2014年にお別れ

P1300922 のコピー
三好クリニックは、昨日で今年の業務が終了しました。 毎年のことなのですが、今日はクリニック内の大掃除を行いました。 床のワックスがけです。 年に3回ほどやっているのですが、今年は50肩のために夏休みの一回をサボっていて・・。 おかげでだいぶ床が汚れていました。 開院する際に、床や壁紙などは家内と相談したのですが、床は白木のようなタイルになっています。 白いのでとても汚れが目立つのですが、作る前は汚れが目立たないほうが良いのではないかなどと考えたりしたのですが、開院してからは、汚れたら掃除をすれば良いので、むしろいつも掃除をしておこうと思えるようになりました。 別に誰かが言ったわけではないのでしょうけれど、「床の汚れは心の汚れ」、患者さんをもてなす心なのだと勝手に思って気がついたら毎日掃除に勤しんでいます。 開院した当初は、ワックス落としの洗剤での床磨きを全部雑巾で手作業でやっていたので、2−3日指が腫れ上がってしまって・・。 腱鞘炎でしょうね。 ひどかったです。 ちょっと辛かったので2年目からは小型のポリッシャーを購入して使っています。 ポリッシャーって、よくビルの掃除の人がやってくれてますよね。 あれ簡単そうに見えて結構大変なんですよね、ハンドルを下に傾けると左へ動き、上に傾けると右にと、動く方向が90度変化していて、パニックになると回転して暴れ出したりするんですよ。 それでも、今まではポリッシャーで取れないこびりついた汚れを落とすのに、たわしでこすり、浮き上がったワックスと洗浄液は雑巾で吸い上げて絞り、吸い上げて絞りを繰り返すので、終わった後はやはり腱鞘炎になるんですよね・・。 今は電子カルテなので、キーボードが打てないと仕事にならないので、こういった連休の時にワックスがけしています。
最近、ビルや駅などで床を掃除している人が、ヘラを使っているのをみて、これはいけるのではと思い、購入したら、結構よかったです。 どうも前にかけたワックスと一緒に汚れを削り落とすという表現が良いのでしょうかね・・。 今日はとても重宝しました・・。 こんな記事までかけたりして・・。 でもまあ、朝から初めて夕方まで、ノンストップだったので、1−2日や腰痛で動けないでしょうね・・。 明日が怖い・・。
今年一年お世話になりました。 また来年も精進しますので、三好クリニックをよろしくお願いします。 では少し早いですが、良いお年を!

患者さんはなぜコレステロールを下げたくないと思うのか−2

前回の続きです。

8、老化する


どういう理由か解らないのですが、時々「コレステロールの治療をするとしわしわになる」とおっしゃる方がおられます。 なぜそう思われるのかよくわからないので私の見当はずれなのかもしれませんが、コレステロールが細胞膜を作っているからという理由なのかも知れません。 ただ肌のつやを作っているのは皮膚の下の細胞とは関係のないタンパクの組織で、コラーゲンの線維とそこを埋めるリンパ液が皮膚のハリやみずみずしさを作っています。 なのでコレステロールが多くても少なくても皮膚のツヤは変わりません。 ただコレステロールと一緒に油を摂取していると、その余剰の脂分が皮膚に汗と一緒に分泌されて皮膚がツヤツヤになるかもしれませんが・・。 コレステロールを沢山とって動脈硬化が進んでくると、むしろ皮膚の血管の閉塞も進んで、老けてゆくスピードが速くなるのではないかなと思われます。 あと食事制限だけで頑張ろうとする方も、栄養が偏っていたりするのかもしれません。

9、ガンになる


コレステロール値が低いと、ガンになりやすいのではないかという考え方があります。 医者が下げろというコレステロールを下げるとガンになるのではたまらないわけで、こういう話は読者の興味をひき話題になります。  そのため一般の方がそういう内容の話を目にする機会も少なくないでしょう。 しかし、コレステロール値が高い患者さんにコレステロールの治療をしたらガンが増えたということを示した研究結果は実は一つもありません。  ほとんどの研究結果が治療によって総合的に見て死亡率が減少することをしめしていて、この点について疑問をはさむ方は、おそらく後で示す「陰謀説」を信じている方だけでしょう。 
その一方で、コレステロールが低い患者さんの経過を見ていたら、ガンで死ぬ人が多かったという研究結果は結構たくさんあり、低コレステロールと癌が関係があることはわかっています。  しかしそれを示している研究は原因と結果を特定することができないものばかりです。 具体的にいうと、「癌だからコレステロールが低い」のか、 「コレステロールが低いから癌になる」のかを決めることが出来ないのです。  少し話が難しくなりますが、それが統計学で、その詳細をここで説明はいたしません。 ではどうするかというと、どちらが原因であったのか読者の判断に任せられるのです。  ですのでこれは私の私見ですが、臨床で多くの患者さんの治療を経験してきた医師で、きちんと統計学を学び、原典をきちんと読んだ医者であれば、癌が栄養状態を悪くして、その結果コレステロールが低くなっていると考えるでしょう。 もちろん逆である可能性はゼロではありませんが、それが間違っているであろうという間接的な証拠はきちんと記載されています。 なのでもしも私が自分の命をかけるとするならば、癌に恐怖してコレステロールの治療を諦めるより、コレステロールをきちんと下げるほうに命をかけます。

10、コレステロールが高いほど長生きできると聞いたから


100歳以上の超高齢者の研究をして行くと、そういった方々のコレステロール値が比較的高かったという報告があります。 なので長生きしたければ、コレステロールを高くて良いのだということを時々メディアで拝見したことがあります。 もしかしたら本当にそうかもしれません。 ただ、私は100歳まで生きたいとはちょっと思えませんが・・。 
論理的に考えて「100歳以上の高齢者のコレステロール値が高い」という観察結果から、 「コレステロールが高いほど長生きできる」という結果は導き出せません。 その理由は、その方々が50歳-60歳ぐらいの年齢の時に、本当に悪玉コレステロール値が高かったか記載されていないからです。 50-60歳の時の悪玉コレステロール値が高い方が長生きされていたら、表題の結論で間違っていないでしょう。 しかし、100歳になれば、若い頃に比べてほとんど動かなくなり、体重も増えて、悪玉コレステロール値は自然と高くなってくることが予想されます。  そしてもう一つ、100歳以上の方を皆さんご覧になられたことありますか? 私は医者をしていて、拝見したことがあるのは1人だけです。 普通は一生のうちにお会いできない方の方が多いのではないでしょうか? これは申し上げにくいことですが、それぐらい珍しく、医学的には異常な方々です。 その異常な方々の例を、普通の我々にあてはめるのは間違っています。  そして最後に、100歳を超えておられる方々はどんなに長生きされたとしても10年で寿命を迎えます。 つまり10年しか生きていけない方々のデータを、40歳や50歳の方々のデータに当てはめてはいけないとおもいます。 

11、薬屋の陰謀だから


ネットサーフィンをしていると、時々「薬屋が儲かるようにデータを操作しているのではないか」という論調のもの拝見することがあります。 陰謀に立ち向かうヒーロイズムは物語としては面白く、多くの読者の注目を集めるでしょう。 事実データのねつ造等が問題になって科学論文が取り下げられる事もあります。  人を疑い始めると際限なく疑うことができます。 しかし全ての科学論文の結果を疑ってしまうと、迷信や信仰に頼るしかなく、それは医療ではなくなってしまいます。 私も研究を行い論文を書く仕事をしていましたが、科学論文を自分に都合のよい結論にするのは困難です。 論文として出版されるまでに半年から1年以上の期間をかけて、審判をしてくれる複数の中立の科学者と議論をする必要があります。 その際、きちんとデータを提示する必要があり、この段階で不自然なデータ操作やあいまいな個人的な憶測や推測は全て排除されます。 また研究は多くの研究者が集まって研究を行う事が多く、お互いが不正を監視し合うようになります。 また研究は再現性が重視され、複数のグループが追試験をしても同じ結果が出る事が重要で、再現性の少ないデータを発表する研究者は学会では無視される傾向にあります。 また明らかにおかしな結果を出してくるグループがあっても、見る人が見るときちんとおかしい事が解ります。 陰謀もあるのかもしれませんが、それを実行するのは困難で、特に数多くの独立した研究グループの研究がほとんど同じ結果を出しているコレステロール治療の分野では、薬屋の陰謀論は考えにくいと私は考えます。 
むしろ陰謀を考えるなら、一般雑誌や本等で、特にレフリー(審判)がいない状況で出版された文章のほうが怪しいはずです。 より本が売れるように、雑誌が売れるように、読者が求めている結論や、読者に印象に残りやすい結果を憶測や推測で記載してもよいわけで、そこにはなんの歯止めもないからです。 患者さんの中には、そういった本やインターネットでの情報を信じ、論文等に記載されたデータを陰謀だと言って信じられない方もおられて、少々外来診療で険悪な雰囲気になる事もあります。  
自分の身に当てはめてみると、同じぐらい疑わしい結論が2つあると、自分にとって都合の良い結論に飛びつきやすい心理傾向があります。 そういった判断の多くは「そんなことはありえないから」という形で心の中で処理されることが多い気がします。  自分が死ぬなんてありえない、今まで大丈夫だったのだからこれから悪くなるなんてありえない、 薬屋の陰謀なんてありえないというのも一つなのでしょうね。  そして人間は、自分の経験や知識をもとにして、どちらがよりありえないのかを判断して、どちらかを選び行動することになります。  私は、患者さんと接してきた色々な経験や、科学論文や先人の知恵などを総合的に判断して、やはりコレステロールの治療は必要だと判断します。  医者は科学者です。 科学論文の中に何か間違った情報があったり、専門家の判断に誤りがあっても、ある程度それを信じて行動しなければ、迷信や信仰だけが行動原理であった古の時代に逆戻りしてしまうでしょう。  なので、私はやはり現在の高脂血症学会のガイドラインをきちんと守って治療を行うようにしています。 逆に極端な話をすれば、陰謀説を信じるのも悪くはないでしょう。 ただ患者様にはそれに「自分の命」や「人生」を賭けているという覚悟があるかどうかが問題なのだとおもいます。 

