心臓の形ー2

人が立ち上がるという事


人が人以外の動物とが決定的に違う部分はなんだと思いますか? 画期的だった点は、脳の大きさもありますが、常に2本足で生活する事でしょう。 2本足で生活する事は多くのメリットがあるのですが、それはまた機会があれば説明してみましょう。 人間は2本足で生活するようになっても心臓の構造は他のほ乳類の心臓と大きさ以外は変わりありません。 

心臓はぶらぶらしてます


心臓は周囲の肺などに比べて液体が充満した比較的重い臓器なので、重力に強く影響を受けます。 心臓は収縮の邪魔にならないように、それでいてあちこち移動しないように、主に左心房の裏側だけで背中から吊り下がっています。 左右に大きくぶれないように、心(外)膜という薄い皮で囲まれています。 そういった束縛されない構造のため加わる重力の方向によって心臓の位置は大きく変わります。 体の方向によっては、接続部位や、周囲の臓器や骨に当たった部分に強い力が加わり、それが刺激になって心臓が余分に収縮したりする事があります。 これを期外収縮と言います。 こういった期外収縮の発生に、心臓と周囲の臓器の位置関係は結構重要で、体の方向や位置によっては、不整脈が出やすくなったり症状が強く感じられたりする方向があります。ちょっと雑な言い方をすると、どちらかというと四つ足動物と同じうつ伏せの方が、期外収縮の患者さんには良い様です。

位置の変化で不整脈も出ます


人間は立ち上がる事によって、心臓にかかる重力の方向が変わりました。 4足歩行の動物では、重力は背中からお腹方向にかかるのに対して、2足歩行になると、頭から尻方向に重力の方向が変わります。 それによって人間の心臓は、重力によって垂れ下がり、より横隔膜に接するようになっています(横隔膜の上に乗せて重力を軽減している)。 また、もともと4足歩行の動物の胸の骨全体の構造は、重力を効率よく背骨へ逃がすように、前後(背腹方向)に長くなっています。 人間は、重力のかかる方向が変わった事で前後の幅が薄くなり、それにしたがって背骨と胸の前側の骨(前胸部)との間が小さくなる傾向にあります。 特に、都会で生活していて、上半身の筋力があまり必要の無い人々は、背中の筋肉の発達が少なく、背骨も後ろ側への湾曲が少なく、まっすぐのまま成長する傾向が強いです。 そうすると、さらに背中と前胸部の距離が短くなり、周りの臓器に当たらずに動いたりするスペースが無くなります。 そういった方々の多くは、不整脈で心臓がいびつな運動をするときに、症状が出やすい傾向があります。 簡単に言うと痩せていて胸板の薄い方のほうが不整脈の症状は強く出る傾向があります。 私の患者さんで時々、上半身の運動(ラジオ体操第一)とか、マッケンジー体操といって、背筋を鍛える運動をされるようになった後に、不整脈の症状がとても良くなったりする方がいらっしゃいます。 お薬飲むのはいやだなとおっしゃる方、ちょっと試してみてはいかがでしょうか?

とりあえず横隔膜で下から支えられている心臓


人間は立つ事で、心臓の重みを今度は横隔膜でささせるようになりました。 ちょうど横隔膜の上に心臓が乗っている様なイメージでしょうか? そのため心臓の位置は呼吸で変動します。呼吸の息を吸う時だけ不整脈が出られる方や、きついベルトをすると楽になったりする人や、体重を増やすと(他の病気が悪くなる事がありますが)横隔膜の位置が内臓脂肪で持ち上げられて心臓の重量を腹で支えるようになります、そのようになると自覚症状が楽になったりする人がいる様です。 
人間は立ち上がる事によって脳が発達したと言いますが、心臓はあまり最適化されていないのかもしれませんね。 

次回に続く
三好クリニック(内科)
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