三好クリニック 青山・表参道

内科・循環器・高血圧・不整脈

人は例外が好き

人は例外が好きだと思います。
物語の英雄や主人公は平凡ではありません。 何か特殊な能力を持っていたり、とてもラッキーだったりします。 そしてそれを平凡な自分たちの人生に直接当てはめようとする大人はいないでしょう。 ダイハードのジョン・マクレーン刑事や、スターウォーズのルーク・スカイウォーカーの様な人生を実現しようとする人はいませんよね。 もしかしたらどこかにいらっしゃるかもしれませんが、それはやはり例外だと思います。 ただ、その中の主人公たちが直面する問題を解決してゆく時の葛藤や心や意志は、形を変えてきっと平凡な我々の生活のなかでも生きてくるものだと思います。

人は例外が好きだと思います。
戦争の英雄や、企業などの成功談は、例外だと思います。 戦場で死んでいった人たちは物を言いませんし、うまくいかなかった発明や没になった企画はそれこそ普通に何万・何億とありそれらは決して語り継がれないからです。なのでそういった英雄や成功談は、無限にある失敗のなかの偶然にもうまくいっただけ、ただ運良く生き残っただけのお話が語り継がれているのだと思います。そしてそれらの成功談や英雄の話を聞くのが我々はとても好きです。 秀吉や信長、松下幸之助やエジソン、スティーブ・ジョブスなど。 彼らの話はとてもドラマティックで、我々を勇気づけてくれることは確かですが、あくまでも例外であって、平凡な我々が彼らのまねをして振る舞ってみても、決して彼らのようにはならないはずです。 

人は例外が好きだと思います。
自分がよく知っている事柄を他人に説明するとき、多くの人は例外の話から始めます。 たとえば、「奥さん知ってました? 私はねそんなこと思ってないんだけど、誰とはいわないけど、周りの人ねみんなあなたのことXXXって言ってるんですよ、やーぁね。」。 たとえば、古文の授業などで覚えさせられた「あり・をり・はべり・いまぞがり」とかを聞いて、なんとなく、「これで古文は完璧」などと思って油断して本試験で玉砕したり。 知っている人間が教える際、間違えを恐れるあまり、例外から教え始めます。 そして教わる人は、例外から覚え、例外を知ってすべてを知った気になる傾向があります。 医者の病気や手術の説明なども、多くの医者は短時間ですべての事項を説明するために、手術という治療の上での例外である合併症の話を延々します。 そのため時々、患者さん側は、「この治療は事故ばかり起こる手術なんだな」と感じてしまうことがあります。 それは、それを説明する人間も、そしてそれを聞く側の人も、例外がとても好きであり、例外こそが印象に残るからなのでしょう。

医学はなんの面白みもない平凡を追求します
医学の仕事は、平凡がどういうものかを客観的に知り、それを皆に伝える仕事です。 平凡に命を長らえる方法、健康な状態を維持する方法を伝えるための物なので本来とてもつまらないものです。 現代の刺激に満ちた世界にどっぷり浸かっている皆様にとって、これは本当につまらないですし、無視されることもしばしばです。 でも最近になって、マスメディアは医学も娯楽にしようとしています。 患者さんへの病気に対する知識や啓蒙は大事だとおもいますが、それをショウやクイズの様に提示して娯楽にするのはとても危険な行為だと思います。 医学はつまらない平凡な物であって、視聴率をとる事や雑誌の売り上げを上げるために無理に楽しく面白くする物ではないのですから。 
去年過熱気味だった週刊現代などに見られる薬の副作用の記事などもそういった物の一つだと思います。 彼らの報道で、彼らの本来の顧客である読者の命を危険にさらしているという事に、彼らが気づいていたかどうか知りませんが。もしも何らかの主義主張があっての記事なのならば、記者自身がきちんと実名を出して報道すべきだし、一般の方でも医療の専門雑誌の情報(MEDLINE 医薬文献検索)は簡単に手に入りますので、記者なのだからきちんと取材して裏付けをとってから記事を書くべきだったのではないかと思います。 

お薬を飲まない選択
私自身、薬を飲むのがあまり好きではありませんので、私の外来では何か理由が無ければあまりお薬処方いたしません。 しかし、処方された薬を飲みたくないとおっしゃる方も多いです。 人工物だから口にいれたくないとおっしゃる方も多いです。 薬の副作用が怖くてとおっしゃられる患者さんもいらっしゃいますね。でも薬の副作用は珍しい例外なのです。 ですが全く無いわけではなので、注意してお薬を使用する必要があるのには変わりありません。
病気があるという事は、戦場に派兵されたと言うことと似ていると思います。 戦場に送られる皆さんに、医者は、「防弾チョッキあげますよ(薬投与します)」と言っています。 しかし患者さんは、「防弾チョッキは重いから着けたくないんだよね」とおっしゃられます。 医者は皆さんに「防弾チョッキの中には時々内側に小さなとげが出ている物があります(薬の副作用)、また材質によってはかぶれたりすることがあるので、そのときは別の物と交換しますのでおっしゃってください。 ただ汗などで蒸れたりするのはこれは我慢していただくしかないでしょうね」とおつたえしてチョッキを渡します。 中には「チョッキからとげが出てたら痛いじゃない、そんな物つけられないよ!(副作用が怖くてお薬飲めません)」とおっしゃられて、防弾チョッキをはじめからつけようとしないで戦場に出る人もいます。「弾など当たらなければどうということはない」とか、「動きが遅くなる分戦闘には不向き」とかおっしゃられる事もあるでしょう。 確かに達人ならそういうこともあるかもしれませんが、それは例外であって、多くの方は重要臓器のある部分をカバーすることで、戦闘で死ぬ確率はずいぶん減るはずです。 あなたは、赤い彗星ではないのですから、身の丈にあった平凡な事をされた方が良いと思います。 「防弾チョッキを着けないほうが良い」という可能性に命をかけるのは皆さんの選択の自由でもありますのであまり多くを申し上げませんが、個人的には「あなたが命をかける場所はそんなところではないのではないかな〜」と思うわけです。