患者さんはなぜコレステロールを下げたくないと思うのか−1

コレステロールの高い患者さんとお話ししていて感じるのは、一部の患者さんの中に強く治療に抵抗される患者さんがおられることです。  そういう方々のなぜ治療をされたくないかという理由を分類してみましょう。

1、 今、特に不自由していないから


おそらく、コレステロールが高いといけないことがわかっていても、今なにも体調が悪くないので、治療をされたくないという方が圧倒的に多いのではないでしょうか?  これは医者の独断で要約すると、「将来のいつ頃に、どのような病気になって、どのぐらい不自由されるのか」ということを患者さんがきちんと想像できないのかなと思われます。  
例えば、「将来心筋梗塞や脳梗塞で死ぬかもしれない」というような、漠然としたイメージではなく、「50歳で脳梗塞になり半身が動かなくなる。 左足が全く動かなくなりツッパリ、左手も動かなくなる。  杖をついてゆっくりと動ける程度で、階段の昇降は一人ではできなくなる。 言葉も、片言で、「ウー」とか「アー」としか言えなくなり、トイレにも一人で行けず、紙おむつが必要になる。 今まで勤めていた会社をやめなくてはならなくなり収入が激減、住宅ローンも10年残っていて、住み慣れた家を処分して、出ていかなくてはならなくなり・・・。 その状態が20年30年続くとしたらどうでしょうか?」 といった現実的なイメージを持てるかどうかも、治療をきちんと受ける動機になります。  実際にそういった患者さんが周囲におられたり、身内にいらっしゃると、よりリアルに想像出来るのでしょうね。 今はなにも不自由されておられないかもしれませんが、周りの方々より明らかに早く、脳梗塞や心筋梗塞で不自由な生活を強いられることになります。 10年20年後の自分のために、ぜひコレステロールは適正な値にコントロールしたほうがよろしいでしょう。

2、自然のままでいいじゃないか


薬のような人工物を取るのは自然じゃないし、自然じゃないことは体に良くないだろうと思っておられる方多いのではないでしょうか? ただそういう方々の多くは根本的な事を見落としています。 それは食事です。 先進国での人間の生活は、人間以外の野生の動物と比べると大きく逸脱しています。 特に食事は異常で不自然です。 カロリーの高いもの、砂糖や卵、肉などを、何不自由なく食べて暮らせて、そして、下手をしたらほとんど外出することもなく生活することができるような環境。 これは野生ではあり得ない環境です。 自然な環境で生存している野生動物の悪玉コレステロールの値は 35-70 mg/dlと言います。 これは人間の赤ん坊の悪玉コレステロール値と同じぐらいです。 そしてこれは我々人間の悪玉コレステロールの目標値 140mg/dl以下よりかなり極端に低い値です。 もし本気で自然を追求するのでしたら、まずは食生活を見直べきでしょう。  だた本当に、35-70 mg/dlぐらいの値の患者さんがいらしたら、ほとんどの医者は「ちゃんと食事してますか? 何か病気なんじゃないですか?」と心配になってしまうぐらいの低い値です。 それぐらい野生の動物は過酷な生活をしているわけで、そこまでする必要はないのではないかなと思います。
「自然なほうが良い」と考えておられる方の多くは、自分なりの現状が「自然」で、その自然を変えたくないということなのではないかなと思われます。  薬のように今まで飲んだことがないものを飲みたくないという気持ちはわかりますが、皆さんが日常食べられている食事もそう大した変わりはないのではないかなと、私は個人的におもいます。 普通にみなさんが口にされている食品には、合成着色料・合成甘味料、いろいろなものが入っています。にわとりの卵ですら、黄身を鮮やかにするために親鳥の飼料に色素を加えている時代ですから・・・。 それなら安全性をしっかり検査された薬を内服するのもあまり変わらないのでは無いかなと思ったりします。

3、もうあまり生きることに執着していない


ご高齢の患者さんや、親しい人と死別してしまっているような患者さんの中には、もうあまり生きることに執着しておられない方もいらっしゃいます。 そういう患者さんのなかには、お薬を飲んでまで長く生きたくないと思っておられる患者さんもおられます。 

4、飲むと負けたような気になる。 病院につながれているようで嫌


この気持ちは解りますね。 そういう患者さんには、生活習慣の改善をしていただく事で対応する事があります。 しかし、無理をしても長続きしませんので、長く続ける事が出来る習慣をおすすめしています。 遺伝的に、体質的に高くなっておられる方もおられて、生活習慣だけではコントロール出来ない患者さんもいらっしゃいます。 その場合やはりお薬の内服をお勧めします。 しかしそういった患者さんの中でも、なかなか説明しても薬を飲む事を嫌がられる患者さんもいらっしゃいます。 そういう方々にはやはり薬を飲まないと若死する病気だとご自身の病気を理解していただく必要があります。 薬を飲まないと周囲の方より早く死ぬのだということを考えると、薬を飲んだほうが勝ちのような気がします。

5、実際に飲むと、調子が悪くなるので飲まない


コレステロールの薬の副作用として、肝機能障害と横紋筋融解症といって、筋肉がダメージを受ける事があります。 ただし、こういった副作用は最近の薬では珍しくなりつつあります。 特に治療薬の使用可能な上限ギリギリの量を使っている場合に見られやすく、そのような量の治療薬は、一般的な生活習慣病の患者さんではほとんど使いません。 時々患者さんの中には、「内服中に筋肉が痛くなったから飲むのをやめました。」 とおっしゃる方もいらっしゃいますが、よくお話を聞くと、前日にゴルフをしたとか、子供の運動会にでたとか、慣れない畑仕事をしたとか、「それは普通の筋肉痛なんじゃないかな・・・。」と思うようなことでやめてしまわれて、その後どんなに説得しても飲まないとおっしゃられる方もいらっしゃいます。 筋肉の副作用、横紋筋融解症はとても有名ではありますが、最近のお薬では少ない薬の量で良いコントロールを得られるので、ほとんど見られません。 やはりきちんと、主治医に相談して、薬の副作用かどうか採血を行ってからやめられた方が良いでしょう。 副作用かどうかあやふやな状態でやめてしまうと、もう一度お薬を始めるときもきっと恐ろしくなるでしょうし、やはり冷静にきちんと対応していた方が患者さんにとってよろしいかと思います。
そういった派手な副作用以外にも、怠くなる、やる気がなくなる、鬱の症状が強くなる、下痢になる、といった理由でお薬が飲めない患者さんもおられます。 その場合、コレステロールが高い事によるリスクを承知の上でお薬を中止する事もあります。 また薬の系統を変えるとそういった副作用が見られないこともありますので、きちんと主治医に相談されるのが良いでしょう。 時々患者さんの中で、主治医に気をつかって、薬をもらうけど、飲まずに捨てていたりする患者さんもいらっしゃるようです。 それはお金の無駄でもありますので、きちんと相談されることをお勧めします。 しかし、医者の中には、「だるいぐらいなんだ! 命のほうが大事だろう!」って怒り出したり医者もいますね・・。 そんな時はちょっとお医者さん変えてみたりする方が良いかもしれません。 お薬を飲んでもらうのは命令ではないです。 時には寿命が短くなることよりも副作用のほうが辛いという場合もありますので、そこのところをきちんと医者から説明をうけて、理解した上でお薬をやめるという選択肢もあります。

