弱い神経痛は、比較的多様な痛みを生じます。 ただし、その痛みは、たいていは表面的な痛みで、痛みの場所が明確に決まっているため、患者さんは「ここが痛い」と指を指す事が出来ます。 これが心臓等の内蔵痛との大きな違いです。 しばしば、帯状疱疹ヘルペスの前駆症状や後遺症であったりする事もあります。 

続く

胸の痛み-3

胸の痛みを起こす病気をさらに挙げてみます

4、解離性大動脈瘤:
体の中で最も大きな、心臓から出て胸部・腹部まで通る大動脈に亀裂が入り、大きくふくれあがったり、中の血液が外に漏れたりする病気です。 亀裂が入って急激に大動脈が大きくなる際に、今まで経験した事のないような強い痛み、非常に強い痛みを感じる事が多いです(30cmの竹定規を肩口から突っ込まれて内蔵をガリガリやられている様な感じと表現される方もおられます)。 また時々その痛みの位置が、時間とともに移動してゆくという事があるのも特徴です。 ただ症状は個人差があって軽い腰痛ぐらいの程度の方もおられます。 レントゲンで運良く見える場合もありますが、きちんとした診断を行うためには、造影のCT検査を行う必要があります。 元々血圧の高い方は要注意です。 放置していると致命的になる事もあります。

5、肺梗塞
静脈にできた血栓が、静脈血に乗って心臓に戻り、その後肺の動脈に詰まる事があります。 最も一般的なのは、足の静脈にできた血栓が飛ぶ事が多いです。 体重の重い方や、女性(元々性ホルモンが血栓を作りやすい傾向にあります)、後は長期間寝ておられて足を動かさなかったりする方、長期間の脱水の方に見られる事が多いですが、それ以外にも、血液の血栓を作るためのタンパク質の異常や自己免疫疾患などの一部で血栓ができやすくなる事があります。 エコノミークラス症候群としても有名です。 典型的な症状としては、胸の重苦しい感じとその後の持続的な息苦しいと言う症状です(動くと息苦しくなる)。 レントゲン写真や心電図、採血などではなかなか診断がつかない場合も多く、造影CT検査、肺シンチグラム、心臓超音波検査などで診断が付く場合があります。 

6、不整脈 心房細動
心房細動とは、心房という心臓の中の補助ポンプに当たる小さな部屋が、一分間に600回ほど電気的に興奮してしまう病気です。 心臓の老化現象の一つだと言われています。 元々心臓全体の3割ほどのポンプ機能を担うとされている心房筋の異常ですので、あまり症状が出ない方が多いです。 症状がある方ですと、ドキドキするとか、フワーっとするとか、そういった症状である事が多いですが、時々、胸が痛い、しくしくするとか、重苦しいとか、動くと胸が重いといった症状を訴える方もいらっしゃいます。 

7、不整脈 期外収縮
心室・あるいは心房が、本来のリズムのタイミングより早く電気的に収縮してしまうため、収縮がいびつになり、その際に胸の痛みとして感じられる方がいらっしゃいます。 症状の強い方は珍しいですが、症状が強いと、気持ちが悪くなり仕事が手に付かなくなってしまったりされます。 痛みというよりは、「ドキン」とするとか、心臓が裏返るようなん感じ、という風に症状を訴える方がいらっしゃいます。 症状があるときに心電図を取らなくては診断が付かず、24時間心電図検査を行ったり、時には携帯型の心電計を使って診断をさせていただく事もあります。 心房か心室かで、薬の選択や効き方に違いがあったり、原因となる病態も異なってきます。

続く

胸の痛み-2

胸の痛みを起こす病気

少し病名を上げて、典型的な症状を挙げてみます。

1、狭心症:
心臓の筋肉を栄養している冠動脈と言う動脈の動脈硬化でおこる胸部の痛みです。 たいてい、階段を上ったり歩いたりして、体を動かしている時におこり、止めると治る事が多いです。 胸をつままれるような、重いものをのせられるような感じ、 首や左の奥歯あたりに痛みを感じる場合もあります。 また左手に痛みが放散する事もある様です。 今まで無かった症状が出始めたり、今まで大丈夫だった運動量でも症状が出始めたりする時期は、不安定狭心症といって心筋梗塞に移行する事が有るので注意が必要です。 そのような場合は緊急に入院が必要になります。

2、心筋梗塞:
冠動脈が何らかの原因で詰まってしまって、心臓の筋肉が壊れる時に痛みが出ます。 これは体を動かしている時とは関係なく、胸が重いとか、万力で締められるようなとか、焼けるような感じであったり、冷や汗を一緒に伴ったりする場合もあります。痛みが10分とか15分以上継続します。 あらかじめニトログリセリンを処方されていて、ニトロが効果が無いような場合、やはり救急車等をお呼びになられた方がよろしいでしょう。 痛みがある場合もありますが、糖尿病や高齢の患者さんですと痛みが無い無痛性心筋梗塞の場合もあります。 そのような場合定期的な心電図検査をお勧めします。 心筋梗塞が発症した場合、発症から6時間以内であれば、閉塞した血管を広げる緊急手術を行うと、その後の心機能の快復が良い事が知られています。 なので、非常に強い胸の痛みが持続するようならば、夜中でも朝まで待たずに救急車を呼んで、救急病院を受診される事をお勧めします。 逆に、12時間以上経過すると痛みを感じる神経も壊れてしまうため、同じ痛みが12時間以上続く事は珍しいです。

3、気胸:
肺に穴が開いて、空気が肋骨と横隔膜で囲まれた胸腔という空間と肺の間に空気が入ってしまい。 肺が十分広がらない事が有ります。 痛みの程度は人それぞれですが、息を吸う時に痛みがある方が多い様に思います。 あまり漏れた空気が多くなり肺が広がらなくなると、息が苦しくなったりします。 また歩くと、胸腔の中で肺が揺れる感じを感じられる方もおられます。 こちらも入院して治療が必要となります。 レントゲン検査で解りますが、漏れた空気の量が少量だと、初めのレントゲンでうまく見えず、少し間を置いてみるとよく見える事があります。

続く

胸の痛み

胸に痛みがあるとき、やはり皆さん不安に思われるのではないでしょうか? 胸部には、肺や心臓といったとても重要な臓器が集中しています。 そこに痛みがあれば、命に関わるものではないかと、とても心配になりますね。
循環器内科の医者に、症状の性質を話すと、大体お話を聞いた時点で、ほぼ9割ほどは診断が付くと言われています。 心電図検査や胸部レントゲン写真、採血などを行って、診断をつけるのですが、それらの検査で、その診断を確認する事になります。

痛みの性質
胸が痛いというとき、あるいは違和感を感じるとき、いろいろな表現があります。 「押される様な感じ」「針で刺される様な・ちくちくする感じ」 「ジンジン痛い」 「締め付けられる様な痛さ」「痛くて息が吸えない」「痛くなったあとから急に息苦しくなった」 「膜が張ったみたい」「ビキッとなる」「心臓がひっくり返る様な感じ」「歩くと胸が苦しい」 「カーッと熱くなる」
まあもっとあるのでしょうが、代表的な表現はこのようなものでしょうか?

