心臓の形ー1

今日は病気の話では無く、心臓のお話です。

Heart Icon
心臓と言う言葉から解るように、昔の人は心臓に心があると考えていたのでしょう。 
まだ内蔵の機能がよくわからなかった時代に、死んでしまった人と生きている人の違いを観察して、死んだ人の心臓が止まっている事から、心が心臓にあるのだと考えたり。 あるいは興奮して昂ると心拍が上昇し、落ち込んで静かにしていると心拍数は落ちる、こういった感情の変化で起こる鼓動の変化から、心はきっと心臓にあるに違いないと思ったのかもしれません。 英語でも日本語でも心臓(Heart)は心(Heart)と同じ言葉で表されます。 それは漢語の文化圏もラテン語の文化圏も直感的にほぼ同じような事を考えたのだとわかります。
我々の心が、脳の中の単なる電気信号の集合なのか?、それとも本当は心臓にあるのか?、それとも我々が感知出来るこの世界の外にあるのかとても興味はありますが、実際に心の活動を外から客観的に観測する事が出来ないために、現状では答えの出ない問題です。 答えのでない問題はここではちょっと横に置いておきましょう。 ただ現代の日本で見られる多くのジェスチャーやシンボルの中では、心は心臓と同じ物として表されます。 つまりハート形ですね。 トランプ等で見られるハート形は、上の2つの半円状の突出は心房を、下の緩やかにとんがった部分は心室の形をとても良くとらえています。 冷静に考えると、女子高生達が、通学鞄や携帯についているハートマークや、バレンタインのチョコレートのハートマークは、それが心臓だとおもうとちょっとグロテスクな感じがしますね。 つまり現代社会でのハート形は、元の心臓と言う意味から離れて、すでに心そのものをさしているのだと思います。  それぐらいハート型はよくできたシンボルです。 誰が考えたのでしょうかね・・・・。

こういったいわゆるハート形の心臓は魚類には見られず、両生類以降にようやく見られる形です。 心臓の形も進化の過程で人間に近い動物ほど人と似ていて、遠いほど人とは異なっています。 人と同じ様な形、2つの心房と2つの心室が分かれた構造を取るのは、鳥類とほ乳類になります。 ではもっと古代の動物ではどのような形をしていたかというと、弁の付いた血管の様な形だったと考えられています。 静脈には弁が所々にありますので、静脈の形が心臓の原型のような物なのでしょうね。 人間はその胎内での成長の過程で、進化して来た過程を忠実にそして短期間でたどって生まれてきます。 なので、胎児の成長を観察していると、そういった血管の一部が大きくふくれて、強い筋肉が付いて、最終的に心臓が完成してゆきます。

胎児循環

母体の中で活動性している胎児は、生命活動に必要な酸素や栄養素を胎盤から得ています。 人は生まれた瞬間、オギャーと叫んだ瞬間に、急にそれがなくなって、いきなり肺で呼吸を始めるために、ものすごい勢いで心臓の環境を変化させます。 胎児の間の心臓は(胎児循環と言います)、左心室をほとんど使っていません。 胎盤・へその緒から送られてきた血液は、一旦右心房に到達します。 そこで、(1)右心房と左心房の間にある弁(卵円孔と言います)、を通って左心房へ流れ、左心室から全身へ送られる血液と、(2)そのまま右心室・肺動脈から、動脈管といって肺動脈と大動脈を直接繋いでいる血管を通して、全身に母体の栄養の入った血液を送っています。   この血液循環のやり方は、生まれた瞬間に肺が広がることで、右心室から肺への血液が爆発的に増加、先ほどの卵円孔と動脈管が閉じ、右心室中心から急に左心室中心の循環システムに切り替わります。  この変化に心臓が完全に適応するに30年近い年月を要すると言われています。 18ー19歳ごろでほぼ外面的な体は出来上がるのに比べて、心臓の形が完成するのはもっと後なのですね。

次回に続く
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