三好クリニック 青山・表参道

内科・循環器・高血圧・不整脈

「動悸があるんですが・・・」「具体的にはどんな感じですか?」

「動悸」って言葉、みなさんも聞いたことがあるのでは無いでしょうかね。あまり日常で使われる言葉ではないですよね。もともとは、平常時には感じない心臓の脈打つ感じを感じるという意味なのですが、その動悸のパターンにもいろいろなものがあります。 このクリニックは一応、不整脈を専門にしているクリニックなので、この動悸という症状で来院される方が多いです。

日常に見られる正常な動悸


全力疾走した後に、ゴールの後ハーハーしている時に、心臓が「どんどんどんどん」と強く早く動いているのを感じたり、胸の壁を内側から打ち鳴らすみたいに感じることってありますよね。 後は急に驚いたり、びっくりした時の後にしばらく、心拍数が早くなり、心臓が動いているのをリアルに感じる。 こういう現象は人間の通常の反応でみなさん特に疑問を感じることは無いでしょうね。 この状態は動悸を感じる状態です。 こういったことがあるからと言って、医者にかかろうとは思わないですよね。  こういったことを調整しているのは、アドレナリンというホルモンです。 アドレナリンが分泌されると、心拍数が上がり、血圧が上がり、心臓が打ち出す血液の量は平常時の5倍ぐらいまで上がります。 アドレナリンの効果についてはまた別の機会に紹介するとして、こういった心臓の活動を動悸として自覚するわけです。

動悸のパターン1「脈がドクンと急に一拍大きく感じる」「時々心拍が止まることがある」


みなさんの心拍数は規則正しく一定のリズムで刻まれています。 しかし時々、そのリズムが途切れる場合があります。 一度途切れた後、また元のリズムに戻る。 こういう脈の不整を「結滞」「期外収縮」と呼びます。 平易な言葉で言うと「心臓のしゃっくり」のようなものだと考えてもらえると良いでしょう。 しゃっくりは横隔膜の痙攣です。 普通に呼吸をしていてい、呼吸のリズムと全く関係なく、突然横隔膜が収縮するので、違和感を感じるわけです。  一般的なしゃっくりは、一つの呼吸サイクルに対して1回以上起こることはあまりありませんね。 心臓についても同様で、一回の呼吸サイクルに関して1回だけ別のタイミングで収縮が起こる。 これを期外収縮と呼びます。 こういった不整脈の場合、基本的には患者さんがその不愉快な症状を我慢できるならばあまり危険な不整脈ではありません。 しかしその不整脈が心臓の他の病気の警鐘であったりすることがあります。 例えば、心臓の筋肉の病気、心筋梗塞などに付随する症状などです。 ですので、やはり一度は医者に判断してもらったほうが良いことは確かですが、大多数の方は全く問題がない場合が多いです。 患者さんによっては、脈が飛ぶという感じより、心臓の動きが急に変化するために心臓が横にある肺に強くぶち当り、胸膜という肺を取り囲んでいる膜を刺激するため、「咳は出ないんだけど、咳が出るような感じ」とおっしゃられる方もおられます。

動悸のパターン2「心拍が規則正しく早くなります」


心拍が、思い当たる理由がなく早くなります。 そしてそのリズムは規則正しい。 そういった動悸のパターンがあります。  そういった脈が数秒で収まることもあれば、1−2時間続いたり、長い人だと半年ぐらい続いたりすることもあります。 こういった動悸の中にも正常な心拍がただ早くなっているだけという方もいらっしゃいます。 むしろ外来で拝見しているとそちらの方のほうが多いでしょうかね・・。 その区別はやはり動悸の症状がある時に心電図をとってみないと最終的な診断ができません。 しかし、1) 毎分150回以上の心拍がある患者さん 2) 心拍が突然早くなり、 自分でもわかるぐらいに突然元に戻る患者さん 3) 動悸がした後に目の前がかすんだり、意識が遠のくような感じがある 場合は何らかの不整脈があることが多いでしょう。 しかし頻度が少ないとなかなか検査することが難しいです。 今最も多く用いられる心電図検査は、24時間連続で記録するホルター心電図といった検査か、あるいはご自身で購入いただく、携帯型心電計(例えばOMRON 携帯型心電計 HG-801などでしょうかね)、などになります。 いずれも週に一回しかおこらないとか、あるいは起こっても数秒で止まってしまうようなものだと、なかなか偶然にその時に心電図と当てていないと記録するのは難しいです。 あまりに症状が強かったり、あるいは、症状から不整脈を強く疑わせる点があったり、患者さんが完全に不整脈を根絶することを希望されている場合、体に埋め込むような形の心電計を入れてずっとモニターしたり(今だと車のドライブレコーダーのようなものでしょうか? 一世代まえのUSBメモリースティックのようなものを皮膚の下に埋め込みます)、あるいは入院してもらって心臓の中に電極を入れた状態で、電気刺激を行って不整脈を誘発したりすることで検査を行うことがあります(臨床電気生理学的検査)。

動悸のパターン3「心拍が全く一拍ごとがバラバラで」


心拍のリズムが一拍ずつ全く間隔が異なる状態です。 この場合、この不整脈のほとんどは心房細動という不整脈であることがわかります。 もちろん、このバラバラという表現がなかなか患者さんには理解してもらえないことがあって、難しいのですが・・・。 全部の心拍が全く規則性の無い、無秩序(ランダム)なタイミングで感じる。 というのが適切ですかね。 もちろん心電図での診断はその治療をどうやって組み立てるかという点でも重要になります。  まずは循環器内科に受診されて、心電図をとることをお勧めします。 多くの場合、心房細動は高齢者や高血圧の患者さんの病気です。 ですので、若いうちにこの不整脈が出られる方は、遺伝的な素因がある珍しいケースか、それとも心房細動を起こすような何らかの心臓の構造上の問題点があったり、ホルモンやミネラルバランスの異常が大本の原因だったりすることがあります。 心房細動自体は命に関わるような危険な不整脈では無い場合が多いですが、心房細動に関連した脳梗塞(血栓塞栓症)や、心臓の構造上の異常の発見につながったり、あるいはホルモン異常が見つかってその治療が必要だったりする場合があります。 なので幾つかの検査をさせていただくことになります。