6、なんとか食事療法だけでやりたい


コレステロールの多い食生活や、食事全体の量を見直す事はとても重要です。 しかし、一時コレステロールを下げるために「それじゃあ続けられないんじゃないかな・・・」と思う様な極端な食事制限をされる方が時々おられます。 確かに一回は目標を達成出来ても、 それが続かないようならあまり意味が無いです。 また、採血の直前だけ、データーが少しでもよくなるようにと油分を取らないでいらっしゃったりする方もおられます。  コレステロール値は学校の試験の採点ではないので、今の患者さんの現状を知ることが重要です。 無理ない範囲での生活習慣の変化でコレステロール値が下がってくれるようなら、お薬は飲まなくても良いでしょうが、そのままの生活を一生続ける事が我慢できないのであれば、薬を飲んだほうがより健全なのではないかなと思います。

7、コレステロールは体に必要なものなんでしょう


前回のコレステロールの役割でも話した様に、コレステロールは体に必要です。 なので「どんどん摂取して良いんですよね」という風に考えておられる方もおられます。 しかし、ほとんどの日本人にとって、コレステロールは不要なほど十分すぎるほどあるというのが現状です。 野生動物の悪玉コレステロールが35-70 mg/dlであっても、十分健康に生活している訳で、それだけあれば本当は十分、140mg/dl以上あるのは多すぎです。 どんな良薬も量が多すぎれば毒になります。 適切なコレステロール量を維持する事が大事なのです。

続きはまた次回

コレステロールは下げた方がよいのか? 下げない方がよいのか?2

コレステロールの役割


コレステロールは体を構成する重要な要素です。しかし多すぎるのが良くないのは確かです。

コレステロールは細胞の膜を構成する要素の一つです。


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動物の細胞は細胞膜という膜に囲まれています。 コレステロールはその膜に一定量含まれています。 最も多く含まれる臓器は脳や神経です。 細胞膜とはちょうどシャボン玉を想像してもらうと良いでしょう。 ちょうどシャボン玉の表面の模様が少しずつ動いているように、細胞膜も少しずつ動いています。 コレステロールが細胞膜に含まれるとこの動き(流動性)が変化するようですが、あまり一定の見解はないようです。 コレステロール以外の分子も似た様な作用を持つ事から、コレステロールが絶対になくてはならないと言う訳では無いようです。 

コレステロールはホルモンの原型になります。


コレステロールは性ホルモンやステロイドホルモン、ビタミンDの原料になります。 生殖器や副腎などで、コレステロールはホルモンの原料になります。 しかしこれらホルモンに必要なコレステロールの量はかなり少なく、コレステロールが増えたからといって、こう言ったホルモンの量が増えるわけではありません。 

コレステロールは消化に必要です


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脂肪の消化に重要な働きをしています。 コレステロールは胆汁酸といって胆嚢から分泌される消化液の原料にもなっています。 胆汁には胆汁酸とその原料になっているコレステロールが含まれています。 そして十二指腸に分泌されたコレステロールの90%は、もう一度小腸で再吸収されます。 こうして腸に出しては再吸収を繰り返しているコレステロールの量は、ほぼ血液中に含まれているコレステロールと同じ位だと言われています。 ですので下痢が続いたり、植物繊維を多く含む食事をすると、腸の中での循環の環が途切れて体外に排泄される量が多くなります。




 

コレステロールはどこから来るのか


コレステロールは肝臓で作られます。 全体のほぼ5割から7割が肝臓で作られると言いますので、食生活の注意だけでは血液中の悪玉コレステロールを下げる事は難しいですが、鶏卵、牛肉・豚肉等の動物性脂肪(レバーにも)に圧倒的に多く含まれているので、それらを取らない様にするだけである程度下がります。  これは私の経験ですが、毎日鶏卵1個を食べていた際に150-160位あった悪玉コレステロールが、鶏卵取るのをやめるだけで120近くまで下がったりしました。 ですので、食事制限はとても大事です。 しかし肝臓で作られるコレステロールも多く生活習慣の改善だけではコントロールが付かない患者さんも多いです。 
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悪玉と善玉の違い


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血液中には悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が流れています。 誤解を恐れず簡単に申し上げると、悪玉は肝臓から体の各部分(血管の壁など)へコレステロールを送り出すためのもので、善玉は体の各部分で不要になったコレステロールを肝臓に呼び戻すためのコレステロールだと思ってください。 コレステロールが高くて、最も問題になるのは、血管の壁等に過剰なコレステロールが蓄積してしまうことがきっかけになっておこる、動脈硬化、そして動脈が詰まってしまう現象です。 ですので体の各部分に余分なコレステロールを送らない、そして余分なコレステロールを肝臓に戻す、つまりそれを防ぐには悪玉を下げて、善玉を上げると良い訳です。 




コレステロールの低い方の特徴


ここからは医者としての個人的な経験のお話です。 血液中のコレステロール濃度は、その方の肝臓の機能や栄養状態を示している事が多いです。 慢性の感染症でやせ細ってしまっている人や、癌や大手術等で体力を奪われている患者さんや、食事をきちんととれなくなってしまっている様な患者さんの採血のコレステロール値はかなり低いです。 また慢性的に下痢が続いている様な患者さんも低い方が多いです。 また菜食主義者や動物性脂肪をおもに魚類から取られるかたもコレステロールは低いです。 これは魚類や野菜に含まれるコレステロールと似た構造をした物質が含まれていて、これがコレステロールのふりをしてコレステロールの再吸収をブロックします。 そのため、魚や野菜を取る事でコレステロールの濃度が下がります。 

コレステロールの高い方の特徴


コレステロールの高い方の特徴は、食事に豚肉や牛肉、そして、鶏卵等のコレステロールが多い食品を好んで食べる方や、脂ぎっている人(すいません俗っぽい表現で)が多い気がします。 若い方は珍しく年齢が40台以降の患者さんが多い気がします。 体重は肥満気味の方に多い気がしますが、痩せている方でも、悪玉コレステロールが異常に高い方がおられます。 特に家族にコレステロールが高い方にコレステロールが高いことが多く、こういった患者さんの中には、悪玉コレステロール(LDL)を壊す機構が極端に低下している方がおられる様です。 またどちらかというと、運動不足で便秘気味の患者さんにコレステロールが高いように思います。 特に90歳近い高齢者で、足腰が不自由になっておられてほとんど動かれたりする事が無い様な患者さんで、病院に来院できるぐらい栄養状態の良い方はコレステロールが高いように感じます。 運動量の低下とともに、恐らく、腸の蠕動運動が低下して便秘気味となり、コレステロールの小腸での再吸収の効率が良くなりすぎているのかもしれません。

コレステロールは下げた方がよいのか? 下げない方がよいのか?1

結論から言うと、私は、コレステロール治療の専門家ではないので、高脂血症学会の定めるガイドラインに従って治療する事にしています。 つまり適正な値にコントロールした方が良いと思います。下げないで放置するより、きちんと下げた方が良いだろうと考えています。

下げない方が良いだろうという意見は、日本の論文でいくつか見られる様です。 ただその根拠となるデータの解釈が間違っているようです。 マスコミの方々は読者が望むことを書く傾向にあります。 なので辛い食生活の制限を行っている患者さんにとってみて、「それをしなくてよい、好きなように暮らしてよい」と言われるのはとても魅力的で、それに飛びつきたくなる気持ちもわからなくはないです。 ただ、医者としてそれを申し上げるには、あまりにも無責任かなと思われます。 きちんとデーターの解釈が行われた研究論文は、いずれも悪玉コレステロールがきちんと下がっていた方が寿命が長くなることをしめしていて、これは大部分の医者の意見ではないかなと思います。 

