三好クリニック 青山・表参道

内科・循環器・高血圧・不整脈

重力に負ける人 4

歩いているだけで酔ってしまい、怖くて出歩けない

前回良性発作性頭位めまい症の話をしましたが、三半規管の異常一時的なもので長時間持続することはありません。 しかし時々何ヶ月もの間フラつきのため、出歩けなくなってしまう方がいらっしゃいます。 足腰の弱っておられる高齢者だけでなく若い方の中にも、そういった回転型のめまいの後、転倒の恐怖から歩けなくなってしまう方がいらっしゃったりします。 長期化する原因は何なのでしょうか?

転倒の恐怖が平衡感覚を惑わせる
立ち上がれなくなる最も大きな原因は、転倒に対する恐怖感だと思われます。 赤ちゃんの頃は、立ち上がって転んでも、体重が小さいですし、皮下脂肪も多いので、あまり大きな怪我をすることはありませんが、大人になってから転ぶと当たりどころが悪ければ死にますし、骨をおったり、出血したり、服をダメにしてしまうかもしれません。 そういった恐怖感は前回の章のように平衡感覚を混乱させ、より歩行を困難にします。 回復するためには、転んでも良さそうな格好で実際に歩いたりして、慣れていく以外にありません。

意外に早く起こる足腰の筋力低下がふらつきを増強する
次に問題となるのは、足腰の筋力低下です。 人は寝ている時間が長く続くと立つために必要な筋肉が減ってきます。 特に太ももとおしりの筋肉が減ると歩行が不安定になりふらつきます。 人は4−5日寝たきりの生活をすると筋力の低下から歩行に違和感を感じ始め、1週間も寝たきりが続くと、立ち上がるのも一苦労となります。 筋力低下は意外なほど早く起こります。回復するためには、片足立ちでもも上げなどの筋力トレーニングを机とか椅子等に捕まるようにして、一日20回〜40回ほど行うことで歩行のための筋力はゆっくりですが回復してきます。 一度安定して歩けるようになると、その後は自身がついてフラつきから回復できるようになることが多いです。

怖がって下を見て歩くことで酔が起こる
転倒に対する恐怖があまりに強いと、歩行時に倒れないように下を向いてしまう方がいらっしゃいます。 前章で車酔い等で下を向いていると、頭がシェークされてより酔の状態に近づくというお話をいたしました。 下を向いて歩くことは酔や違和感を増強し、それが更に恐怖感を増強するという悪循環に入ります。 また頭を下げてしまうと、体の重心が大きく狂ってしまいますし、背骨も変な形になってしまって、バランスが取りにくい状態になります。 回復するにはやはり、倒れても良い服を着て(あるいは杖など持って)、できるだけ足の底の感覚がわかる底の平らな靴を履いて(足元を見ないでも足もとの歪みや硬さを深部感覚を使って感じることができます)、比較的広いところで、遠く(水平方向)を見ながら歩いて慣れる以外ありません。

実はみなさん、時々ふらついたりすることはありますが、ほとんどの方はその後すぐに元の生活に戻ってそういったことを忘れてしまっています。 ただ一度不安に取り憑かれると、その後「めまい感」に敏感になり、めまいが起こるたびに記憶し、その行動をとらなくなります。 しかしこの回避行動は一部の例外を除いて逆効果となることが多いです。 
その例外に当たる病気はやはり医師の診断が必要となりますが、もしも医者に大丈夫ですと言われたのでしたら、やはりその言葉を信じて後は自分の力で克服してゆく必要があります。 それが危険な兆候出ないと医師の診断があるようなら、「めまい感」は立って生活するために必要なセンサーの誤差修正なのだと思って慣れることも大事なのです。