動悸のパターン4「心拍がゆっくりで、一拍一拍が大きい」


基本的にこの動悸のパターンは不整脈でないことが多いです。
では何かというと、人は強い痛みや内臓の圧迫や引き攣れなどを起こすと、副交感神経(迷走神経)という神経が働いて、心拍数を落とすホルモン、アセチルコリンというホルモンが分泌されて心拍数が急激に低下することがあります。 例えば大きく息を吸った瞬間とか、思いっきりトイレで気張ったりした時とか、急にベットにバタンと横になった直後とか、特に体が地面に固定されている寝転がっている時が多いですが、そういった時に心拍が遅くなり、代わりに一回の心臓が送り出す血液の量が多くなるため、一拍一拍の心拍が大きく強く、そしてゆっくりになることがあります。 これは、内臓反射(迷走神経反射)によって起こる人体の正常の反応の一部ですのであまり心配されることはありません。
ただ、時々先程のパターン1、期外収縮が一つの正常な心拍に対して、規則正しく一回ずつ起こる方がおられたり(2段脈と言いますが)、心拍のリズムを作っている部分やそのリズムを心臓全体に伝える回路がうまく動作しなくなる病気があることがあります。 ただそのような場合、その異常はいつでも見られることが多いため、来院されて心電図をとってみるとわかることが多いのですが、とても珍しいですが一過性にそういった不整脈が見られ、通常は全く正常で、心電図ととってもわからない場合もあります。 そういった場合でも、実はその症状の直後に採血するとある程度のことが予想できる場合があります。

動悸といってもいろいろなパターンがあるのですね。 なので不整脈のドクターを受診すると、まずは根掘り葉堀り聞かれると思いますが、ご協力お願いいたします。 あと、その時動悸の症状がなくても、心電図をつけた瞬間に偶然その時に不整脈が出たりすることもありますので、ご面倒ですが毎回心電図とらせてください。 不整脈の無い時に心電図をとっても全く意味は無いのですが、患者さんに動悸がないことが不整脈が無いこととも限りませんので・・・。

心室細動

心拍数は、通常毎分50回から160回程度の収縮を行っています。 猛烈な運動をやったりすると180回近い収縮を伴うことがありますが、そういった運動を長時間続けることはできません。 心拍数が多くなるにつれて血液の流れも多くなり、運動で酸素がたくさん必要な体には有利です。 一心拍で打ち出すことができる血液の量はだいたい決まっているので、血液の流れは心拍数との掛け算になるからです。 しかし、毎分180回を超えると心臓に戻ってくる血液の量が追いつかず(大人の場合)、心臓が空打ちのような状態になり、さらに増えると心臓自身に酸素が行き渡らなくなり、筋肉が窒息し(虚血)心臓の動きは悪くなります。 その結果心拍数が増えても、血液の流れが増えずに頭打ちになります。 餅つきを想像してもらうと良いかもしれません。 餅つきのスピードが早くなると、餅がつき上がるのが早くなりますが、あまりにももちつきのスピードを上げてしまうと、間の手を入れることが難しくなり餅がうまくつけなくなりますね。 そういった限界の心拍のスピードがあるのです。 ただ正常のリズムを作っているペースメーカー細胞は通常毎分200回以上の心拍を打ち出すことはありませんので安心してください。
しかし心室細動あるいは多形性心室頻拍と呼ばれる不整脈は一分間に250回以上の心臓の収縮を起こします。あまりにも早過ぎる心臓の収縮のため、血圧が下がり、脳貧血を起こして意識を失うことがあります。 血圧が下がると酸素が十分行き渡らない心臓の筋肉の中で不整脈が安定化してもっともっと心拍数が増えたり、幾つもの収縮が同時に起こるようになり、不整脈から回復しにくくなります。 その状態が1〜2分以内に回復できなければ、そのまま死んでしまうことが多いです。

心室細動のきっかけは、心臓のしゃっくり(心室性期外収縮)のような収縮から始まることが多いです。 なのでそういった期外収縮が多い方は、細動を引き起こす可能性が多いと想像されています。 ならばそういった心室性期外収縮を止める薬が心室細動による突然死を予防するのではないかと期待された時期があったのですが、現実には薬はあまり良い効果が期待できませんでした。 なので、心室細動が起こりやすく、長時間それが持続しそうな患者さんには、植込み型除細動器という機械を植えこむことで、心臓突然死を予防することになります。
心室細動は長く続けば致命的な不整脈ですが、心臓の構造に異常がなければ、30秒以内に自然に回復してくることが多いです。 この場合の構造の異常とは、心臓の収縮力が低下するような心筋梗塞や心臓弁膜症であったり、心臓の筋肉の病気である肥大型心筋症や拡張型心筋症、不整脈源性右室異型性症候群・心臓サルコイドーシス・心臓アミロイドーシスなどが有名です。 こういった病気は心電図・心臓の超音波検査や採血などである程度判別することができますし、さらに心臓MRI検査や心筋シンチグラムやPET検査が必要な場合もあります。
もう少し具体的に言うと、安静時の心電図に異常がない患者さんですと、心臓の収縮力に異常があったり構造に異常があったりしなければ、基本的には命に関わるような危険な不整脈ではないと言われています。 ただし血縁者に若くして心臓で突然亡くなられた患者さんがおられたり、不整脈で失神(意識がなくなった)した経験があったりするようならば、無症状でももう少し念入りに経過を見たり、入院して検査をしたりしたほうが良い場合があります。 おわかりかもしれませんが、今まで失神したことがなくても、最初の心室細動で亡くなられる患者さんもいるはずで、そういった患者さんは事前に察知することはできないというジレンマを我々不整脈医は常に抱えていることを告白します。 ただその頻度はとてもとても少ないということと、あとは不整脈医の嗅覚に頼る部分で、なかなかそれを体系的に説明するのは難しいところでもあります。 申し訳ないです、そこは経験と勘というとても科学的ではない部分なのです。 不安があるようでしたら、不整脈の専門医にご相談ください。

不整脈 止めるべきか、止めないべきか?