痛みの持続時間や放散、きっかけ
体を動かしたり、重いものを持っているときに症状が強くなったり。 食事との関連や、体の位置(横になっているときとか、前かがみになっているときとか)で強くなったり弱くなったりするという事もあります。 また痛みがあるのは、ほんの一瞬であるのか、あるいは数分感続くのか、あるいは1時間以上続いたり、一日中感じたり。 どのぐらいの時間続く痛みなのかでも、大体病気の推測ができます。 また内蔵から来る痛みは、放散といって、一カ所にとどまらず、手の方へ痛みが広がったり、首や奥歯の方へ痛みが広がったりする事があります。 そのような放散も診断のヒントになる事が多いです。

こういった症状の特徴で、ある程度、その胸の症状が何からおこっているのか推測する事ができます。 どのような症状が何にあたるかは、ご自身で判断されるのは危険です、やはり循環器の医者にきちんと相談をした方が良いでしょう。 胸の痛みが出る病気の中には、心臓や大動脈など、放置しておくと命に関わる様な事もありますので。

続く

動悸がするんですけど・・・。

動悸ってどういう症状でしょうか? 動悸とは普通は意識しない心拍を感じるという意味があります。 ドキドキする。 ばくばくする。 どっくんどっくんする。 ドッキッとする。いろいろな表現がありますね。 
動悸という症状は、心臓に異常な電気回路がある不整脈と、そうでは無い普通の心拍数の変化をそのように感じるだけというでも起こります。 動悸がすなわち不整脈というわけではないのです。

動悸を大まかに2種類に分けると、心拍が早く打つ動悸と、遅くゆっくり大きく打つ動悸に分かれます。
またさらにリズムが整っているかどうかで、3種類に別れます。 整っている動悸と、整っている脈の中に時々変なリズムが入るような(スキップ)動悸、そして脈拍のリズムが全くバラバラになってしまっている動悸があります。

心拍数が遅い動悸


一般的に遅くゆっくり大きく打つ動悸は、特に病的なものでない事が多いです。 急に横になった直後や、息ごらえをした直後に、など状況は様々ですが、心臓に急激に静脈血液が戻って来た際に起こります。 一回一回の脈が大きく、間隔が長く打つ、その症状を動悸として感じる場合があります。 例えば立っている状態から急に横になると、今まで低い位置にあった足が心臓と同じ高さになります。 そうすると足にたまっていた静脈の血液が、心臓に急激にかえってきます。 急に心臓にかえってきた静脈血液を先に吐き出すため、心臓は大きく拡大して、一回一回の収縮を力強く打つようになります。 
また横になって安静にしていると、背中が固定されているので心臓の拍動を大きく感じやすいこともあります。 実はこれは心臓の普通な反応です。 特に心配する事はありません。 血液が全身に行き渡る10秒から30秒ぐらいの間、我慢すれば自然に良くなる訳です。
むしろ心拍が遅くなる病気の場合、動悸として感じるよりも、「疲れやすい」、「息がすぐ上がってしまう」、「足が浮腫む」といった症状が出る事が多いです。

心拍数が早い動悸


心拍が早くなる動悸の中では、その出方や終わり方で、不整脈の種類が大体予想が付きます。 少しづつ脈拍が早くなって、寝たり、しばらくして忘れていると落ち着いているというような経過をたどる動悸は、不整脈でない場合が多いです。
心拍がずーっと早い状態が続いているような場合は(寝ているときも含めて)、不整脈というよりは、その他の病気、例えば、貧血や甲状腺という首にある臓器から分泌されるホルモンの異常や、感染症や発熱、または心臓のポンプ機能の低下などによって心拍数があがった状態を疑います。 これらは、採血やレントゲン、心臓の超音波検査を行ったりする事で診断をつける事ができます。
突然心拍数が早くなり、比較的リズムが整っていてドキドキドキドキと連続して、突然止まる。 こういう動悸は、心臓に何か電気的な回路の異常があっておこる場合が多いです。 心房粗動・房室回帰性頻拍・WPW症候群・房室結節回帰性頻拍・心室頻拍(すいません詳しくはまた別の機会に説明します) 病名で言えばこのような不整脈でしょうか? 不整脈のあるときに心電図を取ってみなくては診断が付かない場合も多いですが、症状が疑わしくて、患者さんの症状も強く根治を希望されている場合は、診断が外来で付かなくても入院していただいて、血管を介して心臓の中に電極カテーテルを挿入して、不整脈を誘発して診断と治療(カテーテルアブレーション)を行う事になります。 外来で行う検査としては、ホルター24時間心電図・心電図検査・携帯型心電計といった検査や、誘発のためトレッドミル運動負荷心電図検査と行った検査を行う場合もあります。 また心拍が早くなる不整脈では、命に関わる不整脈も混じっています。 通常心臓のポンプ機能が低下している場合、早い不整脈が生じると血圧が低下して危険に陥る事が知られており、胸部レントゲン写真・採血・心臓超音波検査等を行って、心臓の動きに異常がないことを確認する事もあります。

整っている心拍で時々変なリズムが入る。 スキップするような動悸


この様な動悸は、期外収縮という不整脈がある事が多いです。 その不整脈は心室でおこる事もありますし、心房でおこる事もあります。心室でおこれば心室性期外収縮、心房でおこれば心房性期外収縮という名前になります。 これもやはり動悸のおこっているときに心電図を取ってみる事で診断が付きます。 このような形の不整脈は心臓のポンプ機能に異常があったり、安静時の心電図に異常があったりしなければ、一般的には命に関わる不整脈では無い事が多いです。 しかし、この不整脈が病気の発見のきっかけになったりする事もありますので、やはり循環器の不整脈を専門としている医者に受診される事をお勧めします。

心拍のリズムが全くバラバラになってしまう動悸


これの原因はほとんどが心房細動です。 心房細動は別のページでも記載していますが、それ自体が命に関わる不整脈ではありません。 治療の原則は、心房細動によるつらい症状があるかどうか? そして、脳梗塞等の血栓塞栓を起こしやすい様なリスクを抱えた患者さんであるかどうかという事になります。 また心房細動が、心臓弁膜症の初発症状であったりする場合もあります。 あるいは甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症といった頚部の喉の部分にある腺組織から分泌されるホルモンの異常で、起こったりする事があります。 これらのチェックのため定期的に採血を行ったり、心電図を行ったり、心臓の超音波検査を行ったりします。

