日本不整脈心電学会に参加してきました。

日本不整脈心電学会に参加してきました。 今回は北海道・札幌でした。 ちなみに私ごとですが、北海道に行くのは初めてでした。 診療の関係もあって、今回は最終日の日曜日の半日だけの参加でした。
北海道日帰りなので、思いっきり早い時間帯の飛行機をとったのですが、気がついたら、自宅から始発に乗っても到着しないことに気づきました・・・(汗)。
札幌コンベンションセンター
新千歳空港から札幌まで、1時間近く電車でかかるのには少々びっくりしましたが、グーグル・マップ先生のおかげでなんとか無事にコンベンションセンターに到着、はじめの方少し聴き逃しましたが、シンポジウムに参加してきました。
一つ目のセッションは、私が大学をやめてから市場に出てきた「心房細動のバルーンカテーテルでのアブレーション」でした。 性能や安全性がどうなのか気になっていたのですが、どうやら今まで慶應で見てきた心房細動の従来通りの高周波カテーテルでのアブレーションと時間も安全性もほとんど変わらない様でした。 すべての心房細動のアブレーションがこのバルーンに置き換わるのかなと思っていましたが、それはちょっと違いそうですね。 ただ、現場で自分の目で見たわけではないのでちょっと判断は迷います。 
もう一つのシンポジウムは「無症状の発作性心房細動の患者さんに脳梗塞の治療をすべきかどうか、もう少し心拍数の遅い心房頻拍等の患者はどうするのか」といった話題でした。 無症状なのに発作性の心房細動を診断するのは、ちょっと矛盾しているのですが、(症状が無患者さんに心電図を取らないと、心房細動が見つかりませんので)、とある理由で、植込み型のペースメーカーや心電図記録装置を入れておられる患者さんの発作性心房細動と脳梗塞の発生の関係を研究された先生がいらして、その方のお話を聞いてきました。  本当はこの無症状の心房細動や心房頻拍を見つけるのが難しいのです。 例えば年に3回ほど心房頻拍が6分以上続くけれども、自覚症状が無い患者さんがいたとして、その方が偶然心電図をとって、心房細動が見つかるかというと、そういう確率は約0.001%程度です。 それでもその心房細動が原因で、脳梗塞になる可能性があるということだそうです。 特に心房細動患者さんの脳梗塞になりやすさを判定する、CHADSスコアーの点数が高い患者さんは、心房細動がなくても、そういったことがもしもあれば、脳梗塞を心配したほうが良いということらしいです。 こうなってくると、心房細動があろうがなかろうが、ある程度高齢の患者さんで、CHADSsスコアーが高ければ全員、抗凝固療法をしておいたほうが良いのでは無いかという考え方に到達してしまいそうですね・・。 抗凝固療法も100%安全な治療法ではありませんので、 それはやり過ぎだと思いますが・・。 でももう少し効率よくそういった患者さんを検出する方法が見つかれば、そういう時代になるかもしれませんね。 例えば、アップルウオッチ等の心拍モニター等をつかって、 毎日心拍のモニターをしているとそいういったことが簡単に検出できるようになるかもしれませんし。 脈の間隔は結構呼吸や活動等で変化しますので、どれを異常心拍として検出するのかは結構難しいアルゴリズムを作らないと行けないでしょうが・・。 おっと、患者さんの読むホームページにちょっと難しすぎること書いちゃいましたね・・。 学問の話題はこの辺で。 

学会場で、懐かしい顔に出会った後(皆さん頑張ってますねー。)、学会場を後にしてまた新千歳空港に戻りました。 札幌の街は、雪国のせいか道幅が広いですね・・。 東京に慣れてしまうと、少しさびしい感じがしますが、雪をうまくやり過ごすにはああする以外無いのでしょうね・・。 以前私は、北アメリカのカナダに近い北の州に留学していたのですが、その町並みを思い出しました。 一度冬に行ってみたい気もしますが、雪で飛行機が飛ばなかったりして診療に穴を開けるわけに行きませんので、引退してからですかね。  空港までの路線は電車は函館まで続いているようで、函館を地図で見ると、結構広いですね・・。 札幌と函館だけで広いと言っているぐらいですから、北海道全体で見ると本当に大きな島なんですね・・。 