登山家が山を登る理由を聞かれて「そこに山があるから登る」と答える。 登山家のジョージ・マロリー氏の言葉で、どうも誤訳だそうですが、たとえ誤訳であってもなんとなく山を登る人の普遍的な気持ちを代弁しているような気もします。
登山家は自分の命を危険にさらして登山による爽快感を得るのでしょう。 おそらく登ってみなければ解らない景色があって、それを体験することの素晴らしさを、体験していない人に言葉で説明することは不可能なのでしょう。 そこに山があるから、何の答えにもなっていないようだけれど、きっとそれ以外の表現方法がないのかもしれません。

しかし不整脈をなぜ治療するのかと聞かれて、「そこに不整脈があるから」と医者が答えるとすれば、これはちょっと誠意がない気がします。 登山家と何が違うかといえば、命を賭けているのが患者さんであって、医者ではないからなのだと思います。 病気の治療には医者と患者が同じ目的を持っている必要があります。 「そこに不整脈があるから」という理由は、患者さんにとってそう簡単に共有できる目標ないのではないかと思います。 一番共有しやすい目標は「命を長らえることができる。寿命を延長することができる」ということですね。 そしてもう一つは、「症状がつらければそれを止めましょう」というものです。 最近は「元気に長生きしましょう」というものも付け加わった気がします。

元気に長生き
これは、心房細動の際の血栓塞栓症予防の話ですが、少し焦点がずれますのでまた別の機会にお話します。

寿命延長
命に関わるような不整脈は珍しいです。 そういった危険な不整脈の多くは遺伝してゆくような不整脈であったり、心臓に構造的な異常があって収縮機能が低下している患者さんに限られます。 本当に珍しくそういったものに当てはまらない不整脈もありますが、それはまた例外中の例外です。 そのため寿命延長という目的で不整脈の治療をすることはほとんどありません。 特に後者、収縮機能が低下している患者さんにとっては、皮肉なことに不整脈の治療薬の副作用で寿命を短縮する場合があります。 なのでそういった患者さんに対しては、血管内手術(カテーテルアブレーション)や、自動植え込み型除細動器といった、どちらかというと外科的な治療に近い治療を行う傾向があります。

辛い症状を止める
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不整脈の治療は、必ず何らかの代償が必要となります。 薬を飲む手間や、手術のための入院の時間も当然ですが、それ以外に強く効果のはっきりとした抗不整脈薬の多くは、心機能の良い患者さんにとっては無視できる程度ですが、心機能の悪い患者さんにとっては寿命を短縮してしまう副作用があります。 なので「症状の程度」と「副作用の危険度」の大きさが釣り合いが取れているかどうかが重要になるのです。  つまり患者さんの症状がどの程度なのかを推し量ることが、治療するかしないかの分岐点になります。
同じ病名の不整脈でも、その症状は人によって全く異なります。 ある患者は、心電図で指摘されるまで全く気づかなかったりします。 ある患者さんは、一発でも不整脈があると、その日一日全く仕事が手につかなかったりします。 症状の強さがどうして個人差があるのかは解ってはいません。 そして症状の強さは、患者さんにしかわからないところが難しいところです。 医者はそのため、患者さんに症状について根掘り葉堀り聞きます。 患者さんはもしかしたら自分の不整脈が命に関わるものではないかと心配で、自分の不整脈の症状について、詳細に報告される方もいらっしゃいますし、我慢して全く黙っておられる患者さんもいます。 医者としてうっかりすると、この患者さんの症状についての報告時間の長さで、患者さんの困っている程度を誤認することがあります。 外来で長時間症状について説明される患者さんが、症状に困っているものだと誤解してしまうわけです。 実は医者に聞かれるから克明に話されているだけで、よくお話を聞くと実は全く困ってはいなかったことが、カテーテル手術直前に解ったりすることもあります。 これはもしかしたら、医者側が長時間患者さんの自覚症状を聞く辛さを、患者さんの辛さとすりかえているだけなのかもしれませんね。 
では副作用の危険度がどのぐらいあるのかと考えてみるとこれも実はあまりよくわかっていないのです。 心機能の保たれた患者さんで、抗不整脈薬でどのくらい心事故を増やすかという明確なデータは実はありません。 ただ自分の大学での不整脈治療の経験から言えば、きちんと、採血や心電図を定期的にとっていれば、年間1千人に1人以上ということはないのではないかなと思います(もっと少ないのではないかなと信じてますが)。 ご自身の自覚症状の強さが、その危険度を超えていると思われるなら、お薬を飲んでいただくことになります。 なので、私の外来ではいつも初めに、この不整脈を止めたいと思うかどうかを直接お聞きするようにしています。
命の危険度を比較することはあまり良いこととは思いませんが、治療の際にそれを患者さんに判断していただかなくてはならなくなるので、不謹慎だと言われることを覚悟で、極端でそして身近な例を挙げてみます。 みなさんそれほど意識しないかもしれませんが、1年間に交通事故で死亡する確率は1〜2万人に一人と言われています。 つまり外出すれば確実に死亡率が上がるわけです。 では、みなさんそれを怖がって外出しないで家でじっとしているかというと大部分の方はそうではないはずです。 それは外出しないことによって生じる不利益と、事故死する可能性の程度を無意識に天秤にかけて生活していると言えます。しかし、年間千人に一人が死亡するなら外出するでしょうか?、あるいは100人に一人ならどうでしょう。 年間100人に一人が死ぬという交通事情なら、きっと子供達の外出には大人が送り迎えすることになるでしょうね。 あるいは家庭によっては、子供を外にださないてご家庭で勉強させるというご家庭も出てくるでしょう。 つまり、どのぐらいリスクがあるのか、その数字を見て自分たちの行動を決定して行くことになります。 それと同じことが、不整脈薬を飲むことのリスクについても言えるはずです。しかし交通事故死の確率とは異なり、不整脈薬を飲むことによるリスクがどのぐらいあるのかという具体的な数値はわかっていません。 
反対に患者さんに得られる利益について突き詰めてみると、治療に踏み切るかどうかは、本当は患者さんの不整脈の症状の強さが重要なのではなく、止まることによって得られる患者さんの満足度がどのぐらいかということが大事なのだとわかります。 実はこれも計り知れないものがあります。 序文でお話ししたように、不整脈のない世界を体験しなければそれを想像することは難しく、患者さんの治療によって得られるメリットを、治療の前には小さく見積もってしまうこともあります。 また患者さんの気持ちは一つの言葉で説明できるような単純なものではないことも確かです。 『不整脈止めたいですか?』とお聞きして、YesかNoかで答えるだけでは不十分で、患者さんと結構長い時間お話しして、本当はどのぐらい不整脈を止めたいと思っているのかを想像してゆく必要があります。 
つまり治療すべきか、治療すべきでないか、これは患者さんとお会いしてみないとわからないというのが結論なのでしょう。 でも「そこに不整脈があるから」という理由だけでは決して治療すべきではないと思います。