心室性期外収縮-続き

ある程度、不整脈の心電図の上での形によって危険度は推測できます。 それにあわせて薬の選択肢も少し違ってきます。 薬は効果が強いものほど副作用も強く出る可能性があるので、はじめのうちは効果が弱いけれど安全な薬を選択します。 しかしそれではコントロールできない場合、さらに強い薬を選択します。 

10年以上前のカテーテルアブレーションは命にかかわる不整脈のみに限定されていましたから、不整脈を専門にしていない先生や、昔に循環器内科の研修をされた先生が、心室性期外収縮の患者さんを診られると、「この不整脈は命にかかわるものではないので放置してよい」と考える傾向にあります。 患者さんの症状が強ければ、症状を感じさせなくするために精神安定剤を処方される場合が多い様です。 しかし安定剤だけでは、感覚が鈍感になるだけで、症状が強い方にはあまり効果はないです。 そのため、かかりつけのお医者様との意見が噛み合ず、途方に暮れて私の外来にやってこられる場合があります。 専門外の先生ですと、心室性期外収縮は寿命にはほとんど影響しませんので、抗不整脈薬による副作用の面を心配されて、あまり積極的に薬剤を使われない様です。 しかし、薬や不整脈の機序にたいして専門的な知識をもち、薬を適切に使用すれば、比較的安全に使用できるのも事実です。 なので症状が強い方はあきらめずに、不整脈の専門医を受診される事を勧めします。 

薬に対する恐怖感が強かったり、副作用の為に内服ができなかったり、長期間にわたって内服をする事の不自由さを理由に、内服ができない患者さんもおられます。 そのような場合、カテーテルアブレーションが選択されます。 カテーテルアブレーションとは血管内でのカテーテル治療で、不整脈の源になっている一部の心臓の細胞を熱で消滅させ、不整脈を根治する方法もです。 カテーテルアブレーションを行っていない施設では、まさかこの命に関わらない不整脈に対して、アブレーションを選択するとは思っておられない先生方が多い様で、苦しい症状を訴える患者さんをなだめすかして、外来で様子を見ている場合が多い様ですが、カテーテルアブレーションを積極的に行っている施設では、症状が強い場合迷わずカテーテルアブレーションによる根治術を選択します。 

心室性期外収縮は、まあ言えば心臓のしゃっくりの様な物とたとえられます。 しゃっくりがあっても、息は出来て死ぬ事はありませんが、しゃっくりも多すぎれば、日常生活は大変なわけで、それは十分積極的な治療を行う理由になります。 心室性期外収縮て強い症状をお持ちの方は、是非きちんとした治療を専門の先生に見てもらった方がよろしいかと思います。  念を押しますが、心室性期外収縮は症状が無ければ特に放置していてよい不整脈です。 ただし、心室性期外収縮が、心臓の他の病気の前兆であったり、あまりにも回数が多い(全心拍の1/4以上あるような場合)患者さんは、定期的な経過観察が必要です。 ですので一度は専門の不整脈専門医を受診されていた方がよろしいかと思います。

心室性期外収縮

心室性期外収縮という病気をご存知ですか? 心臓のメインポンプ心室が、本来の心拍のタイミングでない時期に(つまり期外)収縮してしまう事を言います。 人の心臓は、右心房の右上に存在するリズムを作るペースメーカーと言う部位でリズムが作られていています。 興奮したり、体温があがったり、あるいは貧血や何らかの内分泌異常などで心拍はあがったり、下がったりします。  そういったリズムの変化は、ほぼ一定の間隔で収縮しています。 それとは反して期外収縮とはこの一定の間隔でないタイミングで心臓の収縮がおこってしまう病気です。 
心臓が血液を全身に送り出すためには、心臓が収縮する時に十分な血液が心臓の中に入っている必要があります。 心臓の収縮のタイミングがずれて、少し本来のタイミングより早く収縮してしまうと、期外収縮の際の収縮は十分な血液が送り出せず、脈が抜けたように感じ、その一方で、次の心拍では、前の収縮で駆出出来ていたはずの血液が心臓内に残っているために収縮が強くなり、脈を強く感じたりする事があります。 
心室性期外収縮は、比較的良くある不整脈で、24時間心電図をする検査を行うと、ほとんどの患者さんに一日数発から数十発の期外収縮が出ています。 しかしそれを自分で自覚される方は少ないです。 同じ不整脈があっても症状が出る人と出ない人があるのは不思議ですが、その理由は正直よくわかっていません。 ただ、心臓の筋肉内に存在する知覚神経はとても鈍感なため、単発の異常収縮を感じる事は考えにくく、心臓の周囲を取り囲んでいる膜や、胸壁の知覚神経を介して症状を感じているのでは無いかと思われます。
心室性期外収縮のほとんどは無害な不整脈で基本的に放置していてよいものです。 期外収縮がおこる理由は、ペースメーカー以外の心臓のどこかの筋肉が勝手に興奮を初めて収縮しまう事でおこります。 そのため心臓の筋肉が興奮しやすい状況にあるときにおこりやすいです。 具体的な状況としては、血液の中のカリウムの濃度が低くなりすぎている状況や、興奮してアドレナリンが活発に分泌されている状況、また興奮の一番始めに働くイオンチャネルのナトリウムチャネルの興奮性が高まると生じやすく、そのため、治療にはナトリウムチャネル阻害薬や、アドレナリンの阻害薬(β遮断薬)が使われる事が多いです。 期外収縮自体が寿命に関係なく、無害な不整脈なので、不愉快な症状さえ無ければ、特に治療は必要ありません。 むしろ、強力に不整脈を抑制出来るナトリウムチャネルを投与する事で、期外収縮がコントロール出来たとしても、別の不整脈を起こしてしまったり、ポンプ機能の悪い方ですと、逆に寿命を短くしてしまったりする事が知られていて、症状が無ければ治療を行う事で害をなす事があるのです。
しかし、期外収縮があるだけで、不愉快でもうどうしようもなくすべての事が手に付かないぐらい症状の強い方がいます。そのような場合、その方の心臓の状態を見て、薬を処方する事があります。

続く

自律神経と不整脈-5

自律神経に作用する薬剤


随分難しい話しになってしまいました。 しかし、自律神経という神経には、多くの謎があり解っていない事も多いのも事実なのです。 しかし、この自律神経の活動を調整する事で、不整脈をある程度落ち着かせたりする事は可能になります。 自律神経に作用する薬はいくつかの種類に分類出来ます。

