心室性期外収縮

心室性期外収縮という病気をご存知ですか? 心臓のメインポンプ心室が、本来の心拍のタイミングでない時期に(つまり期外)収縮してしまう事を言います。 人の心臓は、右心房の右上に存在するリズムを作るペースメーカーと言う部位でリズムが作られていています。 興奮したり、体温があがったり、あるいは貧血や何らかの内分泌異常などで心拍はあがったり、下がったりします。  そういったリズムの変化は、ほぼ一定の間隔で収縮しています。 それとは反して期外収縮とはこの一定の間隔でないタイミングで心臓の収縮がおこってしまう病気です。 
心臓が血液を全身に送り出すためには、心臓が収縮する時に十分な血液が心臓の中に入っている必要があります。 心臓の収縮のタイミングがずれて、少し本来のタイミングより早く収縮してしまうと、期外収縮の際の収縮は十分な血液が送り出せず、脈が抜けたように感じ、その一方で、次の心拍では、前の収縮で駆出出来ていたはずの血液が心臓内に残っているために収縮が強くなり、脈を強く感じたりする事があります。 
心室性期外収縮は、比較的良くある不整脈で、24時間心電図をする検査を行うと、ほとんどの患者さんに一日数発から数十発の期外収縮が出ています。 しかしそれを自分で自覚される方は少ないです。 同じ不整脈があっても症状が出る人と出ない人があるのは不思議ですが、その理由は正直よくわかっていません。 ただ、心臓の筋肉内に存在する知覚神経はとても鈍感なため、単発の異常収縮を感じる事は考えにくく、心臓の周囲を取り囲んでいる膜や、胸壁の知覚神経を介して症状を感じているのでは無いかと思われます。
心室性期外収縮のほとんどは無害な不整脈で基本的に放置していてよいものです。 期外収縮がおこる理由は、ペースメーカー以外の心臓のどこかの筋肉が勝手に興奮を初めて収縮しまう事でおこります。 そのため心臓の筋肉が興奮しやすい状況にあるときにおこりやすいです。 具体的な状況としては、血液の中のカリウムの濃度が低くなりすぎている状況や、興奮してアドレナリンが活発に分泌されている状況、また興奮の一番始めに働くイオンチャネルのナトリウムチャネルの興奮性が高まると生じやすく、そのため、治療にはナトリウムチャネル阻害薬や、アドレナリンの阻害薬(β遮断薬)が使われる事が多いです。 期外収縮自体が寿命に関係なく、無害な不整脈なので、不愉快な症状さえ無ければ、特に治療は必要ありません。 むしろ、強力に不整脈を抑制出来るナトリウムチャネルを投与する事で、期外収縮がコントロール出来たとしても、別の不整脈を起こしてしまったり、ポンプ機能の悪い方ですと、逆に寿命を短くしてしまったりする事が知られていて、症状が無ければ治療を行う事で害をなす事があるのです。
しかし、期外収縮があるだけで、不愉快でもうどうしようもなくすべての事が手に付かないぐらい症状の強い方がいます。そのような場合、その方の心臓の状態を見て、薬を処方する事があります。

続く
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