梅雨になりましたね

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よい天気の日が多かった5月も終わり、湿度の高い梅雨っぽい天気になって来ましたね。 雨が降って、服や紙がジメッとして、あまり気分は良くないですが、植物に取ってはとても重要な時期なのでしょうね。 患者さんに頂いて、一旦落ちた花がまた咲きました。  この時期、患者さんは少し少なくなるのですが、最近不整脈の患者さんが少し多い気がします。 湿度が高かったり、不愉快な環境は、やはり不整脈を起こしやすくする様ですね。  不整脈の診断にはホルター心電図といって24時間取り付けて生活してもらう、携帯型心電計があるのですが、去年はほとんど6月は稼働していなかったのに、今年は毎日いろいろな患者さんに使っています。 昔のホルター心電図と違い、風呂に入っても大丈夫な様に、本体は防水で、電極も、シリコンの薄い膜で出来た、防水仕様になっていますので、短時間でしたら風呂でも大丈夫です。 むかし、この水に濡れても大丈夫な心電計の開発をされていた方と知り合いだったのですが、心電図記録をしていても風呂に入りたいという、日本人の風呂好きから生まれたこの機械、とても患者さんに評判が良い様です。

お酒と不整脈

最近、不整脈の患者さんからお酒を飲んでよいかと尋ねられました。おめでたい席が多いですからね。
 私自身お酒は嫌いではないので、お酒をのみたい気持ちは解ります。 元々、命に関わらない不整脈の場合、それはお酒をのんでもドキドキするだけで、それがご本人が嫌かどうかという問題になります。 つまり、お酒を取るか動悸を避けるかと言った問題になりますね。 お酒をのむ事でどんな事が起こりうるかという事を書いてみましょう。

1、『お酒は絶対だめ!』という心臓病があります。 これは、異型狭心症といって、心臓の筋肉を栄養している血管が痙攣して血が心臓の筋肉に行き渡らなくなる病気です。 この病気は年齢とは関係なく起こります。 喫煙やストレスでも起こりますが、アルコールを飲むと必ず起こるという患者さんがいます。 『アルコール誘発性冠攣縮狭心症』と病名は付くでしょうね。  たいていの場合、アルコール飲酒後よりアルコールが抜けてくる朝方に多い様に思います。 その原因は私はあまり良く理解出来ていませんが、アルコールに関連した病態の多くは、アルコールが代謝されて血液中からアルコールが無くなるときに多い気がします。 たとえは悪いですが、二日酔いとかそうですよね。 また後で述べる心房細動等も抜け際に悪くなる様なケースが多いです。 この異型狭心症のケースの場合、特にアルコールで誘発される場合、いくら薬で押さえていても、アルコールを飲む事は危険です。  異型狭心症時に、房室ブロックという様な脈が遅くなる不整脈が起こったり、心室細動という心臓の痙攣が起こって心臓が止まってしまう事が希にあります。そのような患者さんにはアルコールは禁止になります。

2、心房細動という不整脈が起こりやすくなる事があります。 お酒をのんでいるうちは大丈夫でも、お酒が抜けるときに、心房細動という不整脈が起こりやすくなる方が結構いらっしゃいます。 アルコールが分解されて、アルデヒドという分子に変換されてゆくのですが、このアルデヒドはいわゆる二日酔いの原因とも言われていますね。 アルデヒド分子は、心臓のイオンチャネルにも作用があると言われていて、そのために心房細動が起こりやすくなる場合があると言います。 患者さんの中にも、お酒を飲んだ翌日に必ず発作があるのですという方をしばしばお見かけします。 心房細動自体は命に関わる不整脈ではありませんが、心房細動によって生じる脳梗塞や、心房細動が直ってご自身の脈が始まるまでの間が5秒から10秒近く心拍が停止する様な方もおられます。 そのようなリスクのある方は、やはりお飲みにならない方が良いでしょうね。

3、私の患者さんで、薬がよく効いて全く不整脈が出ない患者さんが、不整脈が出ていて、気がついたらビール瓶が5L近く一人で飲んでいたという方がおられました。 ビールやアルコールには利尿作用がありますので、飲んだ余分な水分は尿に出て行ってしまったり、アルコール腸粘膜を刺激して下痢傾向になりますので、どんどん便として排泄されていきます。 そういう場合、お酒の中の水分で体液を交換しているのと同じ様な現象が起こるわけです。 薬剤が体外へ尿と一緒に出てしまった。 そのため薬剤の血液中の濃度が一時的に下がって発作が起こったのだと思います。  その不整脈が命に関わる不整脈であった場合、大変問題だったと思います。 ですので、不整脈で内服をされておられる方で、我を忘れる様な酒癖の悪い方では、お酒は厳禁と思います。 そういう方に限ってなかなかやめてくださらないのですが・・・。

4、お酒の飲み過ぎで肝機能が低下してくる場合があります。 不整脈の薬や血液をさらさらにするワーファリン等の薬剤は肝臓で代謝されるため、肝機能に大きな影響を及ぼすお酒はあまり好ましくありません。 特に長期間の飲酒の摂取歴のため肝機能が荒廃している様な方は禁酒していただく必要があります。 あるいは、そういった不整脈の治療自体を断念する必要がある場合があります。

5、お酒は血管を開きます。 そのため一時的に血圧が低下し、その血圧を維持しようとして心拍数が上がります。 顔が赤くなっているのは血管が開いているためと思うと理解しやすいでしょうか。 そのため、洞性頻脈で元々心悸亢進気味(ドキドキしやすいかた)の方は飲むと症状が強くなりやすいと思います。 また心臓のポンプ機能が悪くて、利尿剤等を飲んで心臓への負担を減らしている様な方ですと、アルコール摂取で血圧の変動が大きくなったりしがちです。 あまりお飲みにならない方が宜しいかと思います。