安定剤


自律神経に大きな影響を及ぼす、意識出来る脳活動、つまり大脳の活動を押さえる事で、自律神経の反応を調整する事が出来ます。一般的に(精神)安定剤と言われる薬剤です。 代表的なものとして、GABA(ギャバ)というアミノ酸を伝達物質とするイオンチャネルを活性化させるもが一般的に使われます。 GABAは、安静感やリラックスをする目的で、GABAを多く含んだチョコレート等が売られていた事がありました。 神経細胞はGABAが近くにある、あるいはGABAの作用を強める様な薬剤を投与すると、全体的に神経活動が落ち着く傾向にあります。 この薬剤は、量が多いと精神活動が全般に押さえられ眠くなります。 また、手足の筋肉に力が入りにくくなり、ふらふらしたりよろけたりします。 このタイプの薬は不眠症の薬としても投与される事が多いです。 一方で、量が少ないと、ストレスや不安等で異常に頭がぐるぐる回っている様なときに、その不安の部分を和らげる作用(嫌な事を忘れる)があると言われていて、肩こりが緩和されたり、動悸や、胃の不快感等が緩和されたりする事があります。 しかし、薬に依存してしまうようなタイプの患者さんに取っては少々使用方法が難しい薬です。 例えば、患者さんの中には、元々の症状がストレスから来ている患者さんが、「不整脈の症状を押させるために、安定剤を飲む。 飲んだ分楽になった気がして、さらに体にストレスをかけてしまう」と言った思考をされる方に取っては結構危険な薬でもあります。 そういう患者さんは勝手にどんどん量を増やし、飲んだ分どんどん病気の原因となっているストレスを増やしてゆくというような事をされる事が有ります。 これは結構危険なのでやめてください。 薬はあくまでも、体を直すためのきっかけで、やはり病気の原因を取り除く事が重要なのです。ですので、患者さんとはいろいろ相談しながら減量や増量を行い、最も患者さんに適切な量を決めます。 

β(べーた)遮断薬


交感神経の興奮が心臓に伝わらない様にブロックする薬です。 交感神経の神経伝達物質であるアドレナリンをブロックする薬です。 この薬は不整脈以外にも、血圧の薬や、狭心症の患者さんは慢性心不全の患者さんに使用する薬でもあります。 ただ、あまり多いと、ふらついたり、悪夢を見たり、気分が落ち込んだりする事が有るので注意が必要です。 交感神経が原因となっている不整脈の治療には非常に重要な役割を果たします。

フォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬


あまり、聞いた事がないかもしれませんが、カフェイン・バイアグラと言った分類の薬です。 これらは交感神経の作用を心臓の筋肉側で増強する薬剤です。 交感神経を興奮させたのと同じような作用が有ります。 徐脈性の不整脈の患者に用いる事が有ります(カフェインやバイアグラでは無く他の名前の薬を使います)。

副交感神経遮断薬


副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの効果を弱める薬剤が有ります。 有名な薬剤としては、元々心臓のイオンチャネルに働く抗不整脈薬の一部にこのアセチルコリンの効果を弱める副作用がある薬剤が有り、副交感神経を抑制する事を意識しながら、それら薬剤を使用する事が有ります。 リスモダン・シベノール等といった薬剤になります。 これらの薬は同時に副交感神経の興奮が高まると困る病気を持った患者さんには使いにくいです。 例えば緑内障(閉鎖隅角)、中等症以上の前立腺肥大、唾液の分泌の悪い方等にはあまり適していません。

不整脈の治療はこういった薬剤を、患者さんの症状に合わせて調合してゆく訳ですが、そのさじ加減や副作用の判断が我々不整脈を専門とする医者の腕の見せ所という事になりますが・・・。 実際には自律神経に関わる不整脈をコントロールするのは結構大変です。 自律神経は季節や体調によって大きく変動するので、薬の調整に結構難渋するのです。 申し訳ないですが、気長におつきあい頂ければと思います。

自律神経と不整脈-4

副交感神経と不整脈


自律神経の中で、休んだり食事をしたり、眠りにつくときに活発になる副交感神経は、内蔵全般に分布していて、その先端から「アセチルコリン」というホルモン(神経伝達物質)が分泌されています。 この副交感神経は心臓に分布しています。 副交感神経は、別名・迷走神経(めいそうしんけい)とも呼ばれています。 これはこの神経が臓器に分布する際に、少し不可解な走行をしている事や、内蔵の周囲をぐるぐる行く先がわからないような複雑な走行をする部分があるからそのような名前が付けられています。 あたかも迷走している様な神経というその配列や走行のパターンから呼ばれているわけです。副交感神経の心臓に対する効果は、大まかに言うと、心拍数を下げ、心臓の収縮力を低下させる方向に働きます。

迷走神経反射


内蔵などが強く引っ張られたり、血管周囲に強い疼痛があったりすると興奮します。 また顔面や眼球に多く分布していて、顔面が冷たい空気にさらされたり、冷水等で強力に冷やしたり、眼球をマッサージしたしした際に(眼球のマッサージは危険なのでやめてくださいね)、活発に興奮すると言われています。また息こらえや、咳等でも迷走神経反射が起こる事があります(ある種の不整脈を止めるのに使われます)。 その反応が強すぎると、心拍が減少したり、血圧が低下して脳貧血を起こしたりする事があります。 例えば胃カメラや大腸鏡、内蔵の手術の際や、採血時にとても強い痛みを感じた後など、副交感神経の過剰な反応・興奮がおこって、それによって気分が悪くなる。血圧が下がって脳貧血になるという事があります。 これを医者は迷走神経反射と呼びます。 

心臓と副交感神経


副交感神経から分泌されるアセチルコリンは、心臓の筋肉、特に、リズムをコントロールしている心臓の筋肉や、心房筋に作用します。 アセチルコリンは、自己の心拍が停止したり極端に遅くしてしまう事で、「洞停止」、「洞性徐脈」、という不整脈を引き起こしたり。 心房と心室の間の電気的な連絡が弱くなり、「房室ブロック」という病気になる事があります。 また、心房の筋肉の不応期と言って、興奮出来ない時間を極端に短くして、「心房細動」や「心房性不整脈」を起こしやすくしたりします。またそれ以外にも、アセチルコリンは、右心室流出路や弁輪部から出現する「心室性期外収縮」を増やしたり、「ブルガダ症候群」という疾患の心室性不整脈を起こしやすくするのでは無いかと言われています。
副交感神経は、交感神経の過剰な興奮を抑えるように働き、急激な血圧の上昇を抑えたり、心拍の上昇を抑えたりするのに重要です。 しかし過剰な興奮は、急激な血圧の低下を来して脳貧血を起こしたり、ショック状態になったりする場合もあります。 なのでやはり適度な興奮というのが必要となります。 交感神経と副交感神経は、互いに互いを抑制し合い、バランスを取るように動いていますので、どちらかが異常に過剰に反応すると、不整脈以外にも、いろいろな内蔵の症状を引き起こす事もあり、そうならないためにも、規則正しい生活やストレスとうまくつきあう方法を身につけておく必要があると思います。

