体力は貯金、休養によって引き出す事が出来る

皆さん働いたり、動いたり、喋ったりすると疲れますよね。 どれぐらい動くと疲れて活動出来なくなるかと言う事を、人は漠然と体力という言葉で表現します。 昔は疲れなかったランニングでも最近は歩くとすぐ疲れてしまう様になった、体力が無くなったなーと感じる訳ですね。 疲労を感じるまでの活動可能時間が体力という事になるのでしょうか。

じゃあこの体力はどうやれば増えるかと言うと、それは体の筋肉を動かして疲労し、休んで回復すると言う事を繰り返し行う事で、すこしずつ増やすしかありません。 単純言い換えると体力を増やすというのは筋肉量を増やして行くという作業になります。 ちなみに脂肪は体力ではありませんから、食べても体力はつきません。 

筋肉を維持する行為は生命活動にとって効率が悪い様で、筋肉を育てるのに2-3ヶ月もかかりますが、反対に3日使わないと急激に減少します。 例えばベット上安静でピクリとも体を動かさない状態だと1週間ぐらいで脚の太もものサイズは大体半分ぐらいになります。 皆さんの身近な例で言うと風邪などで2-3日寝たきりの生活して、熱が下がっていざ仕事に戻ろうかってなったときに、体がふらふらして、すこし動くとドキドキして疲れる。 一般的に病み上がりという表現がしっくりきますかね? たった3日間ほど使わなかった事で下半身の筋力低下が一つの引き金となって起こした病態です。

皆さん新型コロナウイルスが蔓延する前の世界では、1週間以上ベット上で寝たきりの生活をされた経験のある方は少ないと思います。 しかし現在では、健康な人も、そしてコロナに感染した人も、以前の生活では考えられなかったほどの長期間にわたって外出制限、活動制限を余儀なくされ、世界中の方が一様に筋力低下・体力の低下を来しています。 

一日中寝ていると体はとても楽ですよね、でもそれを続けていると、全身の筋肉が細くなり、その細い筋肉で骨格や体重を支えることになります。 結果として骨格や関節・そして筋肉の痛みを感じやすくなり、疲労や息切れを感じやすくなります。仕事場へ通勤したり学校に登校したり、強制的に体を動かすことで筋力の回復が行われてまた元の生活に戻る事が出来ますが、その痛みや疲労に負けて寝てしまうと、体力は回復せずさらに減少し続け、そのうちベッド上で寝返りをうつことも辛くなってしまいます。 高齢者がサルコペニア・フレイルと呼ばれるこう言った寝たきり状態に陥って亡くなって行くわけですが、この状況は等しく若者にもおこります。

しかし、ウイルスや病気と闘うときに安静というのはとても大切です。 熱が出たりして体調が悪いときはきちんと体を休めないと、感染症をこじらさせてしまったりして重症化の切っ掛けになる場合があります。 一方で休んだ方が良いと良い、一方で筋力を付けた方が良いと言う。 一見矛盾している様に思うかも知れませんが、こういう風に考えてもらえると解りやすいと思います。 

風邪や体調不良が安静休養で治るというのは、結局今まで蓄えていた体力の貯金を放出しているだけなのだと。 つまり健康な時は是非体を動かして体力を蓄えて行く必要があります。 貯金は使ったら無くなっちゃいますからね。 寝てるだけでは病気は治らないんですよ。 

日頃から体力を貯金して下さいね。 私がこの2年間患者様を見てきて、かなり多くの患者さんが脚腰が弱ってそのまま亡くなってしまっています。 一方でコロナ感染症で亡くなられた人は一人もおられません。 今回のこの長きに渡る生活活動の制限が本当に日本で必要なことだったのかどうか、その結論はこれから10年の慢性疾患の死亡率の推移を見ることで歴史が示してくれることでしょう。 
三好クリニック(内科)
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