お酒は、人と人との付き合いを円滑にしますし、お酒を楽しみに日頃仕事をされておられる方もおられます。 決して悪い物ではありませんが、特にある特定のご病気をお持ちの方や、過剰な飲酒は不整脈以外でも大きな傷跡を残します。 飲酒は適量が大事です。 

心臓のリズム

怖い話が嫌いな方はあまり読まない方が良いでしょう。
皆さんは、長い階段を降りるときに途中で、「え!? 次どっちの足出すんだっけ」って不安になる事ありませんか? 交互に足を出すという単純な連続作業は、小脳という脳を使っています。 小脳はある程度決まったパターンの複雑な一塊の運動シリーズをコントロールする脳で、大脳で意識せずに、全身の筋肉を動かしてゆきます。 なので、「転倒するのではないか」といった、恐怖心が出現して大脳で意識して足を動かそうとすると、逆に足がもつれてうまく歩けなくなるという様な事がおこります。 私は運動音痴なので、特に意識してしまって、もつれてしまう方です。 なのでスポーツをやっている方の運動を見ていると、人間が自動で行っている多くの動作は本当に良く出来ているなーと感心してしまいます。

人間の心臓の心拍は、やはりある一握りの細胞の単調なリズム作製によって動いています。 場所は、右心房の上の方、上大静脈とくっついている部分周囲に、洞結節という特殊な心臓の筋肉の細胞の集まりがあります。 このリズムを作っている細胞の事をペースメーカーと言います。 このペースメーカーはほんの一握りであるために、例えば病気や、年齢とともに変成して少なくなってしまう事もあります。 リズムは基本的に細胞膜の電位の揺らぎが増幅して出来た物なので、そうですねちょうど、波の様な物でしょうか? 海にいけば普通に波はありますが、その本質は液面の振動です。 心拍もそういった振動の一種なのです。 その振動がやんでしまえば、心臓は止まってしまいます。 突き詰めて考えてみればそんな不確かな物で人間は生きているわけです。 ちょっと怖くありませんか? でも安心してくださいそう簡単に心拍は止まりません。 ペースメーカーは何百というこういった特殊な細胞が寄り集まってできているため、一つの細胞が振動を止めても、別の細胞が振動しているとそれでリズムが維持されます。 また、洞結節以外にも、何カ所か弱いながらもペースメーカーとなりうる細胞があり、それらが常にバックアップをしてくれているのです。
ただ、ペースメーカーが衰えてくると、心拍数が徐々に低下して行き、患者さんとしては、足が浮腫んだり、息切れしたり、疲れやすくなってきたりと言った症状が出始めます。 心電図を取ると、診断が出来ます。こういった場合、薬の内服で効果がある場合もありますが、ほとんどの場合、機械型のペースメーカーを植え込む事になります。
最近では携帯電話の小型化で切磋琢磨したおかげか、レアアースのおかげか知りませんが、電池の性能が良くなり、だいぶ小型化され、一度植え込めば電池も長期間持続します。 以前よりは目立たなくなっていますが、小柄のやせた方ですと、やはり少し目立つと思います。 入れる場所は通常、左肩の部分、鎖骨の下当たりに入れます。 小型化だけでなく、不整脈を監視したり、心臓の機能を監視したり、運動したりすると自動的に感知して心拍数を上げてくれたりする様な機能が付いている物もあります。
三好クリニックではペースメーカーの挿入は行いませんが、ペースメーカー挿入後の経過観察や、薬物治療等を行います。 ペースメーカー挿入が必要な患者様は、ご希望があれば慶應大学や提携している大学病院にご紹介致します。

動悸がするんですけど・・・。

動悸ってどういう症状でしょうか? 動悸とは普通は意識しない心拍を感じるという意味があります。 ドキドキする。 ばくばくする。 どっくんどっくんする。 ドッキッとする。いろいろな表現がありますね。 
動悸という症状は、心臓に異常な電気回路がある不整脈と、そうでは無い普通の心拍数の変化をそのように感じるだけというでも起こります。 動悸がすなわち不整脈というわけではないのです。

動悸を大まかに2種類に分けると、心拍が早く打つ動悸と、遅くゆっくり大きく打つ動悸に分かれます。
またさらにリズムが整っているかどうかで、3種類に別れます。 整っている動悸と、整っている脈の中に時々変なリズムが入るような(スキップ)動悸、そして脈拍のリズムが全くバラバラになってしまっている動悸があります。

心拍数が遅い動悸


一般的に遅くゆっくり大きく打つ動悸は、特に病的なものでない事が多いです。 急に横になった直後や、息ごらえをした直後に、など状況は様々ですが、心臓に急激に静脈血液が戻って来た際に起こります。 一回一回の脈が大きく、間隔が長く打つ、その症状を動悸として感じる場合があります。 例えば立っている状態から急に横になると、今まで低い位置にあった足が心臓と同じ高さになります。 そうすると足にたまっていた静脈の血液が、心臓に急激にかえってきます。 急に心臓にかえってきた静脈血液を先に吐き出すため、心臓は大きく拡大して、一回一回の収縮を力強く打つようになります。 
また横になって安静にしていると、背中が固定されているので心臓の拍動を大きく感じやすいこともあります。 実はこれは心臓の普通な反応です。 特に心配する事はありません。 血液が全身に行き渡る10秒から30秒ぐらいの間、我慢すれば自然に良くなる訳です。
むしろ心拍が遅くなる病気の場合、動悸として感じるよりも、「疲れやすい」、「息がすぐ上がってしまう」、「足が浮腫む」といった症状が出る事が多いです。