続き

自律神経と不整脈-3

交感神経と不整脈


自律神経の中で、運動したり興奮したりするときに活発となる交感神経は、心臓や血管の表面、気管支等に分布していて、その神経の先端から、ノルアドレナリンというホルモンを分泌します。 ノルアドレナリンとアドレナリンという二つのホルモンは、カテコラミンという種類のホルモンに分類されます。カテコラミンは、大まかに言えば心拍数を増加させて、心臓の収縮力を増加させ血圧を上げます。 一般的にはアドレナリンという名前の方が知られているので、ここではアドレナリンと呼びます。 神経から分泌されるアドレナリンは一種類ですが、臓器によってレセプターのタイプが異なります。 例えば心臓に分布しているβ1というレセプターと、血管や気管支に分布しているβ2というレセプターはちょっと形が違います。 (ちょっと余談になりますが、血小板にもα2アドレナリン受容体があり、興奮してアドレナリンが血液中に増えると、血小板の機能を介して血液は固まりやすくなります。 そのため血管の病気や血栓の病気をお持ちの方は、交感神経が過剰に活動する精神的なストレスや興奮はあまり好ましくありません。) その形の違いを利用して、いろいろな薬剤が作られています。 また
カフェインはこういった交感神経の興奮が細胞に伝わる際に、細胞内でその効果を増強するために、同じ交感神経の興奮の程度でもより強い反応を細胞が示す事になります。 
アドレナリンの心筋細胞への作用は、心臓の筋肉の中で電気信号が伝わる速度が早くしたり、興奮性を高めたり事で不整脈を起こしやすくします。 例えば、心室性期外収縮の数を増やしたり、心房性期外収縮の数や連発を増やしたり、発作性心房細動を引き起こしたり、房室結節回帰性頻脈や房室回帰性頻脈を誘発したり、心房粗動を引き起こしやすくしたり、心筋梗塞急性期の心室細動等の致命的な不整脈を起こしやすくしたり、QT延長症候群の患者さんのQT時間を延長して心室細動を助長したりします。 また不整脈ではありませんが、前述した洞性頻脈を起こし、患者さんがそれを動悸として自覚する事もあります。 
ならばアドレナリンは全ての元凶、完全に止めてしまえば不整脈も無くなってよいのではないかと考えがちですが、適度なアドレナリンは日常生活で体を動かしたり、集中したりするときに、心拍を上昇させたり血圧を上げたりするのに利用されていて、それを完全に薬剤で止めてしまうと、体が本当に血圧を必要なときに十分な血液を供給出来ないため、ふわっとするとか、体が重く感じたり、人によっては悪夢を見るという方もおられます。 なのである程度の交感神経の興奮は必要なわけです。 

続く

自律神経と不整脈-2

交感神経の異常な高ぶり、パニック症



自律神経の働きは、運動をしたり、興奮をしたりすると活発になる交感神経と、 睡眠や休み、リラックスしているとき、食後や栄養補給時・排尿・排泄時に活発になる副交感神経の2つの神経がバランスを取って興奮したり休んだりして、外界の環境にスムーズに反応するように体を準備しています。 
体は休息しているのはずなのに、交感神経が高ぶったり、 体は活動しているはずなのに、副交感神経が高ぶったりすると、大脳は違和感を感じます。 そしてその感覚は不安を引き起こし、その不安に対応しようとして交感神経がさらに高ぶるという現象がおこる事があります。 不安と交感神経の高ぶりがお互いがお互いを刺激し合い、結果として両者が異常に活発になる事があります。
そうなってしまうと、不適切な頻脈と気分不快、血圧の変動を引き起こして、不安のため救急車の出動を要請したりする場合もあります。 これをパニック症候群と言います。 パニックが生じると、息苦しく感じる場合も多く、酸素を必要とするような気がして呼吸が速くなりすぎ、本来血液中にある程度は存在しなくてはならない炭酸ガスが低下し過ぎ、血液がアルカリ性に傾くことで、全身の筋肉が勝手に収縮・痙攣したりする事もあります。 こういう状況を過呼吸症候群と呼びます。 これも酸素は十分足りているので、呼吸の回数をあまり多くする必要は無いという事をしっかり自覚してコントロールすれば症状はすぐに良くなります。 またパニック発作全般に関してもその状況が、命に別状が無い事をしっかりと自覚し必要以上に不安がらない事で、ある程度症状を抑える事もできます。 しかし、現実の患者さんは一度パニック症を経験してしまうと、またパニック症を起こすかもという不安から、外出もできなくなってしまう事もあります。 そのような場合、時間だけが解決してくれる事も多く、精神安定剤を内服して、不安をできるだけ取り除き、症状が出ないという安心感のある時間が1ヶ月、2ヶ月と続くうちに少しづつ、ゆっくり快復し。安定剤をやめていっても、パニック症を起こさなくなる事が多いです。
また通常は休んでいる時はあまり高ぶる事が無い交感神経ですが、睡眠不足や、カフェインの過剰摂取、あるいは不安や、仕事や人間関係で追いつめられたりした際には、安静時にも出現したりします。 好きな異性が近くにいるとドキドキするのもこの現象です。 この現象を医学的には洞性頻脈と呼びます。 これは不整脈とは呼ばない事が多いです。 なぜなら洞性頻脈は正常な心臓の機能の一面だからです。 運動や興奮をすると心拍が上昇する事は当然なので、皆さんあまり違和感を感じませんが、これも一種の洞性頻脈と言えます。 また安静にしていても、交感神経の過剰は反応や、運動不足時、発熱等でも洞性頻脈はおこります。 これが辛いと思われる様でしたらやはり、治療してゆく意味はあります。また洞性頻脈も何か他の内蔵の病気の前兆であったりする事もあります。 それらをきちんと判別するために、採血、心電図や、時には24時間心電図を行って、睡眠時・安静時の心拍を測定する事で、内蔵の病気による洞性頻脈であるか?そうでないのかをある程度知る事が出来ます。

続く

自律神経と不整脈-1

自律神経という神経をご存知でしょうか? 一般の人はあまり知りませんよね。 私も患者さんに時々解説しながら、説明が十分でないだろうなーと思いつつやっています。 なので、ここで少し解説をしてみます。

人間の脳の活動、意識したり痛みを感じたり、体を動かしたりする。 自分の意志で動かす、あるいは感じる部分は、大脳でコントロールされています。 大脳とは脳の中で最も大きな部分を占めている領域です。 しかし意識的に動かす事が出来ない部分、特に内蔵と言った部分は、それよりももっと多くの情報を集約してそれに対して細かな調整が必要になります。 動物は、そんなすべての体の情報を一度にコントロールする事が出来ません。 なので、ほとんどの内蔵の動きは、意識に上る前に自律的に解決されます。 例えば、呼吸等はどうでしょうか? 皆さん、普通に生活していて、息を吸って、そのあと吐くという動作を意識せずに行っています。 こういった無意識の動作、調整を行っている部分が自律神経という部分になります。 自律神経は、動物の進化の過程で最も早く出来た神経系統と考えられています。 この神経系統の細かな調整の話は、また別の機会にご紹介します。 今回はそれがどう不整脈に関わるかという事に焦点をしぼってみましょう。

