医者の最も長い相棒

医者にとって、最も長く付き合う相棒ってなんだと思いますが? 医者の同僚も、一時的に相棒という立場でチームを組むことがあるかもしれませんが、私が暮らしてきた大学病院では、相棒と呼べるような同格の医者と長時間ペアーを組むことはなく、教えたり教わったりする上下の関係が多かったです。 患者さんとの付き合いは長いですが、それは相棒という関係ではありませんね。
医者の仕事に不可欠なものに、白衣があります。 しかし白衣は3年ぐらい着ていると、首の周りや袖周りが擦り切れてきて、寿命を迎えます。 なので長くても数年の付き合いです。 古い医者の中には、カルテを書くための万年筆を大事に使っておられたドクターもおられたでしょうね。 私も父親からもらったペリカンの万年筆を紙カルテの時には長い間使っていましたが、今では電子カルテが主流になり、万年筆を使うことはなくなりました。

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私の場合、聴診器が最も付き合いが長いです。 しかし先日その聴診器が金属疲労で壊れてしまって、新しい聴診器を購入しました。 といっても全く以前と同じものを購入したので、誰も気づかないでしょうね。 つまり私の相棒が先日、第一線を退きました。 耳に引っかけるためのバネが壊れてしまったようで、捨てるのはちょっとかわいそうで、今は自宅に置いてあります。 思えば、20年近く、当直の日や外来で僕を支えてくれた相棒だったので、しんみりしてしまいます。

聴診器が発明される前は、医者は患者の体に直接耳をつけて音を聞いていたようですが、それはやはりいろいろ問題があったわけで(特にご夫人の診察の際に)、19世紀の初めに発明されたようです。 
私が一番初めに購入した聴診器は、リットマン・カルディオロジー2 と言うタイプの聴診器で、医学部大学5年の頃に購入しました。 聴診できるようになると、なんとなく医者になったような気分で、少し誇らしい気分だったかもしれません。 確か3万円ぐらいしたかな・・。 音はとても良く聞こえましたが、先端部分が大きく膜とベルを回して切替えて聞くタイプだったので、どうしてもヘッドが大きく、白衣のポケットに聴診器を入れると他のものが全く入らなくなり、悩ましいものでした。 研修医になって、自分たちを教えてくださっていたドクターが、今私が使っているリットマン・マスターカルディオロジーというモデルを使っておられて、研修医2年目で憧れもあって、同じものを購入し今まで使っていました。 通常の聴診器よりベルの面積が広く、押し付けたり、少し軽く当てたりするだけで、高い音から低い音まで比較的簡単に聞き分けられると言うのと、先端の部分が薄く広くなっているため、白衣のポケットに入りやすいのも気に入っていました。 
ちなみにはじめに購入したカルディオロジー2は、上級医になった時に下級医の誰かに貸したままになって戻ってこなかったです・・。 誰にわたしたっけかな? 最近はアンプが入っている機械式の聴診器などもあって、私も70近くなって難聴が始まったら、そういう聴診器に変更しなくてはならないなーって思っています。 

聴診器は、白衣を着ることがないような手術室勤務のドクターなどは、首からかけていることが多いですね。 ちょうど、矢沢永吉がタオルを肩から前胸部に垂らしてかけているように。 当直などで、白衣を着るのが面倒な時とか、あとは、若い研修医などで、白衣のポケットにいっぱい資料(研修医マニュアルなんか)を入れているドクターは、肩からかけていたりすることが多いかもしれません。 私も若い頃はよくそうしてましたし、今でも時々救急救命の時などには、術野に垂れ下がらないように首にかけて処置をしていることが多い気がします。 また、循環器のドクターは心臓のエコー検査などの際に超音波阻止と聴診器が干渉しあって邪魔になるので、座っている時に大腿部を耳にあたる部分で挟み込んで検査を行ったりすることがあります。 続けて診察をする時には、耳から外して首にネクタイみたいにはめたままにしているドクターが多いでしょうね。 私も診察室ではそうしていることがおおいですね。 あれは、歩く時に先端がぶらぶらして落ち着かないので、移動する時には外すか、先端だけポケットに入れるドクターもいます。 ただ普通は首を両側からバネで締められるので、痛くて長時間はめているのは苦痛なので、外して手にまとめて持っていることも多いでしょう。 年配のドクターは、白衣のポケットにあまり資料を入れることも少なくなるので、折りたたんで白衣のポケットに挟んでいることが多かった気がします。 みなさんもみじかにお医者がいたら、医者が聴診器どうやって持っているか観察してみると面白いかもしれませんね。

僕のマスターカルディオロジー1世に感謝・・・。
三好クリニック(内科)
〜青山・表参道〜