ただ日帰りで行って帰ってくるのはちょっと疲れましたね。 もうちょっと近いとこがいいですね。 

納豆とワーファリン

納豆は体に良いと言われています。良質のタンパク質が含まれていることもありますが、その他に「ナットウキナーゼ」という血液の固まりを溶かす成分が含まれています。 つまり血栓予防(一般には「血液さらさら」とか、「ドロドロ血予防」とか言う表現がおおいですね)的に働きます。 口から食べた酵素が、分解されずに吸収されて血液をさらさらに出来るかどうかについては、議論が分かれますが、動物実験などではそのような効果があるようです(ヒトで有効性は証明されていません)。

一方で納豆は、ビタミンKというビタミンを大量に含んでいます。 ビタミンKは皮膚や血管が傷ついたときに、その傷を素早く塞ぐために血液の中にあらかじめ流れている(血)糊タンパク質を作るのに必要なビタミンです。 簡単に言えば血を固まりやすくしていることになります。 ですのでビタミンKがなくなると、軽く皮膚を圧迫しただけで、大きな内出血を起こしたり、胃や腸・そして脳などで出血を起こして、致命的になることもあります。 その一方で、血が固まりやすい患者さんにはあまり良くない蛋白でもあります。

心房細動などで血栓ができやすい人。 特に「心臓弁膜症があったり機械弁を植えている人」「心臓のポンプ機能が落ちている人」「糖尿病のある方」「高血圧がある方」「脳梗塞などの既往のある方」「75歳以上のご高齢の方」では、このビタミンKの働きを悪くする薬、ワーファリンを内服してもらっています。 後は人工弁等が入っている方もそうです。

心房細動の患者さんと話していて、「どうしても納豆が食べたい」、「納豆食べられないなら死んだ方がよい」とおっしゃる方が時々おられます。 最近、処方できる様になったプラザキサという抗血栓薬は、ビタミンKによって作られた血糊の蛋白を直接ブロックするので、ビタミンKを摂取しても問題有りません。 しかし、この薬剤も弱点があります。「人工弁が入っておられる方」や、「心臓弁膜症のある方」、そして何よりも問題になるのは「腎機能が落ちてられる方」には、未だにワーファリンが必要になります。 少し脱線しましたが、プラザキサの無い時代には、こういった方で、特に脳梗塞のリスクの比較的少ないと思われる方には、「仕方ないので、じゃあ納豆毎日食べてくださいね」といって経過を見ていた患者さんが何名かおられました。 しかし、10年程外来をしてみて思う事は、無理してでもワーファリンを飲んでいる方の方が、肌つやがよく、元気で10年過ごされている方が多いのに対して、ワーファリンを使わずに、納豆を食べる様にお願いしている患者さんでは、10年で少しずつ、弱ってこられて、ぼけてこられたりしておられる方が多いような気がします。 これはあくまでも印象でしか有りませんが、しっかりとした抗凝固療法(ワーファリン)が、生命予後を長くする事は臨床研究でも明らかになっており、やはり必要なのだなと最近実感しています。 

じゃあワーファリンとはどういう物か、この続きは
次のブログで説明します。

心房細動という病気-1

先日、外来患者さんと話していて、心房細動の説明になった際に、「心房細動ってなぜ起こるんですか」と言う事を聞かれて、一瞬困ってしまいました。 心房細動が起こる理由、そのメカニズムについては、2000年少し前ぐらいから研究が精力的に研究が行われ始めたと言ってよいでしょう。 しかし患者さんは普通、そのメカニズムについて聞いている場合と、動物が生きていく上でなぜそのような不整脈が必要なのかという点など、『なぜ』という意味にはいろいろな意味があるわけです。 少し考えて、「一種の老化現象なのだ」と説明をして何となくなっとくしてもらいましたが・・・。 本当にその患者さんが聞きたかった事なのかなと、そのあともしばらく考えていました。 何だか患者さんの質問を煙に巻いてしまった様で、申し訳ない事をしたんじゃないかって少し反省しました。
その時一瞬、考えたのは、自分の中に有る心房細動の知識を思い返していたのでした。 結構長大な話しだったので、何から話せば良いんだろうか? 本当にこんな事を聞いているのだろうかって思ったのでした。

実は、心房細動ほどこの15年間ほどの間に治療法が大きく変化した病気は無いでしょう。 昔から心房細動をお持ちの患者様から見ると、医者の言う事が随分かわってきているので、変だなと思われているのではないでしょうか? 医者の中でも、この変化にあまり付いてこられない方が多いのではないでしょうか?
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三好クリニック(内科)
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