自律神経には大きく分けて、(1)体を休める神経、つまり副交感神経という神経系と、(2)攻撃したり戦ったりする際に高まる神経、交感神経の二つから出来ています。 それぞれがせめぎ合い、体の運動状態をコントロールしている訳です。 

この二つの神経は心臓にもたくさん分布していて、心拍数を上げたり下げたり、心臓の収縮力を強くしたり弱くしたりします。 例えば、寝ていれば皆さん心拍数は下がりますし、起きて運動したり、興奮するような事がおこったりするとどきどきして心拍数が上がります。 
そのほかに自律神経は心臓の電気信号を作っているイオンチャネルに働いて、不整脈を引き起こしたりする事が知られています。 心室性期外収縮・心房性期外収縮・心房細動・心室細動・QT延長症候群・ブルガダ症候群・房室ブロック・洞不全症候群といった不整脈がこの自律神経の働きで悪化したりします。
この「自律神経」は、規則正しい生活をしていると整っていますが、不規則な生活を行ったり、興奮、カフェインの過剰摂取、睡眠不足、発熱といった事で大きく変動し、異常となる事が有ります。 また気圧の急激な変動や気温の乱高下、湿度の大きな変化といった外界の環境の変化にたいしても敏感に反応し、異常が生じる場合が有ります。 そのため不整脈の発生頻度はこういった外界の変化の影響を受けやすい訳です。

自律神経

続きはまた後日

NHK出版 あしたの生活に紹介されました

いつも、懇意にして頂いている、医学領域のフリーのジャーナリスト 長田昭二さんの取材を先日受けました。 その際に胸痛についての、解説を行ったのですが、その記事を丁寧に記事にしてくださっています。 合計4回の掲載となります。 今回は第一回目です。

下のリンクからどうぞ
http://ashita-seikatsu.jp/blogs/7058

人工弁:続き

異常のある弁を交換すると、同じ心臓の収縮でも効率よく血液を送り出す事が出来る様になり、心臓全体としてのポンプ機能は回復してきます。 しかし、残念ながら、自然の弁と比べるとやはりあまり機能は良くありません。  人工弁の機能が悪いというわけでは無く、ご自身の弁の機能が良すぎると評価した方がよいでしょうか・・・。 柔軟かつ強固、そして自己修復、そして感染に対する抵抗性・・・、とても人工物に再現出来る物では無い様です。 なのでたとえ少し噛み合わせが悪かったり、動きが悪かったりしても、人工弁への交換は出来るだけしない方が良いわけです。
また、長年弁の異常によって余分な負担を強いられてきた心臓の筋肉は、年齢とともに弱り、収縮機能が低下してきます。 手術前の心臓の筋肉の動きがあまりにも悪いと、手術による負担、特に手術のために一度止めた心臓を再度収縮させるときに心臓が動かない事があります。 ですので経過を見ている医者は、心臓の筋肉の状況を注意深く経過観察してゆく必要があるわけです。 早すぎず、遅すぎず、手術する事が重要で、そのタイミングを見計らうのが循環器医の腕と言う事になります。
人工弁を入れた後に、この心臓の機能が回復してくるスピードは、どちらかというと、弁が細くなる(狭窄:きょうさく)患者さんの方が、弁が逆流する(閉鎖不全:へいさふぜん)の患者さんよりも早い傾向があります。 なので閉鎖不全の患者様では、人工弁手術後に症状に劇的な改善は見られず、どちらかと言えば、それ以上悪くしない様に手術したといった印象をもたれる場合が多いです。 勿論最近の手術方法は以前よりだいぶ変わりましたので、閉鎖不全症の患者さんでも手術後に症状が改善してこられる患者さんも多い印象もあります。 
弁を交換する際に、心臓を一旦止める必要があります。 心臓が動かない様にするための人工的な液体を心臓の血管(冠動脈)に注入する事で心臓を止めるわけですが、この停止させておく事が心臓の筋肉には少し負担がかかります。 ですので心拍再開させた後も以前の心臓の収縮とは異なり、患者さんに伺うと、手術後半年ぐらいは本調子でないとおっしゃる事が多い様に思います。

慢性的な経過観察について
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人工弁

人工弁といっても一般的には皆様あまりなじみが無い方が多いでしょうか?  皆様の心臓には4個の弁が付いています。 心臓には4個部屋がありますが、その部屋の出口に一つづづ付いています。  それぞれの弁は血液を一つの方向にしか流さない様にしているとても簡単な構造なので、人工的な弁におきかえることが出来ます。 リウマチ性弁膜症・動脈硬化に伴う弁膜症・あるいは先天的な弁の構造異常などがあった場合、放置しておくと心臓の筋肉に余分な仕事をさせる事になり、最終的には心臓がばててしまう。 それを防ぐために時期を見てきちんと機能する機械弁をいれる事になります。 医学的には人工弁置換術(じんこうべんちかんじゅつ)といいます。 人工弁というと、サイボークの様な物を想像される方がおられますが、決して完璧な物ではありません。 弁を入れ替える手術も一生のうちで2回ぐらいが限界になります。 胸を開いて心臓を止めて、弁を入れ替えるという手術は、患者さんの体力を消耗します(皆さん体重で8-10kg程度減ってしまいます)。 また手術自体で1%-20%程度の死亡率があります(そのときの全身状態によりリスクは変わります)。ですので、壊れたら何度でもと言うわけにはいかないのです。 
また人工的に作られた弁は、元々のご自身の弁に比べると後でお話しする様にかなり性能が落ちます。 なので、弁に異常があれば、小さな異常でもすぐに手術するという事では無く、可能ならば一生ご自身の弁が使える事がベストです。 そのために内科的な治療や生活習慣を整えていく事が重要です。 
しかしそれがうまく行かなければ、人工弁置換術を行う必要があります。
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ワーファリンとは

