『体重が減らないんですが・・・』3

今回は第3弾、もう少し具体的な減量の極意を語ってみます。 
肥満気味の方に、一日1200kcalの食事をお話すると、たいていの場合、無理だと思われるようです(絶望されますね)。 まあ考えてみたら、一日菓子パン2個と牛乳瓶1本の生活、 一日ポテトチップ2袋と牛乳瓶1本の生活ですから、元気なくなったり強烈な空腹になるのではないかと思われるのが当然だと思います。 でもこれは空腹がなんなのかを理解してコントロールするとそんなに大変な事では無い事がわかります。そうすれば、ダイエットはほぼ成功したのと同じです。 
何度も申し上げますが、この方法は肥満気味の患者さんを対象としていますので、特に女性の痩身目的の方は絶対にこの後の記載はまねしないでください。

8,お酒はやめた方が良いでしょう


患者さんの中で理屈っぽい方がおられて、「アルコールは分解されるのにエネルギーが必要なので、アルコールのカロリーは帳消しになって結局いくら飲んでも太らないのだと、テレビでやっていた!」と力説されたのを覚えています。 これは飲んでいるお酒が無水エタノール(アルコール)だけで、つまみなどを何も食べないと仮定した場合の机上の空論です。 お酒の中には発酵の原料となった糖質が多く残っていて、残留糖質のカロリは市販のコーラなどと同じぐらいの濃度のカロリーはあります。 コーラは大量に飲もうと思ってもおなかが苦しくて飲めませんが、お酒には利尿作用があるのでのどが渇いて、とにかく長時間にわたってどんどん飲めてしまいますので、結局そういった甘いジュースよりも十倍近い量を飲み、大局的に見ると太ります。飲んでも太らないなんて、そんな都合の良いことは無く、単にお酒を飲みたいための詭弁でしかありません。 皆さんも10日間やめてみると実感されると思います。 必ずやせます(アルコール中毒症の患者さんは逆に太ってきます)。 
さらに飲酒によって食事の時間が長くなるのが問題です。 本来15分程度で終わる食事が2時間3時間と続くために、無意識に口にものを入れる時間が長くなり、総量として食べる量が増えます。 時間をかけるため物理的に胃が塞がらず、物理的な満腹感がありませんのでいくらでも食べられてしまいます。 また酔が回らないように、無意識に食物を多めに食べてしまう傾向があります。 つまり体重を減らそうとされる方は、潔く飲酒はやめるべきでしょう。 上の説明を見て、時間制限をすればカロリー制限できるのではと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。 自分で飲酒の時間を制限できるような方は、あまりこの指導を受ける必要がないケースが多いです。そういう人は基本的に太ってないですから・・・。なので、ここで指導の対象となる患者さんには、お酒はやめた方が良いと言うのが正しい指導だと思います。

9,ダイエット最大の敵、辛い空腹感をやり過ごす方法


結論から先にお話しておくと、太っている人の空腹感、それは実は(1)
「気のせい」だという事です。 そして実は空腹の初期段階で(2)「食べると逆にお腹がすいてすいてたまらなくなります」。 そして、(3)「空腹の時間に、体脂肪が分解されて体重が減ります」
こうやってお話すると、ほとんどの方は信じてくださらないみたいです。 なので納得してもらうために少々説明させていただきましょう。

10,空腹感って科学的になんなんでしょうか?