ではどうしてこんな混乱が起こったのでしょうか? 一番大きな原因は、10年ぐらい前まで、コレステロールの値は総コレステロールと呼ばれる値で判断していました。 この総コレステロールの中には、善玉コレステロール(HDLコレステロール)と悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が含まれています。 一部中性脂肪にも含まれています。 善玉コレステロールが高い方も、総コレステロールが高く表示されてしまうため、少し古い臨床研究のデーターだと、コレステロールが高い患者さんの中にも、例えば善玉コレステロールがとても高い方も含まれていて、そういった例が、データーを薄めてしまい。 きちんとした結果が出にくくなっていました。 
もう一つは、コレステロールが高くてそれが問題になるのが10年とか20年先になって初めてその結果が出てくるため、なかなか治療行為とその結果が直感的に把握しにくいところにあります。 医者になるための教育で、我々医者は「自分の経験を信じすぎるな」ということを教わります。 一人の医師が診察している患者さんの数は限られています。 その少ない患者さんのなかでも、医者に親切心から良くなっていないのに良くなったとおっしゃられたり、まったく治療がうまく行かないと通院すらされなくなり医者が悪くなった事を知らなかったり、さらに薬を飲んだという安心感から症状が良くなった気がしてしまったり(偽薬効果と言います)・・・。 それらの間違った情報が経験として体験されるため、医者はあまり自分の経験を信じないように教育されるのです。  では何をよりどころに治療をするかというと、臨床の患者さんの治療体験を大量に集めた論文をよりどころにするのです。 そしてその莫大なデーターを読み解くには、実は専門的な統計学という考え方を学んでおく必要があるのです。 実際の論文は、データは正しいですが、そのデータから得られる教訓は、よい医学雑誌でなければ間違った解釈がされていたりすることもあります。 なので、きちんとした教訓を得るには、それぞれのドクターがきちんと統計学を学んでいる必要があるのですが、残念ながら、私の身の回りを見渡してみて統計学をしっかり理解している先生は4人に1人ぐらいではないかと思います。 なので医者によっても、間違った解釈をそのままうのみにしてしまう場合があり、そういった医者の言動がしばしば混乱を引き起こすことがあるのです。 しかしそういった間違いも、何人かの医者や科学者が集まって彼らが合意できる水準を満たしたものは、間違いも少なく、ある程度の水準を確保していると言えます。 それがガイドラインなのです。

次回はコレステロールがどういった物質なのかを書いてみましょう。

後で診るほど名医

医者仲間のことわざというか、慣用句に「後で診るほど名医」と言う言葉があります。
大学病院等で回診等があると、決まって若い研修医当たりから意見を言わされて、次にスタッフ、そして講師など教育担当者が意見を述べて、最後に教授が話をすると言った具合に、後で意見を述べるドクターが、偉い先生と決まっているという意味もあります。 その心は、年配の先生が意見を言ってしまうと、その後若い先生が自由な意見を述べる機会が失われる、あるいは、若いドクターの考える機会を奪ってしまうので教育に良くないという意味合いもあるのでしょう。

しかし本当の意味合いはおそらくちょっと違います。 病気の始まりの時期には、あまり症状が出そろっておらず、ヒントが少なく、きちんとした診断がなされない場合があります。 はじめのうちは病気なのかそうでないのかも解らないといった曖昧な症状で来院されるわけです。 その時点できちんと病気の本質が解り、きちんとした診断まで行き着ければ良いのですが、そうでないと「少し(この薬で)様子を見てみましょうか」という事になる事があります。 そうして一週間位経過してくると、勝手に治ってくれることもあります。 また逆に、病状が進行して、症状が出そろって、誰がみても病気だとわかる状態になったりします。 その段階になって患者さんが不信に思って、医者を変えた結果、当院を受診してくださったりする事があります。 その患者さんの以前の状態を知らないと、「なぜこの病気、もっと早く診断が出来なかったんだろうか? こんなにはっきりした症状があるのに」と思ってしまう事があります。 そういったときに、この「後で診るほど名医」と言う言葉を思い出します。 もう少し解りやすく言えば「コロンブスの卵」のことわざと近いかもしれません。 時間が経過して、検査や症状が出揃うと、診断はそれほど難しくないことはよくあります。 ですので、後で見た医師の方が簡単に診断ができる、つまり後で診るほど名医ということになるのです。 当院に来院された後に病気が解って治療がスムーズに行ったからといって私が良い医者だという訳ではなく、時間が経過して患者さんがでもこれはおかしいと思うぐらい症状が出そろってくると、診断への手がかりが多くなり、適切な診断ができる事があるのだということなのです。 私も、「少し様子を見てみましょうか」と言うフレーズよく使います。「ちょっと様子見て何か良い事があるのか?」あるいは、「待っていて大丈夫なのか?」と不信に思われる事もあるかもしれませんが、多くの的外れな検査をするよりも、少し待って、病気かそうでないかのふるいをかける事で、より適切な人に適切な治療や検査が出来る事もあります。 そして逆に、病気の発見や治療を遅らせる事にもなる事もあります。 どちらが良いのか、本当の所は誰も解らないのでしょうね。 でも時として、病気の診断には結構時間がかかる事が有るという事はご理解いただきたいと思います。

iPhoneとヘルスケア

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2年程前まで、パナソニックの二つ折りの携帯を使っていたのですが、壊れてしまって、iPhone5を購入しました。 結構気に入って使っていたのですが、バッテリーに問題のある機種だという事が解って、このまえ、表参道のアップルストアに修理に行きました。 修理のためにケースから外すと、液晶のガラスが浮き上がっていて、ヤバい、これでは修理代全額負担かと思って(使っていて本体が曲がったんじゃないかと思った訳で)、一生懸命、浮き上がって曲がったガラスを押し込んでも戻らず・・。 まあしょうがないなと思ってジニアスバーに行くと、どうも電池の不具合で膨張して、それで内側から液晶が持ち上がっていた様でした。 バッテリーの不具合という事ですぐに新しいiPhone5と交換してもらえました。 交換したら、電池のサイズが戻ってとても薄く感じて(本来の厚みなのですが)、とっても満足、まだ数年はつかえそうな気がしてます。
もう、ちまたは皆iPhone6で大騒ぎなのに、いまさらiPhone5でごめんなさい。  

ちなみに早速iOS8にアップグレードして使っています。 最近、患者さんの中にも気づかれたかたがおられていると思いますが、
ヘルスケアというアプリケーションがあって、おそらく今後、体重とか血圧とかを計ると、無線(bluetooth)でデーターがiPhoneに蓄積され、それを医師に見せたりできる様になるのだろうと思います。 ただ、まだきちんとした対応したアプリケーションが無く、このクリニックではまだ対応出来ていません。 もう既にデータを登録して持って来てくださった患者さんがいるのですが・・・。 残念ながら、すごいですねーと言ったところで、メール等にデータを書き出したりする事が出来ず。 二人で顔をつきあわせて、ちょっと残念な感じになりました。  私の期待も含めてですが、おそらくマックのOSが新しいYosemiteになると、対応出来る様になるのでは無いかなと思っています。 まあもう少々お待ち下さい。 それまでは、iPhoneの画面上の血圧のデータをデジカメで取らせてもらったりするかもしれません。

そのうち、クリニックのカルテ自体が、個人のiPhone上に格納されて、iPhoneをクリニックのクレードルにつなぐとカルテが見れるといったシステムになるんじゃないかな、なんて思ったりします。 

インフルエンザワクチン接種開始しました

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2014年のワクチン接種は終了しました。

夏風邪と五十肩

お盆休みの前に引いた風邪が、お盆休み中、ずっと寝てたら治るだろうなんて思っていたら全く治らず。 今も咳が出ます。 ようやく痰切れが良くなり始め、以前飲んでいた、抗アレルギー薬は中止して、咳止めと痰きりの薬を飲んでいます。 こういった薬はやっぱり自分で飲んでみないと解らないですね。 抗アレルギー薬は痰の量が少なくなって初期の咳の連発はだいぶ良かったのですが、途中から痰が硬く固まりだし、一時的に気道に詰まって、息が吸えなくなってえらく焦りました・・・。 あんまり本来の使い方ではない薬の使い方は良くないのだと反省です。 ひどい時には、咳を連続してだして、息を全部はききったあとに、喉が塞がって息が全く吸えなくなったり、咳で気持ちが悪くなって、胃液を吐いたりするというのを繰り返していました。 
今ではしゃべらなければ咳は殆ど出ない様になりましたが、調子に乗ってしゃべると、咳が出始めて、きっとだいぶ患者さんにご迷惑かけているんだろうなと反省しています。 もしかしたら今回のこれは百日咳だったのではないかと今更ながら思います。 きっとあと1ヶ月位はこんな感じが続くのでしょうね。 
今でも診察中はマスクをして、患者さんとお話する前に、暖かい紅茶を飲んで準備して話しをすると、5分位はなんとか持つので、良いですが、それ以上になると、声がかすれ始め、結局むせ込んでしまって、お聞き苦しい感じになってしまいます。  暖かい紅茶は結構即効性があってよいですね。 中国茶や日本茶や、コーヒだとあまり効果ないようでした。

もう一つ6月頃から左の肩が五十肩になり、幸い2年前の右の五十肩はだいぶ良くなっているので良いですが、結構寝返りをうったりするのも大変です。 やっぱり日頃の運動不足が良くないのでしょうね・・。 一番面倒なのは、白衣を着るときですね。 今回の痛みは後方への移動と挙上時にでるので、白衣を着たり脱いだりするのが一苦労です。 最近ようやくこつをつかんで来て、なんとか痛まずに白衣を着脱する方法をマスターしました。 まあ何の役にも立たない知識ですね・・。 
何の落ちもありませんが、あしからず。 独り言でした。