ワーファリンの作用


ワーファリンは血液を凝固するために必要なタンパク質を作るのに必要なビタミンKととても似た構造をしています。 しかし実際にはビタミンKの様な作用が有りません。 ですので、ワーファリンを飲むとビタミンKの作用を押しのけて、血液凝固のための蛋白が減少します。 ビタミンKはいろいろな食物中に少量づつ含まれています。 中でも、納豆・モロヘイヤ・クロレラ等に大量に含まれています。 (納豆の原料の大豆にはほとんど含まれていません。) つまり食事全体の量が変わったりしたり、納豆やモロヘイヤ・クロレラと言った食品を食べたり食べなかったりするだけで、食物中のビタミンKの値が大きく変動する事になります。 ワーファリンの効果は、ビタミンKを押しのけて作用しますので、取るビタミンKの量が変わるだけで、その効果が大きく変化してしまいます。 そのためワーファリンを使用する場合、納豆やモロヘイヤ・クロレラと言った食品を食べないでもらう様にお願いしています。 また体調不良で食事が長期間とれなくなってしまった場合や、季節によって食べる食材が大きく変わる方には、その都度ワーファリンの効果を確認する必要有ります。 それはワーファリンの効果が強すぎれば、脳出血・胃からの出血等・血尿等の症状が出る可能性が有りますし、少なすぎれば、脳梗塞等の血栓塞栓の症状が出てくる事になります。
ワーファリンの量の調整
ワーファリンの効果を測定する方法はいろいろありますが、三好クリニックでは、採血すれば数分で結果の判定できる、測定器を用意しています。 ですので、診察の直前に採血して頂き、その効果を判定して、ワーファリン量をその場ですぐに決定する事が出来ます。 最近ワーファリンに変わる、新しい抗凝固薬(ダビガトラン)が発売されて注目されています。 それは、ワーファリンの様に凝固のための蛋白を作らせない様にするのでは無く、凝固のための蛋白を直接阻害する薬なので、納豆やクロレラと言った食品の制限も有りませんし、季節によって量の調整をする必要は有りません。 しかし定期的に腎機能を確認する必要がありますので、ワーファリンで安定している患者さんと採血の頻度はあまり変わらないと思います。 不測の腎機能悪化で、ダビカトランの効果が急激に強くなり、大出血を起こす可能性があるからです。 ですので、三好クリニックでは、患者さんにこれらの点を説明した上で、ワーファリンとダビガトランを選んでもらっています。
ワーファリンの効果を表す値として、INRという値を使います。INRとはinternational normalized ratio=国際標準比と言いますが、プロトロンビン時間という計測値を(ざっくり言えば血液が凝固するまでの時間)測定して、その時間が正常値からどの固まりにくいかと言う事を示しています。1が正常で、大きくなると出血しやすくなります。 ワーファリンを内服している場合、75歳以上の患者さんでは1.6から2.5の間にコントロールされる様にワーファリン内服量を増減しますし、75歳以下ですと、2.0から3.0の間にコントロールする場合が多いです。 ワーファリンの半減期は2.5日と長いですので、一日わすれていても、少し効果が残っていますが、あまり飲み忘れる事が無い様にする必要があります。 4より高くなると、結構いろいろなところから、簡単な傷からでも出血しやすくなったりします。 ワーファリンの量は多すぎても少なすぎてもいけませんが、半減期が比較的長いので、毎日測定してワーファリン量を変更する必要は有りません。 しかし導入期には2週間から1ヶ月に一回程度、安定して来て、季節での変動があまり無い方では、2ヶ月や3ヶ月に一回の採血になる方もおられます。
 

ワーファリンを飲んでいて注意する事


また他の長期的に内服する内服薬でも、値が大きく変動する場合があり、ワーファリン以外の薬を変更したりする際には、注意が必要です。 よく、経験するのは、胃酸を押さえる薬の一部、抗菌剤等の投与で急激にワーファリンの効果が増強して出血したりする事が有ります。 一般的に長期的に内服する薬で経験する事が多いです。 また肝機能がお悪い方(肝硬変や肝炎等)で予想を越えてワーファリンの効果が強くなる事が有ります。 
一般的な日本人の体格で、一日量2mgから4mg程度で落ち着く場合が多いですが、時に10mg近く内服しなくては、INRが治療域に達しない方がおられます。 そのように多くの量が必要な方は、ビタミンKの食品を実は食べておられたりする事もありますが、それが守られていれば、体質的な物だと言われています。 

納豆とワーファリン

納豆は体に良いと言われています。良質のタンパク質が含まれていることもありますが、その他に「ナットウキナーゼ」という血液の固まりを溶かす成分が含まれています。 つまり血栓予防(一般には「血液さらさら」とか、「ドロドロ血予防」とか言う表現がおおいですね)的に働きます。 口から食べた酵素が、分解されずに吸収されて血液をさらさらに出来るかどうかについては、議論が分かれますが、動物実験などではそのような効果があるようです(ヒトで有効性は証明されていません)。

一方で納豆は、ビタミンKというビタミンを大量に含んでいます。 ビタミンKは皮膚や血管が傷ついたときに、その傷を素早く塞ぐために血液の中にあらかじめ流れている(血)糊タンパク質を作るのに必要なビタミンです。 簡単に言えば血を固まりやすくしていることになります。 ですのでビタミンKがなくなると、軽く皮膚を圧迫しただけで、大きな内出血を起こしたり、胃や腸・そして脳などで出血を起こして、致命的になることもあります。 その一方で、血が固まりやすい患者さんにはあまり良くない蛋白でもあります。

心房細動などで血栓ができやすい人。 特に「心臓弁膜症があったり機械弁を植えている人」「心臓のポンプ機能が落ちている人」「糖尿病のある方」「高血圧がある方」「脳梗塞などの既往のある方」「75歳以上のご高齢の方」では、このビタミンKの働きを悪くする薬、ワーファリンを内服してもらっています。 後は人工弁等が入っている方もそうです。

心房細動の患者さんと話していて、「どうしても納豆が食べたい」、「納豆食べられないなら死んだ方がよい」とおっしゃる方が時々おられます。 最近、処方できる様になったプラザキサという抗血栓薬は、ビタミンKによって作られた血糊の蛋白を直接ブロックするので、ビタミンKを摂取しても問題有りません。 しかし、この薬剤も弱点があります。「人工弁が入っておられる方」や、「心臓弁膜症のある方」、そして何よりも問題になるのは「腎機能が落ちてられる方」には、未だにワーファリンが必要になります。 少し脱線しましたが、プラザキサの無い時代には、こういった方で、特に脳梗塞のリスクの比較的少ないと思われる方には、「仕方ないので、じゃあ納豆毎日食べてくださいね」といって経過を見ていた患者さんが何名かおられました。 しかし、10年程外来をしてみて思う事は、無理してでもワーファリンを飲んでいる方の方が、肌つやがよく、元気で10年過ごされている方が多いのに対して、ワーファリンを使わずに、納豆を食べる様にお願いしている患者さんでは、10年で少しずつ、弱ってこられて、ぼけてこられたりしておられる方が多いような気がします。 これはあくまでも印象でしか有りませんが、しっかりとした抗凝固療法(ワーファリン)が、生命予後を長くする事は臨床研究でも明らかになっており、やはり必要なのだなと最近実感しています。 

じゃあワーファリンとはどういう物か、この続きは
次のブログで説明します。

心房細動の原因

最近患者さんに心房細動ってなぜなるんですかと言われて少し困った事が有ります。
簡単に言えば「心臓の老化現象の一種」なのですが、そのときもそのように申し上げたところ、
「私は結構若いうちからおこっていて。 老化という事は無いと思うんですが・・」とおっしゃられたのです。 確かにもっともな意見です。