心拍数が早い動悸


心拍が早くなる動悸の中では、その出方や終わり方で、不整脈の種類が大体予想が付きます。 少しづつ脈拍が早くなって、寝たり、しばらくして忘れていると落ち着いているというような経過をたどる動悸は、不整脈でない場合が多いです。
心拍がずーっと早い状態が続いているような場合は(寝ているときも含めて)、不整脈というよりは、その他の病気、例えば、貧血や甲状腺という首にある臓器から分泌されるホルモンの異常や、感染症や発熱、または心臓のポンプ機能の低下などによって心拍数があがった状態を疑います。 これらは、採血やレントゲン、心臓の超音波検査を行ったりする事で診断をつける事ができます。
突然心拍数が早くなり、比較的リズムが整っていてドキドキドキドキと連続して、突然止まる。 こういう動悸は、心臓に何か電気的な回路の異常があっておこる場合が多いです。 心房粗動・房室回帰性頻拍・WPW症候群・房室結節回帰性頻拍・心室頻拍(すいません詳しくはまた別の機会に説明します) 病名で言えばこのような不整脈でしょうか? 不整脈のあるときに心電図を取ってみなくては診断が付かない場合も多いですが、症状が疑わしくて、患者さんの症状も強く根治を希望されている場合は、診断が外来で付かなくても入院していただいて、血管を介して心臓の中に電極カテーテルを挿入して、不整脈を誘発して診断と治療(カテーテルアブレーション)を行う事になります。 外来で行う検査としては、ホルター24時間心電図・心電図検査・携帯型心電計といった検査や、誘発のためトレッドミル運動負荷心電図検査と行った検査を行う場合もあります。 また心拍が早くなる不整脈では、命に関わる不整脈も混じっています。 通常心臓のポンプ機能が低下している場合、早い不整脈が生じると血圧が低下して危険に陥る事が知られており、胸部レントゲン写真・採血・心臓超音波検査等を行って、心臓の動きに異常がないことを確認する事もあります。

整っている心拍で時々変なリズムが入る。 スキップするような動悸


この様な動悸は、期外収縮という不整脈がある事が多いです。 その不整脈は心室でおこる事もありますし、心房でおこる事もあります。心室でおこれば心室性期外収縮、心房でおこれば心房性期外収縮という名前になります。 これもやはり動悸のおこっているときに心電図を取ってみる事で診断が付きます。 このような形の不整脈は心臓のポンプ機能に異常があったり、安静時の心電図に異常があったりしなければ、一般的には命に関わる不整脈では無い事が多いです。 しかし、この不整脈が病気の発見のきっかけになったりする事もありますので、やはり循環器の不整脈を専門としている医者に受診される事をお勧めします。

心拍のリズムが全くバラバラになってしまう動悸


これの原因はほとんどが心房細動です。 心房細動は別のページでも記載していますが、それ自体が命に関わる不整脈ではありません。 治療の原則は、心房細動によるつらい症状があるかどうか? そして、脳梗塞等の血栓塞栓を起こしやすい様なリスクを抱えた患者さんであるかどうかという事になります。 また心房細動が、心臓弁膜症の初発症状であったりする場合もあります。 あるいは甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症といった頚部の喉の部分にある腺組織から分泌されるホルモンの異常で、起こったりする事があります。 これらのチェックのため定期的に採血を行ったり、心電図を行ったり、心臓の超音波検査を行ったりします。

自律神経と不整脈-5

自律神経に作用する薬剤


随分難しい話しになってしまいました。 しかし、自律神経という神経には、多くの謎があり解っていない事も多いのも事実なのです。 しかし、この自律神経の活動を調整する事で、不整脈をある程度落ち着かせたりする事は可能になります。 自律神経に作用する薬はいくつかの種類に分類出来ます。

安定剤


自律神経に大きな影響を及ぼす、意識出来る脳活動、つまり大脳の活動を押さえる事で、自律神経の反応を調整する事が出来ます。一般的に(精神)安定剤と言われる薬剤です。 代表的なものとして、GABA(ギャバ)というアミノ酸を伝達物質とするイオンチャネルを活性化させるもが一般的に使われます。 GABAは、安静感やリラックスをする目的で、GABAを多く含んだチョコレート等が売られていた事がありました。 神経細胞はGABAが近くにある、あるいはGABAの作用を強める様な薬剤を投与すると、全体的に神経活動が落ち着く傾向にあります。 この薬剤は、量が多いと精神活動が全般に押さえられ眠くなります。 また、手足の筋肉に力が入りにくくなり、ふらふらしたりよろけたりします。 このタイプの薬は不眠症の薬としても投与される事が多いです。 一方で、量が少ないと、ストレスや不安等で異常に頭がぐるぐる回っている様なときに、その不安の部分を和らげる作用(嫌な事を忘れる)があると言われていて、肩こりが緩和されたり、動悸や、胃の不快感等が緩和されたりする事があります。 しかし、薬に依存してしまうようなタイプの患者さんに取っては少々使用方法が難しい薬です。 例えば、患者さんの中には、元々の症状がストレスから来ている患者さんが、「不整脈の症状を押させるために、安定剤を飲む。 飲んだ分楽になった気がして、さらに体にストレスをかけてしまう」と言った思考をされる方に取っては結構危険な薬でもあります。 そういう患者さんは勝手にどんどん量を増やし、飲んだ分どんどん病気の原因となっているストレスを増やしてゆくというような事をされる事が有ります。 これは結構危険なのでやめてください。 薬はあくまでも、体を直すためのきっかけで、やはり病気の原因を取り除く事が重要なのです。ですので、患者さんとはいろいろ相談しながら減量や増量を行い、最も患者さんに適切な量を決めます。 

β(べーた)遮断薬


交感神経の興奮が心臓に伝わらない様にブロックする薬です。 交感神経の神経伝達物質であるアドレナリンをブロックする薬です。 この薬は不整脈以外にも、血圧の薬や、狭心症の患者さんは慢性心不全の患者さんに使用する薬でもあります。 ただ、あまり多いと、ふらついたり、悪夢を見たり、気分が落ち込んだりする事が有るので注意が必要です。 交感神経が原因となっている不整脈の治療には非常に重要な役割を果たします。

フォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬


あまり、聞いた事がないかもしれませんが、カフェイン・バイアグラと言った分類の薬です。 これらは交感神経の作用を心臓の筋肉側で増強する薬剤です。 交感神経を興奮させたのと同じような作用が有ります。 徐脈性の不整脈の患者に用いる事が有ります(カフェインやバイアグラでは無く他の名前の薬を使います)。

副交感神経遮断薬


副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンの効果を弱める薬剤が有ります。 有名な薬剤としては、元々心臓のイオンチャネルに働く抗不整脈薬の一部にこのアセチルコリンの効果を弱める副作用がある薬剤が有り、副交感神経を抑制する事を意識しながら、それら薬剤を使用する事が有ります。 リスモダン・シベノール等といった薬剤になります。 これらの薬は同時に副交感神経の興奮が高まると困る病気を持った患者さんには使いにくいです。 例えば緑内障(閉鎖隅角)、中等症以上の前立腺肥大、唾液の分泌の悪い方等にはあまり適していません。

