カゼの診察は難しい

朝晩は少し肌寒くなってきましたね。 そろそろカゼの季節ですね。 カゼの患者さんも少し増えて来たような気がします。 
医者にとって、カゼの診療はごく一般的な診療です。 しかし、医者はカゼの治療を系統立てて教わる事はありません。 医学生の頃、「カゼの話はいつきけるんだろうか」と思っていたら最後まで無かったです。 医者になってから、それまでの自分の体験や、周りの先輩方の診察をまねして対応していくことになります。 
私自身はカゼの患者さんの診察は結構緊張します。 なぜかというと、ほとんどの場合1回きりの診察と治療になるからです。 薬が効いた場合は2回目は来られませんし、悪化した場合「あそこはヤブ医者だ」と、2回目来られない。 ですのでなるべく一回で勝負をつけられるようにと気構えてしまいます。 またカゼ診療は、医者としての診察スキルアップが難しいという事でもあります。 自分のやった治療が良かったのか、悪かったのか、結果が帰ってこない。 そのため、一人の患者さんの治療の経験が次の患者さんになかなか生かされないのです。 なので結局自分のカゼ体験談だけが、治療の指針になってしまうという訳です。
カゼというのは、上気道つまり気管より上の、のどや鼻の炎症で、発熱・咳・はれ・痛み・くしゃみ・鼻水などが出るものをカゼ症候群といいます。 通常体温が38度を超える事は珍しいです。 病原体としては、ウイルス(一種類でなくいろいろなウイルス)が原因ですので、曲がった事の嫌いな先生ですと、「抗生物質はウイルスには効果がありませんので出しません」とおっしゃる先生もおられるでしょうね。 それはまさに正論ですが、細菌の混合感染を起こしているとおもわれるような兆候があれば、私の場合抗生物質をお出しします(この辺りは医者によって見解が異なるところでしょう)。 じゃあ病気の初期の段階から抗生物質を飲めば早くなおるのでは無いかと思われがちですが、それはどうも違うようです。 少なくとも38度を越えるぐらいの熱が出て来てからでないとあまり効果が無い様な気がします。 抗生物質は体が一番病気を直そうとする勢いのある時でないと、耐性菌が出て来てしまって勢いがぶり返してしまい、治り切らないという事態になってしまいます。 ではどうすればカゼが最も速く治るかと言えば、のどを冷やさない事、病気と闘うための体力を温存するため安静にしておくのが重要だと思います。医者が出している薬は、あくまで風邪の不愉快な症状、痛みや・咳・鼻水等を押さえるだけのものでしかないです。 早めに医者に行ってもカゼが治った訳ではないので、無理をされると、カゼは悪化してしまいます。
また、ウイルスの中でもインフルエンザウイルスの感染症の場合は、発熱の症状や全身症状が強く(腰や太ももの筋肉の重い感じや、関節痛)、熱も39度近くあがる場合があります。 これは薬が異なりますのでカゼ症候群とは区別されます。 医者へ行けば簡単に、10分程度で診断できますし、治療薬もしっかりありますので、きちんと受診される事をお勧めします。

これから、寒くなります。 カゼの予防は手洗いが最も有効だと言います。 お大事にどうぞ。
三好クリニック(内科)
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