ホームページ来訪者が1日1000人を越えました・・・。

睡眠についての記事を書いていた頃からでしょうか? なんだか一日あたりの閲覧者数が増えているなーと思っていたのですが、昨日一日あたりのホームページ閲覧者が1000人を越得ていた様でした。  ちょっとびっくりです。 そしてどうもありがとうございます。  今後も記事を書いていきますのでよろしくお願いします。
1000人

夏風邪をひいてしまいました

夏休み直前に油断して夏風邪をひいてしまいました。 熱は出ないのですが、咳が続き、腹筋と背筋や咳で使う筋肉が痛いです。 夏期休暇中ずっと寝ていて、寝ていたら治るかなと思っていたのですが、休暇が終わっても相変わらず声があまり出ず、しゃべっているうちに咳が出るというのを繰り返しています。 
かなり強い咳止めを飲んでいるのですがあまり効果ないようで、花粉症等に使う薬を使ってようやく、夜に咳で1時間置きにおきるといったことはなくなりましたが、完全に良くなるのにはもう少しかかりそうです。 思えば5月頃から咳が出るタイプの風邪がはやっていて、それなんでしょうね。 
驚いたのは、花粉症等、鼻水を止めるために使う薬が結構、咳に効果があった事です。 確かに、気道分泌液量を減らすと言う薬効があるので、予想はしていたのですが、鼻水を止める薬で、咳が止まるのはちょっとびっくりしました。 ただ、こういった薬の欠点は眠くなる事。 仕事をしていると大丈夫なのですが、少し患者さんがいらっしゃらない時間があると、気だるく、寝てしまいそうになります。
皆様も気を付けてくださいね。 空調の乾いた風をまともに受けたりしていると、結構喉にきますので・・。

不整脈学会に参加して来ました

2014_07_JHRS
日本の不整脈の臨床と研究を持ち寄って発表する学会、日本不整脈学会・心電学会に参加して来ました。 元々この二つは結構小さな学会だったので、平日に開催される事が多く、参加するのが結構大変なんですよね。 勤務医の時代には、すべてを休んで、アルバイト等を若い先生にお願いして、外来を閉じて、全期間学会に参加できたのですが、今回は半日だけです。 クリニック休む訳にいきませんので・・。  土曜日とか日曜日にあればもう少しきちんと参加して勉強できるのですが・・・。 
会場は、東京、芝公園 プリンス パークタワー 東京の地下でした。 こんなところにこんなホテルがあるなんて知りませんでした・・。 とても新しくて奇麗なホテルでした。 
でもとにかく暑かったです。 最近本当に蒸し暑いですね。
大学を離れて既に3年が経過していて。 そろそろ、少しずつ、私が前線で仕事をしていた頃と比べて少しずつですが知識が新しくなりつつあるような気もします。 きちんと勉強して、情報を整理しておかねば。 また来年も参加しよう。

夏がやって来ました

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台風8号も過ぎ、もう梅雨はあけたんでしょうか? 湿度が高く、暑い日が続いています。 患者さんを拝見していて思うのは、真夏の気温のすごく高い時期より、6月や7月の暑くなりかけに体調を崩される方が多い様です。 気を付けてください。 6月に猛威をふるった、強い咳が1ヶ月も2ヶ月も続く風邪もようやく下火になって来て、これからは暑さ対策が必要な季節です。 写真は、待合室にあるカボックという観葉植物の新芽です。 小さくかわいらしい形をしていますが、時間が経つとだんだん緑色が濃くなって大きくなります。 年末に育てていた、ポインセチアは残念ながら、入れ替えた土に小さなムカデが混入してしまっていて、クリニックでは不衛生という事で、鉢ごとだめにしてしまいました。 残念です。

三好クリニック夏期休暇は8月9日から15日となっております。 その前後のご予約は少々混み合いますが、ご容赦いただけましたら幸いです。

睡眠について4

睡眠・自律神経と一日のリズム


2つの具体的な問題提起をしてみますね。 

まず一つは、人間はいつ寝るのが良いのかという点についてです。
一般的に睡眠時間は一日7〜8時間と言われています。 じゃあ、それはいつでも良いのでしょうか? 皆さんの大部分は夜11時とかに寝て、6時とか7時ごろに起床される方が多いでしょう。 学校がそうなっているから? 電気の無い時代の名残? 考えられる理由はいろいろあるでしょう。 物書きやフリーの仕事をされている方、深夜に働く方の中には、5時とか6時位まで起きていて、明るくなってから寝る方もおられるでしょうね。 全く外の世界から孤立した一定の明るさの部屋に人間を一人で生活させると、その人間の生活のリズムは大体25時間おきに睡眠と覚醒を繰り返すと、どこかのテレビでやっていた様に思います。 これは人の生活リズムが普通は25時間周期で繰り返しているという事を意味しています。 その生活周期を24時間に設定しているのは目から入る明るさの刺激だと言われています。 目からある程度以上の強めの光が入る事で(直射日光に当たる必要はなく、日当りの良い縁側位の明るさで良いと言います)、人間は脳内でメラトニンという睡眠に関係する脳内物質を作ると言われていますし、視交叉上核と言う人間の生活リズムを作っている脳の一部のリズムをリセットしていると考えられています。 つまり、起きている時間は、ある程度明るい時間帯が良いという事になります。 ちなみにこの明るさは、一般的な家庭での照明では不十分で、日光ぐらいの明るさが必要なのです。  つまり起きている時間は日中の方がリズムが出来やすい事になります。 一般の人の睡眠時間というのが、意図せず良い時間帯だと言う事になります。

もう一つは、時差体験から考える人体の生活リズムです。
皆さんの中には、時差のある海外に旅行に行かれた方もいらっしゃると思います。 例えば2週間位ヨーロッパに滞在するとすると、その間にヨーロッパの時間になじむ事になります。 2週間たつと、ヨーロッパの時間に普通に生活できていて、全く不自由無くなりますね。 つまり2週間程で時差の調整が出来た事になります。 もう少し細かく観察してみましょう。
まず、飛行機で長距離移動する際に、旅行という疲れもあって、機内で十分寝られる方もおられるでしょうね、あるいは到着してからぐっすり寝て時差を調整したいという事で、機内は寝ない方もおられるでしょうか? しかし多くのかたは、到着したその日の夜は、移動の疲れもあってぐっすり眠る事が出来るはずです。 疲れすぎていて間違って夕方の5時とか6時位に寝てしまって、夜中の3時ごろに目が覚めてしまう事もあるでしょう。  たいていそういう経験をされた方の多くは、夜中に堪え難い空腹を感じる事が多くないでしょうか?これは後で少し説明します。 翌日普通に活動して、昼過ぎに異常に眠くなり、それを我慢してその夜に寝ると、たいてい睡眠に関しては2-3日で時差は解消される事が多いと思います。 しかし、その他の内蔵のリズムはどうなっているでしょう。 先ほどの空腹もそうですが、消化器や血圧調整といった自律神経の働きは、睡眠のリズムよりもっと遅れて快復して来ます。 例えば毎朝きちんと排便がある人、いつも夜はトイレに行かない人、そういった人も、ヨーロッパ到着から4−5日、長い人で1週間程は、夕方など日本では考えられない時間帯に強い便意があってトイレに駆け込まなくてはならなくなったり、夜のトイレが2−3時間おきにあって睡眠が妨げられたりする経験ないでしょうか? これは血圧や尿を作る時間、そして排便したりする時間を、体がリズムとして持っている事をしめしています。 人間は覚醒する直前に血圧を上げて起立した時に脳の血液が十分確保できる様に準備をしていたりします。 こういった、リズムは自律神経によってコントロールされていますが、自律神経は脳や、睡眠といった大脳のリズムとは異なり、もっと原始的なリズムなので、その調整には睡眠のリズムよりもっと時間がかかる訳です。 何が言いたいかというと、睡眠する時間や起きる時間がまちまちだと、自律神経のリズムがバラバラになり、食欲や排便、排尿や、血圧調整等がうまく行かなくなるという事です。 医者は良くおまじないの様に、「毎日規則正しい生活をしてくださいね。 何もなくとも朝7時に起きて、歯を磨いて、顔をあらって、朝ご飯を食べて、体操して、昼になったらご飯、買い物等をして、適度な運動をして、夕方決まった時間に食事をして、テレビを見たり、風呂に入ったりして、決まった時間に寝てください」、とここまで細かくは言わないかもしれませんが・・。 まあ大部分の人は、「また言ってるね、医者の挨拶みたいな物なんだな」と思って無視するかたも多いでしょうが、実はこれが自律神経の乱れのある方の最も良い調整法だったりします。 動物は、一日の生活を最も効率良くに行うために、自律神経のリズムを持っています。 大体何時位になったら起きて、食事をするから、その前に血圧を上げといて、胃液や唾液の準備をして・・・。 などなど。 行動の前に、あらかじめリズムを元に準備している訳です。 そしてそのリズムが狂うと、いつ起きたり食事をしたりするのか解らず、内蔵は準備不十分な状態で、突然食事が入って来て胃がびっくりしたり、突然体を動かされ始めたりして、心臓や全身の血管がびっくりして、がんばってそれに合わせようとします。 そしてその違和感を、大脳が体調が悪いと感じる訳です。  これが自律神経失調症の原因の一つになっています。 先ほどの時差の話に戻すと、内蔵のリズムが調整されるのに5日から1週間かかったという事は、逆に5日まえとか1週間前の生活のリズムを体が覚えているという事になります。 規則正しい生活を1−2週間続けて行くと(ちなみに、健康的なと加えておきますね。 そうしないと、「おれは、いつも、規則正しく不健康な生活をしてます」と言われかねませんので・・・)、ようやく自律神経のリズムがしっかりして来て、そういった体の違和感がなくなってくるのではないかと思います。