不整脈の治療はこういった薬剤を、患者さんの症状に合わせて調合してゆく訳ですが、そのさじ加減や副作用の判断が我々不整脈を専門とする医者の腕の見せ所という事になりますが・・・。 実際には自律神経に関わる不整脈をコントロールするのは結構大変です。 自律神経は季節や体調によって大きく変動するので、薬の調整に結構難渋するのです。 申し訳ないですが、気長におつきあい頂ければと思います。

自律神経と不整脈-4

副交感神経と不整脈


自律神経の中で、休んだり食事をしたり、眠りにつくときに活発になる副交感神経は、内蔵全般に分布していて、その先端から「アセチルコリン」というホルモン(神経伝達物質)が分泌されています。 この副交感神経は心臓に分布しています。 副交感神経は、別名・迷走神経(めいそうしんけい)とも呼ばれています。 これはこの神経が臓器に分布する際に、少し不可解な走行をしている事や、内蔵の周囲をぐるぐる行く先がわからないような複雑な走行をする部分があるからそのような名前が付けられています。 あたかも迷走している様な神経というその配列や走行のパターンから呼ばれているわけです。副交感神経の心臓に対する効果は、大まかに言うと、心拍数を下げ、心臓の収縮力を低下させる方向に働きます。

迷走神経反射


内蔵などが強く引っ張られたり、血管周囲に強い疼痛があったりすると興奮します。 また顔面や眼球に多く分布していて、顔面が冷たい空気にさらされたり、冷水等で強力に冷やしたり、眼球をマッサージしたしした際に(眼球のマッサージは危険なのでやめてくださいね)、活発に興奮すると言われています。また息こらえや、咳等でも迷走神経反射が起こる事があります(ある種の不整脈を止めるのに使われます)。 その反応が強すぎると、心拍が減少したり、血圧が低下して脳貧血を起こしたりする事があります。 例えば胃カメラや大腸鏡、内蔵の手術の際や、採血時にとても強い痛みを感じた後など、副交感神経の過剰な反応・興奮がおこって、それによって気分が悪くなる。血圧が下がって脳貧血になるという事があります。 これを医者は迷走神経反射と呼びます。 

心臓と副交感神経


副交感神経から分泌されるアセチルコリンは、心臓の筋肉、特に、リズムをコントロールしている心臓の筋肉や、心房筋に作用します。 アセチルコリンは、自己の心拍が停止したり極端に遅くしてしまう事で、「洞停止」、「洞性徐脈」、という不整脈を引き起こしたり。 心房と心室の間の電気的な連絡が弱くなり、「房室ブロック」という病気になる事があります。 また、心房の筋肉の不応期と言って、興奮出来ない時間を極端に短くして、「心房細動」や「心房性不整脈」を起こしやすくしたりします。またそれ以外にも、アセチルコリンは、右心室流出路や弁輪部から出現する「心室性期外収縮」を増やしたり、「ブルガダ症候群」という疾患の心室性不整脈を起こしやすくするのでは無いかと言われています。
副交感神経は、交感神経の過剰な興奮を抑えるように働き、急激な血圧の上昇を抑えたり、心拍の上昇を抑えたりするのに重要です。 しかし過剰な興奮は、急激な血圧の低下を来して脳貧血を起こしたり、ショック状態になったりする場合もあります。 なのでやはり適度な興奮というのが必要となります。 交感神経と副交感神経は、互いに互いを抑制し合い、バランスを取るように動いていますので、どちらかが異常に過剰に反応すると、不整脈以外にも、いろいろな内蔵の症状を引き起こす事もあり、そうならないためにも、規則正しい生活やストレスとうまくつきあう方法を身につけておく必要があると思います。

続き

自律神経と不整脈-3

交感神経と不整脈


自律神経の中で、運動したり興奮したりするときに活発となる交感神経は、心臓や血管の表面、気管支等に分布していて、その神経の先端から、ノルアドレナリンというホルモンを分泌します。 ノルアドレナリンとアドレナリンという二つのホルモンは、カテコラミンという種類のホルモンに分類されます。カテコラミンは、大まかに言えば心拍数を増加させて、心臓の収縮力を増加させ血圧を上げます。 一般的にはアドレナリンという名前の方が知られているので、ここではアドレナリンと呼びます。 神経から分泌されるアドレナリンは一種類ですが、臓器によってレセプターのタイプが異なります。 例えば心臓に分布しているβ1というレセプターと、血管や気管支に分布しているβ2というレセプターはちょっと形が違います。 (ちょっと余談になりますが、血小板にもα2アドレナリン受容体があり、興奮してアドレナリンが血液中に増えると、血小板の機能を介して血液は固まりやすくなります。 そのため血管の病気や血栓の病気をお持ちの方は、交感神経が過剰に活動する精神的なストレスや興奮はあまり好ましくありません。) その形の違いを利用して、いろいろな薬剤が作られています。 また
カフェインはこういった交感神経の興奮が細胞に伝わる際に、細胞内でその効果を増強するために、同じ交感神経の興奮の程度でもより強い反応を細胞が示す事になります。 
アドレナリンの心筋細胞への作用は、心臓の筋肉の中で電気信号が伝わる速度が早くしたり、興奮性を高めたり事で不整脈を起こしやすくします。 例えば、心室性期外収縮の数を増やしたり、心房性期外収縮の数や連発を増やしたり、発作性心房細動を引き起こしたり、房室結節回帰性頻脈や房室回帰性頻脈を誘発したり、心房粗動を引き起こしやすくしたり、心筋梗塞急性期の心室細動等の致命的な不整脈を起こしやすくしたり、QT延長症候群の患者さんのQT時間を延長して心室細動を助長したりします。 また不整脈ではありませんが、前述した洞性頻脈を起こし、患者さんがそれを動悸として自覚する事もあります。 
ならばアドレナリンは全ての元凶、完全に止めてしまえば不整脈も無くなってよいのではないかと考えがちですが、適度なアドレナリンは日常生活で体を動かしたり、集中したりするときに、心拍を上昇させたり血圧を上げたりするのに利用されていて、それを完全に薬剤で止めてしまうと、体が本当に血圧を必要なときに十分な血液を供給出来ないため、ふわっとするとか、体が重く感じたり、人によっては悪夢を見るという方もおられます。 なのである程度の交感神経の興奮は必要なわけです。 