○ 皆さん、お腹が減ったと感じるときってどういう時でしょうか? たとえば「お腹が、グー、と鳴る」そうするとその音を聞いてお腹が減ったと感じるのではないでしょうか? お腹が鳴るという現象は、胃などの比較的大きな臓器が中が空の状態で、物を押し流す様に動く(蠕動運動といいます)を行った際に、狭まった胃を空気が通過する際に発生する音です。 この音を聞くと、なんかお腹減ったような気がしますね。 胃の蠕動運動は自律神経の副交感神経によって活動上昇しますので、体を動かしていたり、興奮していたり、集中していたり、脳が食事以外の事を考えているときには、動きは弱くなり。 反対に食べ物の事を考えたり、何もする事が無くボーッとリラックスしているときに上昇する傾向があります。 つまり脳が体がご飯が食べられる状況かどうかを判断して、食べられそうなら、胃腸を動かして音を出します。 この音を聞くと、条件反射として人はお腹が減っていると考えるようになります。 梅干しを見ると唾液が出るのと同じですね。 グウーと音がするとお腹が減った気がする。 突き詰めて行くと「気のせい」なのです。
○ 空腹時にお腹が熱く、時には痛くなってくる方いらっしゃいませんか? ストレスなどが加わると、胃酸の分泌などが起こったり、胃の粘膜への血流が低下したりして、特に胃に何も入っていない状態だと胃の表面に小さな傷ができることがあります。 こういった状態が続くと、傷が更に大きくなってきて、痛みが強くなってきますので、それを防ぐ意味で、何か乳製品などをお腹に入れようとされること多いと思います。 また人によってはお腹がすいたと感じることがあります。 こういったときに一旦食物を食べてしまうと、脳が「今ご飯食べられるんじゃない。ならもっと食べさせよう」と更に食欲を加速させていきます。 なのでダイエットが必要な方は、何も食べず、胃薬を飲んだ方が良いでしょう。 それで空腹感は過ぎ去っていきますので。 胃薬が無ければ、糖質の含まれていない、室温ぐらいの飲み物、紅茶とかお茶などを取るのも良いかもしれません。
○ 空腹の時に頭がボーッとしてきたり、元気が無くなってくる事ありますよね。 大脳は糖分だけを使って活動してます。 なので血糖値が下がってくると、脳の活動が低下してくると言われています。 しかし、太っている方の場合(注意:糖尿病の薬、インスリンや、スルフォニルウレア型経口血糖降下薬を飲んでいる場合は当てはまりません)、血糖値が90未満になることはありません。 痩せている人だと時々、空腹時の血糖値が75ぐらいになっている人お見かけしますが、目に見えて脳の活動が落ちてくるのは血糖値60台以下になってからです。 その場合、冷や汗や手足の震え、動悸症状、身の置き所の無いような嫌な感じを伴います。 太っている人にはそういうことは起こりませんのでその脳の活動低下は別の要因という事になります。 最も大きな原因は、空腹に対する恐れ不安です。 その不安から目が離せなくなり、脳が他のことを考える余裕が無くなってくるのです。 同時に、思考が食べ物で占領されてしまい、他の脳の活動が停止してしまいます。 もう一つの大きな理由は、血圧低下の症状である場合が多いです。 ダイエットをして食事全体の量が減ってくると、食事によって摂取されるべき、水分や塩分も不足気味になります。 梅干しや味噌汁、後は塩飴などで塩分を摂取と水分の摂取をしておくと空腹時の倦怠感が緩和されます(ただし高血圧や心不全患者さんはやめておいてください)。 食事制限をするならば、代わりに少し多めに取っていた方が良いでしょうし、血圧の薬などを飲んでいらっしゃる場合は、定期的に血圧を測定して、主治医とよく相談した上で、血圧の薬を減量してもらうように相談した方が良いでしょう。
○ 太っておられる患者さんの空腹感とは、こういった脳が体に食事を促すための切っ掛けなのですが、命を脅かすサインではありません。 なぜなら必要なエネルギーが十分に皮下脂肪に蓄えられているからです。 脳が勝手に発した欲求であって、気のせいなのだとまず理解する事が重要です。 

11,お腹が減っている時間に、体重が減少していきます。


何も食べないでいると、お腹が減ったなと思い始めた時間から1時間ぐらいで空腹感は無くなっていきます。 体が次の食事が来ないとあきらめ、自前のエネルギータンクである体脂肪を分解し始めて糖に作り始めるのに少し時間がかかるからです。 なので小腹が空いたからといってクッキー1枚でも食べよう物なら、脂肪は分解されず、体が新たな食事の機会をあきらめないため食欲は際限なく膨らみ、クッキーを食べる前より空腹感は酷くなります。 体重が減るためには、この空腹感の山を一旦乗り越えなくてはなりません。「空腹の時間を大事にしましょう、その時にしか体重は減りません」

12,食べるとお腹が空きます(ダイエットの落とし穴2)


たとえば、食事のあと胃の内容物が無くなって、空になった直後など、あるいは何か食べ物の事を考えた直後に、少し小腹が減った感じがすることがあります。 そのまま何も食べなければ、体脂肪が分解されて糖がつくられるため、その後全く食欲を感じなくなります。 しかしこの段階で何か口に入れようものなら、 体は脂肪を分解せず、糖値は上がらないまま、食欲が脳を支配して、食べ物を食べさせるように暴れ回ります。 一旦そうなってしまうと、食べる以前に比べて強い食欲が長時間持続します。 そしてその苦痛は耐えがたく、時にトラウマになったりする事もあります。 なのでダイエットをするならば「ちょっと食べて空腹をまぎらわせるのは逆効果」と理性で判断して食べない事が大事です。 何回かそれを繰り返すうちに、それが正しい事が解り、「小腹が空いたときに、後でもっとつらい空腹が来るという不安・強迫観念」から逃れることができるようになります。 その事から原則から言うと、「食べるとおなかが空いた気がします」ので、昼食はお茶や水などを補給するだけでにした方が良いでしょう。 その方が午後の空腹感を感じにくくなります。 そのまま晩ご飯まで到達出来れば、その間に脂肪が分解される時間が確保出来るので、体重が減ってくれるでしょう。 

次回に続く
三好クリニック(内科)
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