自律神経と不整脈-5

自律神経に作用する薬剤


随分難しい話しになってしまいました。 しかし、自律神経という神経には、多くの謎があり解っていない事も多いのも事実なのです。 しかし、この自律神経の活動を調整する事で、不整脈をある程度落ち着かせたりする事は可能になります。 自律神経に作用する薬はいくつかの種類に分類出来ます。

安定剤


自律神経に大きな影響を及ぼす、意識出来る脳活動、つまり大脳の活動を押さえる事で、自律神経の反応を調整する事が出来ます。一般的に(精神)安定剤と言われる薬剤です。 代表的なものとして、GABA(ギャバ)というアミノ酸を伝達物質とするイオンチャネルを活性化させるもが一般的に使われます。 GABAは、安静感やリラックスをする目的で、GABAを多く含んだチョコレート等が売られていた事がありました。 神経細胞はGABAが近くにある、あるいはGABAの作用を強める様な薬剤を投与すると、全体的に神経活動が落ち着く傾向にあります。 この薬剤は、量が多いと精神活動が全般に押さえられ眠くなります。 また、手足の筋肉に力が入りにくくなり、ふらふらしたりよろけたりします。 このタイプの薬は不眠症の薬としても投与される事が多いです。 一方で、量が少ないと、ストレスや不安等で異常に頭がぐるぐる回っている様なときに、その不安の部分を和らげる作用(嫌な事を忘れる)があると言われていて、肩こりが緩和されたり、動悸や、胃の不快感等が緩和されたりする事があります。 しかし、薬に依存してしまうようなタイプの患者さんに取っては少々使用方法が難しい薬です。 例えば、患者さんの中には、元々の症状がストレスから来ている患者さんが、「不整脈の症状を押させるために、安定剤を飲む。 飲んだ分楽になった気がして、さらに体にストレスをかけてしまう」と言った思考をされる方に取っては結構危険な薬でもあります。 そういう患者さんは勝手にどんどん量を増やし、飲んだ分どんどん病気の原因となっているストレスを増やしてゆくというような事をされる事が有ります。 これは結構危険なのでやめてください。 薬はあくまでも、体を直すためのきっかけで、やはり病気の原因を取り除く事が重要なのです。ですので、患者さんとはいろいろ相談しながら減量や増量を行い、最も患者さんに適切な量を決めます。 

β(べーた)遮断薬


交感神経の興奮が心臓に伝わらない様にブロックする薬です。 交感神経の神経伝達物質であるアドレナリンをブロックする薬です。 この薬は不整脈以外にも、血圧の薬や、狭心症の患者さんは慢性心不全の患者さんに使用する薬でもあります。 ただ、あまり多いと、ふらついたり、悪夢を見たり、気分が落ち込んだりする事が有るので注意が必要です。 交感神経が原因となっている不整脈の治療には非常に重要な役割を果たします。

フォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬


あまり、聞いた事がないかもしれませんが、カフェイン・バイアグラと言った分類の薬です。 これらは交感神経の作用を心臓の筋肉側で増強する薬剤です。 交感神経を興奮させたのと同じような作用が有ります。 徐脈性の不整脈の患者に用いる事が有ります(カフェインやバイアグラでは無く他の名前の薬を使います)。

副交感神経遮断薬


副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの効果を弱める薬剤が有ります。 有名な薬剤としては、元々心臓のイオンチャネルに働く抗不整脈薬の一部にこのアセチルコリンの効果を弱める副作用がある薬剤が有り、副交感神経を抑制する事を意識しながら、それら薬剤を使用する事が有ります。 リスモダン・シベノール等といった薬剤になります。 これらの薬は同時に副交感神経の興奮が高まると困る病気を持った患者さんには使いにくいです。 例えば緑内障(閉鎖隅角)、中等症以上の前立腺肥大、唾液の分泌の悪い方等にはあまり適していません。

不整脈の治療はこういった薬剤を、患者さんの症状に合わせて調合してゆく訳ですが、そのさじ加減や副作用の判断が我々不整脈を専門とする医者の腕の見せ所という事になりますが・・・。 実際には自律神経に関わる不整脈をコントロールするのは結構大変です。 自律神経は季節や体調によって大きく変動するので、薬の調整に結構難渋するのです。 申し訳ないですが、気長におつきあい頂ければと思います。
三好クリニック(内科)
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