続く

自律神経と不整脈-2

交感神経の異常な高ぶり、パニック症



自律神経の働きは、運動をしたり、興奮をしたりすると活発になる交感神経と、 睡眠や休み、リラックスしているとき、食後や栄養補給時・排尿・排泄時に活発になる副交感神経の2つの神経がバランスを取って興奮したり休んだりして、外界の環境にスムーズに反応するように体を準備しています。 
体は休息しているのはずなのに、交感神経が高ぶったり、 体は活動しているはずなのに、副交感神経が高ぶったりすると、大脳は違和感を感じます。 そしてその感覚は不安を引き起こし、その不安に対応しようとして交感神経がさらに高ぶるという現象がおこる事があります。 不安と交感神経の高ぶりがお互いがお互いを刺激し合い、結果として両者が異常に活発になる事があります。
そうなってしまうと、不適切な頻脈と気分不快、血圧の変動を引き起こして、不安のため救急車の出動を要請したりする場合もあります。 これをパニック症候群と言います。 パニックが生じると、息苦しく感じる場合も多く、酸素を必要とするような気がして呼吸が速くなりすぎ、本来血液中にある程度は存在しなくてはならない炭酸ガスが低下し過ぎ、血液がアルカリ性に傾くことで、全身の筋肉が勝手に収縮・痙攣したりする事もあります。 こういう状況を過呼吸症候群と呼びます。 これも酸素は十分足りているので、呼吸の回数をあまり多くする必要は無いという事をしっかり自覚してコントロールすれば症状はすぐに良くなります。 またパニック発作全般に関してもその状況が、命に別状が無い事をしっかりと自覚し必要以上に不安がらない事で、ある程度症状を抑える事もできます。 しかし、現実の患者さんは一度パニック症を経験してしまうと、またパニック症を起こすかもという不安から、外出もできなくなってしまう事もあります。 そのような場合、時間だけが解決してくれる事も多く、精神安定剤を内服して、不安をできるだけ取り除き、症状が出ないという安心感のある時間が1ヶ月、2ヶ月と続くうちに少しづつ、ゆっくり快復し。安定剤をやめていっても、パニック症を起こさなくなる事が多いです。
また通常は休んでいる時はあまり高ぶる事が無い交感神経ですが、睡眠不足や、カフェインの過剰摂取、あるいは不安や、仕事や人間関係で追いつめられたりした際には、安静時にも出現したりします。 好きな異性が近くにいるとドキドキするのもこの現象です。 この現象を医学的には洞性頻脈と呼びます。 これは不整脈とは呼ばない事が多いです。 なぜなら洞性頻脈は正常な心臓の機能の一面だからです。 運動や興奮をすると心拍が上昇する事は当然なので、皆さんあまり違和感を感じませんが、これも一種の洞性頻脈と言えます。 また安静にしていても、交感神経の過剰は反応や、運動不足時、発熱等でも洞性頻脈はおこります。 これが辛いと思われる様でしたらやはり、治療してゆく意味はあります。また洞性頻脈も何か他の内蔵の病気の前兆であったりする事もあります。 それらをきちんと判別するために、採血、心電図や、時には24時間心電図を行って、睡眠時・安静時の心拍を測定する事で、内蔵の病気による洞性頻脈であるか?そうでないのかをある程度知る事が出来ます。

続く

自律神経と不整脈-1

自律神経という神経をご存知でしょうか? 一般の人はあまり知りませんよね。 私も患者さんに時々解説しながら、説明が十分でないだろうなーと思いつつやっています。 なので、ここで少し解説をしてみます。

人間の脳の活動、意識したり痛みを感じたり、体を動かしたりする。 自分の意志で動かす、あるいは感じる部分は、大脳でコントロールされています。 大脳とは脳の中で最も大きな部分を占めている領域です。 しかし意識的に動かす事が出来ない部分、特に内蔵と言った部分は、それよりももっと多くの情報を集約してそれに対して細かな調整が必要になります。 動物は、そんなすべての体の情報を一度にコントロールする事が出来ません。 なので、ほとんどの内蔵の動きは、意識に上る前に自律的に解決されます。 例えば、呼吸等はどうでしょうか? 皆さん、普通に生活していて、息を吸って、そのあと吐くという動作を意識せずに行っています。 こういった無意識の動作、調整を行っている部分が自律神経という部分になります。 自律神経は、動物の進化の過程で最も早く出来た神経系統と考えられています。 この神経系統の細かな調整の話は、また別の機会にご紹介します。 今回はそれがどう不整脈に関わるかという事に焦点をしぼってみましょう。

自律神経には大きく分けて、(1)体を休める神経、つまり副交感神経という神経系と、(2)攻撃したり戦ったりする際に高まる神経、交感神経の二つから出来ています。 それぞれがせめぎ合い、体の運動状態をコントロールしている訳です。 

この二つの神経は心臓にもたくさん分布していて、心拍数を上げたり下げたり、心臓の収縮力を強くしたり弱くしたりします。 例えば、寝ていれば皆さん心拍数は下がりますし、起きて運動したり、興奮するような事がおこったりするとどきどきして心拍数が上がります。 
そのほかに自律神経は心臓の電気信号を作っているイオンチャネルに働いて、不整脈を引き起こしたりする事が知られています。 心室性期外収縮・心房性期外収縮・心房細動・心室細動・QT延長症候群・ブルガダ症候群・房室ブロック・洞不全症候群といった不整脈がこの自律神経の働きで悪化したりします。
この「自律神経」は、規則正しい生活をしていると整っていますが、不規則な生活を行ったり、興奮、カフェインの過剰摂取、睡眠不足、発熱といった事で大きく変動し、異常となる事が有ります。 また気圧の急激な変動や気温の乱高下、湿度の大きな変化といった外界の環境の変化にたいしても敏感に反応し、異常が生じる場合が有ります。 そのため不整脈の発生頻度はこういった外界の変化の影響を受けやすい訳です。

自律神経

続きはまた後日