さて、まだ睡眠についていろいろあるかもしれませんが、今回で一旦終了とします。 
今回いろいろ書きましたが、やはりいろいろな不安や、ストレス等があって眠れない場合、どうしても睡眠導入剤が必要となってくる事が多いです。
眠って心を休めて、体力を回復してくると、今までとても不安だった事が少し解消したり和らいだりする事があります。 全く今まで思いつかなかったストレス源の解消法を思いついたり、解決方法が見つかったりする事もあるでしょう。 どうか皆様に良い眠りのあらん事を。

睡眠について3

光と睡眠


眠る時の部屋の環境は、恐らく各家庭の習慣でそれぞれだいぶ異なっていると思います。 例えば結婚や合宿で共同生活してみたりすると、その違いを実感するでしょう。 部屋の明るさをどうするのかというのも、恐らく各家庭で生まれた頃からの習慣があって、慣れた方法で眠るのが良いでしょう。 光の環境は大きくわけで、全く通常通りの明るさで眠る方と、小さな豆電球にして薄暗くまわりの物がぼんやりと見えるぐらいの明るさで眠る方、そして厚手のカーテンでしめきって完全に真っ暗にしないと寝れないという方もおられる様です。  ちなみに、私はどんな状態でも寝れてしまいます。 どれが正しい寝方かというのは決まりは無いのですが、生理学的な視点からは暗くして寝た方が良いと思います。 その理由は動物が生活リズム(体内時計)を作るのに、目からの明るさの情報が重要な役割を果たしていて、それゆえ夜であると言う事を体が感じやすい様に、寝るときには部屋を暗くしていた方がリズムがしっかり出来てよいのでは無いかと言うわけです。 リズムについてはまた少し別途解説が必要かもしれません。
皆さん眠れるときには、部屋が暗かろうが明るかろうが眠れている事が多いと思います。 問題は眠れなかったときの対応でしょうか。 眠れない場合の多くは「眠れなかったら困るな」という感情や、その日のとても不愉快な出来事を思い出したり、途中で嫌な夢を見てしまって、そのいやな気分を引きずって眠れなくなったりするといった原因がある様に思います。 目をぎゅっとつぶってしまったり、部屋を真っ暗にしてしまって、目から入ってくる信号が無くなってしまうと、思考がとぎすまされて、むやみに不快な感情が昂って、どんどん眠れなくなるサイクルに入ってしまうような気がします。 そういう場合、私は、小さな豆球をつけて、目を開けて天井を見ていたり、周りの家具を見たりしてぼーっとしてみます。 目から何か情報が入ってくると、それがとても単調な物でも、思考が一時的に中断され、昂った気分が収まる事が多いように思います。 あくまで独断ですが・・。

次は日常のリズムについて考えてみましょうか

睡眠について2

今月も集団健康診断があったため、だいぶ忙しかったです。 そのため前回の記事から既に1ヶ月以上たってますね。 申し訳ないです。

今回は眠るためのお話で、前回の体温の調整という事をもう少し掘り下げてみようと思います。



患者さんの診察をしていると、「私はいつも体温が低いので・・・」といった話しをうかがうことがあります。 一般の方々の思い浮かべる体温は、脇の下で測定する、「腋窩体温」です。 この温度は着込んでいる服の量や外気温や運動によって左右されます。 腋窩体温は測定しやすいという利点がありますが、体の中心の内蔵の温度を示してはいません。 内蔵の温度は「深部体温」と言います。 動物は効率よく生存するために、厳格にこの深部体温を37度から38度に維持しています。  私は低体温でという方も深部体温は37度から38度ですので安心してください。
無意識に深部体温の維持は行われています。 体温を上げるために、筋肉を動かした際の余熱を使います。 その他に、消化の際に使うエネルギーの余熱もあるでしょう。反対に体温を下げるためには、主に皮膚や肺で、汗などの表面の水分が気化して生じる気化熱を利用します。 身近な例でいえば、 風呂上がりに体がうっすら水にぬれているときに扇風機の風をあびるととてもひんやり冷たいやつです。  こういった事を、殆ど無意識に行っている訳で、それは眠る時にも同じです。

寝ている時は、手足の筋肉から発生する熱量をほとんど使わず、内蔵や全身の細胞が生命活動に必要なエネルギーの最低限の熱量(基礎代謝量)だけを使って深部体温を維持する必要があります。 そのエネルギーの標準的な発生量は75~100ワット程度です。 大きな部屋の中にぽつんと100ワットの電球があってもそれほど暖かいとは思いませんが、それを厚い布団にくるんでしまうと、どんどん熱が蓄積されて、中の温度は触れないぐらい熱くなります。  なので寝ている間はこの100ワットのエネルギーを、内蔵に貯めたり不要な熱を手足から放熱したりして、なんとかやりくりして深部体温を37度から38度に維持します。 寝ている時は熱を作る方が難しく、冷やす方が簡単なのです。 
もしかしたら眠る前に人間は無意識に、「この100ワット程度の熱で、この先朝まで深部体温を37〜38度に維持出来るか」をザックリと判断しているのでは無いかとおもいます。 大丈夫そうなら、「体温オッケー」という事で気温を無視して眠りに付く事ができ、オッケーでないと無視出来なくて眠れないのでは無いでしょうか?

では具体的にどうしたら、深部体温を維持しやすく出来るでしょう。 


睡眠時の体温調整は主に、布団による保温と、手足からの放熱を無意識に行っています。 具体的に言えば寒ければ布団を巻き付け、頭を布団の中にいれ、丸まり。 また熱ければ、布団をはだけ、手足を外に出して体温を下げて調整する。 それを妨げないようにする事が大事でしょう。
布団に入るときにひやっとするので、電気カーペットや電気毛布を入れて寝られる方もおられますが、寝ている間に、熱がこもって体が布団から出ていたりして、放熱のために寝返りが多くなりぐっすり寝られなかったり、顔や首筋の布団がはだけてしまい、自分の体から出る湿度が、口の近くから大きくはなれてしまうため、のどが痛くなったりされる事が多いでしょう。結果的にあまり良い居眠りにはならないでしょう。 人間は無意識に体温を37度に維持していますから、自分の体で布団を暖めるのが最も良い事になります。 それで寒いのでしたら、大きめの布団や厚めの布団が必要です。 布団があたたまるまでの間がつらいというのであれば、湯たんぽ等も良いでしょう。 湯たんぽが手元に無いのであれば、風呂に入って体を温めておくと、体が湯たんぽの様な役割をして良いでしょう。 
布団を2枚重ねる方や、ベットに毛布やシーツを巻き込んで寝られる方もおられますが、寝ている間にうまい事布団をたぐり寄せたりはねのけたりするのに、やはり適切な厚みのもの1枚の方がコントロールしやすいかもしれません。 またマットレスに上掛け布団を巻き込んだまま眠ると足下が完全に固定されていると、熱かったときに、足を出したりして体温の調整が出来ず、寝苦しかったりするかもしれません。 とにかく、布団の外にだした手や足は、体が冷えすぎてくると、自動的に血管が収縮して深部体温を下げすぎない様に調整しますし、それでは調整しきれないぐらい冷えるようなら、無意識のうにに寝返りをうったり、布団をたぐり寄せて手足を布団の中に入れます。 冷えるからといって靴下を履いたり、手袋をして寝られる方もおられますが、あまり良い習慣とは思えません。 

眠るためにはどうすれば良いでしょう?


