重力に負ける人 1

患者さんを診察していて、時々病気ではないのだけれど、重力に負けてしまうという表現が的確な患者さんを拝見することがあります。一度重力に負けてしまうと、再び自力で立ち上がることができなくなり、その後ほとんど寝たきりになってしまうということでもあります。

体が大きくなりすぎて重力に負けてしまう
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皆さんの体重はどのぐらいが適正だと思われますか? おそらく、太っていることがその人のアイデンティティーになっている方もいらっしゃいますよね。 そうやって何十年も暮らしておられると、一念発起してダイエットして痩せてしまうと、「大丈夫ですか? どこかお体悪いのですか?」みたいに言われてしまう。 あとは仕事の上でのキャラクター作りとして太っておられる方もいらっしゃるでしょう。 体が大きい方はインパクトがありますし、すぐに覚えていただけます。 また宴席などで、大食家の人々はとても人気があって、飲食関係の仕事をしているとそういう体型になられる方も多いのではないかなと思います。そういう方々にとっては、肥満と言う要素は、何か自分の一つの大切な要素になっておられたりするのかもしれません。

肥満によって生じる可能性のある内臓への負担は、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、下肢静脈血栓症から生じる肺梗塞、睡眠時無呼吸症候群、内臓脂肪の増大による肺の圧迫などでしょうか・・・。 それと膝や腰などの骨格への負担もあります。 ある程度内臓のデータに影響が出ないうちは、私はあまり体重について強く申し上げることはしません。 その理由は外来という限られた時間の間に体重を減らすようにお話ししても、ほとんど効果がないからです。 何十年もやってきた生活のパターンを変えるのはとても大変です。 その大変なことを患者さんにやっていただくためには、患者さん自身が納得のいく理由や目標があること、そしてそれを貫き通す強い意志と目的を持つこと、そして周囲の人たちの協力が不可欠だと思います。 ただ骨格に問題が出始めるとそう悠長なことを言っていられなくなります。

大きな体重を支えるためには、強い骨格が必要になります。 骨は固く少しぐらい体重が増えたぐらいでは折れたりすることはありませんが、関節や軟骨などの動く部分はそうはいきません。体重が大きくなりすぎると、膝や、腰骨(脊椎骨)の軟骨が擦り切れ・変形して神経を圧迫したりして、強い痛みを生じます。 文明が生まれる以前なら、痛みで動けなくなった時点で、食料を確保できなくなり体重が減って結果的に関節への負担も減ったかもしれません。 しかし現代では、家からほとんど出なくても食料の確保は比較的容易です。 いったん痛みに負けて動かなくなってしまうと、その時間が暇になってしまい、手っ取り早い時間つぶしとして間食をしてしまうことも多くなります。 そうするとまた体重が増えてしまい、運動もできなくなるので、さらに体重が増えて、そういった悪循環の結局ほとんど寝たきりになってしまう場合があります。

ダイエットの方法はここでは記載しませんが、やはり骨格に痛みが出始めたら強い意思をもって食事制限をされたほうが良いでしょう。 そうしないといずれ重力に負けて寝たきりになってしましますから。

次は重力に負ける人、「怖くて立ち上がれない」です。
三好クリニック(内科)
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