糖尿病とインスリン治療-4

今まであった経口血糖降下薬は、食事と無関係にインスリンを分泌する物であったのに対して、新しい薬は、どちらかというと、食事の後のインスリン分泌だけを増強したり、糖の吸収を阻害したり、ご自身の膵臓が分泌したインスリンの効果を強めるといった作用になります。 そのため、以前の経口血糖降下薬に比べて低血糖の副作用が少なくなっています。

利用する薬剤には以下の3つがあります。
1、DPP-4阻害薬: 詳しい説明は省きますが、元々食事をした際にインスリンを分泌するためのインクレチンという物質が腸から分泌されます。 DPP-4阻害薬はこの効果を増強する事で、食後のインスリンの分泌を増強します。 食事によって分泌されるインスリン量を調整する事で、低血糖の症状を起こしにくい性質があります。

2、ブドウ糖吸収阻害薬: これは腸から糖分を吸収するのを押さえる働きがあります。 アルファ・グルコシダーゼ阻害薬と言います。  カロリー摂取が日によってまちまちだったり、血糖値が大きく変動してしまって、低血糖が多く見られる患者さんに取っては、低血糖時に口から取った澱粉等でなかなか血糖値が上がらないというデメリットや、ガスの発生が多くなり、お腹がはったり、放屁が増えていやがられる事がある。

3、インスリン抵抗性改善薬: このクラスの薬剤の中には、乳酸アシドーシスを起こす危険性のあるものや、浮腫を起こしたり、頻度は少ないが、膀胱癌との因果関係があるのではと噂されるものもある。 しかし、チアゾリン系と呼ばれる薬剤は、糖尿病の心血管への合併症を抑制する効果がある事が、欧州での研究で証明されている。

繰り返しになりますが、糖尿病の治療は食事療法が最も重要です。 食事療法がきちんとできていない方ですと、このような薬はあまり効果が期待で来ません。 大変ですが、ご協力お願いいたします。




糖尿病とインスリン治療-3

最近、インスリンの指導を自分でやってみる事で、インスリンの使用量が、内服薬の追加で、減らす事が出来る患者さんがいるのに気づきました。 10年近くインスリンを使っておられる方が一名はおそらくこの秋に中止できる勢いですし、もう一名は今年中になんとかゼロに出来そうです。 ただししっかりと食事制限が出来ている事は必須です。 またご自身のインスリンがある程度膵臓から分泌されている必要があり、血液中のCPRという分子で判断出来ます。 誤解してはいけないのは、誰もがインスリン量を減らせたり、なくす事が出来るわけでは無いという事です。  インスリンを使っていてある程度血糖のコントロールが良好な患者さんで、CPRがある程度の濃度血液に分泌されておられる患者さんですと、後に示す様な薬剤を投与開始しながら、注意深く血糖値を見ながらインスリン量を減らす必要があります。 この減量のさじ加減が結構難しく、切り替え時に一度、何度か患者様のお宅にお電話して、血糖値を教えてもらい、適切な用量に微調整する必要があります。 今までいた様な大学病院ですと、こういった微調整は入院して行う事になったでしょうが、開業すると、毎日診療していますので、患者さんへ直ぐに連絡をとって微調整をする事が出来ます。 これを繰り返し、内服薬の反応とインスリンの量を大体あたりをつけてゆきます。  またこの減量はあまり急激には行わず、2−3ヶ月づつ、用量を調整してゆくという様な地道な作業になります。 あまりせっかちな患者様には向きませんね・・・。

続く

糖尿病とインスリン治療-2

私は糖尿病の専門家ではありませんので、新規にインスリン注射を導入する事は致しません。 インスリン注射を初めて使用されるには、専門の医師から入院中に十分な説明を受けながら治療開始する必要があります。 その場合すぐに糖尿病の専門外来にご紹介致します。 
私の治療の基本は内服薬になります。 循環器内科の病気のコントロール、心筋梗塞の再発予防や心不全の悪化予防に、糖尿病の制圧はとても重要です。 ですので、慶應病院の中でも糖尿病の患者さんの治療は随分行いました。 不整脈や心臓病の薬もここ20年で随分変わりましたが、糖尿病の治療薬もこの5年程でがらっと変わったと実感します。 それまでは強制的に膵臓からインスリンを分泌させる、インスリン分泌刺激薬が主流だった薬剤が、それ以外の作用で血糖値をコントロールできる薬剤が増えて来た事にあります。 インスリン分泌刺激薬は低血糖や、細胞膜やミトコンドリアに対する悪影響等の危険性があると言われていました。 ですので、こういった副作用の無い、言うなれば経口血糖降下補助薬とでも言うような薬は、糖尿病の境界線にいらっしゃる患者様にはとても重要でした。 
現在大まかに分けて3系統の薬が利用できます。この薬の出現で、糖尿病の専門の先生に依頼する患者さんの数はだいぶ減った様に思っていました。 私もインスリンが全く解らないという訳では無かったのですが、循環器外来の忙しい合間にインスリンや血糖値の指導を行うのは無理があったというのが本音でしょうか。 ですので、開業して、患者さんへとれる時間が十分ある今のクリニックでは、今まで拝見していた何名かのなじみの患者さんさんからインスリンの処方をお願いされ治療を行っています。

続く

糖尿病とインスリン治療

糖尿病という病気は皆さんご存知でしょうか?  患者さんにとってこれほど解りにくい病気も無いでしょうね。 
ほとんどの方が食事に不自由しなくてもよい現在の日本での生活では、多くの方が生きてゆくのに必要な量以上のカロリーを摂取しがちです。  糖尿病のほとんどの方はこのカロリーの過多によって起こってきます。  細かな病気のメカニズムの説明を省略して、誤解を恐れず簡単に言うと、「糖尿病の治療の原則は摂取されるカロリーの制限が一番」となります。 つまり食事制限です。 しかしこれは患者様の意志が無ければなかなか実現しません。 
そして、どうしても食事療法のみではコントロールが付かなくなって来た場合、薬を使用するしかありません。 私が研修医の頃は、糖尿病の薬と言えば、インスリンの注射とスルフォニルウレア型経口血糖降下薬の二種類しかありませんでした。 しかし、インスリン注射はご存知の様に患者さんに、毎食前の血糖採血と食事の量に合わせたインスリンの注射というとても過酷な作業を強いる事になります。 またスルフォニルウレア型の経口血糖降下薬は、血糖値は下がりますが、循環器系への副作用や低血糖等の副作用が強く、糖尿病の根本的な治療法ではありませんでした。 

続く
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