眠るきっかけは結構大事です。 周囲の環境が眠った後に深部体温をうまく調整できそうにない状態にあると眠れません。 寝ている時に熱を作るのは難しいので、体全体に十分な熱量が確保されている(手足が十分暖まっている。 ある程度満腹になって消化による体温の上昇がある。 体の中心部分の外気温が37度付近である)ことが望ましく。 そして暖まりすぎればいつでも手足を布団から出して放熱して体温調整が出来る状態が良いのではないかとおもいます。 医学的な根拠が有るかどうかわかりませんが、以前、どこかのテレビ番組で、眠りに入る瞬間少し体温が下がるとか、膝から下の足の温度が下降傾向にある時に眠りに入るといった事を言っていたのを聞いた事があります。 平たく言うと暖まって少し汗ばむ位の体温が、少し冷え始めた時に、眠りに付きやすいという事なのでしょうかね。 おそらくそれは体が、これなら寝ても大丈夫と思う温度環境なのだと思います。
医者がこんな事を言うくらいですので、眠るための学問はあまり進んでいないのですね・・。  

次は部屋が明るい方が良いか暗い方が良いかという事について考えてみましょうか

カルテソフトの更新

もうゴールデンウィークですね。 本日第4土曜日で三好クリニックも休診です。 今回、カルテ用のソフトウエアーのサービスを新しくしました。 三好クリニックのカルテはファイルメーカーシステムを使ってその上で自分で作ったカルテシステムを動かしているので、業者の人に頼む訳にも行かず、一人でセットアップを行います。 今回のアップデートで一番期待しているのは、カルテの入力スピードが速くなるかもしれないという事です。 今まで患者さんのデータファイル等を登録する際に、3回も4回もクリックしなくてはならなかった所を、一回ドラッグするだけで登録できる様になるので、カルテの記載が早くなり、その分、患者さんの正面を向いてお話を聞く事が出来るかなと・・・。 
診察をしていて、カルテを書くスピードは結構大事です。 ただただ話しているだけでしたら、別に良いのですが、お話になった事が、以外に後で約にたったり、あと来月きっと忘れないとおもっていても、忙しい時間帯にいらっしゃったりすると、口で行った約束を忘れてしまったりする事もあります。 患者さんにとっては医者は一人ですので、まあ忘れないという事もあるかもしれませんが、医者側に取ってみると、同じような病気であったり、似た様な状態の患者さんの病態を混同してしまう事もあるので、やはりカルテをしっかり書いておく事は大事なのです。 しかし、カルテを書いている時は、結構我々は無防備になっていて、書きながら考えたりしている時に、患者さんはドンドン別の話をされたりする事があって・・・。 結構収集が付かなくなったりする事があります。 ちなみに、私のクリニックのマックは、口でしゃべった事を文字に変換する機能もあって、いわゆるiphoneでいう”siri”ですね・・。 使ってみたい衝動にかられる場面もあるのですが、ちょっと恥ずかしいです。 結構文字の認識はきちんと行ってくれますよ。 

今日は休診日なので、セットアップをしてテストをして、結構慌ただしく一日がすぎてしまいました。 明日はゆっくり休みます。
実際に診療が始まってバージョンアップの問題が出てくる事もあるので、来週診療開始時がちょっと怖いですが・・。 なんとかがんばってみます。

高血圧治療のページを変更しました

高血圧のページを新しい、日本高血圧学会のガイドライン2014年度版にそって変更いたしました。 こちらからどうぞ

日本循環器学会に参加してきました。

今年は東京国際フォーラムで開催されました。  年一回開催されるこういった学会に参加する事で、5年や10年ごとに訪れる専門医更新に必要な点数を得る事が出来る様な仕組みになっています。 日進月歩の医学の専門知識を得る事が出来る貴重な機会でもあるので、出来るだけ参加する様にしています。
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JCS-2014s
日間にわたって24の会場で同時に別々のセッションが行われるので、全部の講演を聞くのは難しく、参加出来るのはほんの一部でしかありません。 大学にいる頃は、主に自分が携わっている分野や、自身の研究グループの発表等にサポートメンバーとして参加する事がほとんどで、自分の専門外のセッションに参加出来る様な雰囲気ではなかなか無かったです。  今年、血圧の指摘目標値がだいぶ変更になるという事もあり、 血圧のシンポジウムに参加してきました。  血圧をどのぐらいまで下げれば良いのかという事を考えるためのセッションです。  こんなセッションなかなか大学にいる時は参加出来ませんでした。
2009年に高血圧学会のガイドラインが変更になり、それまでの高血圧治療のガイドライン血圧の目標値を少しだけ下方修正した事と、 糖尿病・心臓疾患・腎機能障害などの合併症を持った患者さんの目標血圧値をさらに下げた事を、高齢者で放置されていた高い血圧に関しても血圧のコントロールを厳密にしたほうがやはり成績が良かった事から、下方修正したことが大きな特徴でした。 今回の2014年の改訂では、どうやらほんの少しだけ上方修正する様です。 また4月になったら公表されるようなので、その際に解説してみます。
最近いろいろな降圧薬の会社の臨床試験で問題が生じて、薬に対する不信感をお持ちの方も多いかもしれません。  人によっては、薬屋さんの利益のために薬を飲まされているのではと考えておられる方もおられる様ですが・・・。  やはり患者さんを見ていた経験と、論文で発表される、高血圧治療の臨床研究のデーターを見ると、もしも自分の血圧が高ければやっぱり飲みますね、薬・・。  医者の目からみて血圧が高くてよい事なんて一つもないですから・・・・。

睡眠について1

眠りについて



内科の医者をしていて、患者さんの「眠れない」という相談を受ける機会は多いです。  不眠治療は、精神神経科の先生の専門分野になりますので、私のような内科医がとやかく言う事ではないのですが、結構相談を受ける機会があります。  それだけ多くの患者さんが、眠れないという事を苦痛に感じておられるのでしょう。
悩まれている患者さんを前にして、失礼な話しなのですが、私自身は医者になってから、寝られないという経験はほとんどなく、たいていすぐに寝てしまいます。 確かに、学生の頃や、海外での会議に出席する際に、眠れなくて困った事はありますが、 逆に、授業中や仕事中になぜ眠くなるんだろうって、考える事の方が多かったです。  大学時代に受けた脳生理学の講義では睡眠のリズムを作っている大体の場所と、経験的に眠くなる薬の薬理作用が解っているだけで、睡眠の明確なメカニズムは完全に解っているわけでは無い様です。 そのため睡眠に対する医師のアドバイスも、あまり科学的な根拠のないものであったり、経験的な物が多く、これさえ飲めば万事解決するといった妙薬も無いのです。

それでも悩んでいる人に「解らないです」だけではちょっと悲しすぎるので、 一生懸命自分の経験と、医学的な知識を使って考えて患者さんに説明するわけです。 なので、今回はあくまでも、個人の感想あるいは経験の話しで、科学者である医者の立場からの発言ではありません。眠りに関して問題を抱えている方と同じ悩める者としての独り言と思って読んでいただければと思います。 今回は薬についてのお話は一切なしです。 皆様の不眠の悩みにあくまで参考程度に考えてください。 
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眠りたく無い


病気で日中にでも眠くなってしまうというケースについては、またの機会にお話させてください。 今回の焦点は普通の眠気についてです。
小学生の頃、プールの授業の後の、授業はとてもつらいものでしたね。 さらに食後だったり、ぽかぽかした陽気だったり、さわやかな風が吹き抜けて心地よかったりすると、眠くなりますね。 部屋が暗かったり、黒板の文字が小さくて見えなかったり、教師の声が小さく言い間違いが多くて、何だか意味が分からなかったりすると、多くの学生は寝てしまいます。 
なので大学生の頃、講義で寝ないために、出来るだけ前の方の席に座り、文字が見えなかった時のために、オペラグラスを持って講義に出ていました。 それでもどうしても眠くなってしまう事があり、そのときの眠気を吹っ飛ばす極意は、周りを見て眠りかけている人を見る事でした。 これは結構面白く、数分は眠気を我慢出来ます。 少し脱線しましたが、これは眠たくなる典型的なケースかなと思います。 防止すれば覚醒し、そのような状況をわざと再現する事で眠る事が出来るかもしれません。

眠りの圧力


適度な疲労というのは眠気を誘う重要な因子である事は皆さん納得されるでしょうね。 前日寝ていないというのもそうかもしれません。 こういう事を、どこかの医学系の雑誌で、「眠りの圧力」と表現されていた先生がおられました(原典を忘れてしまってすいません)。 とても眠気を良く説明している言葉です。 良い眠りのためにはこの圧力がある程度たまっていなければ眠れません。 最後には眠りの圧力に押し流されて、眠ってしまう。 そして途中で昼間に眠気に負けて寝てしまうと、その圧力は夜には弱い物になっている事でしょう。 私も時々誤って夜目が覚めてしまって、眠れない時に、とりあえず、「今日寝られなかったら、明日はきっとぐっすり寝れるな」というふうに思う様にしています。 眠りの圧力を翌日に持ち越そうと考える訳ですね。