心房細動を起こしやすい要因として特定されている要因は2つ有ります。 

一つは年齢。 心房細動がおこる患者さんのほとんどが60歳以上の患者さんです。 しかし希に40歳とか、珍しいですが20歳で心房細動の方もおられます。 20歳で心房細動になられる方は、やはり何らかの遺伝子の異常がある場合が多いと考えてよいでしょう。 しかし遺伝子に異常があって心房細動になられる方は、むしろ珍しいです。 日常の診療をしていてほとんど無いと言ってよいでしょう。 そのように若くて心房細動を発症する人は何か他の因子があるとも考えられます。

二つ目は高血圧。 血圧が高い方は心房細動になりやすいです。 また血圧の治療を行うと、心房細動の新規の発症が押さえられたりします。 ですので、若い頃から血圧が高い方は、やはり心房細動になりやすいと考えた方が良いでしょう。 そのため心房細動の患者さんでは、血圧の治療も重要になってきます。
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高血圧と塩

私どものクリニックでは、全体の患者さんの中で1割から2割ぐらいの患者さんが血圧のコントロールだけの目的で来院されています。 最近高血圧の患者さんを診察していて、何名かの方に連続して塩分制限の話をする事になりました。 慶應の外来をしているときには、「塩分気をつけてくださいね」と言うだけでそれ以上深くお話する事は出来なかったのですが、三好クリニックでは、少し立ち入った話を出来た訳です。

実はほとんどの高血圧患者の方は、塩分の制限をするだけで薬を飲まなくても血圧は正常になります。 そう申し上げると、「いや私は塩分には気をつけているのですが」とおっしゃられる患者さんがほとんどです。 でも適切な塩分量をコントロールするのは実はとても難しいのです。 その最も大きな理由は皆様自身の舌の感覚でしか摂取する塩分量を決める事が出来ない点にあります。 もしも皆様の舌の感覚が狂ってしまっていたら、適切な塩分量をコントロールするのは不可能です。 そして高血圧の多くの患者さんは舌が過剰な塩分に慣れてしまっています。 慣れによって感覚が狂ってしまっているのです。 これが減塩がうまく行かない一番の理由だと思います。 
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心臓に雑音が有ると言われた・・・。

開業してから2ヶ月が経過して、少しずつですが、患者さんが増えてこられていてとてもありがたく思っております。 といってもまだだいぶ空いていますので、いらっしゃる患者さんに取ってはとてもゆったりしていてよいかもしれません。 
最近、何名か立て続けに「心臓に雑音が有ると言われていて、時々大学病院で検査を受けているけれど、最近ご無沙汰していて」という方が、来院されました。 たしかに、慶應で外来をやっている時には、そういった患者さんをよく拝見したものでした。 心臓の弁に異常がある、あるいは心臓の壁に穴が開いていて、血液の流れが普通の方と少し違う、 しかし手術をする程では無いという方は結構おられます。 そういった方は、私も大学病院にいる時は一年に一回、定期的に心臓の超音波検査(エコー検査)を行って、経過を追うというという事をしていました。 しかし大学病院の非常に混んだ外来は通院が大変で、ついついおっくうになって、予約が消滅してという方も多かったのではないでしょうか?
三好クリニックの心機能検査室の様子続きを読む...

カフェインと不整脈

最近連続してカフェイン関連で患者さんとお話しした事が有ったのでちょっと解説してみます。
簡単に言えばカフェインは不整脈を起こしやすくします。 もちろんカフェインには良い点がいっぱい有りますし、全く不整脈に悪さをしない方もおられるでしょう。 ただ、不整脈が多くて困っている患者さんで、どうもカフェインを取りすぎているなと思われる様でしたら、少し控えた方が良いかもしれません。
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薬は飲んでください

開院してから1ヶ月経ちました。 今のところ一日5人から10人ぐらいの患者さんがいらっしゃっています。 今のところ慶應で拝見していた患者さんとその御家族の方が多い様子です。 そのためか、患者さんが最も多い時間帯は11時から13時と、16時から17時、それと19時付近が多い様に思います。 予約を取らずにふらっといらっしゃる方もおられるので、その際には少しだけお待たせしてしまう事が有ります。 しばらくやってみて思った事は、患者さんの血圧が慶應で測定していた時より、少し高めである事です。 血圧計?と思っていたのですが、おそらく、慶應での診察と違って、待機時間が短いために落ち着く暇無く測定するためのような気がしています。 これは予想外でした。 
最近、新規の患者さんを診察していて、ちょっと感動した事が有ったので一つ。 私のよく存じ上げていた方であったのと、比較的この領域の知識が豊富にある方だったので、私も少し油断していたところも有ったのですが、このような事が有りました。 
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QT延長症候群について

皆さんあまりなじみが無いかも知れませんが、QT延長症候群(キューティーえんちょうしょうこうぐん)、という病気が有ります。 このQTというのは心電図の波形の場所を示す文字です。 その間隔が普通の方より長くなるという病気です。 それだけではちょっと解りにくいですよね。
元々この心電図上の間隔は心室という心臓のメインのポンプの電気的な安定性を示しています。 この間隔は短すぎても、長過ぎても電気的に不安定で、心室細動という心臓が突然痙攣して動かなくなるという病気をおこす事が有ります。 失神して意識を失って病気に気づいたり、健康診断で指摘されて気づいたり、あるいは、元々近親の方が若くして突然なくなられて、発見されたりする事のある病気です。
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心房細動という病気-1

先日、外来患者さんと話していて、心房細動の説明になった際に、「心房細動ってなぜ起こるんですか」と言う事を聞かれて、一瞬困ってしまいました。 心房細動が起こる理由、そのメカニズムについては、2000年少し前ぐらいから研究が精力的に研究が行われ始めたと言ってよいでしょう。 しかし患者さんは普通、そのメカニズムについて聞いている場合と、動物が生きていく上でなぜそのような不整脈が必要なのかという点など、『なぜ』という意味にはいろいろな意味があるわけです。 少し考えて、「一種の老化現象なのだ」と説明をして何となくなっとくしてもらいましたが・・・。 本当にその患者さんが聞きたかった事なのかなと、そのあともしばらく考えていました。 何だか患者さんの質問を煙に巻いてしまった様で、申し訳ない事をしたんじゃないかって少し反省しました。
その時一瞬、考えたのは、自分の中に有る心房細動の知識を思い返していたのでした。 結構長大な話しだったので、何から話せば良いんだろうか? 本当にこんな事を聞いているのだろうかって思ったのでした。

実は、心房細動ほどこの15年間ほどの間に治療法が大きく変化した病気は無いでしょう。 昔から心房細動をお持ちの患者様から見ると、医者の言う事が随分かわってきているので、変だなと思われているのではないでしょうか? 医者の中でも、この変化にあまり付いてこられない方が多いのではないでしょうか?
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三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