睡眠について1

眠りについて



内科の医者をしていて、患者さんの「眠れない」という相談を受ける機会は多いです。  不眠治療は、精神神経科の先生の専門分野になりますので、私のような内科医がとやかく言う事ではないのですが、結構相談を受ける機会があります。  それだけ多くの患者さんが、眠れないという事を苦痛に感じておられるのでしょう。
悩まれている患者さんを前にして、失礼な話しなのですが、私自身は医者になってから、寝られないという経験はほとんどなく、たいていすぐに寝てしまいます。 確かに、学生の頃や、海外での会議に出席する際に、眠れなくて困った事はありますが、 逆に、授業中や仕事中になぜ眠くなるんだろうって、考える事の方が多かったです。  大学時代に受けた脳生理学の講義では睡眠のリズムを作っている大体の場所と、経験的に眠くなる薬の薬理作用が解っているだけで、睡眠の明確なメカニズムは完全に解っているわけでは無い様です。 そのため睡眠に対する医師のアドバイスも、あまり科学的な根拠のないものであったり、経験的な物が多く、これさえ飲めば万事解決するといった妙薬も無いのです。

それでも悩んでいる人に「解らないです」だけではちょっと悲しすぎるので、 一生懸命自分の経験と、医学的な知識を使って考えて患者さんに説明するわけです。 なので、今回はあくまでも、個人の感想あるいは経験の話しで、科学者である医者の立場からの発言ではありません。眠りに関して問題を抱えている方と同じ悩める者としての独り言と思って読んでいただければと思います。 今回は薬についてのお話は一切なしです。 皆様の不眠の悩みにあくまで参考程度に考えてください。 
GUM06_CL10015

眠りたく無い


病気で日中にでも眠くなってしまうというケースについては、またの機会にお話させてください。 今回の焦点は普通の眠気についてです。
小学生の頃、プールの授業の後の、授業はとてもつらいものでしたね。 さらに食後だったり、ぽかぽかした陽気だったり、さわやかな風が吹き抜けて心地よかったりすると、眠くなりますね。 部屋が暗かったり、黒板の文字が小さくて見えなかったり、教師の声が小さく言い間違いが多くて、何だか意味が分からなかったりすると、多くの学生は寝てしまいます。 
なので大学生の頃、講義で寝ないために、出来るだけ前の方の席に座り、文字が見えなかった時のために、オペラグラスを持って講義に出ていました。 それでもどうしても眠くなってしまう事があり、そのときの眠気を吹っ飛ばす極意は、周りを見て眠りかけている人を見る事でした。 これは結構面白く、数分は眠気を我慢出来ます。 少し脱線しましたが、これは眠たくなる典型的なケースかなと思います。 防止すれば覚醒し、そのような状況をわざと再現する事で眠る事が出来るかもしれません。

眠りの圧力


適度な疲労というのは眠気を誘う重要な因子である事は皆さん納得されるでしょうね。 前日寝ていないというのもそうかもしれません。 こういう事を、どこかの医学系の雑誌で、「眠りの圧力」と表現されていた先生がおられました(原典を忘れてしまってすいません)。 とても眠気を良く説明している言葉です。 良い眠りのためにはこの圧力がある程度たまっていなければ眠れません。 最後には眠りの圧力に押し流されて、眠ってしまう。 そして途中で昼間に眠気に負けて寝てしまうと、その圧力は夜には弱い物になっている事でしょう。 私も時々誤って夜目が覚めてしまって、眠れない時に、とりあえず、「今日寝られなかったら、明日はきっとぐっすり寝れるな」というふうに思う様にしています。 眠りの圧力を翌日に持ち越そうと考える訳ですね。

外気温と眠り


体の周囲の温度・気温も、眠気に重要な気がします。 暖房の効いた部屋だと、眠いと感じる事が多いのではないでしょうか? でも熱すぎるとどうでしょう。 蒸し暑くて寝れないというのは夏に皆さん経験されていますよね。 勉強に集中出来るように「頭寒足熱」という言葉があります。 頭を冷やし、足を暖めるという行為は、眠気をさまして物事に集中するときに良いのでは無いかと言われていますね。 でも自分の経験から実際に眠いときにこれをやっても結局それほど効果が長続きする事はあまり無いように思います。 膨張率の関係で、熱せられた空気は頭の方に、そして冷えた空気は足下に降りてきますので、結構この「頭寒足熱」を安定して続けるのは難しいです。 恐らくは、部屋が冷えていると眼が冴えて集中出来るようになるけれど、もともと空気の冷たい足から体温が奪われて、風邪をひいてしまうだろうから足は暖めた方が良いと言うような、「出来たら良いのに」的な話なのではないかと想像されます。 では、結局どうしたら良いのか、これは結構単純な問題では無いと思います。 きっと皆さんの睡眠環境や回りの状況等によっても異なると思います。 ただ、私が思うに、体の周囲の温度と体温が同じ温度の時に、人間はリラックスし眠りに落ちるのだと思います。 その前に眠るという状況をもう一度考えてみましょう。

眠りとは、五感と思考の無視


眠っている状態は、五感で感じるあらゆる体の周囲の状況を無視している状態です。 それは、無視できるような安全な状態と判断しているからだと思われます。 例えば、目から入ってくる情報があります。 部屋が暗ければ、見える物の情報量が圧倒的に少なくなります、色彩、形、(それ以外にも人間は目から入る明るさの刺激から覚醒のためのシグナルを脳に送ると同時に、メラトニンといってその日の夜に睡眠時に関連する神経伝達物質を作るとも言われています。 ) そういった情報が少なくなり、そして変化が乏しくなれば、その情報に慣れてしまい、目を開けていても見ていない、視覚を無視する状態になります。 時々寝ようとして目をつぶってしまう方がおられますが、私は、全く情報が入らなくなると、他の感覚が鋭敏になったり、暗闇に対して順応が生じて、普通では見えないような模様や、想像等によって補完された映像を頭の中で再現してしまうように思うため、出来るだけ目を開ける様にしています。 もちろん、部屋の明かりは、物がうっすらと見えるぐらいの明るさが保たれる、豆電球派つける派です。 授業中に眠気と格闘している同級生の顔を思い浮かべると、彼らは必ず目を開けているではありませんか・・。 目を開けていても寝れる時は寝れるんですよね。 
例えば、音も同じでしょう。 授業中に何言っているのか解らないような声でしゃべっている先生や、周囲の雑音、声等、理解できない音がずーっと聞こえていると、だんだんその状況に慣れてしまって、耳から入ってくる情報を雑音だとして無視してしまいます。 全く無音になると、耳鳴り等が聞こえたり、あるいは隣の家のテレビの音等が聞こえて来て、腹が立ったりして目が覚めてしまう事もあるでしょう。 聞こえるか聞こえないかぐらいの音、おそらく、いつも生活している時に聞き慣れた音が良いのでしょうね、そういった音を枕元でかけたりすると寝れるかもしれませんが、寝室で一緒に寝ている人に文句を言われるかもしれませんね。
体温についても同じかなとおもいます。 体の温度調整をしなくても良い状態、放っておいても37度になるという状況が、体温調整を無視させるために大事なのかなと思います。 でもそれには少し体温について知っておく必要があります。 
この続きはまた次回という事で。
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