外気温と眠り


体の周囲の温度・気温も、眠気に重要な気がします。 暖房の効いた部屋だと、眠いと感じる事が多いのではないでしょうか? でも熱すぎるとどうでしょう。 蒸し暑くて寝れないというのは夏に皆さん経験されていますよね。 勉強に集中出来るように「頭寒足熱」という言葉があります。 頭を冷やし、足を暖めるという行為は、眠気をさまして物事に集中するときに良いのでは無いかと言われていますね。 でも自分の経験から実際に眠いときにこれをやっても結局それほど効果が長続きする事はあまり無いように思います。 膨張率の関係で、熱せられた空気は頭の方に、そして冷えた空気は足下に降りてきますので、結構この「頭寒足熱」を安定して続けるのは難しいです。 恐らくは、部屋が冷えていると眼が冴えて集中出来るようになるけれど、もともと空気の冷たい足から体温が奪われて、風邪をひいてしまうだろうから足は暖めた方が良いと言うような、「出来たら良いのに」的な話なのではないかと想像されます。 では、結局どうしたら良いのか、これは結構単純な問題では無いと思います。 きっと皆さんの睡眠環境や回りの状況等によっても異なると思います。 ただ、私が思うに、体の周囲の温度と体温が同じ温度の時に、人間はリラックスし眠りに落ちるのだと思います。 その前に眠るという状況をもう一度考えてみましょう。

眠りとは、五感と思考の無視


眠っている状態は、五感で感じるあらゆる体の周囲の状況を無視している状態です。 それは、無視できるような安全な状態と判断しているからだと思われます。 例えば、目から入ってくる情報があります。 部屋が暗ければ、見える物の情報量が圧倒的に少なくなります、色彩、形、(それ以外にも人間は目から入る明るさの刺激から覚醒のためのシグナルを脳に送ると同時に、メラトニンといってその日の夜に睡眠時に関連する神経伝達物質を作るとも言われています。 ) そういった情報が少なくなり、そして変化が乏しくなれば、その情報に慣れてしまい、目を開けていても見ていない、視覚を無視する状態になります。 時々寝ようとして目をつぶってしまう方がおられますが、私は、全く情報が入らなくなると、他の感覚が鋭敏になったり、暗闇に対して順応が生じて、普通では見えないような模様や、想像等によって補完された映像を頭の中で再現してしまうように思うため、出来るだけ目を開ける様にしています。 もちろん、部屋の明かりは、物がうっすらと見えるぐらいの明るさが保たれる、豆電球派つける派です。 授業中に眠気と格闘している同級生の顔を思い浮かべると、彼らは必ず目を開けているではありませんか・・。 目を開けていても寝れる時は寝れるんですよね。 
例えば、音も同じでしょう。 授業中に何言っているのか解らないような声でしゃべっている先生や、周囲の雑音、声等、理解できない音がずーっと聞こえていると、だんだんその状況に慣れてしまって、耳から入ってくる情報を雑音だとして無視してしまいます。 全く無音になると、耳鳴り等が聞こえたり、あるいは隣の家のテレビの音等が聞こえて来て、腹が立ったりして目が覚めてしまう事もあるでしょう。 聞こえるか聞こえないかぐらいの音、おそらく、いつも生活している時に聞き慣れた音が良いのでしょうね、そういった音を枕元でかけたりすると寝れるかもしれませんが、寝室で一緒に寝ている人に文句を言われるかもしれませんね。
体温についても同じかなとおもいます。 体の温度調整をしなくても良い状態、放っておいても37度になるという状況が、体温調整を無視させるために大事なのかなと思います。 でもそれには少し体温について知っておく必要があります。 
この続きはまた次回という事で。

青山通りも雪がすごいです

先週といい今週といい、週末雪が多いですね。 足下滑りますので注意してくださいね。 今日は滑るどころじゃなく、雪と雨で水はけが悪く、シェーク状態になった道路を歩いたせいで、靴の中が、氷水でいっぱいになりました。 こういう日はあえて病院に行きたいとはなかなか思えないですね。 滑って転んで骨折しても大変ですし・・。最近、少々予約が込み入ってご迷惑おかけしていますが、来院されるの難しければご予約変更いただいてよろしいですので、遠慮なくご一報ください。 予約が詰まっていても、最近は午前中に看護師2名体勢で運営しているので、フリーで来院されても検査等に入っていなければそれなりにてきぱきと対応出来るようになって来ています。 雪の翌日が混んでいても、お薬がなくなるのはまずいですので、ご来院いただければと存じます。
寒くなると、とたんにインフルエンザが流行りはじめますが、今年はまだA型がほとんどで、B型インフルエンザの流行はこれからでしょうね。 毎年3月頃から、急激に増えてきます。 ワクチンを打っておられても、3割の方は感染されると言いますので、過信せず予防にご留意ください。 手洗・マスクです。
写真は、金曜日の夕方・・・。 青山学院から、人がいっぱい、並んでました。 寒そうです。

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『心拍数ってどのぐらいが良いのでしょう?』

あけましておめでとうございます。 11月頃から年末にかけて忙しく、更新が途切れがちになっていました。

三好クリニックは不整脈を専門にする外来という事もあって、患者さんと心拍についてお話する機会が多いです。 その中で安静時の心拍数はどのぐらいが良いのかという話で盛り上がる事があります。
 
根拠に乏しい迷信なのですが、「動物が一生のうちに動かせる心拍数は決まっていて、心拍数が早ければ早死にし、心拍数が遅いほど長生きする」という事を信じている方もおられる様です。 成人の安静時の心拍は毎分60回ぐらいです。 その考えからすると、心拍が90ぐらいの人はがっかりし、40ぐらいの方は胸を撫で下ろしているかもしれません。 理屈にかなっているようにも見えるため信じてしまう方が多い様です。 どちらかというと「ラッキー保存の法則」と同じような感覚でしょうか? 根拠の無い迷信です。

比較動物学の分野では、大きな動物から小さな動物までの心拍数・寿命・体重を比べた研究があります。 それによると、大きな動物ほど心拍数が低く、寿命も長い傾向があるらしいです(クライバーの法則)。 これも、心拍数が低い方が寿命が長いのでは無いかと思われる根拠の一つの様です。 しかし人間に当てはめて考えるとおかしな事になります。 肥満体の方は一般的に心拍数は早めで、動脈硬化にもなりやすく、寿命は短命になりがちです。 現実は逆ですね。 実はこの法則が比較できるのが、種類の違う動物同士だけであって、人間同士の比較はできないのです。 もっというと自然界の動物には肥満は見られません。肥満が無い野生動物種間での観察結果は、肥満という自然から逸脱した現象がある人間には当てはまらないのです。

例えば血圧を下げる薬剤の中でも、心拍数を下げる薬剤の多くに寿命を延長させる効果ある事が臨床試験で証明されています。 心臓の筋肉への血液供給という点から考えてみると、心臓の筋肉に血液が巡っているのが、心臓が緩んでいる時であるという事と、一回の心臓の収縮している時間が、心拍数にあまり影響されずある程度の時間かけて収縮するため、心拍数が早くなると、緩んでいる時間が短くなり、心臓へ送られる血液の量が減ります。 なので、心臓の事だけを考えるならば、心拍数は遅い程良いはずですが、もっともっと心拍数が減ってしまうと、心臓から送り出される血液の量が減ってしまい、生命活動を維持できません。 ですので、ちょうど良い安静時の心拍数は、一分間に50回から80回ぐらいでしょうか? 安静にしていると思っても、しゃべったり、周辺に人がいると無意識に緊張して心拍数が上がりますので、90回ぐらいある人もいますが、寝ているときに心拍数がきちんと下がっていれば問題ありません。 覚醒時と睡眠時、つまり一日の平均の心拍数が毎分80回を越える人は、少し生活パターンや、内蔵に問題がある事が有りますので検査が必要になります。

また運動選手の安静時の心拍数が低い事は良く知られています。 40台は良く見られますが、時々30台の方もおられる様です。 これは、スポーツによって末梢の筋肉などでの酸素の取り込み能力が高くなり、少しの血液の流れ出も十分酸素を行き渡らせる事が出来る様になるためだといわれています
(こちらも見てみてください)。 心拍数が低めの方の中には、リズムを作るペースメーカー細胞の異常である場合もありますが、多くは、毎日よく体を動かしておられる方が多く、逆に心拍が早い方は、殆ど体を動かす事無く生活されている方が多い様です。 毎日行う適度な運動は、健康を維持するのにとても重要です。 日々の運動の結果としてそのような方は心拍数が落ち着いているでしょうね。  つまり寿命は心拍数そのものが問題なのではなく、心拍数を速くしたり遅くしたりしている原因が寿命に関係しているという事なのでしょう。 心拍が早いからといって、特に思い悩む必要はありませんが、心電図・採血等で特に内蔵に異常が無いことが解れば、毎日1時間程度の運動を続けられる事をお勧めします。 
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