人工弁

人工弁といっても一般的には皆様あまりなじみが無い方が多いでしょうか?  皆様の心臓には4個の弁が付いています。 心臓には4個部屋がありますが、その部屋の出口に一つづづ付いています。  それぞれの弁は血液を一つの方向にしか流さない様にしているとても簡単な構造なので、人工的な弁におきかえることが出来ます。 リウマチ性弁膜症・動脈硬化に伴う弁膜症・あるいは先天的な弁の構造異常などがあった場合、放置しておくと心臓の筋肉に余分な仕事をさせる事になり、最終的には心臓がばててしまう。 それを防ぐために時期を見てきちんと機能する機械弁をいれる事になります。 医学的には人工弁置換術(じんこうべんちかんじゅつ)といいます。 人工弁というと、サイボークの様な物を想像される方がおられますが、決して完璧な物ではありません。 弁を入れ替える手術も一生のうちで2回ぐらいが限界になります。 胸を開いて心臓を止めて、弁を入れ替えるという手術は、患者さんの体力を消耗します(皆さん体重で8-10kg程度減ってしまいます)。 また手術自体で1%-20%程度の死亡率があります(そのときの全身状態によりリスクは変わります)。ですので、壊れたら何度でもと言うわけにはいかないのです。 
また人工的に作られた弁は、元々のご自身の弁に比べると後でお話しする様にかなり性能が落ちます。 なので、弁に異常があれば、小さな異常でもすぐに手術するという事では無く、可能ならば一生ご自身の弁が使える事がベストです。 そのために内科的な治療や生活習慣を整えていく事が重要です。 
しかしそれがうまく行かなければ、人工弁置換術を行う必要があります。

現在行われている人工弁治療は大きく分けて3つあります。 

弁形成術


弁形成術は正確には人工弁とは言えませんが、ご自身の持っている弁を最大限に利用して、弁の構造を修復する方法です。 修復と行っても、弁に糸をかけて固定したり、弁の全体の大きさを縫い縮めたりしますので、もとどおりというわけではありません。 異物が入っていますので、後でお話しする、感染性心内膜炎・つまりばい菌が付着する事にめっぽう弱くなります。   しかしワーファリンという抗凝固薬を飲まなくても良い場合があり、それが大きなメリットです。

生体弁


亡くなられた方の弁を使う場合もありますが、ほとんどの場合ブタやウシの弁を使います。 そのままでは、異物として拒絶反応を起こしますので、化学処理され、患者さんの体と同化出来る様にしたのちに移植されます。生体弁も、感染性心内膜炎の危険性がある事と、ワーファリンを飲み続けなくてよいという点がメリットですが、構造が弱いために、弁の寿命が8年から10年程度で壊れてしまうというデメリットがあります。  最近では生体弁をカテーテルという細い管に装着して、足の付け根から心臓まで持っていって植えるという方法が出始めていて注目されています。 現在は大動脈弁に対して治療が行われている事と、あまり体格の小さな方には不向きでありますが、心臓を止めたり、胸を開けて治療を行う開心術に比べて圧倒的に患者さんに対する負担が少なくて済みます。

機械弁


チタン合金で出来た弁です。 そのため寿命は30年と言いますが、もっと長く持つのでは無いかとも言われています。 この弁は金属の表面に血栓が付いたりして壊れる事がありますので、ワーファリンという血液を固まりにくくする薬剤を内服し続けなくてはなりません。  また機械弁もばい菌が付く事が問題になります。


次は、人工弁を入れた後どうなるのかという事について説明しようと思います。
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